＜聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記＞
「兎耳人間育成記」（前編）
------＜オープニング＞--------------------------------------
「よっ！久しぶりルディア。今日もかわいいね」
「その声は…やっぱりレンジさん！」
白山羊亭の入り口に立ち、片手を挙げてにこやかに笑う青年。その姿を見てルディアがあっと声をあげる。
「まだ開店の準備ができていないんです。もう少し待っていただけますか？」
ポットを持ったままの姿勢でレンジにそう告げると、ルディアは店の奥に戻ろうとする、が。
「今日は面白い、というかほのぼのした依頼があってね」
飲食しに来たわけじゃないんだよ、とレンジは笑顔をうかべて、一つの箱を取り出した。
依頼、と聞いてルディアはポットを所定の位置におろす。
「依頼ですか？その箱に何か関係があるみたいですね」
「ビンゴ！流石ルディアだな」
ルディアの言葉に大げさに反応して見せたレンジは、箱の蓋をぱかっと開けると、中を彼女に見せた。
「これは……兎、ですか？」
「ああ、兎だよ」
箱の中には小さな兎がちょこんと入り、気持ち良さそうに寝ていた。
「この兎がどうかしたんですか？」
「ああ、もちろん。この兎、ただの兎じゃないんだよね、これが」
「ただの兎じゃない？」
レンジはよくぞ聞いてくれました、とばかりにぴっと人差し指を立てた。
「この兎、愛情を持って育てるとなんと！兎耳のついた人間の子供になるんだ」
「ええ！？」
「つまり今回の依頼はこういうこと。この兎を良い子に育てて、月に帰してあげる。これが目標だ。誰か育ててくれそうな人、いないかね？」
【１】
「ようルディア。昼飯食いに来たぜ」
「……こんにちは」
頭上に輝く太陽が燦々と光を降らせる中、珍しい二人組みが白山羊亭を訪れていた。
「こんにちはオーマさん、サモンさん」
両手にランチプレートを持ったまま、ルディアは元気の良い笑みをうかべて言った。
「今忙しくて案内ができないので……すみませんが空いている席に座っていただけますか？」
「おう！そうさせてもらうぜ。そうだねぇ……お！あの辺りが空いてるな」
店内を見回したオーマは、窓際の二人席が空いているのをみつけるとサモンを伴って席につこうとした。が……
「……あ」
「どうかしたか？」
サモンが小さく声をあげたのを聞き取り、振り向く。
「兎だ」
「兎？」
サモンの視線の先には……小さな箱に入った、白くて小さなウサギがいた。まだ生まれたばかり、といったところだろうか？サモンの手におさまってしまう程である。
兎をじーっと見つめるサモンの様子をオーマは静かに見守っていたが、ふと視線を感じて振り向いた。すると……そこには一人の青年が笑顔で立っていた。
「あの兎に興味がある？」
「お？あの兎の持ち主はお前さんか？」
「そうだよ」
青年はオーマにそう答えると、すたすたと歩いていき、兎の箱を手に取って戻ってきた。
「立ち話もなんだし、座って話そうか。あの空いてる席でね」
青年は先程オーマが行こうとした席を指さし、二人に向かってにっこりと笑みをうかべた。
「座って話すぐらいだ。何かあるんだろ？その兎に」
「ピンポーン！当たり」
二人が席につき、青年がどこからか椅子を持ってきて座ると、オーマが早速話を切り出す。
「まず話をする前に自己紹介だ。俺はアレクトル・レンジ。レンジと呼んでくれ」
「俺はオーマ。こっちが俺のプリティーキュート☆な娘のサモンだ」
「……よろしく」
にっと笑みをうかべて言うオーマに、サモンは不機嫌そうな表情をうかべたが……ぼそりとそれだけ呟いた。
「オーマにサモンか。こちらこそよろしく。じゃあ早速本題だ。この兎、二人で育ててくれないか？」
「随分ストレートに来たねぇ」
「まあね。回りくどいのは好きじゃないし」
ぽんと言われた言葉に、オーマは笑みをうかべながらレンジを見た。
「お前さんはこいつを育てようと思わないのかい？」
「俺が？」
言われたことに驚き、レンジはオーマを見た。
