<PCクエストノベル(5人)>


++   珍生物の世界   ++

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【冒険者一覧】

 【1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39歳/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
 【1125/リース・エルーシア/女性/17歳/言霊師】
 【1649/アイラス・サーリアス/男性/19歳/フィズィクル・アディプト&腹黒同盟の2番】
 【2403/レニアラ/女性/20歳/竜騎士】
 【2606/ナーディル・K/女性/26歳/吟遊詩人】

【助力探求者】

 なし

【その他登場人物】

 【夏祭り装いの霊魂】×群れ(軍団)
 【夏祭り装いの人面草】×群れ(軍団)
 【伝説の腹黒筋天空人】×???+α

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 感じるんだ。

 確かに 今そこに在るという 意識を。

 感じるんだ。

 確実に 「そこ」に居るのだという――――


オーマ「電波をだな……」
アイラス「電波ですか……それはオーマさんにしか感じ取る事の出来ない特殊な電波でしょうね」
オーマ「なぁに、お前にもその内わかるようになるさ」

 だっはっは、と豪快な笑い声を上げながら、オーマ・シュヴァルツはアイラス・サーリアスの背中を叩き付ける。
 アイラスはその衝撃に耐えながらも、今自身の言うべき事だけはしっかりと口にした。

アイラス「………いえ、あの…それは遠慮しておきたいです」
オーマ「………まぁ、それはその内わかるようになるとしてだな…それでだ、その空中都市で夏祭りが開催されるってぇ話なんだ」
アイラス「夏祭り……ですか。それはいいですねぇ」
オーマ「おう、そうだろ? 皆誘って楽しく華麗に空中都市へ夏祭りと洒落込もうじゃねぇかよ!」

リース「へぇ〜お祭りかぁ…楽しそうだね」

 一人の少女が蝶のような羽の生えた兎に似た生き物「みるく」を両腕に抱えながら、にこっと微笑む。

リース「あたしも一緒に行っていいかな?」
アイラス「おや、リースさんではないですか」
オーマ「おう、リース。こっちは大歓迎だぜ。こういうのは皆でムチムチ楽しく宜しくナニするのが一番だしな」
リース「ホント? ありがとう。よかったね、みるく!」

 リース・エルーシアの腕の中でみるくがみゅう、と小さく鳴き声を上げる。

リース「じゃあ、お洒落してこないとね」
オーマ「おう、まだ時間あっからよ、ちゃちゃっとふりふりっと魅惑の着せ替えターイム☆おピンク筋肉ショーで腹黒ディナーと洒落込もうぜ」
リース「ハハ…もう、やだなぁ。ショーはしないよぉ…」
オーマ「まぁそこは照れなさんなって」

レニアラ「話は聞かせてもらったぞ………私も行こう」

 楽しく会話を弾ませている三人の元に、飛竜に乗って空から舞い降りてきたレニアラがそう声をかけた。

アイラス「レニアラさん……いつの間に聞いてらっしゃったのですか?」
レニアラ「なに、たった今そこで少しばかり……な」

ナーディル「空の上から少しばかり…というのも凄いですね」
アイラス「ナーディルさんまで……」
ナーディル「折角ですし…皆で行きませんか?」

 ナーディルは微かにニヤリと笑みを浮かべると、うふふ…と笑い声を立てる。

オーマ「何かお前等…今宵こそはっつぅ感じでメラメラ怪しい魅惑の桃色☆筋肉も引き攣る暗黒親父も泣いてはのたうつ微笑浮かべちまってんなぁおい?」
レニアラ「そんな事は無い。いつも怪しい微笑を湛えているのはオーマだろう」
ナーディル「うふふ……そうかも知れませんね」

 何やら今宵はこの二人の手によって、何か只事ならぬ事件が引き起こされそうな予感をふつふつと感じさせつつ―――

リース「ねぇ、じゃあ皆で一緒に行こうよ。お祭りはやっぱり大勢の方が楽しいし、ね?」
オーマ「おう、俺もそいつは賛成だがね」
レニアラ「では………そういう事で、決定だな」
ナーディル「はい、決定ですね」

