<PCクエストノベル(3人)>


友情の輝き 〜強王の迷宮〜

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【2467/C・ユーリ /海賊船長    】
【2472/リッチー・R/海賊/船上コック】
【2473/フレド・M /海賊      】

【助力探求者】
なし

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 強王の迷宮。
 昔、何を思ったか自らを『強王』と名乗り始めたドワーフが作った、と言われている巨大な岩の迷宮。
 それは個人で作ったとはとても思えない複雑な形をしており、中には様々なトラップが仕掛けられていると言う。
 それだけ手の込んだ迷宮故に、未だに発掘しきれていない部分もあり、ことに探索が進んでそのドワーフが作った地下3階分より下の、新たに見つかった迷宮の方はほとんど手付かずの状態。
 当然、そこには未知なるトラップも、複雑な地形も存在しているのだが――。
フレド:「ほぉれ、たまきち。この先どっちに行く?」
 分かれ道に差し掛かったところで、茶色い髪の青年、フレド・マルキーニが3人いる中でのリーダー格であるキャプテン・ユーリの肩からチビドラゴンのたまきちを引っぺがして、ちょこん、とその場に置く。
 急に冷たい地面に降ろされておろおろと周囲を見渡すたまきちが、たたたっ…とユーリの方へ戻ってよじよじと膝に取り付いた。
リッチー:「ほーぉう。こりゃあ、入り口に戻れって事っすか?」
フレド:「らしいな。ユリアン、つーことで帰るか」
 その様子を見守っていたリッチー・ロゼオが言い、手に持つ松明で辺りを照らしながらフレドと目を合わせてにやりと笑う。
ユーリ:「あのねえ。…ん、よしよしたまきち」
 ひょいとたまきちを抱き上げたユーリが、溜息を付きながら2人を見た。
ユーリ:「もう少し真面目にやろうよ。さっきだってそれでうっかりトラップにかかりそうになってたじゃないか。せっかく陸に上がったってのにさ」
 そう言うユーリの目も、ほんのりと笑みを浮かべている。
 ――お宝探し、と言いつつも、3人と1匹の歩みは実にゆっくりしたものだった。時々、「おっとと」と波に揺られるようにバランスを崩しかけつつ、まるでピクニックに来ているような気楽さで。
フレド:「1つだけ気になってる事があるんだけどよ」
ユーリ:「ん?何だい?」
フレド:「俺たちぁ手ぶらだよな?メシ、どうするつもりなんだ?」
 別に早朝から来て、朝のうちだけ迷宮にひと潜りと言う訳ではない。十分日が昇ってから入ってきた洞窟の中で、手持ちの食料はゼロに等しい。
リッチー:「お?ようやく気付いたっすねー♪」
 そう言えば、と言いかけたユーリに、リッチーがにっこりと笑って、
リッチー:「そりゃあもう激しい勢いで現地調達っす!」
 びし、と――光が途切れれば一面の闇となっている洞窟の奥を指差す。
2人:「…………」
 顔を見合わせ、リッチーをじろりと見、
フレド:「つぅ事は何か、あ?俺たちに蝙蝠やモグラでも食わせるつもりだっつーのか、あぁん?」
 フレドがじりっとリッチーに詰め寄った。
 確かにこの3人の中で料理役と言えばリッチーしかいない。何しろ、「スリーピング・ドラゴンII世号」で現役のコックをやっているのだから…とは言え、リッチーの提案は喜ばしいものでは無かった。
 ――それがどんなに美味なる料理であったとしても。
リッチー:「そうっすねえ。後は洞窟の中に生えてるキノコとか苔あたりも使えるのがあるかもしれないっす」
 これが草原の探索だったら、きっと兎料理なり鴨料理なり、心行くまで腕を振るわせただろうが、今は、
ユーリ:「ああごめん、僕はパスさせてもらうよ」
フレド:「以下同文」
リッチー:「ええ〜〜〜〜〜〜っ」
 ただひとり不満そうなリッチーを置いて、適当に分かれ道を進んでいく2人。
リッチー:「しょーがないっすねえ…それじゃあ超携帯食くらいしか持ってないっすよ〜」
フレド:「んだぁ?あるならそれを先に言えっての」
 そんな会話を繰り返しながら、通路の中のトラップらしきものはすかさずチェックする。一見隙だらけに見えて、よく見ると目や足の配りようが只者ではなかった。
リッチー:「でもこれ、欠点があるっす」
ユーリ:「欠点?」
リッチー:「利点でもあるんすけどね。軽量化を第一にしたら、この通り、こんなに小さく出来上がったっす」
 ほとんどポケットサイズの、薄っぺらい箱のようなものを取り出して2人に見せた。
フレド:「…小せぇ事は小せぇが、そんなに驚くようなものか、コレ?」
リッチー:「これで3人分っす」
 手のひらに収まるサイズの薄い箱。中身の体積も想像が付く大きさなのだが、
リッチー:「超凝縮された食べ物が入ってるっす。――要するに干物っすね。食べると30倍くらいに膨らむんで、水が無い所だとキツイっす」
ユーリ:「ほお〜。30倍かぁ。それじゃあすぐお腹一杯になっちゃうねー」
フレド:「…待て。俺たち水持ってねぇぞ。――リッチー?」
リッチー:「はっはっは。現地調達する気まんまんすから、持ってこなかったっす〜!」
フレド:「―――こ、のおっ」
 笑顔満開で言ったリッチーの台詞に、ぷちんと切れかけたフレドが一歩近寄り――ユーリにあっさりと止められた。
ユーリ:「まーまー。洞窟なんだからどこかに湧き水があってもおかしくないしねー、ゆっくり行こう。まだ時間はたっぷりあるんだしさ」
 「スリーピング・ドラゴンII世号」には、帰りがもしかしたら夜以降になるかもしれないと告げてある。
 それは、ここから出た後に街に寄って、酒場に直行する予定も含んでいたからだ。
フレド:「…ま、そりゃそーか。ネズミの代わりと思えばかなりマシだしなぁ」
 本気で怒っていたわけではないフレドも、あっさりと肩を竦めて気持ちを落ち着けていた。

