<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


答えのない、問い

「おう、ここだここだ。遠慮せず入れ」
「お邪魔します」
 無駄に長い螺旋階段を降りた先にある小部屋に通された青年が、ほんの少し目を見張る。
『久しぶりに誰も邪魔しない部屋でゆっくり話さねえか?』
 家族が皆留守だから、特別だぞー、と言われつつ、オーマ・シュヴァルツに通されたのが、ソーンでは見た事のない調度で整えられた部屋。
「――この部屋の中にあるのは…ソーン世界には無い品ばかりのようですね」
 アイラス・サーリアスはそう言って、ちらと振り返ってオーマを見た。
「おう。俺様の元いた世界に少しばかり似せてある」
 してみると、この辺りは全て具現で作られたものなのだろうか。
 見た事の無い調度…と言っても、アイラスの目にはむしろ慣れ親しんだ光景かもしれない。
「感傷の品々というところですか」
「ま、そんなとこだ。おうそうそう。そこのテーブルで茶でも飲みつつ、今後の同盟員増加についての企画を練りたいと思って呼んだんだった。ここなら誰も存在を知らねえから、遠慮なく言いたい事が言えるぞ。途中で誰かが来る気遣いもいらねえしな」
「やっぱり、階段を降りてきただけ…では、無いんですね」
 アイラスの言葉に頷き、ここは正確にはソーンの世界の中ではなく、異界と異界の隙間を一部だけ囲んで作っているのだとオーマが言う。
「だから増改築お手の物、ってな。さあてそれじゃあ始めるか。せっかく冷やしていた飲み物がぬるくなっちまう」
 今朝焼いたばかりだと言う素っ気無い味の柔らかクッキーにジャムを乗せ、その側には透明度の高いアイスティーを置いて、2人は向かい合って今後の計画を話し始めた。…とはいえ、主に喋っているのはオーマで、アイラスは時折鋭い指摘を飛ばしたり、相槌を打つ事が多かったのだが。
「――話してたら喉が渇いて来たな。む、もう茶がねえか。お代わりを作って来るか」
「それじゃあ、今度は僕が淹れて来ましょう。オーマさんにばかりやらせるのも何ですから」
「そうか?そりゃありがたいが。まあ動かなくていいっつうなら、ここで俺様色のティーを具現してみてもいいが」
「お断りします」
 にっこりと眼鏡の向こうの目を細めつつアイラスが微笑んで即答する。
「むぅ。それは残念だ」
「場所はいつもの所ですよね。それじゃ、行って来ます」
「おう、いってらっしゃ〜〜い」
 立ち上がるアイラスを、ひらひらと手を振るオーマがにこにこ顔で見送った。

