<PCクエストノベル(2人)>
一角獣の窟〜再挑戦のユニコーン探し
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【冒険者一覧】 整理番号 / 名前 / クラス
2241 / ウィング=バードヒル / 空の人
2560 / 鳥塚 翼 / 中学生
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きっかけは、ごくごく些細なことだった。
ウィング=バードヒルと鳥塚翼は、二人仲良く買い物などをしながら街を散歩していたのだ。
そんな折、広場に立っていた市で偶然見つけた小さな置物。それは、ユニコーンを象った可愛らしい彫刻だった。
その置物の前でピタリと足を止めたウィングに、翼はこくんと首を傾げた。
翼「どうしたの?」
ゆっくりとした口調の問いかけを聞いて、ウィングはひょいとその場にしゃがみ込んでその彫刻との距離を縮めた。
にこりと楽しそうに笑って、その彫刻を指でさす。
ウィング「前にね、ユニコーンを探しに行った事があるの」
その時は結局ユニコーンを見つけることはできなかったけれど……。
少しだけ残念そうな声音を響かせたウィングの様子をじっと見つめて、その次の瞬間。
翼「もう一度行ってみたら?」
翼はなんともあっけらかんとそう提案した。
言われてみればそれもそうだ。ウィングはこくこくと勢いよく頷いて、
ウィング「……うん、もう一度行ってみたい!」
元気いっぱいに答えたウィングに翼も笑顔で返し、二人は一角獣の窟に行くことを決めたのであった。
■ □ ■ □ ■
二人がやってきたのは、一角獣の窟から一番近い場所にある村である。
一角獣の窟はエルフの集落と繋がっているとか、今回二人の目的であるユニコーンがいる湖があるとか。
様々な噂が飛び交っている自然窟で、そのせいか探索者もあとをたたない。
ウィング「今度は、もうちょっとちゃんと情報を集めようと思うんだ」
以前に向かった時は、最初に噂を聞いたのが窟から少々離れた街だったこともあり、そこで詳しい話を聞くことができなかった。しかもウィングは逸る心のそのままに、近くの村をほとんど素通りして窟に向かってしまったのだ。
これではしっかり情報収集ができなかったのも当然だ。今回は学習効果を発揮して、先に村で話を聞いてまわることにしたのである。
村人A「ああ、一角獣の窟の冒険者さんね。情報……なあ……」
村人B「あの奥にユニコーンがいるって話だろ? でもまだ誰も見たことがないって」
村人C「一応、冒険者さんたちが探索したとこまでくらいの地図ならあるぜ」
誰も会えていないのだし、過大な期待をするものではないのだろうが……。
収獲は、想像以上に少なかった。唯一最大の収獲といえば、探索済み部分の地図――ただこれも、完璧というわけではなさそうだが――が買えたくらいか。
翼「あんまり、みんな、知らないんですねえ」
ウィング「……そうみたいですねえ」
ぐるりと村を一周して、それから冒険者が多そうな酒場にも行ってみたが、酒場の方がかえって情報は少なかった。
一攫千金狙いの冒険者からしてみれば、同じくユニコーン発見を目指す翼とウィングはライバルでしかないから、仕方がないことか。
ウィング「どうしましょう?」
翼「うーん……これ以上探しまわっても、情報、なさそうですね」
言葉の内容のわりにはのんきな口調で告げた翼に、ウィングもこくりと頷いた。
ウィング「それじゃあ、明日朝イチで出発で良ーい?」
翼「うん。それで良いと思います〜」
にこりと。
方針を決めた二人は互いに笑顔を交し合い、その日は村の宿で眠りについた。
■ □ ■ □ ■
翌朝早く、二人は一角獣の窟の入口の前へとやって来ていた。
翼にとっては初の。ウィングにとっては二度目の、ユニコーン探索だ。
ウィング「がんばりましょーっ!」
翼「はぁいっ!」
端から聞いていたら妙に気が抜けそうな気合をいれて、二人は意気揚々と洞窟の中へと足を踏み込んだ。