 いつの間にやら話がさくさくと進んでゆく。

アイラス「これは……どうやら、気をつけた方が良さそうですね……」

 かくして一抹の不安を残しつつも、五人は空中都市へと向かう準備を始めたのであった。




::   大歓迎   ::


 彼の男は言う「空中都市は現存する」と―――

 嘗て偉大なる大空を漂っていた空中都市は、多くの謎を今尚も残しながら、湖底に身を潜めていた。
 空中都市の全てが水没し、その存在は伝説化され、語り継がれている―――そんな空中都市の中で、今尚も浮遊し続けるものが存在するというのだ。
 そして、彼の男は言う。現存するその都市の名は―――【伝説の腹黒筋天空人空中都市★】と。

オーマ「完全燃焼☆踊り猛り狂う我が腹黒筋肉☆☆★MAXきな臭い嬢ちゃん従え今日もゆくゆく桃色親父の花道よ〜」

 彼の男、只今トリップ中☆

リース「オーマ、何だか御機嫌だね。どうしたの?」
レニアラ「………ふっ。大方奥方の調教でも受けて来たのだろう」
ナーディル「うふふ……そういえば私、先ほど「追いかけっこ」をしているのを見かけたわ」
リース「はは…あの二人って仲、いいもんね」
アイラス「この際……仲が良いから…というのもどうかと思いますがね。ところでリースさん、浴衣姿がとても素敵ですねぇ」
リース「ありがとう。このおっきなひまわりの柄が可愛くってお気に入りなんだ〜」

 リースはそう言いながらにこりと微笑むと、下駄の音をかすかに響かせながらくるりと回ってみせる。

ナーディル「風流ですねー。私も何か着てくればよかったかしら」

 一行は全員が揃ったのを確認すると、早速【伝説の腹黒筋天空人空中都市★】へと向かう事になった。

オーマ「おう、お前さんら俺様の超桃色夏祭りの装いも甚だしいなつまちゅり☆ヴァ〜ジョン獅子舞に乗ってっかね?」
レニアラ「遠慮しておこう」
アイラス「レニアラさんは飛竜で移動されるでしょうしね。オーマさん、僕を乗せていって頂けますか?」
オーマ「おうよ! 乗りねぇ乗りねぇわっしょいだぅわははは!!」
ナーディル「まぁ、楽しそう! 私もご一緒させて頂いても良いですか??」
オーマ「かまわねぇぜ? 言っちゃ何だがよ、今日の俺様の背中は熱いぜ……!!」

 オーマは桃色ハッピの袖で上腕二等筋をきゅっきゅと締め付けながらきらりと白い歯を輝かせる―――その背後に、オーマのハッピの裾が風に揺れたのか、はたまた筋肉がぴくぴくと動いたので揺れたのかが紙一重で判断しかねるような揺れと共に、もわっと白い物体が皆の瞳の中に残像のように残りつつもズザザザザザザザザッッッ!!!!????…と一気に集合! ピーピピッピーーー!!!
 はい並んで並んで!!
 では点呼とりまーす!!

霊魂A「うぃっち」
人面草B「にゅぃ」
霊魂C「しゅゎん」
人面草D「すぅぃ〜」
霊魂オブザなつまちゅり「なつまちゅり☆」
 うふ〜ん★

人面草A「に〜ぃ」
霊魂B「にゅぃっ」
人面草C「すゎん」
霊魂D「しゅぃ〜」
人面草オブザなつまちゅり「なつまちゅり☆」
 あは〜ん☆

 うわ、何か喋った!!?

レニアラ「霊魂や人面草達も連れて行くのか」
オーマ「あったりまえよ。この俺様の一世一代腹黒同盟勧誘フル兄貴下僕装備メラマッチョで夏祭り装いの霊魂人面草軍団も、秘密の腹黒空中人もとい空中都市を仲良く腹黒に膿が出るほどに占拠拡大しマッスル☆」
アイラス「オーマさん……夏祭りに行くのでは…?」
オーマ「なつまちゅり☆」