*****

「?」
 とんとんと調子良く階段を上がっていたアイラスがふと足を止めて、上を見上げる。
「…随分上がった気がするんですけど…気のせいですかね」
 同じような光景だからか、それとも何かの作用なのか、階段は一向に途切れる気配を見せなかった。
 気を取り直してまた上へ上がって行く――その時、
「――!?」
 背中と首筋に氷が突き立ったような感覚を感じて振り返った。
 そこには誰もいない…いる筈が無いのだが、その代わり、
「扉…ですか」
 通り過ぎた時には無かった扉が、そこに置かれていた。
 冷気が漂って来そうな何かの気配に、自然身体が構えてしまう。
 それなのに。
 その扉を目にした途端、アイラスの手は自らの意思を裏切り、ノブを掴んで扉を開けていた。
 中は、細い廊下。その奥に複雑な模様が彫られたアンティーク調の扉が見える。
 ――足が、その扉へ向かっていた。ぎくしゃくと、操り人形のように。
 部屋の中は、見た事の無い品で溢れていた。アイラスには読めない文字が羅列しているものがほとんどで、オーマの先程の言葉からすれば、ここが恐らく彼に取って大事な場所なのだと分かる。
「これは、出たほうが良さそうですね――」
 そう言いつつ踵を返そうとしたアイラスの目は、出口には向かっていなかった。
 部屋の真ん中にはプロジェクターが置かれ、目の前のスクリーンに映像を映し出している。そのスクリーンに意図しないままに釘付けになっていたのだ。
『何やってんだよ、おまえらは全くー』
 若々しい、だが聞き覚えのある声がスクリーンから聞こえて来た。見れば、銀髪の青年姿になっているオーマが、スクリーンの向こうからこちらを見て笑っている。
『えーと…げ、激写?』
 聞き覚えがあるような、ないような声がそれに続く。誰かがオーマを撮影しているらしい。
 そこからすぐに画面が切り替わって、今度は見た事があるような2人が機嫌良さそうに映っているのが見えた。――と言っても、何か違和感のある2人だったが。
 今度はオーマが撮影しているらしく、ソファに座っている2人にポーズの注文を付けている声が響いて来た。
「…これ…過去の映像でしょうか」
 目線や会話に何か違和感がある。おまけに、3人目の青年の姿や声は、今のものと随分違う。オーマが2人を呼ぶ名前を聞けば、「ああやっぱり」と思うのだが。
 ザ…ザ―――――――
 突如、スクリーンの上を砂嵐が駆け巡った。何の脈絡も無くぷつりと途切れた映像に立ち尽くしていると、再び砂嵐の中から映像が浮かび上がって来る。
「…………これは…」
 だが。
 そこには、先程までのほんわかした気配など微塵も無く。
 凄まじいまでの暴力――いや、『戦争』の映像が、流れていた。
 誰が撮影しているのか、その映像は戦いの残酷さをより強調して見せようとしているとしか思えない映し方で、都市の中を舐めるように映し出している。
 怒号に混じって聞こえて来る悲鳴、半壊した建物の中から覗く、力なく垂れている腕、そこここで起こる爆撃と――人間業と思えない速度で動き回り、何も無い手から武器を生み出してはそれに対抗する人の姿。
 アイラスは知らなかったが、これは嘗てオーマがいた世界の悲劇。
 異端殲滅戦争の、一部始終だった。

 ――ゆら…。

 スクリーンが波立つのに気付いたのは、その映像にすっかり引き込まれてしまった後のこと。いや、それは気付いたとは言えないかもしれない。
 目を離せない映像を映しているスクリーンが波立った事に、いつもなら警戒するだろうアイラスが、何のリアクションもしないままだったのだから。
 そして――
 数瞬後には、何事もなかったかのように戦争の映像を流し続ける機械があり、その場に立っていたアイラスの姿はその小さな部屋から消え去っていた。

*****

 ばたんっ、と勢い良く扉が開き、オーマが飛び込んで来る。
「――っっ!?」
 オーマにとって思い出深い品が収められているその部屋は、今は異質な具現波動で膨れ上がっていた。その力の大元は、オーマが過去の思い出を映していたスクリーンの中から。
 思い出と言うにはまだ生々しすぎる記憶の、異端殲滅戦争の映像を映し出して。
「誰がこんな馬鹿な真似を――っ、アイラス!?」
 異質な気に気付いて、慌てて来た時にはもう遅かった。
 アイラスの気配がこの部屋でぷつんと途切れているのは、下から駆け上がってくる最中に既に分かっていたのだが…出現させるつもりの無かった部屋の扉が勝手に出現した事には奇妙な苛立ちを感じずにはいられなかった。
 その理由も今なら分かる。
 ――オーマの具現波動に、他の誰かの具現波動が侵食し、勝手に操られていたのだから。
 その中に、アイラスが取り込まれてしまったものらしい。
 まさか、具現との融合はしていないと思いたいが…。
 躊躇する暇など無い。他の手段を講じる時間的猶予など残されている訳が無い。
「…それに、こりゃあ俺様の仕事だからな…っ」
 他人の具現波動に身をひたす…そんな経験は皆無のオーマだったが、ふっとひとつ息を吐き出しただけで、波動の中心――スクリーンの中へと身を躍らせて行った。