*****

 たまには3人で冒険にでも行こうか、と言い出したのは誰だっただろうか。カードゲームに興じていた時にふと誰かの口を付いて出たもので、酒が入っていて気分が大きくなったのだろうか、ほぼ即決で行く事が決まっていた。
 …とはいえ元々海賊。こうした『宝捜し』を否決するものなどいやしない。
 そうしてここ、強王の洞窟を、トラップを越え、ヴァンパイアの眷属なのかやたらと凶暴な蝙蝠たちを叩き落してずんずんと下って行っているわけだったが…。
フレド:「…そろそろ3階を過ぎるってぇとこだな。おい、マップ持ってるかユリアン」
ユーリ:「そりゃあね、勿論。今通って来た道がここだから…あ〜、もうじき道が消えるね。リッチー、ちょっと灯りを近づけてくれるかい?」
リッチー:「了解っす」
 そうして近づけた灯りに照らされた地図は、以前にどこかの行商人から手に入れたもの。と言ってもこの程度の情報は探査中の組織から逐次出回っているのだから、特に貴重なものでもない。
 その地図――羊皮紙の上にユーリがさらさらっと今まで通って来た通路の上をインクを付けた筆でなぞった。
ユーリ:「これでよし、っと。さ、ここからどう進む?」
フレド:「そうだよなぁ…」
 目の前には3つの分かれ道。ひとつは今まで通って来た所の材質と非常に良く似た岩で出来ており、削った跡もそのまま繋がっている、恐らくは強王が掘り進んだであろう道。
 真ん中の道は材質は同じだが、彫り方がまるで違う上にかなり古い削り跡だと気付く。見れば、途中が荒々しくえぐれており、その辺りでこの通路と繋がったのだろうなという想像が付いた。
 そして最後――ここは、岩の材質が他の2本とまるで違っていた。今までのが硬く黒っぽい石だとすれば、こちらは同じく硬いものの白っぽい石。そのせいか、この通路だけが妙にきちんと整えられた道に見えてくる。
リッチー:「たまきちはどれがいいっすか?」
フレド:「おいおい。たまきちに聞いたって分かるワケねぇだろ?」
リッチー:「…あっちの怖い声のお兄さんの事は気にしなくていいっすよ〜。さ、どうするっす?」
 フレドの言葉をわざと無視したリッチーがにこやかにユーリの肩の上にしがみ付いているたまきちに訊ねると、たまきちがくるんと首を傾げて、きょときょとと辺りを見回した。
 ふんふんと匂いを嗅ぐ様子まで見せているたまきちに、思わず3人の視線が集まる。
 そして、たまきちの目は、あの白っぽい通路へとしっかり向けられていた。
ユーリ:「…ま、いいんじゃない?帰るなんて言わなければね」
 その一言で、3人がぞろぞろと動き出す。
フレド:「狭ぇな」
ユーリ:「ぎりぎり2人だね。でも2人じゃ身動きが取れないし、ここは縦に並ぶか。僕はトップで構わないよ」
フレド:「じゃあ俺がケツだな。おいリッチー、灯りが前後に当たらねぇように気を付けて中に来い」
リッチー:「おっけー」
 そうして一列に並んだ3人が、今まで以上に緊張感を高めながらじわじわと進んでいく。
ユーリ:「ストップ」
 そんな中、ユーリが静かに呟いて動きを止めた。そのまましゃがみ込んだり、その横の壁を調べ始める。
ユーリ:「灯りを」
 短く告げた言葉にリッチーが頷いて灯りを差し伸べ、フレドは来た方向に顔を向けて見張っていた。
ユーリ:「やっぱりだ。…2人とも、少し後ろに下がっていて。この辺りに切れ目があるからね」
