<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


週末は水の都においでませ

≪0:オープニング≫

 ルディアが忙しそうに働く姿が客の目にも気持ち良い。今日も、アルマ通りに面した白山羊亭は大盛況である。
 そんな中、妙に目をぎらつかせた男が席に座り、ワインをがぶ飲みしながら客を値踏みしていた。普通に考えて、あまり近づきたくない部類の人間だ。しかし、彼がルディアを見て軽く手を挙げてきたので行くしかない。
「はーい、何かご注文でしょうか」
「ワインをもう一杯。それから、ここにいる奴らの中で強いやつはいるか」
「えっと……それを聞いて、どうするつもりなんですか?」
 店の中で乱闘騒ぎを起こされてはたまらない。ルディアは男に尋ねた。
「俺はアクアーネ村から来た、ヴィーノという。俺の村の名物は、運河とゴンドラなんだがな、今度村おこしを兼ねてゴンドラ早漕ぎ競争大会が行われるんだ。俺も選手として登録したんだが、よく考えたら、一人だけで参加出来る部門がなかったんだ……」
 彼はそこまで言うとがっくりと肩を落とした。が、すぐに立ち直る。
「そこで、だ。たくさんの人が集まるこの店で相方を探してやろうと思ってな。もちろん優勝すれば賞金は出る。誰か腕っぷしに自信があるやつはいないか……?」


≪1:仲間≫

「面白そうな話が聞こえてきたな。詳しく聞かせてくれよ、兄ちゃん」
「いっ…」
 尋常ではない力でヴィーノの方を叩いた男がいた。190cmを越える巨体に、肉体美が美しい。オーマ・シュヴァルツである。
「ち…、力になってくれるのか?」
 叩かれた肩をさすりながら、この力が味方につくなら勝算はずっとあがると算段する。
「なんか頼もしいな! 実はゴンドラ漕ぎ競争があるんだが、人数が足りないんだ。こぎ手が一人か二人、ナビゲーター役が一人か二人、荷物または乗客を載せて、規定の重さ以上にしなきゃいけねえんだ」
 ヴィーノは手元にあった紙を元に棒読みする。
「おう、じゃあ俺はこぎ手だな。なんならナビもやってもいいぜ」
「ナビもできるのか? そいつは一石二鳥だ! 是非……」
「そんな肉体派にばかり偏っていては勝てる勝負も勝てないんじゃありませんか?」
 きつい台詞で会話に入ってきたのは、アイラス・サーリアスだ。
「あら、アイラスくん」
 旧知の仲なのか、オーマがアイラスにひらひらと手を振った。ヴィーノがそれを阻むように
「俺たちは勝てないって言いたいのかよ」
「そのままではね。参謀役、多少なりとも頭の働く者が必要じゃないですか? 少なくとも僕があなただったらすぐに策士を仲間に入れますね」
「さりげなく自分を売り込んでるな?」
「そんなこともないですけれどね。こう見えて、僕はお得ですよ。何しろゴンドラ漕ぎ競争経験者ですし。あちらの方にも声をかけられたのですが、賞金の分け前が辛いので断ったんです」
「…」
 頭のいい奴と会話するのは本当に苦手だとつい再認識するヴィーノであった。
「場所はどこですか?」
「水の都アクアーネ。水がきれいで酒もうまい」
「では料理もきっとおいしいんでしょうね!」
 ヴィーノの背後でガタッと椅子を引く音がした。振り返ってみると一人の青年がいた。パチンと胸の前で手を打ち合わせ、うっとり目を閉じている。ややあって、彼の座っていた椅子がガタンと倒れる音がした。
「話は聞かせてもらいました。アクアーネ村に、是非とも僕を連れていってください! こう見えて腕っぷしには自信がありますから、競技の方もいけますよ!」
 アイラスと正反対にたたき売り状態のパティシエ、メリアデイル・ティスキンスである。
 それなら、と別の人物が立ち上がった。
「わたくしもそれに参加させていただけますの? こう見えて魔法が使えますからきっとお役にたてると思いますの」
 聞いていると和むというか眠くなる。そんな感じのしゃべり方と雰囲気だった。見るものが見れば分かる、魔法付加の強い服やアクセサリーばかりを身につけているが邪気は感じない。何か人として大切なものも感じられない気もするが。
「あんたが?」
「はいですの。あ、わたくし無し名のナシーナと申します。よろしくお願いしますの」
 ナシーナは一同へにっこりほほえんだ。
 ともあれ、メンバーは決定したようである。