*****

 ――地獄絵図――
 そう言う言葉が当てはまるとしたら、こんな光景だろうと思われるものが目前に広がっていた。
 オーマ自身、当時ありとあらゆる人間――戦争直前までは親しく声をかけて来た人々に恐怖の目で睨まれながら攻撃を受けた事を思い出す。
 その傷は、決して浅くはない。恐らく軽く抉られただけでも、その傷口からは痛みを伴った血が溢れ出してしまうのだろう。
「追体験させるとは、いい度胸してるじゃねえかよ…」
 匂いも、雰囲気もその当時そのまま。だが、そこら中に広がっている具現波動を思えば、これが『違う』ものだと言う事も分かる。
 つまり、これはオーマを知る具現能力者が、わざわざこの場所を選んでオーマを『呼んだ』と言う事。
 しかもオーマ1人ではなく…。
「オーマさん!」
 声と、軽い足音。
 目を向けるまでも無い。この世界に一足先に飲み込まれたアイラスが、後を追って来たオーマを見つけ駆け寄ってきたものらしい。
「よう、アイラス。無事だったか」
「なんとか。…ここは一体?」
「俺が元いた場所さ。それも、一番嫌な過去の場所だ」
 この戦いに巻き込まれ、死んでいってしまった者たちの事を思うと、顔をしかめずにはいられない。
 アイラスが気遣うようにオーマを見上げ、そして、
「…オーマさん」
 囲まれています、と、囁くように告げた。
「ああ。来てやがるな」
 ざわり、ざわり、と。目に見えない部分で空気が動くのが感じ取れ、『それ』が姿を現した。
 目をらんらんと光らせ、武器を具現させ、あるいは自らの身体の一部を武器化した異端たちと、手に手に思い思いの武器を持ち、強張った顔の者が多い人間。中には特注のバトルスーツに身を固めた軍関係者の姿もちらほら見える。
 その中から、すい、と現れる1人の青年。随分と表情が豊かになったからか、にこやかな笑みを浮かべたままで、2人を囲む円陣の中へと足を踏み入れる。
「オーマ。何故君はそこにいる?」
 艶々した長い黒髪は、ゆうるりと束ねて、歩くたびに左右に揺れる。
「そりゃあ、おまえが呼んだからだろう?」
 対するオーマの目は、ゆっくりと近寄ってくる男を捕らえて離さない。
「…君は『異端』だよ。人間の側にいていい存在じゃない」
 その軽口に応えることなく、また一歩近づく『黒の男』。
「オーマさん、彼が?」
「ああ」
 オーマの仲間からも聞いていたのだろう、それを確かめるようにアイラスが呟くと、オーマが小さく頷いた。
「人間と異端は戦わなければならない。お互いがお互いを滅ぼすまで――違うかい?」
 ざっ、と。
 オーマの背後には、殺意をあらわにした異端たち。アイラスの後ろには、人間が並ぶ。
「おいおい。今更繰り返させる気かよ」
「何を言っているんだい?繰り返すも何も、『彼ら』には今日の出来事だよ」
 だから――
「君たちも戦わないとね」
 おおおおおおっっっっ………!!!
 その言葉が引き金だったのか、異端と人が両端からどっと中央――オーマとアイラスの2人に向かって、雄叫びを上げつつ突進して来た。