「ははは、訊かれると思って無かったよ。そうだなぁ〜俺が育ててもいいんだが、目標を達成できるか怪しいからね」
「…目標？」
箱に入った兎をそっと撫でながら、サモンはレンジに視線を移す。
「ああ。この兎には目標があるんだ。良い子になって月に帰るっていう目標がね」
「……月に……？」
「良い『子』になって月に帰るっつーと……そいつぁまさか」
レンジの言葉にサモンは不思議そうな顔で兎をみつめていたが……二人の会話を聞いていたオーマは何かピンときたようだ。
オーマの発言にレンジは楽しそうに笑みをうかべると、一つ頷いてみせた。
「多分オーマの予想通りだ。この兎は愛情を持って育てると兎耳を持った人間の子供になるんだ」
「……」
レンジの発言にサモンは兎を見て、レンジを見て、もう一度兎を見て……そのまま兎を凝視する。表情には出ていないが、信じられないと言いたそうである。
「で、どう？オーマ、サモン。この兎育てて見る気無い？」
にっこりと笑顔をうかべ、レンジはオーマとサモンに問いかけた。
【２】
「娘と一緒に子育てってぇのはなかなか新鮮だねぇ」
「……」
予定通り白山羊亭で昼食をとった二人は、小さな箱を手に、真っ直ぐ自宅に戻っていた。オーマはどこかうきうきしながら、サモンはそんな父の姿を見て何か言いたげにしながら。
家に着きサモンはそっと箱を開けると、すやすやと眠る兎を見つめた。どうやら安心して寝ているらしい、起きる様子はみられない。
椅子に座り、じーっと兎を見ている娘の姿にオーマは自然と笑みをうかべると、サモンの横から兎を眺めた。
「名前をつけてやらねぇとな」
「……うん」
珍しく真面目な様子の父に、サモンは少々驚きつつ頷く。自分の名前をつけてくれるときもこんな様子だったのだろうか……？とぼんやり考えつつ。
そんなサモンの視線を受けながら、オーマはふむ、と腕を組んで考え始めた。
「何がいいかねぇ……お！」
「……？」
あれこれと考えていたオーマであったが、何か閃いたのかサモンに向けて、にっと笑みをうかべた。
「何か……思いついたの？」
「おうよ！マッスルマニア筋三世ってぇのはどうだ？」
「……」
少しでも見直した自分が馬鹿だったのかもしれない……サモンは堂々と言って笑んでいる父を見上げた。悪気はないのだろう、悪気は……だが……。
サモンはすくっと椅子から立つと、オーマの前に行き、そして……
「ぐおっ！？」
問答無用の回し蹴りでオーマを吹っ飛ばした。もちろん、容赦などない。
部屋の隅まで吹っ飛ばされたオーマは一見懲りたかのように見えたが……
「切れの良い回し蹴りだねぇ。一撃で飛ばすたぁ流石桃色プリキュン☆娘だな」
全然効き目が見られない。それどころか嬉々としているような……そんな気配が漂っている。
「マッスルマニア筋三世が駄目ならスパルタン腹筋X……ぐはっ！」
全く懲りていないオーマに次に容赦なく振り下ろされたもの。それは……サモンの踵であった。失敗することなく、脳天に見事にヒットしている。
「……却下」
サモンの放った二発目はかなり強力なものであったらしい……。先程は嬉々とした様子を見せていたオーマであったが、今度は頭を抱えて唸っている。
すっかり呆れたサモンは椅子に座りなおすと、今の騒ぎで目を覚ましてしまった兎の頭をすまなそうに指で撫でる。
「ごめんね……起こしちゃった」
まだ眠たげな、まんまるな瞳をサモンに向けた兎は、不思議そうに彼女を見上げると、すりすりと指に身体をこすりつけた。
気にしないでと言われているような可愛い兎の仕草に、サモンの表情に思わず笑みが零れる。
そんな娘の姿を見たオーマは、こういう表情を俺にもしてくれたらと思いつつ、最初から考えていた名前を言うことにした。
「……ルナリアはどうだ？」
「え……」
兎とコミュニケーションをとっていたサモンの後ろに立つと、オーマは頭を擦りながらぼそりと呟いた。
オーマの提案にサモンは少し驚いたような顔でオーマを見上げた。
「ルナリア……」