 腰に下げた剣でがつがつと壁の隙間らしき部分に差し込んだりぐらぐらと弄ってみたりしていたが、
フレド:「…ドンピシャ」
 ある一点に力をかけた途端、今まで壁でしか無かった部分にぱかっと空間が開いた。
リッチー:「さすがはキャプテン、痺れるっす!…あのーちなみに、そのまま移動したらどうなるっすか?」
フレド:「余計な事言うんじゃねェよおまえ。変なトラップが出て来たらどうすんだ」
ユーリ:「…多分こっちが下手すれば致死性の罠じゃないかな。どのくらい進んでから始まるのか分からないけど、この線を越えると少しへこみそうな部分があったから」
 ま、動かさないでおこう。そのほうが安全だよ、とユーリが笑って今開いたばかりのくぼみの中へ入って行った。
ユーリ:「うーん。ハズレだったかな?見事に何も無いねえ」
 隠し扉を進んで少しして、開けた部分には来たものの、そこはがらんどうの部屋だった。
フレド:「もうココは漁られた後じゃねェのかね。それともそれすら全部隠してあるとかか?そりゃ良い趣味過ぎるぜ」
ユーリ:「フレド、ちょっとその辺探れないかな?」
フレド:「ああん?面倒くせェなぁ…ちょっと待て」
 ずいと一歩進んだフレドが、リラックスできる姿勢になってその場に立ち、手を広げて目を閉じた。
 ――ぴく、とたまきちが目と耳を動かして辺りを見回す。
フレド:「不自然な吹き溜まりがあるな。そこと――そことだ」
 2箇所、どちらも床を指しながらフレドが目を開く。
ユーリ:「ふうん。…何か出て来るかな?」
フレド:「保障はしねぇぞ、言っとくが。それからな、出て来たとしたって良いモンとは限らねえ」
リッチー:「そんな事は承知の上っすよお。ねえ、キャプテン」
ユーリ:「まあ、そんなところだね」
 ユーリの肩の上にいたたまきちが、しきりと室内の空気を嗅いでいる。その動きに目を止めたのは、今の所誰もいなかった。
 ユーリが、フレドの指定した位置2箇所のうち、ひとつを選んでその近くまで、床にトラップが無いか気を付けて歩いていく。
 そして、その辺りの床に手を触れた――その時。
ユーリ:「!?」
リッチー:「うわっ、眩しいっす!!」
フレド:「―――!ユリアン、すぐにそこを離れろ!!」
 床が、いや、部屋全体が光で満ち溢れた。3人共に不意打ちだったため、顔を覆う腕が一瞬間に合わず、白い視界に覆われてしまう。
フレド:「いいかリッチー、そこを動くなよ」
リッチー:「うぎゅ、く、苦しいっすよ」
 そして、同じく視界をやられている筈のフレドは、すかさずリッチーを壁に強く押し付け、よろけながらも急ぎ足で部屋の中央へ向かった。そこから手探りで手を伸ばした先を、はしっと掴んだモノがいる。
ユーリ:「…うん?たまきち、どうしたんだ?」
フレド:「たまきちか!丁度いい、そこの主人の腕に誘導してくれ」
 たまきちは目をやられていなかったのか、それともこの室内が見えているのか、そのひんやりとした手は下へと下がり、ユーリの肩らしき部分に触れた。
フレド:「――ッし!ユリアン、俺の手引く方へ来い。焦るんじゃねぇぞ」
ユーリ:「焦るもんか。誘導してくれているのはキミたちなんだからさ」
フレド:「シラフじゃ言えねぇような台詞を…おまえ、実は酔ってるだろ」