*****

「やるねえ」
 その場にいた人数が半分程まで減った頃、ぱちぱちと気の無い拍手をした男が、今だ中央にいる2人を笑顔で眺めている。
 ――戦いが始まったと同時に2人が取った行動は同じものだった。
 すなわち――くるりと向きを変え、背中合わせになりながら襲い掛かってくる『同族』の攻撃を受け始めたのだ。隙あらば殺すのではなく、気絶させて戦力を削ぎつつ。
「だけど、駄目だよそれじゃ。同族殺しすらしないでこの場を収めようなんて。何故なら――この世界の全てが二分して戦っているんだから、ね」
 滑らかな声が、時折隠しようの無い敵意を見せつつ2人の耳へ響いてくる。それは、この戦いの中に於いてもかき消される事無く。
「…おまえの、目的は何なんだ。こんな、馬鹿なことまでして」
「目的…」
 ふと、男がその言葉に立ち止まる。
「なんだろうな。目的…ああ、そうだそうだ、思い出した」
 再びにこりと笑顔を浮かべる男。
「君たちに戦ってもらいたかったんだ」
「だから、その理由を聞いているんじゃねえか」
「――――理由?」
 すぅ…と、男が目を細めた。それだけで、笑顔のままだと言うのに、すっと周囲が冷える。
「そうだね。強いて言えば…私の存在理由を知るために、かな」
「存在理由?」
 その言葉に先に反応したのは、アイラスだった。渋い顔をするオーマをちらと見、次々に襲い掛かる人々をあしらいながら、アイラスが不思議そうな声を上げる。
「君たちの争いによって私は生を受けた。と言う事は、異端と人間が争わなければ私の存在意義が無くなってしまう――違うかな」
「それは違う」
 オーマがぶんぶんと腕と首を振りながら即答する。
「おまえさん、それは違う。生まれるまでの過程がどうあれ、今のおまえには理由付けなんか必要ない。そうじゃないのか」
「オーマさん――また来ますよ」
 おう、と答えて異端たちの群れに飛び込みつつ、オーマが男へと視線を向ける。
「…ヴァンサーが、VRSが、戦闘のためだけに存在していると言うのに?」
 駄目だよそんな答えじゃ、と男が笑う。
「だったら見せてごらんよ。君なりの『答え』を」
 そう言うなり、男は人ごみの中に消えていく。
「答えが見つからなければ、ずっとここで戦っているといい。何、たかだか数千万のいきものたちがいるだけだ、そんなに大変なことじゃないさ」
 そんな言葉を残して。
「――全員倒したとしても、帰れなければ意味がないんですけどねえ」
 まだ息が切れるには少し余裕のあるアイラスがそんな事を言い、オーマがふっと笑った。
「違いねえな。そして俺様は長い間無断で家を空けたっつうんでなますにされちまうんだな」
 なあ、とオーマがアイラスに、気軽な調子で声をかける。
 ――再び、ぴたりと背中合わせになる2人の目前へとじりじり迫って来る人の群れ。
「…アイラス。おまえさんの力を貸してくれるか」
「ええ、それはいくらでも貸しますけど…何をするんですか?」
「ようやく分かったんだが、ここは俺の部屋と同じなんだ。異空間を好きなように切り抜いて具現で包んでしまえば、部屋になるだろ」
「オーマさんの部屋と同じ?」
 そう言われてみれば、今までは戦闘の方に神経を向けていたせいで分かりにくかったが、オーマの言葉通り、今日通された部屋と同じ雰囲気だと言う事がアイラスにも感じられたらしい。
「こんな大きな世界を、具現化してしまうんですか」
「なあに。王都を丸々コピーしてみせるやつもいるんだ。まして、『あいつ』なら――その位はお手の物だろうよ」
 で、だ。
「ここが具現で出来た世界なら、もしかしたら抜けられるかもしれねえ。だから、手を貸してくれ。――俺の具現波動におまえさんの『想い』を乗せる。出来るかどうかは分からねえが」
「…僕の魔力も追加しましょうか。瞬間移動の魔法は使えませんけれど、エルザードのある場所へ接点を繋ぐ事なら、出来るかもしれません」
「おう、宜しく頼むぜ」
 そう言うと、オーマがにやりと笑って、赤い瞳を煌かせる。それは、まるで燃えるような輝きを揺らめかせ…ざわざわと髪が風も無いのに蠢いて行く。
「………」
 魔力の素養はあったものの、結果的には自らの身体を強化する事で魔力回路を分断したアイラスが、目を細めながら口の中でぶつぶつと何やら呟き出した。
 オーマが赤とするなら、アイラスは青。背中合わせに立つ2人の身体から、勢い良く『気』が溢れ出す。
 お…おお…お…
 その『揺らぎ』に触れた所から、空気に溶けるように人々が消えていくのを不思議そうに見るアイラス。
「俺たちのものと、ヤツの気が混じっているからな。そのうち、人だけじゃねえ…この世界までが消えていく。それまでに戻れなかったら――」
 まあ、そん時は運が無かったと諦めてくれ――そう言ってオーマがにやりと笑う。
「……。駄目ですよ、オーマさん。心中するならもっと大事な人がいるでしょう?」
「わははは。何言ってやがる。そんな大事な連中となんざ勿体無くて出来やしねえよ」
 どろりと、街の一部が溶け出すのを見ながら、オーマはいつの間にか変わっていた銀色の髪の姿で大笑いした。それは、アイラスが見た映像の中の姿そのままで。
 汗が吹き出すのにも構わず、嵐の如き力が都市の中を吹き荒れる。
 それはまさに、殲滅戦争が終わる間際の、互いに自暴自棄になって世界が壊れる程の攻撃を繰り返していたあの日と良く似た光景だった。
「駄目じゃないか」
 ゆらり、と幻影のように自らの姿を揺らしながら、どこから出て来たのか黒一色に染まった男が現れる。
「せっかく、ここまで作り上げたのに――勿体ないなあ」
 玩具が壊れた、とでも言うようなあっさりとした物言い。先程の殺気を持った者とはまるで別人のような様相に、オーマがふと言葉をかける。
「なあ。…おまえさん。もしかして、本当は――」
「オーマさん、見つけました!病院前の路上に接点を繋ぎます…急いで下さい、僕の力ではほんの少ししか繋いでいられません」
「ちぃ。しょうがねえ」
 そちらへと全身の力を振り絞ったオーマが、そんな中でも無理やり首と手を男へと向けて、
「――来いっ」
 叫びながら、手を差し伸べた。
 一瞬。本当に一瞬、男が戸惑いの表情を浮かべる。