小さな兎を見ながら、サモンはぽつりとその名前を繰り返す。ルナリアといえば……ゼノビアに咲く、想いを映し見て贈った者と永久の絆で結ばれると言う伝承のある、偏光色に輝く希少な花……ルベリアのことだ。この花が元はルナリアと呼ばれていたことを、サモンも知っている。
「想いを映し見て繋ぎ行くルベリアのように、俺達の想いを兎へと伝えられればいいと思ってよ」
包容力のある、父親らしい笑みをうかべてサモンを見るオーマ。どうだ？と目が言っている。
そんなオーマに対し、サモンはというと……
「始めからそう言えばいいのに……ね、ルナリア」
どうやらオーマの提案に異存はないようで。少々不機嫌そうな顔をしているが、早速名前を呼んで頭を撫でている。
娘の賛同を得られたオーマは、いつものようににっと笑みをうかべた。
「名前は決定したねぇ。じゃあ次は何色に育てるか決めるだな」
そう言って再度腕を組んで考え出したオーマであったが……その必要はなかったようである。なぜなら……
「……銀色で……女の子がいいな……」
「ん？そういやぁ性別も決めてなかったねぇ」
オーマの発言にサモンがぽつりと自分の希望を述べたから、である。
そんなサモンの発言を聞いて、オーマはそういえばとレンジから言われた事項を思い出した。最初に決めるのは名前、性別、色だと。
「銀色ねぇ……俺としちゃあ悶絶桃色ショッキング親父愛おピンク色☆とかムネドキむふふん大胸筋レインボー色とか……」
サモンの希望色に対し、オーマは自分の希望色をいくつかは言っていこうとした、が。途中まで聞いていたサモンがそれを許さなかった。
椅子に座ったままくるっとオーマの方へ向き直ると、どすっと鈍い音が間髪を入れずに部屋に響き渡った。今回も見事にヒットしたようである。
狙いの的確な正拳突きをくらったオーマは無言でその場にしゃがみこみ……
「蹴りだけじゃなく、拳も切れが良いねぇ……」
腹部を抑えてぐっと指を立てた。娘の成長は親にとって嬉しいものなので。だが……
「……肘もあるけど？」
「……遠慮しとくぜ……」
すっと本気で構えをとった娘の姿に、流石のオーマも危機感を覚えたらしい。狙いを違わずに打ってくるだろうサモンを見て力無くそう言う。
「でもよ、なんで銀色なんだ？」
「……」
「そんな怖ぇ顔しなくてもよ……」
じろりと睨まれたオーマはやれやれと首を振ると、一息ついてから言った。
「まぁ無事に決まったってぇことでよ。ルナリアの飯を用意しねぇとな」
【３】
レンジから兎、ルナリアを預かったその日より二人の奮闘は始まった。
まず始めにルナリアに食事を、と思った二人であったが……。
「プリキュン☆ベイビーラビットってよ、何食うんだ？」
「……知らない」
二人とも兎を飼うのは初めてであり……赤ちゃん兎が何を食べるかなど知る由もなく。急遽図書館へ行き、兎の飼い方についての本を借りてきたり。
「飲み水用の浅い皿ねぇ……どっかにあったと思うんだけどねぇ」
「……食べ物用の皿…必要だよね」
ルナリア用の取り皿を出すために食器棚をひっくり返したり。
「おろし金ってどこ……？」
「ん？そこの引き出しに入ってねぇか？」
「ないよ……」
ルナリアの食事用のりんごを磨り潰すために、なぜか行方不明になっているおろし金を探したり。
「どうやって食べさせるの……？」
「ん？本に載ってねぇか？」
「……」
餌の食べさせ方がわからず、本を読破したり……。
「兎を育てるってぇのはなかなか大変だねぇ……」
「……疲れた」
兎について知らないことだらけの二人は、その日だけで既にくたくたに疲れてしまっていた。だが……
「寝てるね……」
「ああ」
この可愛い寝顔を見れば疲れも和らぐもので、二人は自然と笑みをうかべた。
「じゃあ俺と一緒に……」
「一緒に寝よう……ルナリア」
じゃあ、とオーマがルナリアの入ったバスケットに手を伸ばしたが……サモンの手の方が早かった。
すいっとバスケットを持つと、残されたオーマをそのままに部屋に引き上げてしまった。
「……」
やり場の無くなった手をそのままにしばらく立ち尽くしていたオーマであったが、やれやれと溜息をつくと苦笑をうかべた。
「娘は娘同士仲良くってかね？」