 彼の男、再起不能☆

リース「じゃあ、あたしは自分の翼を出して飛んでいくね」
レニアラ「私は飛竜に乗って行こう」
アイラス「霊魂さん方や人面草さん達も乗るのでしたら…僕はレニアラさんの飛竜に乗せて頂いた方が良さそうですね」
レニアラ「……別に私は霊魂達や人面草達を乗せてやっても構わないがな」
オーマ「………何処に連れて行くつもりだ?」
レニアラ「ふっ………愚問だな」
ナーディル「私も飛竜に乗せて頂いても良いでしょうか?」
レニアラ「あぁ、構わんぞ」

 こうして彼らは漸く旅立ったのであった―――




::   生息地域外遠征中☆   ::


 その光景は一言で表現するのなら「圧巻」であった。決して悪感でもなければ悪漢でもない。誤解を招かぬように一応断りを入れておく。
 外観は強ち捨てたものでもない。あくまでアナガチ。
 遠くから見ればとっても普通で素敵な空中浮遊大陸だった……のだが―――背中に一杯何かを背負った銀の獅子や飛竜の翼がばっさばっさと空を掻き、それに近づいてゆくにしたがって、何かしらの悪意すらをも感じずには居られないような、視覚効果をふんだんに使用した街並みが目に入った。
 銀獅子の背中で霊魂vs人面草軍団もうぉんうぉんとむせび泣き、メラマッチョと共に身を捩る。

リース「……どうしたの? 皆」

 少し遅れて飛んできたリースが、何故か動きを止めている皆に声をかける。

レニアラ「いや、気にするほどの事でもないだろう。さぁ、行くぞ」

 レニアラは中に佇むイロモノ空中都市をちらと眺め見ると、ふっと笑みを浮かべてアイラスとナーディルを乗せた飛竜で都市へと降下してゆく。

アイラス「レニアラさん! 危険です、「こういったもの」はオーマさんが居ないと……!!」
レニアラ「……………」
ナーディル「何か……動いていますよ?」

 レニアラはあらゆる意味において無言でそっと飛竜を操ると、ふわりとそれを空中都市に着地させた。

 うにょにょ……

アイラス「つ…着いてしまいましたね。仕方がありません…降りましょう」

 うにゃにゃ……

 そう口にして空中都市に降り立った彼は、途端に足下から伝わってくる異様な感触に微かに眉を顰めた。
 そして軽く溜息をつく。

オーマ「うふ〜んあは〜ん大行進☆★☆」

 いつの間にか先を歩いているオーマが、何やら楽しそうに霊魂・人面草軍団を引き連れながら、筋肉うねる大地をうねうねしながら歩いて行く。

オーマ「いいっ!! いいぞこりゃあ!! 一体どんな技術でこんな無敵大地を……!!」

 オーマが手をわなわなと震わせている横に、みるくを抱えたリースがちょこんと立っている。

リース「わぁ〜凄いね。屋台もあるよ」

 どうやら見えている世界が違うようだ。
 リースは楽しそうに駆け出すと、綿飴の製作過程をじっと見詰めている。

オーマ「空中都市燃えよ天空筋屋台グルメ☆に舌鼓を撃ちマッスル」

 撃ってどうする。

アイラス「リースさん、この都市の名物は「鬼のオトシゴ」というのだそうですよ。先ほど向こうの露店の方が教えて下さいましたので皆さんの分を買ってきました。どうぞ」
リース「わぁ〜。ありがとう」
レニアラ「………ところでアイラス、これは何だ?」
アイラス「………名物だそうですよ?」
ナーディル「ただの黒い玉に見えますが……一体なんでしょう?」
アイラス「さぁ…でも、名物だそうですよ?」

 アイラスは「鬼のオトシゴ」という名の何だか丸い形をした物体を、名物である事をごり押しにして手渡すと、暫らくしてからはっと何かに気がついた。

アイラス「見てください、あれ……!!」

 アイラスの言葉に彼の指差す方を見た皆は、思わず口をぽかんと開いた。
 屋台の店員が全員半裸でマッスルフンドシ野郎なのは見てみぬふりをすればいいとして―――空から降ってくるのだけはどうにも「見落とせない」。

伝説の腹黒筋天空人「お買い上げありがとうございマーーーーーーッスル☆」

 ニカッ

 ムキッ☆……どーん!!

