<PCクエストノベル(1人)>
美味しいお茶と赤いバラ
〜 戦乙女の旅団 〜
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【冒険者一覧】
【整理番号/ 名前 / クラス 】
【1054/ 山本建一 / アトランティス帰り 】
【助力探求者】
カレン・ヴイオルド
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●花の香りに迎えられ
カレン「旅団が今何処にいるか……ですか。残念ながら私には分かり兼ねますね」
カレン・ヴイオルドの発言に、山本健一はがっくりと大きくうなだれた。
先日の礼が言いたく、戦乙女の旅団達の居場所を探していた。
だが、彼らはひとつのところに長く留まらないため、居場所に関する情報が少ない。事実、情報の集まりやすい白山羊亭や黒山羊亭、天使の広場で尋ね回っても、彼らを知ってはいるものの何処にいるのかまで分かる者はいなかった。
彼らと知り合いであるカレンならば、知っているかと期待していたが、早速あてが外れてしまったようだ。
うなだれる健一の肩を優しく叩き、アルマ通りのシェリルならば何か情報を知っているのではと告げる。
カレン「彼女の店によく旅団の方が物を売りに来られるそうです。先日聖都へ来た時も寄っていたようですし、もしかしたら次の予定などお聞きしてるかもしれませんね」
早速シェリルの店へ向かった2人を迎えたものは、大量のバラの花だった。
むせるほどの芳しい香りと床に所狭しと置かれた花籠を眺めながら、健一はぽつりと呟いた。
健一 「これ……は、いったい……」
カレン「この花……ビアンカキャンディですね。この辺りでは確かエルファリア王女の庭園にしか咲いていないはず。お城の方が運んできたのでしょうか」
間もなくして、店の主人が姿を現した。
彼女はバラに触れないよう2人に強く言付けながら、そそくさとカウンターまでの道を作りあげた。
健一 「このお花、売り物ですか?」
主人 「うん、明後日に来る旅団の人達が買い取る予定だよ。もしかして、1本欲しいの?」
健一 「いえ、そういうわけでは……って。旅団というと、もしかして『戦乙女の旅団』の方々ですか?」
主人 「そうだよ。明日の夜あたりには聖都に到着してるんじゃないかな。あ、もしかして……何かお土産を買うつもり? あの人達最近珍しいもの売ってるよねー。私も毎回楽しみにしてるんだ」
健一 「そうですか……旅団の方々は何時頃お見えになられるかご存知でしょうか? 少しお話をしたいのですが」
主人 「それだったらお昼においでよ。珍しいお茶を持ってきてくれる予定だからさ」
そういえば新茶が出回る時期だったな、とふと健一は思いだした。
今年のファーストフラッシュは例年以上に良い出来だと聞いている。
彼らが持ってくるお茶ならばかなりの質を保証出来るだろう。
健一 「でしたら、僕はおいしいお菓子をご用意致しましょう。明後日また参りますね」
●美味しいお茶と優しい音楽
2日後。
約束通り焼きたてのスコーンとカレン特製のフルーツケーキを持参し、健一は再びシェリルの店へと向かった。
ついた早々2人は店の裏手にある庭へと案内され、そこで待っていた団員達の熱い歓迎を受けた。
団員 「いらっしゃい! 丁度あなた達の話をしていたところだったよ」
カレン「私……達の?」
団員 「うん、美味しいお菓子と楽しい音楽をお土産に持ってきてくれるってね♪」
健一 「期待されてしまうと少し照れてしまいますね」
苦笑いを浮かべながら、健一は持っていたバスケットをテーブルの上に乗せた。
一同の視線を浴びる中、そっとバスケットを蓋を開ける。
途端、焼きたての香りと爽やかな甘い香りが、その場にいた全員の鼻をくすぐった。
健一 「この時期のお茶なら、きっとダージリンのストレートフラッシュだろうと思いまして、爽やかなお茶に合う甘めの物を用意しました。どうぞ召し上がって下さい」
団員 「この香り……バラの花を入れていませんか?」
健一 「はい。先日頂いたビアンカキャンディを蜂蜜漬けにしたものを加えているんです。よく……お分かりになりましたね」
