<PCクエストノベル(1人)>
温泉で骨休め!? 〜ハルフ村〜
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【冒険者一覧】
【整理番号/名前/クラス】
■2524/アルミア・エルミナール/ゴーストナイト
【助力探求者】
なし
【その他登場人物】
レイシア(宿屋の娘)
被害者多数
温泉泥棒
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一仕事終えたアルミア・エルミナールは、温泉がある事で有名なハルフ村へと立ち寄った。
依頼で疲れた身体を温泉で休めていこうと思ったのだった。
依頼も大事だが、骨休めはもっと大事だ。
やはり身体があってこその仕事なのである。
アルミアは村で一番評判の良い店に宿を取り、部屋へと案内されると付けていた甲冑を脱いだ。
一気に身体が軽くなるのを感じ、ほっと一息付く。
そして先ほど部屋に案内された時に店の者から、温泉はいつでもはいれますから、と言われた事を思い出したアルミアは、早速温泉に入ってさっぱりしようと着替えを持って部屋を出た。
温泉は男女別の露天風呂になっており、外の美しい景色を存分に堪能出来る作りになっていた。
これがこの店のウリだった。
かけ湯をしてからのんびりと温泉へと浸かる。
思い出す日常も夢のようにも思え、身体を包み込む湯に身体の力を抜いた。
女:「んー、気持ちいいわー」
アルミア一人が入っていた温泉に入ってきた女は、温泉にはいると大きく伸びをした。
目の端に映るその女性をアルミアは無視していたが、女がじりじりとアルミアに寄ってきて声をかけてきた。
どうやら一人でのんびりと温泉を堪能するということはさせてくれないようだった。
女:「ねェ、この温泉のお湯は気持ちよいでしょ。でもね、最近温泉泥棒がいるらしいって話なのよ」
二人しかいない場所で、返事をしない訳にはいかずアルミアは仕方なくその話に乗る。
アルミア:「温泉泥棒?」
女:「そうそう。普通温泉泥棒って金銭払わずに入っていく奴らの事を言うんだけど、その犯人達は温泉にも入り尚かつ客の有り金持っていってしまうんだって」
アルミア:「それは酷い……ん? 奴ら、ということは複数なのか?」
女:「だって、男湯と女湯の両方に出没するんだもん。もうアタシも毎回頭に来てるんだけどね。こうして見張っててもなかなか出てこないし」
はぁ、と大きな溜息を吐いた女だったが、すぐににんまりとした笑みを浮かべてアルミアを見た。
女:「アンタ、腕が立つんでしょう? この事件、解決してくれないかな」
アルミア:「私がか?」
そう、とあっけらかんと告げた女は笑う。
女:「そんな豆鉄砲喰らったような顔しなくたっていいわよー。あ、アタシこの宿の娘でレイシアって言うの。よろしくー」
アルミア:「……なんだかはめられた気分だな」
レイシア:「そんな事無いって。便りしにしてるわ……えっと……」
アルミア:「アルミアだ」
レイシア:「あははっ! うん、よろしくお願いします、アルミア」
温泉から上がるとアルミアは行動を開始した。
まずは辺りの聞き込みから始める。何度も泥棒行為を行っているならば、被害にあっている人物も大勢居る事だろう。少しの情報でも集めておきたい気分だった。
男:「温泉泥棒? あぁ、やられたことがある。俺が行った時にはもう既に入ってたんだ。そして人の良さそうな笑顔で色んな話を振ってくるんだ。話術も巧みでな。思わず話に引き込まれてる間に、多分もう一人が盗んでやがるんだろうな」
女:「あぁ、あれは頭にきてねぇ。でも訴えられないじゃない。困ったもんよ」
男:「夜が多いって話を良く聞くぜ。俺の時は満月だったなぁ」
女:「美男美女って話よ」
情報が集まる事には集まるが、犯人に目星はつかない。
美人だからといってその人物達を疑う訳にはいかないだろう。
アルミアはそれでも諦めずに情報収集を行った。
その間にある一つの結論にアルミアは辿り着く。
詳細を調べれば調べる程、温泉泥棒達の行動が満月の晩に集中している事に気付いたのだった。
上手い具合に今日は満月だった。
アルミアが調べた事が間違いでなければきっと温泉泥棒は現れるはずだった。一人捕まえれば芋蔓式に捕らえる事が出来るに違いない。
確実に温泉に入ったのを確認してその場を捕まえたい所だ。
アルミアはレイシアに協力を依頼する。レイシアは瞳を輝かせながら、囮捜査ね、とやる気満々だ。
外からアルミアは露天風呂を張り込む事にし、温泉へはレイシアに入って貰う事にした。
レイシアには先に入っている女よりも先に上がるよう伝える。そうすることで温泉泥棒のペースが乱れるはずだ。
レイシア:「なんだか楽しくなってきちゃった」