 あぁ、皆の集よっく見よ。
 これぞスマイリー空中ボディビルディングマニア悶え花火☆

 マッスルポーズをキメる毎に空を彩る火花が赤々と……赤々と……………イテェ〜。
 オーマのアニキが悶絶筋痛めるほど感激してわなわな震えていた。真に「マニア悶え」花火の名を冠するに相応しい。
 皆の集は計五回打ち上げられた完全R指定マニア向け花火を堪能すると、もう帰りたいという衝動に駆られつつも「祭」という響きに乗せられた若者の如く、次なる余興に心を躍らせた。

???「消化、消化!!!!」

 ぱちゅん ぱちゅ〜ん!!!

オーマ「うをぅっ!!? 何だ何だ何だ!!!???」
ナーディル「ふっふっふ……」

 オーマの背後に黒い影が過った。

アイラス「な……ナーディルさん!?」
ナーディル「ふふふ……こういうの(多分祭りの事)って楽しいですよね」

 ナーディルは邪に見えなくも無い素敵な笑みを浮かべると、彼女の当初の目的通りに腹黒空中都市を調査・観察し、財宝と屋台の景品を狙う―――という荒行に出た。というかいつの間にか出終わっていた。
 彼女は屋台の景品・素敵に無敵☆お子様永遠の憧れの的水鉄砲(マッスルアニキの指鉄砲型)を手に、悶絶愉快そうにオーマ目掛けて水を噴射する!!

オーマ「ぬををおおっっ負けるかーーっっ!!!?」

 オーマはそう言って手先をビシッと揃えると、今度はアスリートマニアと化して猛ダッシュで何処かの建物へと駆け込んでいった。その後を水鉄砲片手にナーディルが追いかけてゆく。

リース「あ、オーマたちはオバケ屋敷に入るんだね。ちょっと怖いけど……行ってみよっか?」
みるく「みゅう!」
レニアラ「……面白そうだな」
アイラス「そうですね、此処で待っているというのもなんですし…行ってみましょうか」




::   ギラリマッチョの怨念に付き…   ::


 薄暗い―――かすかな光の中、いつの間にかぼんやりと浮かんでいる影。
 初めは「なんだろう?」そう思って近づいた。
 なのにどうしてだろう。
 「何なのか」を悟る直前の異様なまでの恐怖感。
 「何なのか」を知った途端に押し寄せる脱力感。

リース「きゃぁっ」

 リースは小さく叫び声を上げると、みるくを抱き締めた。

アイラス「リースさん、大丈夫ですよ」
レニアラ「何の飾り気も無いお化けだな」
アイラス「そうですねぇ……僕にはさっきの店員さんが立っているようにも見えなくは無いですが……」
リース「え? そうなんだ。なんだ、よかったぁ…」
アイラス「ある意味怖いですけれど…ね」

伝説の腹黒筋天空人「イラッシャーイマセー☆キョーフノ館ヘー」
リース「…さっきの花火の人かな?」

 この際中に入ってからイラッシャイマセといわれることへの不満は無いのだろうか。
 恐怖の宴(?)は既に始まっているというのに……
 そう、ベストオブ天空セクシー爆裂大胸筋アニキお化け屋敷ツアー☆
 お化け屋敷からお化け屋敷へのハシゴ。つなぎ目もあやふやだからいつの間にか一番怖い所に紛れ込んでしまっているという、苦情の絶えない一級品。

伝説の腹黒筋天空人「筋肉つけんぞワレ―!!」
リース「きゃーっ」

 勿論違う意味で怖いのだが。

レニアラ「遠慮させてもらおうか」
アイラス「そういうのが好きそうな人が僕達よりも先に此処を通ったと思うのですがね…」
伝説の腹黒筋天空人「あぁ、あの素敵なマッチョガイ☆ならもう少し先に行った黒筋BOSSの所に居るさ」
アイラス「そうでしたか……これはご親切にどうもありがとうございます」

 アイラスは礼を告げると、「何だかマッスルな人って皆さん、意外と素直なんですよねぇ」とかぼやきながらいつの間にかリースとレニアラが綿飴を分け合って食しているのをちらと見詰める。