 視界が利かないままのフレドは、実を言えば部屋を流れるエーテルの揺らぎを利用して移動していた。それを知っているユーリもリッチーも、言われた通り大人しくフレドの言う事を聞いている。…これが神経を使う作業だと言う事を十分承知しているからで。
フレド:「…このまま、少し待て。ここならラインの外だ」
ユーリ:「そうか、こっちにもラインがあったんだ。――あれに触れて急に?」
フレド:「ああ――だけどな、良く見りゃ見つかった線かも知れねぇんだ。チクショウ」
 悔しげに唇を噛むフレドの背に、さわさわと誰かの指先が這う。
フレド:「――ォいコラ誰だッッ」
リッチー:「うわぃ、そんな近くで怒鳴らないで欲しいっすよぅ。せっかく背中をぽんぽん叩いて大丈夫って言おうとしたのに…背中の位置が分からなくてちょーっと指先で撫で撫でしちゃったっすけど」
フレド:「すんな!サブイボ立っちまったじゃねえか!」
ユーリ:「―――――っく、くっくっく――あははははは!」
 突然、身体を震わせていたユーリが大声で笑い出す。
リッチー:「ど、どうしたっすかキャプテン?」
フレド:「そうだぜユリアン、何笑ってんだよ」
ユーリ:「は、はは、ごめんごめん。いや、どう考えても遺跡の中の罠にかかってる僕らが、なんでこんな場所で触ったかどうかで言い合ってるのか考えたらさ、どうやってもおかしくって堪えきれなくなったんだよ。悪気は無いんだ――っく」
 くくく、とまだ身体を震わせている様子に、視界がまだ良く利かないながらもリッチーとフレドが顔を見合わせ、そして――笑い出した。
 この部屋にびりびりと響く程の声で、高らかに。
 そうして、ようやく視界が戻った3人が、今度は顔を引きつらせる。
 フレドがラインと呼んだ線らしき位置――そこから壁の際に3人はへばりついていたのだが、3人のいる場所から一歩踏み出した先に床は無く、その部屋のほとんどが底の見えない深い闇の中へとぽっかり穴を開けていた。
 床が残っている箇所は3つ。
 壁際の、人がようよう歩ける幅。そして、残り2つはフレドが言ったエーテルの不自然んな塊がある床の位置を丸く切り取った部分のみだった。
リッチー:「あの上に残っていても落ちなかったっすけど…帰れないっすね」
フレド:「でも、見ろよあの床の上」
リッチー:「おおッッ」
 それは、先ほどまで何も無かった筈の床。だが、こうして他の部分が切り落とされた今ようやくその姿を現したのは、まだ光が収まりきらない室内の輝きを浴びて、自らもきらきらと輝いている2つの石。ひとつづつ、残った床の上に敷かれた厚みのある布の上にころんと転がっている。
フレド:「手の込んだ仕掛けを考えやがって。きっとこの迷宮を作った主は性格悪ぃぜ」
ユーリ:「はは、そうかもしれないね〜。まあ、それだけ取られたくなかったんだろうけど。…うー…ん」
 ユーリがゆらゆらと義手の角度を調整し始めるのを見ながら、両脇にいたリッチーとフレドが軽くユーリの身体を壁側に押さえつけた。
ユーリ:「反動止めも嬉しいけど、チャンスはそれぞれ一度きりだから照準を合わせてくれると嬉しいなぁ」
フレド:「おまえなァ。こう言う事もあるから練習しとけッつっただろぉ?」
リッチー:「しょーがないっすねえ、キャプテンは」
 そう言いながらも、3人が寄り添いながら狙いを定め、腕の位置を固定して頷く。
 そんな2人を見ながらユーリがにこりと笑って、義手に設えたワイヤーアームを慎重に打ち出した。