≪2:偵察≫

「遊びじゃないんですよ。分かってるんですか?」
「……え、そうだったんですか?」
「そうですよ。……もう、勝つ気はあるんですか?」
「人一倍ありますとも!」
 アイラスとメリアデイルの役目は、観光客を装い他のゴンドラの形状や特徴を見て、相手がどんな作戦を練っているのかを予測し、対策を考えるという重要なものだ。アイラスは、慎重に人選をしてメリアデイルをいっしょに連れて行くことにした。観光客に紛れこむには丁度良さそうだと感じたからだ。結果は、予想以上。予想以上に観光客に溶け込む事に成功した。溶けこみ過ぎだ。どうやらメリアデイルのほうは本気でこのお祭りを楽しんでいる。
「屋台で食べるお菓子って、高級なものとはまったく別の美味しさがありますよねぇ」
 ほっぺたが落ちそう、と満面の笑みを浮かべてチョコバナナを食べる。杏飴を舐める。わたあめを頬張る。メリアデイルがあまりに嬉しそうに駄菓子を買うために、屋たいのおじさんやおばさんもサービスしたくなるらしく、ちょっとずつ得をしている。
「屋台じゃなくて、運河のほうを見てください。――あのゴンドラも、競技に出場するようですね」
 アイラスは懐から参加チーム一覧のかかれたメモ用紙を取り出した。どこが参加するかは、ゴンドラにゼッケンをつけるので分かるのである。
「形状からしてスピード重視、乗員はおよそ6名ってところでしょうか。――素材が安いですね。少しの衝撃で破損する可能性大です」
 言いながらメモへ付け加えていると、
「あ、わたあめ一口どうですか?」
「……いただきます」
 断るのも大人気ない。甘いものは脳にいいから、と自分に言い訳して、アイラスはふわふわした甘い砂糖菓子を口へ放り込んだ。
 その間も、メリアデイルは船そっちのけでお店ばかり眺めている。


≪3:仕掛≫

 一方、オーマとナシーナは、ヴィーノと共に町外れのほぼ廃屋と化した倉庫へ来ていた。
「こちらに、なにがありますの?」
 暗くて見えませんの、とナシーナは魔法で明かりをともした。ろうそく程度のほのかな明かりでは、広い倉庫を見渡すことは出来ない。
「ナシーナさん、もっとおっきな明かりをつけてくれよ」
「つけていいんですの?」
「もちろん」
 ヴィーノの返事を受け、今度はたいまつがいくつも集まったほどの明かりをともした。倉庫にあるものの全貌がようやく明らかになる。
「ゴンドラ、か」
「ただのゴンドラじゃない、俺が設計し、材料を調達し、組み立てた特注品だ!」
「いいねぇ、それでこそバトルだぜ。きらめく胸筋、艶めく括約筋、みなぎる汗、ほとばしる熱い友情!」
 微妙に会話がかみ合っていない。麦酒でも飲み干したかのように、オーマは陽気に叫んだ。
「オーマさん、こっちに来てくれよ。中にいろいろ仕掛けを作っといたんだ。説明するぜ」
 ヴィーノはオーマを手招きした。シンプルなつくりのはずのゴンドラは、なぜか内部に様々なレバーやボタンがついている。
「へへっ、こう見えて俺は大工なんだ、これくらいの細工は朝飯前だぜ」
「頼もしいじゃねえか! じゃあ、教えてもらおうか。まずこの赤いレバーは?」
「ゴンドラの左右から太い針みたいなもんが飛び出す。ゴンドラを横につけられたときい相手の船に穴を開けるって寸法よ」
 自慢げにヴィーノが答える。ほかにも黄色や青、黒のレバーがあったり、どこに繋がっているか知れない紐がだらりとのびていたりする。
「細工をしたのはいいんだが、そのせいで船の総重量が結構なことになっちまってよ。腕っ節の強いやつじゃなきゃ多分漕げない。あ、オールにもちょっとした細工が……」
 つまるところ、細工マニアらしかった。