ウィングの手にはフランベルジュ。翼の手には何故かテニスラケット。
奥へと進む足取りに迷いはない。
前回ウィングが到達した地底湖までは、二人はしごくあっさりと辿り着いた。
道が判明していたこともあるけれど、人数が増えたことでモンスターの撃退も容易になったおかげであった。
ウィング「ここも湖だけど、ここは、ちょっと、違うような気がします」
翼「広いけど、奥の方はよく見えないですねえ」
たいまつを持って来てはいるけれど、二人の周囲を照らすのがやっとの光では、とてもとても湖の全てを見渡すことなどできなかった。
翼「それじゃあ、えーっと……」
湖を越えるには泳ぐか飛ぶかする必要がある。
翼は飛びあがるのは得意だけれど、それでもさすがに、この湖を越えて行くのは少々無理がありそうだった。
ウィング「うーん……飛んでいけるかなあ?」
ウィングひとりならばまったく問題はないが、翼を引き連れて飛ぶのは……できないことはないだろうが、長時間は難しそうだ。
翼「道、探してみましょうか」
ウィング「その方が良いかも」
こうして結局、ウィングは空中から、翼は地道に湖周辺を歩きまわり、先に進む道を探すこととなった。
湖は広く、洞窟の幅ギリギリに広がってはいたけれど、途中途切れがちではあるものの、なんとか歩けそうな道を発見することには成功した。
ウィング「このくらいの距離なら、飛べるかな」
水を挟んで十数メートル先に、土が顔を出している。
翼「だぁいじょうぶですよぉ。このくらいならひとっとびできるから」
悩み顔を見えたウィングに、翼はぱっと明るく笑って見せた。
ほんの少しだけ助走をつけて、勢いよく地面を蹴る。
天井が高いのが幸いだった。実は翼、人並外れたジャンプ力を持っていて、二階建ての建物くらいなら軽く飛び越せてしまうのだ。
高さがあればその分飛距離も伸びる。
普通の人間であれば難しい距離を難なく飛び越し、翼はのほほんと穏やかな笑顔を浮かべた。
翼「ね。飛べたでしょう?」
ウィング「本当、すごーいっ」
翼の隣に降り立ったウィングは、翼を腕に変化させ、ぱちぱちと感心の拍手を送る。
こうして広い湖を渡りきった二人は、さらに奥へ奥へと足を進めた。
現れるモンスターを魔法とフランベルジュとラケットで叩き落として、先へと進む。
ウィング「どのくらいの奥に行ったらユニコーン、いると思う?」
この状況下で情報のない想像などあまり意味はないのだけれど、もしかしたら会えるかもしれないというウキウキ感で胸を膨らませ、ウィングが楽しそうにそう告げた。
対する翼もやはり楽しそうに前を見つめて考え込む仕草を見せた。
翼「やっぱり、一番下の方かなあ?」
根拠はないが、今まで見つかっていないと言うのなら、それだけ見つかりにくい場所にいると言うことだろう。
奥へ奥へと向かっていた二人は、ふいに、暗闇の中に光を見つけて立ち止まった。
ウィング「……なんだろう、あれ……」
翼「もしかして、噂のエルフの集落……とか?」
顔を見合わせて呟いた二人は、次の瞬間には元気にその場を駆け出した。
その、光の真下で。
予想外の正体に目を丸くする。
暗い所で、下へ下へと降りてきたつもりであったが、いつのまにやら登っていたのか。それとも地形の問題で外の明かりが入ってくるのか。
どちらなのかはわからないが、洞窟の天井近くに空いた小さな穴。
そこから、どうも、太陽の光が漏れ出てきているようなのだ。
暗いくらい洞窟の一角に、細く差しこんでくる光は、見慣れた太陽の光であるはずなのに。それとはまったく違うもののように見えた。
まるで、天から降りる一筋の道のよう。
二人はしばしその明かりに魅入っていたが、そろそろ陽が沈む時刻だったのだろうか。
光は、ほんの数分でその姿を消してしまった。
ウィング「……」
翼「……」
結局、ユニコーンには会えなかったけれど。
だけど二人は、幻想的な光景と出会えた事を喜び合い、その日の探索を終えることにしたのであった。
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