*****

リッチー:「これは便利っすねー。何よりも火を使わなくていいのが最高っす」
 手の中に明るく輝く石を掲げながら、リッチーが嬉しそうに言う。
 3人は、あっさりと探索を打ち切って家路に付く所だった。まだダンジョンの入り口にたどり着くまでは結構時間がかかるのだが。
 そして、今回の収穫は、どういう仕組みなのか、灯り代わりになりそうなくらい明るく輝いている石だった。…ひとつだけが。
 もうひとつは、部屋にいる間はひとつ目の石と同じく輝いてみえたのだが、自分から発光するわけではないのか、部屋から持ち出すとすぐにその輝きは止んでただの白っぽい半透明の石に戻っていた。
リッチー:「こっちはニセモノっすかねえ?」
 全く輝きを見せようとしない石を見たリッチーに、ユーリがゆっくりと首を振る。
ユーリ:「多分そっちも、何かの作用はあると思うよ。ダミーだったら、あの罠にかかる前にあの場所に置いてあるだろうし。…どう、フレド」
フレド:「同感だ。――使い方があるんじゃねぇのかな」
リッチー:「そっすか。それならそれで…あれ?」
ユーリ:「どうした?」
リッチー:「いや、この石さっきより暗くなったような――あ、また」
フレド:「…時間制限付きか?おいリッチー、今のうちに松明に灯り付けとけよ?」
リッチー:「わかったっすー」
 フレドが指摘した通り、リッチーが松明に火を付けるとほぼ同時に、石の輝きはふぅっと消えてしまった。そして、3人が船に戻っても、その石が輝く事は無かった。
 だが。
ユーリ:「なるほどねぇ…こう言う仕組みか。じゃあ、もしかしたらこっちは月?あの部屋の光って、月光だったのかな」
フレド:「さぁなぁ。しかし、光を吸収するのは良いが見分け付くように作れよ全く…」
 机の上で、今度は煌々と日の光に似た温かさを持つ光を発する石に、フレドが文句を付ける。
 帰り道でずっと両方の石を眺めていたのが作用したのか、石がまた輝き出したのだ――迷宮の中で全く反応しなかった方が。
ユーリ:「うーん。2つを一緒に持ち歩けって事じゃないのかなー。何となくだけどさ、この2つを別々に持ち歩いたらどっちも使えなくなるような気がするんだよ」
 双子みたいにそっくりな石だしねえ、とユーリが続け、
リッチー:「そうっす。それに、間違って持ち歩いたらどえらい事っすよ」
フレド:「いや、普通の灯りも持ち歩けよ。これだって永遠じゃねえみてぇだし」
 詳しい作用は分からないままに、この収穫をどうするか話し合った結果、
ユーリ:「まあ、いいんじゃない〜。これなら無くさない限りは、安全に航海しやすくなるしね〜」
 甲板の、舵がある位置に、2つとも固定される事に決まった。と言っても曇って光を浴びない日もある事から、あくまで非常用と考えるように、と皆に言いおいた上で。
フレド:「いいんじゃねェか?俺たちにゃ似合いの場所だ」
リッチー:「そうっすね。…調理場に欲しかったっすけど」
フレド:「それじゃおまえが毎日毎晩コレを外に出すっつうんだな?それならやってもいいぜ」
リッチー:「い、いやいや、やっぱり甲板っすよ!ここが1番!」
 じゃれあうような2人。それを見たユーリがにこりと笑って、
ユーリ:「こういうのもいいねえ。またどこかに遊びに行こうよ」
 2人が反対する筈も無い事を、楽しげに言ったのだった。


-END-