≪4:夕暮≫

「この船にそんなにいろいろ仕掛けが施してあったとはね……。作戦のたてがいがありますよ」
 他の船を偵察に行った後に、自分たちのゴンドラの仕様を聞いたアイラスの感想である。
「アイラス、ナビは頼むぜ」
 オーマが言った。
「競争が始まるのは夕方ごろでしたよね」
 メリアデイルが空を見上げた。もうそろそろ日が傾くころだ。ゴンドラたちが明かりをぶら下げたままで運河を走り抜けていく、優雅で熾烈な争いとなる予定なのだ。
「最強のメンバーがそろったぜ。豪腕のオーマ、鬼参謀のアイラス……」
「何ですか、鬼参謀って」
「なんとなくだって、聞こえが良いだろ。それからムードメーカーのメリアデイルに、何をしでかすかわからないお嬢さん、ナシーナ」
「わたくしは、ただみんなと楽しく優勝できればいいなって思っているだけですの」
 ナシーナが少し抗議するように早口で言った。確かに、楽しく優勝できればそれに越したことはない。
「あせらず、慎重にことを進めていきましょうね」
 アイラスが念のためにと釘をさした。


≪5:合図≫

 戦いは優雅でなければならない。そういい残したのはどこの武将だっただろうか。彼がもしここにいれば、この戦いを存分に鑑賞しただろう。
 それぞれの趣向を凝らしたゴンドラは、見た目も採点の対象となる。外見と、速さと乗り心地。3拍子そろって初めて真のゴンドラと言えるのだそうだ。
「綺麗ですの」
 うっとりとナシーナが周りの船を見回した。ゴンドラの先頭につけられたランタンがゆらゆらと揺れて波を照らす。
 岸辺に、腕章をつけた男が立った。手には、始まりを告げる鐘。
「みんな、持ち位置についたな?」
「大丈夫です」
  親指をたてて、準備はできていると答えるメリアデイルとアイラス、オーマ。
「わたくしはなにをすればいんですの?」
「とりあえずそこに座っててくれ。何かあったら頼むからよ」
「わかりましたの」
 ナシーナも皆に合わせて親指をたてた。
「では、第1回創作ゴンドラ早漕ぎ競争を行う! 各自異なる経路を辿り、無事最初に目的地へ着いたものを優勝者とする」
 腕章をつけた男が決まり文句を言う。
 遠く、ゴール地点付近からの花火が上がった。
 それを合図に鐘を鳴らす。
 スタートだ。


≪6:快調!≫

「はっはっは、この俺の華麗なオールさばきについてこられるかぁ!」
 ちょっぴり悪役めいた台詞が、彼らのゴンドラのトレードマークとなりつつあった。オーマの漕ぐゴンドラは、まるで人の力ではないほどにスムーズかつ迅速に水面をすべって行く。
「そろそろ、ほかのチームとの合流地点ですね」
 ナシーナに手元を照らしてもらったアイラスが、事前に渡された地図を見て言った。まもなくして、川の合流する辺りから明かりが見えてきた。普通観光用のゴンドラは相手とうまくすれ違うかというのも見所になるのだが、今日の目玉は競り合いだ。いかに相手より前に出るか。
「そろそろ俺の秘密兵器が火を吹く番かな」
「え、火も吹くんですか、このゴンドラ」
「ものの例えでしょう」
 メリアデイルのおボケに答えたのはアイラスだ。勝負事はとことん本気になる男である。
「そろそろ、赤いレバーの出番ですよ」
 アイラスがメリアデイルに言った。
「準備は出来てますよ、アイラスさん!」
「皆さん、頑張ってくださいね〜」
 ナシーナのほのぼのする声援が後押しする。
 やってくるのは、アイラスが最初に調査していたスピード重視のゴンドラだ。針の出る仕掛けは横に並ばない限り使えない。
「オーマさん、気合いいれて漕いでくださいね」
「分かってるって!」
 オールを持つ手をぐっと握りしめて、オーマが気合の声を上げた。相手の船が姿を現す。予想通り、すごいスピードだ。こちらよりも断然早い。出会い頭の競り合いを避けるために加速して来たのだろう。でも、ひとつ誤算がある。
「こっちにはオーマさんがいるんですよ。さぁ、漕いでください!」
 アイラスの声に応じて、オーマがものすごい勢いでオールを操り始めた。相手のこぎ手の必死の形相が近づく。とうとう隣に並んだ。
「赤いレバーを!」
「了解です」
 メリアデイルが、あらかじめ握っていた赤いレバーを、両手をかけて勢いよく倒した。ヒュンッとかすかに音がして何かがこちらのゴンドラの側面から飛び出した。相手のゴンドラの側面へと音もなく吸い込まれていく。
「……あれ、何も起こらないじゃないですか」
「失敗ですの? それならわたくしが魔法で……」
 ナシーナが立ち上がり、どんな魔法をかけようかと考え出した、そのときだった。相手の動きがおかしいことに気付く。こぎ手の必死さとは裏腹に、船がまったく加速しない。いくらかは今までの慣性で動いていたが、やがてこちらのゴンドラからは引き離され、あっという間に小さくなった。
「成功ですのね」
 ナシーナがホッと胸をなでおろした。
「俺のおかげだな。そうだろ」
 がっはっは、と笑いながらオールを頭上でくるっと回してみせるオーマである。
「まだまだ、ここからが本番ですよ。さっきのは軽い余興です」
 アイラスが皆を引き締める。
 少し幅の広くなった運河には、あちこちに競技に参加しているゴンドラの明かりが見えた。
「さあ、優勝は僕らのものですよ。もうまもなくね」