アルミア:「これは遊びでは………」
レイシア:「分かってるよ。でも、今まで大変な思いをした人の分も、ぶん殴らないと気が済まないよね」
物騒な事を言い出すレイシアにアルミアは苦笑するしかない。
アルミア:「まぁ、懲らしめてやらなければとは思うがな」
レイシア:「よしっ! 温泉泥棒捕獲計画発動☆ってね」
ぐっ、と拳を握りしめたレイシアをアルミアはほんの少し楽しそうに見つめていた。
アルミアは露天風呂の見える位置にこっそりと身を隠す。
まだ露天風呂には誰も入っていない。
レイシアもまだ待機中だ。温泉泥棒は誰かが入っているとやってこないという話だった為、こっそりと今だけ入浴禁止にしている。外から中は窺えない作りになってるからこそ、それができるのだが。
アルミアは温泉泥棒がいつくるかと心待ちにしていたが、やがて二つの人影が現れる。
服を脱ぎ捨てた女はそのまま軽々と柵を跳び越え、露天風呂へと向かった。
軽く湯浴みをしてから、女は温泉へとゆったりと浸かる。
アルミアはレイシアに合図を送った。軽く頷いたレイシアは温泉へと向かう。
温泉に入った女とは別に、脱いだ服を拾い集めた女はそれを脱衣場の方へと置いたようだ。
籠に服が入っていなければ怪しまれるからだろう。
そうこうしている間にレイシアが温泉へとやってきた。
のんびりと浸かるレイシアに先に入っていた女は声をかけ始めた。
話術が巧みだ、というのは本当なのだろう。それは楽しそうにレイシアも笑っている。
その間にアルミアはじりじりと先ほど女が露天風呂へと侵入した場所へと移動する。逃走経路もきっと同じだろう、という予測の元にアルミアは動いていた。
レイシアは打ち合わせ通り、その女よりも先に上がる事に成功する。
中へと入っていくレイシア。その背後で女が先ほどの女に向けてだろうか、月の光を鏡に反射させキラリと光らせて合図をする。
女は濡れた身体のまま、先ほどの侵入場所から外へと逃げ出した。今日の所は失敗という事だろう。
しかしいつものようにすんなりと逃げる事は出来なかった。
逃げ出した女の前にいたのは仲間の女だけではなく、アルミアもいたからだった。
先にアルミアに取り押さえられた女は雁字搦めに縛られてアルミアの足下に転がっている。
全裸の女は申し訳程度にタオルで身体を隠してはいたが、ボリュームのある胸ははみ出して見えた。
温泉泥棒A:「ごめん。捕まった」
温泉泥棒B:「なっ……何アンタっ!」
アルミア:「簡単に言えば用心棒か? 捕まえて欲しいと頼まれたからな」
温泉泥棒B:「アンタも何転がってんのよ。アタシの服は?」
アルミア:「あぁ、これの事か」
アルミアが指差したのは散り散りになった服の残骸。
女の顔が青ざめていくが、すぐに女はアルミアをにらみ返すと、次は負けないわよ、と告げ逃げようと走り出した。
しかしその退路をアルミアは塞いでしまう。
逃げ場を失った女はアルミアに向かって足技を繰り出す。それでもアルミアにとっては軽いものだった。女がアルミアに繰り出した蹴りは簡単にアルミアに押さえられ、逆にその反動を利用して全てアルミアに反撃される。
温泉泥棒B:「くっ……退きなさいっ!」
アルミア:「退けろ、と言われて退ける奴が何処にいる」
温泉泥棒B:「五月蠅いっ!」
そう言って向けられた蹴りだったが、アルミアはそれを弾き女の身体を捕まえた。
そして足下に転がる泥棒と同様縛り上げる。
ちょうどそこへ駆けつけたレイシアが、持っていた大きなタオルをその温泉泥棒にかけてやる。せめてもの優しさといったところか。
アルミア:「温泉泥棒なんて事をせずに冒険者にでもなった方がよほど稼げるんじゃないのか?」
女の持っていた蹴りは悪いものではなかった。鍛え上げれば十分通用するものへとなるだろう。
アルミアの言葉に悔しそうに唇を噛む女は治安団体に連れて行かれた。
これで温泉泥棒も根絶やしにされるだろう。
アルミアは今度こそ骨休めをするべく、のんびりと温泉へと浸かっていた。
温泉泥棒を捕らえたという事で、今回の宿代はただになったのだった。
すると来た時と同様、レイシアが鼻歌を歌いながら入ってきた。
手には盆を持っている。
レイシア:「じゃーん。月が綺麗だから月見酒の用意してきちゃった」
アルミア:「ほぅ。それはまた楽しみだな」
レイシア:「美味しいんだから」
お湯に盆を浮かべ、レイシアは杯をアルミアに手渡し、それに酒を注ぐ。
レイシア:「今日はお疲れ様でした。そしてありがとう」
アルミア:「いや……月が綺麗だな」
杯の中の酒に浮かんだ月を眺め、アルミアはそのまま月明かりも飲み干した。
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