そんなこんなでドタバタの一週間が過ぎ、二週間目に入ろうとした頃……。二人の手つきも慣れたものになっていた。
「ルナリア、飯の時間……？」
飯だぞ、とオーマは手馴れた様子でりんごを磨り潰しながら台所から現れた、が。
「俺の行動が遅いのかねぇ。それともタイミングってぇのが悪いのかねぇ」
そこにルナリアの姿は無く。ルナリアを撫でていたサモンの姿も無い。
自嘲気味にぼそりと呟きつつ、まぁそのうち帰ってくるだろう、とオーマは台所へと戻っていった。
「じゃあ俺は例のものの世話でもするかねぇ」
オーマはフリフリレースのエプロンを外すと、天気の良い、日の当たる庭に出た。
「今日も太陽がまぶしいねぇ。お、今日も元気に育ってるようだな」
プランターに個別に植えてある植物を見て、オーマは満足そうな笑みをうかべた。
「これでこの肥料をやれば終わりだねぇ」
持っていた袋からさらさらと肥料を適量撒くと、よし、と立ち上がった。
「早くルナリアが食べれるようになればいいんだけどねぇ」
独り言を呟きつつ、オーマは夕飯の買い物に行くために家の中へと戻っていった。
「…ただいま」
「お。お帰り」
サモンが帰るころには辺りはすっかり朱色の世界になっていた。
「遅かったねぇ。ん？二人で昼寝でもしてたのか？」
サモンを出迎えたオーマは、娘の頭に草がついているのをみつけてにっと笑った。
「……」
オーマの笑みにサモンは自分の頭に草がついていることに気付かず、そういうところだけは妙に鋭いよな……と思いながらルナリアを降ろしてやる。
「先に風呂入ったらどうだ？沸かしてあるからよ」
「……ああ」
お玉を片手にルナリアを撫でると、オーマは夕飯の続きを用意すべく、台所へと引き上げた。
「夕飯の準備はできてるぜ。ルナリアはまだ寝てるから飯の用意してねぇけどよ」
自分の部屋にバスタオルを置き、居間に戻ったサモンは今日も豪華な食卓を見て、席につき、ばっちり揃えられた食事に手をつけ始めた。
「で、どうだったんだい？ルナリアと外へ出てよ」
サモンの食事が終わったところで、オーマは今日のことを娘へと問いかける。
「草…食べてたよ」
「お、それはすげぇな。りんごじゃなくても食えるようになったってぇことだからねぇ」
ルナリアの体は初めて家に来た時よりかなり成長していた。片手に収まる程度だったものが、両手を使わないと収まらないぐらいの大きさになったのだ。毛も白くてふわふわしていたものからしっかりした白い毛に変わっていた。
自分の話題を出されて気付いたのか、ルナリアはもそもそっと動くと、ぴょこんと耳を立ててバスケットから出てきた。
「きゅ」
サモンの足元に寄って体を擦りつけると、可愛らしい声で一声鳴いた。
「くすぐったいよ……」
足元にいるルナリアを両手で抱き上げると、頭を撫でてやる。
「さぁて、ルナリアの飯を用意しねぇとな。お、もしかしたら……」
「……？」
片付ける食器を手に持ちながらオーマは台所へいつものりんごを取りに行こうとしたが……ふとあることを思いついてにっと笑みをうかべた。
「草を食べたってぇことはだ。あれもいけるかもしれねぇな」
サモンの何か問いたげな視線を受けながら、オーマは台所へ戻ると、庭に出てプランターの中の植物を一つ掘り出した。そして、水洗いをすると、葉っぱの部分も含めて、一口切って味を確かめてから、ルナリアのところへ持っていった。すると……
「それ……何？」
「これか？これはなラブリーキュート☆なルナリアのために作ったドッキリビックリスーパー親父特製銀色ラディッシュだ」
案の定娘の訝しげな視線が皿と自分に注がれていた。
「は……？」
「希望の色にしたければ希望の色の野菜を食べさせろってぇレンジが言うからよ。苦労したぜ、こいつができるまでにな」
「……」
確かに、自分は銀色の兎がいいとは言ったが……と思っているだろうサモンの表情を読み取ると、オーマはにっと笑みをうかべた。
「味の保証はするぜ。さっき試しに食べてみたからねぇ」
「本当に……？」
「おうよ！」
オーマは銀色のラディッシュを荒くスライスして、ルナリアの前へと出す。