≪7:目前≫

 ゴールまではもう100mもないだろう。彼らは、並み居る強敵を次々と抜かし、あるいは再起不能に陥れて確実に順位を上げていた。残す敵は、一人。軽快なスピードでこちらの前を行く、白銀のゴンドラだ。
「あのゴンドラは、調査した段階でも弱点が見つからず、できればほかのチームに倒されていてほしかったんですが……」
 そううまくはいきませんよね、とアイラスが首をすくめてみせた。
「ここまで来て優勝できないんですの?」
「悔しすぎるぜ、そんなのはよぉ」
 オールを持つオーマの動きが早くなった。ラストスパートをかけようというのか。
「最後は正統派で、競り勝って勝ちたいですね」
 メリアデイルが言うが、
「それが通用しない相手なんだろ、あれは」
 ヴィーノが両断する。
「どんな手を使ってもかまわないんです。勝ちましょう」
「オールにも仕掛けがあるんだろ。何か発射されるとかか?」
 オーマが、手にしていたオールを見てふと尋ねた。が、
「いや、持ちやすいように長さが変わるって程度で……」
 攻撃用の細工ではなかったらしい。軽くがっかりした雰囲気が漂う。
 ゴールまで残り50mを切った。まだ両者の間隔は船ひとつ分ある。じっとしていられなくなったのか、ヴィーノが予備のオールを持ってオーマと並んだ。船がぐらりとかしぎ、元に戻る。
「一人より二人のほうが良いだろ」
「おう! 力を合わせてってやつだな」
 二人は息を合わせてオールを漕ぐ。少しだけスピードが上がった。が、残りの長さで相手を抜かせるほどではない。
「何か手は……ないのか……」
 アイラスがせわしなく呟く。あらゆる予測はした。が、針は隣に並ばなければ撃てないし、不快音を出して相手を混乱に陥れるという黄色いレバーも、自滅するだけだと経験済みだ。紐にいたっては、船首のマスコットの向きを変えるだけのものである。
 もうだめなのか。いや、でもよく頑張ったじゃないか。参加することに意義がある。2位でも賞品と副賞はもらえるわけだし。
 皆がすがすがしく諦めかけた、そのときだった。
「このレバー、まだ使ってませんの?」
 ナシーナが何気なく呟き、そこにあったレバーを倒した。
 色は、黒。
「ちょっ、そのレバーは……っ!」
 製作者のヴィーノがオールをぱっと離して耳を塞ぎ目をつぶった。
 直後、轟音が響き、彼らのゴンドラは木っ端微塵に砕け散った。
 水面で突如はじけた花火のようなそれは、観客の目をひどく楽しませたのであった。