団員 「何となく似てるなぁっておもったの♪」
予想が当たって嬉しいのか、どことなく楽しげに団員は告げる。
スコーンのバラから話は弾み、珍しい花々のこと、季節を謡う鳥達のこと、そして様々な詩を語り合った。
団員達の語るソーンの物語も魅力ではあったが、何よりその場にいた者達の興味をひいた物は健一が話す天界の物語であっただろう。
彼の話す天界での生活は団員達の心を魅了させ、好奇心を沸き立たせた。
カレンも無論その中のひとりであり、健一の話にじっと耳を傾けていた。
健一 「……それで、僕はソーンを見て回ることにしたんです。ああ、すみません。何だか僕ばかりが話しているようですね」
団員 「そんなことないよ、ケンイチの話してくれる物語はとっても面白いよ。もっと聞きたい位だねっ」
健一 「でも、折角こうして来て下さっているのですし……旅団の皆様のお話を聞いておきたいです。そうだ……先日教えて頂いたクレモナーら村で、無事に弦を手に入れることが出来ましたよ」
団員 「へぇ、よかったじゃない。さすがは楽器の都、楽器に関するものなら何でもそろってるってわけか」
カレン「何でも……とまではいかないでしょうけど、確かにあそこは様々な楽器がそろっているようですね。私もこの笛を買いました。なかなかの出来だとは思いませんか?」
そう言いながらカレンは懐から銀製の笛を取り出した。
軽く唇にあて吹き始めると、涼やかで清らかな音色が響き渡りだす。
曲を聞いているうちに、健一は無意識のうちに指が動き、気がつけば琴を奏でていた。
カレンの笛の音と健一の琴の音が折り重なり、澄んだ音色は深みのある合奏へと変わっていく。
一通り演奏が終わると同時に盛大な拍手が2人に贈られる。
団員 「本当にお2人はすごい演奏家だよ。楽器達も2人に使われて幸せだろうね」
カレン「そうであるなら、私もとても嬉しいです」
そう言ってカレンはにこりと微笑んだ。
●防具の注文
団員 「防具……ねぇ。うーん、どういうのが良いの?」
健一 「軽くて丈夫なもので、動きを束縛しない物が最適ですね。何かありますでしょうか?」
もし、あれば売って欲しい。情報だけでも有り難い、と健一は言葉を添えた。
団員はしばし考えた後、数日待って欲しいと返事をした。
団員 「今回はバラの引き取りがあったので、殆ど品を品を持ってきてないんだ。仲間のところにシフール便でこの店に持ってくるよう呼びつけるから、それまで待ってもらえるかな」
健一 「わかりました。お待ちします」
店長 「到着次第、連絡入れるね。連絡先教えてくれる?」
数日後、シェリルの店へ品物が到着しているとの連絡を受けた健一は早速店へと急いだ。
受け取った品は薄手の革鎧だ。革鎧といっても関節部分にしか革は貼られておらず、胸当の部分に金属が埋め込まれており、つなぎ目は銀に似た素材の網が織り込まれている。
健一 「これは……もしかして……」
ソーンの世界でも知る人が少ないゴーレム技術。その花形のひとつで、戦場の華ともうたわれるゴーレムがある。
名をアザレアと言い、精霊力制御による高い機動力と戦闘能力を誇るとうたわれている。
そのアザレアに使用されている金属「プラチナ」が使用されているのだ。
本来、門外不出であるゴーレム素材を使用されている……相当な値が張るのでは、と健一は背筋をぞっとさせた。
健一 「あの……これはおいくらなんでしょうか……」
店主 「ああ、いらないって。何かその鎧ね、持ち主を選ぶらしくって、今まで誰も着ることができなかったんだってさ。で、話を聞いてて……ケンイチなら多分着られると思ったみたいだよ。保証出来ない代わりに、値段はチャラ(無料)。ま、だまされたと思って使ってやってよ」
にこりと微笑む彼女に健一は曖昧な返事をかえす。
健一 「……では、折角ですので、有り難く頂きます」
店主 「この間の話面白かったよ。またよろしくね♪ 今度は……蜂蜜とクリームが一杯のシフォンケーキがいいかなー……」
健一 「分かりました。また美味しいお茶を頂きに参ります」
そう言って健一は穏やかに微笑んだ。
文章執筆:谷口
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