アイラス「あ、僕も貰ってもいいですか? 甘いものは好きなのですよ」
リース「うん、いいよ。はい! レニアラも遠慮しないで食べてね」
レニアラ「ふっ……そうだな…もう一口貰おうか」

 三人は途中幾度か「筋肉持ってけー」とか「これを飲めば貴方も必ず白い歯が素敵なマッチョになれますよ」だとか…怪しい勧誘を受けつつ、綿飴を頬張って歩いていった。
 目指す先から良く知った人物の声が聞こえてくる。

オーマ「おう、お前さんら遅かったじゃねぇかよ! これからゲームするんだ。お前等もやるだろ??」
ナーディル「皆さんを待っていたんですよ」
アイラス「お化け屋敷でゲームですか?」
リース「ねぇオーマ、その人は?」

 皆はリースの示した人物に視線を送る。そこには中肉中背、しかしながらこれでもかというほどのゴツイ身体つきをした中年男がどっかりと地面に腰を下ろし、サイコロを手の中でからからと鳴らしていた。

オーマ「おう、このムキムキマッチョのナイスガイがこの都市の責任者なんだとよ」
ナーディル「何でも先日体脂肪率が六パーセントを切ったとか…」
伝説の腹黒筋天空人「ふっふっふ…もと言ってくれ。俺は褒められるのが大好きさ」
オーマ「空中都市の管理もしている、天空人マッスル界の頂点に君臨する親父なんだぜ」
アイラス「そういえば……他の空中都市は地上に落下してしまったというのに、どうしてこの都市だけは今も浮かんでいられるのですか?」
伝説の腹黒筋天空人「腹黒空中都市は大量の怨念によって空中に浮遊しつづける事を維持しているのさ。そして俺がその中枢に位置するのさ」

 伝説の腹黒筋天空人はにやりと笑いながら怨念をたっぷりと篭めたサイコロを振う。

伝説の腹黒筋天空人「サイコロの目によって右へ左へ……楽しい毎日さ」

リース「じゃあ、おじさんがこの空中都市を浮かせているの?」

伝説の腹黒筋天空人「あぁ、そうさお嬢さん。そんなわけで役者も揃った事だし…もう人勝負と行くさ。腹黒スカイサマーギラリマッチョ桃色怨念ゲーム☆」

 ただ一人、オーマだけが興奮冷め遣らぬ様子でぱちぱちと拍手する。
 伝説の腹黒筋天空人は、むっきむきと腹黒親父と肌をぴったりとあわせると、ムフムフいいながら怪電波による通信を行った。

伝説の腹黒筋天空人「さぁ友よ……この都市に入ったからにはもう外には出られないさ。仕方が無いから此処を舞台に気ままに空中浮遊と洒落込むさ」
リース「出られないって…どういう事?」
伝説の腹黒筋天空人「言葉通りの意味さ。お嬢さん。この都市へ足を踏み入れたが最後―――全員が腹黒マッチョと化すまで元の世界へ戻る事など叶いはしないさ」
レニアラ「ふむ。成る程な……やれ、ルドラ!」

 って貴女、ちょっとまってーーー???
 と、誰も突っ込みを入れる間も無くルドラが伝説の腹黒筋天空人(怨念度MAX)をどつく!!
 伝説の腹黒筋天空人に1999の見えない心の傷がついた!! レニアラさんに罰金2万HOZ☆(HARAGURO-OYAji-Z(?)の略。伝説の腹黒空中都市の通貨? 決してWOZっぽくしてみようとかは狙っちゃいない)

 ゴツッ
 ゴツッゴツッ……ゴン!!

伝説の腹黒筋天空人「うわっはっは! やめろってお前! くすぐったいさ」

 執拗に伝説の腹黒筋天空人をどつき回す飛竜・ルドラ。
 レニアラは自身の立つ大地が大きく揺れ動いた事にふっと微笑にも似た吐息を零すと、続き、急降下を始めた腹黒空中都市の中で呟くように言った。

レニアラ「安心しろ。公式発表では定員オーバーによる事故だ」
皆様+α「「「「「えぇーーーーっっ!!!?」」」」」
伝説の腹黒筋天空人「こ、このままではエルザードとアセシナートとの境目に落ちてしまう……!!」
レニアラ「それは困る。………やれ、ルドラ!」

 だから貴女、ちょっとまってーーーー!!????