 そして。

「本当に、君は――」
 何かを言いかけた次の瞬間、世界が反転した。
 アイラスとオーマ、2人がしがみ付いた姿のまま、何処とも言えない世界へ投げ飛ばされたような、そんな衝撃が襲う。
 男は最後に、オーマの手に手を伸ばしただろうか。
 それは、もしそうだったとしても、もう見る事は出来なかった。

*****

「ふーい」
「…目が回ります」
 病院前の路地でへたり込む男2人。
 中でもオーマは、すっかり戻ってしまった黒髪をわしわし掻き上げながらも、ごろんと大の字に横たわっている。
「オーマさん。流石にそれは行儀悪いですよ。やるなら中に入ってからにしましょう」
「おーう…そうだ、な」
 よおっこいせっ、と腹に響く掛け声と共にぐりんと起き上がったオーマが、アイラスに支えられるようにして病院へと戻って行く。
 中から人の声が聞こえるのをみると、どうやら何人かは出先から戻ってきているようで、そいつらのためにお茶会でも開くかー、とアイラスに語りかけながら、扉を開ける。

『―――――』

「!?」
「…どうしました、オーマさん」
 何かが耳の中に言葉を落したような、そんな気がして振り返るのを、アイラスが不思議そうに訊ね、
「いや、なんでもねえ」
 それだけを答えると、首を振りながら中へと入っていった。

 くす…。
 閉まった扉を見ながら微笑し、踵を返して路地裏の闇へ消えていく1人の男の姿に気付く事無く。


-END-