≪8:後夜祭≫

「……どうして、自爆用のレバーなんて作ったんですか」
「いや、負けた姿を晒すくらいならいっそ花と散ろうと……思って」
「おいおい、命を散らしてどうするんだ」
 オーマが突っ込みをいれてわははと笑う。しかし実際、かなり危なかった。ナシーナが無意識に皆を守る結界を張っていなければ、今頃こうして笑ってはいられなかっただろう。
 自爆レバーを引いた後、ただの板切れと化したゴンドラに何とか5人で乗っかってゴールまで漕いだのだが、当然優勝は逃し、スタート前に言っていた「無事に」ゴールするという規定を外れてしまったため、2位にすらなることができなかった。つまり、失格である。
「皆さんすみません〜……」
 少々肩を落として、ナシーナが頭を下げた。
「だ、大丈夫、まだ次があるからよ」
「まあ、楽しかったですし」
「そう気を落とすなよ。――で、あいつは?」
 ゴールしてから、メリアデイルの姿が見えない。負けてしまったためにふてくされてでもいるのだろうか。
「冷たい奴だな……」
 口を尖らせてヴィーノが言ったときだった。
「おーい、皆さーん! こっちですよ、こっち!」
 コックの制服と帽子をかぶったメリアデイルが手を振っている。広場のほうだ。
「厨房を借りて、作らせてもらったんです」
「いい腕してるよ、この兄ちゃん」
  厨房を貸したという男がメリアデイルの背中をたたく。
「この料理、全部メリアデイルさんが……?」
「メリアって呼んでくださいよ、アイラスさん」
 皆声を失っていた。広場にはたくさんのテーブルがあり、そこに並んでいるのは、色とりどりのお菓子だった。口を閉じていないとよだれがたれてくるかもしれない。甘いにおいが鼻をくすぐる。
「ここの水が良いから、いつもよりおいしく作れました。さあ、遠慮はいりませんよ、どんどん食べてください!」
 メリアデイルの声に、一同は一斉に走り出した。空腹なのは皆同じだ。目に入ったものからすべて食べようとする者、気に入ったものばかり食べる者、食べながら、一体材料は何なのか考えてしまう者、見た目にうっとりしてなかなか口に入れない者など、食べ様も十人十色だ。
「いい腕してるなぁ、お前」
「ありがとうございます」
「今度、俺の男の料理をご馳走してやるぜ」
「オーマさん、料理できるんですか!」
「おうよ。俺が筋肉だけの男じゃないってのを、ぜひ証明しておかないと」
 オーマとメリアデイルが親交を深めれば、
「ナシーナさん、自爆したときには助けてくださりありがとうございます」
「いいえー、大したことありませんの」
「それにしても、あなたはすごい魔力の持ち主ですね」
「そうですの?」
「自覚ないんですか? 身につけている装身具だってすごいですよ。普通の人間や下手な魔術師なら、5分で倒れるくらい強力なものばかりです」
「知りませんでしたの。――あ、そこの黄色いくるくるしたお菓子をくださいな」
「モンブランですか?」
 ナシーナとアイラスが楽しげにケーキを食べあう。
 自分もケーキを食べようとしたヴィーノは、競争委員会の係の者に肩を叩かれた。もう終わったじゃないかと腹をたてかけ、告げられた言葉に目を見張った。すぐにそれは喜びに変わる。

「おい、てめぇら聞いて驚け! 俺たちが、観客特別賞っていうの貰ったぞ!」



Fin.

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39歳(実年齢999歳)/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
【1649/アイラス・サーリアス/男性/19歳(実年齢19歳)/フィズィクル・アディプト&腹黒同盟の2番】
【2733/メリアデイル・ティスキンス/男性/21歳(実年齢21歳)/パティシエ】
【2699/ナシーナ/女性/19歳(実年齢999歳)/多分……魔道士】

【NPC/ヴィーノ・カルセオン/男性/23歳(実年齢23歳)/大工(まだまだ下っ端)】

※発注順

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          ライター通信          
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初めまして、月村ツバサと申します。
ソーンでのお仕事は初めてだったのですが、いかがでしたでしょうか。
それぞれの皆さんの個性が活かせていればと祈るばかりです。
どこか一部でもお気に召していただければ幸いです。

月村ツバサ
2005/06/17