オーマ「ちょーっとまてーぃ!! おいレニアラ、お前さん一体何考えてんだ!?」
レニアラ「何…少しばかりアセシナート軍砦にでも落ちればいいと思っただけだ」
オーマ「す…少しばかり!?」
アイラス「何かおかしいと思ったんですよ…登場の仕方が」
ナーディル「一歩上行く腹黒戦略ですね」
リース「皆、それよりも折角今も浮いている都市なのに、地上に落っこちちゃうよ…」
アイラス「………出られないより、ましかも知れませんね」

 全員納得v




 そんなこんなでアセシナートとの境目に新名所もとい新勢力登場☆
 腹黒空中都市より飛来した伝説の元空中都市在住現在住所不定の腹黒空中都市人の一大勢力☆☆
 彼らの技術力は現在のソーン内のあらゆる(非?)科学技術をある特定の意味に於いてのみ凌駕し、全ての大地を悉く筋肉の海に変えてしまうとか(そりは困った)。
 これはもうあのベルリンの壁的な役割でもってエルザードとアセシナートとの間にそそり立つ筋肉壁を創造し、仕方が無いのでもう一枚後ろにもお筋肉壁を作って空中人達にはその壁の中に入っていただくしかない!!
 オーマはギラリと怪しく輝く双眸で筋肉の巨大都市からずりずりと這い出してきたマッスル☆オブザHARAGURO達を射竦めると、いつもの調子でつかつかつかと大またで歩み寄ってゆく。

オーマ「おまえさんらに頼みがあるんだがよ……」
伝説の腹黒筋天空人「ど……どうしたチャンピオン☆オブザHARAGURO-PINKY」
オーマ「是非コレを読んでくれ」
リース「……………」
アイラス「……………」
レニアラ「……………」
ナーディル「……………」

 いつの間になんかのチャンピオンになっているだとか、変な名前付けられているとか…色々と疑問点は浮かんだが、当のオーマがしゅばばばばっと建物の下から這い出してきた伝説の腹黒筋天空人に、「何か」を手渡す様をじっと見詰める皆さんの視線はどこか冷たい。
 「腹黒空中都市と腹黒同盟と聖都の大胸筋友好セクシー条約について筋肉モリモリモ☆☆★」そんなタイトルの冊子に見えたからだ。

オーマ「もう「空中都市」じゃなくなっちまったけどよ……これからはエルザード、アセシナート、次いでその間に栄える第三勢力「元★腹黒空中人間闇夜に踊る驚嘆☆ボディビルディングマスターマニア」国として…俺達と仲良くしようじゃねぇか……」

 きらきらきら
 きらきらきら

 オーマと腹黒筋天空人との間にラメ入り光のエフェクトがビシシバシシッと炸裂する。
 リースはみるくを抱きしめて二歩ばかり後ずさった。
 アイラスは思わず拳を握り締めて目を瞑った。
 レニアラは天空都市の残骸をさらりと眺め見、ちっと舌打ちをした。
 ナーディルは手に握り締めた屋台の景品・水鉄砲を握り締め、思わずぴゅぴゅっと腹黒筋向けて発砲(用法間違い)している。
 それぞれがそれぞれの方法で現実逃避をする中、見詰め合う一対複数の腹黒筋野郎どもは、そこらで現実逃避をしている常人には理解できぬ何かしらの強い結びつきを体得している。

アイラス「さて………帰りますかね」
レニアラ「いくぞ、ルドラ……」
リース「みんな、今日はとっても楽しかったね。また一緒に遊ぼうね」
ナーディル「………生きるって難しいものなんですね」

 それぞれの捨て台詞を思い思いに吐き捨てると、友人達は次々とその場を離れていったのであった―――
 オーマは五人中間違いなく一人だけエルザード在住の人間とは「違う」と認識されているようである。




――――FIN.