自分の前に出された銀色のラディッシュに、ルナリアは少し鼻をひくひくさせて匂いを確かめていたが、大丈夫と判断したのかしゃりっと一口齧った。
「どうだ？ルナリア」
銀色のラディッシュを食べたルナリアを見て、オーマはしゃがんで問いかける。すると……
「きゅ」
一鳴きしてから、しゃりしゃりしゃり……と銀色のラディッシュを食べ始めた。
「お！いい食べっぷりだねぇ」
美味しそうに食べているルナリアを見て、オーマは満足したような笑みをうかべた。
そんな二人の様子を見ていたサモンは、ほっと安堵の息をついた。
そしてルナリアが銀色のラディッシュを食べた次の日。
「お！今日は早起きだねぇ」
いつもなら起こしに行くまで寝ているサモンが居間に現れたのを見て、オーマは皿に目玉焼きを盛り付けながら笑顔で迎える。
「それはいい……それより…ちょっと来て」
「？」
目玉焼きのフライパンを鍋敷きの上に置くと、オーマはサモンに引っ張られるようにして娘の部屋へと連れていかれた。
「……見て」
サモンはオーマを部屋の前に立たせると、扉を開けるように言う。
「見るってぇのは一体……！？」
がちゃり、とサモンの部屋の扉を開け、オーマは部屋の中を見回した。特に異常はない、と言おうとしたそのときである、ベッドの上でもぞもぞと動くものをみつけたのは。
「こいつぁ……ルナリアか？」
後ろにいたサモンを振り返り、オーマは驚いたように問いかける。それに、サモンは無言で頷く。
「起きたら……ここに」
ベッドの上でもぞもぞと動いていたもの、それは……人間の子供の姿になったルナリアであった。耳がちょこんと生え、丸まって寝ている。
オーマはルナリアの姿をよく見ようと部屋のカーテンを開けた。
「バスケットは床にあるってぇと……サモンのベッドまで動けるってぇことか」
「……」
確かに、言われてみればバスケットは倒れ、バスケットに敷いてあった布がサモンのベッドのほうへ伸びたまま床に放置されている。
「と、なるとだ。もう首は座ってて、はいはいができる状態まで育ってるってぇことだねぇ」
嬉しそうに分析するオーマの隣で、サモンは感心したようにルナリアを見た。
「とりあえず寝かせといてやるとするかねぇ。サモン、出しておいた洋服を後で着せてやってくれ」
「……わかった」
オーマは朝食の準備の続きをするために部屋を出ると、にっと笑んだ。
「これからが楽しみだねぇ」
うきうきしながら居間に戻ると、オーマは冷めてしまった目玉焼きを温め直すために台所へと戻っていった。
鳥が機嫌良く朝を告げている。今日も父娘にとって大変な一日になりそうである。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【1953／ オーマ・シュヴァルツ ／ 男性 ／ 39歳 ／ 医者兼ヴァンサー（ガンナー）腹黒副業有り】
【2079 ／ サモン・シュヴァルツ ／ 女性 ／ 13歳 ／ ヴァンサーソサエティ所属ヴァンサー】
【ＮＰＣ ／ ルナリア ／ 女性 ／ １歳 ／ 兎耳人間】
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■ ライター通信 ■
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【ルナリア成長記】
兎耳のある赤ちゃんの状態です。首は座り、はいはいもできるようです。
今のところ好き嫌いも無く、食べることに興味を持っています。
兎耳はまだ白いです。希望の色になるように頑張ってください。
いつもありがとうございます、月波龍です。
個別作品初執筆、ということもあり納品が遅れてしまってすみませんでした。
もし至らない点がありましたらご連絡ください。次回執筆時に参考にさせていただきたいと思います。
楽しんでいただけたようでしたら光栄です。
また次回もよろしくお願いします。
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