<PCクエストノベル(4人)>


ぱっしょん ミニ変化(へんげ)の洞窟

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1953/オーマ・シュヴァルツ/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
【2082/シキョウ      /ヴァンサー候補生(正式に非ず)     】
【2083/ユンナ       /ヴァンサーソサエティマスター 兼 歌姫 】
【2086/ジュダ       /詳細不明                】

【助力探求者】
なし

【その他登場人物】
ウォズたち

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シキョウ:「おもしろそう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
 頬はばら色に染まり、目はきらきらと大きく見開かれ、そして唇は満面の笑み。
 ――シキョウがそんな顔をした時には、大抵、
シキョウ:「シキョウもいく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、そこにいく〜〜〜〜ッッッ!」
 …と、続く。
 行きたい、では無い。行く、なのだ。
 従って、
ユンナ:「…いいんじゃない?行きたいんだものねえ?」
シキョウ:「うんッッ」
 シキョウに甘いユンナと、後見人を自称するオーマ・シュヴァルツが、
オーマ:「んじゃ、行くか」
 こうしてあっさりと行き先が決まってしまう。
 この間行って来た『ミニ変化の洞窟』が、この間は色々なモノが作用されて妙な影響を出したものの、今はもう普通の状態だろうと話題に出したのは、ついさっきの事。
 そして、その寸詰まりになるという状態がシキョウには殊のほかお気に召したらしかった。
オーマ:「そういやあいつは?」
 そこで、きょろきょろと室内を一望し、普段ならもうひとりいてもおかしくないのに、と首を傾げるオーマに、
ユンナ:「ああ、それなら今朝急に起きた時に温泉に入りたくなって、頼んだの」
オーマ:「……何を?」
ユンナ:「湯船たっぷりの温泉をね。大丈夫。今日の夜までに支度すればいいって伝えてあるから、余裕でしょ」
オーマ:「……あ。ああ、そうだな」
 一体何を盾にその命令を受けたのか。今ごろは半泣きで出かけているであろう仲間の姿を思い浮かべて、ぷるぷると頭を振る。
オーマ:「――じゃっ、行こうかっ」
ユンナ:「…なんで妙に爽やかになってるのよ」
 わぁいわぁいとぴょこんぴょこん跳ねているシキョウを落ち着かせ、ぞろぞろと家を出る。
オーマ:「なあ」
ユンナ:「なあに?」
オーマ:「その――足元でざわついてるのは何なんだ?」
 オーマとユンナ、そしてシキョウの間をわさわさと移動する緑色のものたち。ユンナはしれっと、
ユンナ:「決まってるじゃない。旅のお供よ、お・と・も」
 大量の人面草、そして背中にひんやりと霊魂の軍団、更には病院内に生息している様々なナマモノを引き連れて歩くユンナに、
オーマ:「おいおい。これじゃこの間より変な事になっちまうんじゃねえか?」
 大丈夫よー、と何故だか上機嫌で歩くユンナが、オーマの杞憂をあっさり追い払った。
 そして、シキョウはシキョウで、上にも下にも居るナマモノたちにおおはしゃぎだった。
 そんな、おどろ線を周囲に振りまいていた一行だったが、ある場所に付いた途端ナマモノたちが一斉にその足を止める。
 そして――
シキョウ:「あーーーーーーーーーーーーーッッ!ジュダだーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
 人面草たちが幸せそうになびいている方向を見たシキョウが、そこにゆらりと立っているジュダを見つけて、全力ダッシュで飛びついて行った。
ジュダ:「…夜逃げか?」
オーマ:「出会ってすぐ縁起でもない事言うかおまえは」
ジュダ:「しかし…見るからに」
オーマ:「俺様がナマモノしか財産がねえみてえな言い方すんなっ!」
 幸せそうにシキョウが、そしてナマモノたちが我先にとジュダに飛びついていくのを、ほんのちょっぴり羨ましそうに眺めていたオーマが、
オーマ:「そうだ。俺様たち今から例の洞窟行くんだが、どうせおまえさんも暇だろ?来い来い」
 『例の』というところでぴくりと動いたジュダが、ゆっくりと首を横に振ろうとして…下から何か求めるようにじぃっと見詰めてくるシキョウの目に気付く。
ジュダ:「………わかった……」
シキョウ:「わああーーーーいッッ!!ジュダだいすき〜〜〜〜〜っっ!!」
 もはや脅迫に近いシキョウのお願いから、ジュダが逃れる術などある筈が無かった。

     ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

オーマ:「おー付いた付いた。んー…取りあえず、先客がいるような気配は無し…っと…」
 洞窟に入る前に、一応奥の気配を探るオーマたち。
ユンナ:「大丈夫そうね」
ジュダ:「………」
シキョウ:「じゃあ〜、しゅっぱ〜〜〜つっ!」
 どんなふうになるのかな〜、わくわく〜、と歌うようにシキョウがたったかと先に進んでいく。
ジュダ:「…足元に気をつけろ」
シキョウ:「はあ〜い」
 幸い、彼女の肩には小さく輝く小鳥がおり、暗がりには先立って灯り役を務めているため、段差に気付かないということは無さそうだが、それでも夢中になると周りが見えない彼女の事。いつどこで転ぶか、大人3人は少々はらはらしつつ見守っていた。
オーマ:「寸足らずになったら皆で記念撮影しようぜ」
ユンナ:「あら、楽しそうね。でもそれ誰にも見せちゃいやよ?」
ジュダ:「………」
 そんな、過去の思い出を振り返るようにわいわいと――ジュダを除いて楽しげに話しながら奥へ奥へと進む一同。
 だが、楽しいことは長く続かない。
 奥で4人+ナマモノたちを待っていたものは、巨大な、禍々しさ…と言うよりは、妖しさ全開の具現波動だった。
オーマ:「またコレかっ!?今回は何なんだ!?」
 せっかくの楽しいひと時を――と憤慨しつつ、元凶を探すオーマたち。そこへ、
???:「ふっふっふっ」
 用意でもしていたのか、全身黒マントで体を覆った、ウォズの気配濃厚な数人がその場へざざざざざっ…と現れ。
???:「わははははは、罠に嵌ったな!これこそが我らが編み出した秘技、アンチラブラブ空間だーーーーっ!!!」
 そう、言うなり。
 その声の主たちは、一気に奥に詰めていた濃縮具現波動を、洞窟一杯に解き放ったのだった。
 その中へ飲み込まれていくオーマたち。――次に気付いた時には、黒マントの者たちに囲まれ、見下ろされていた。
???:「……うん!?」
 くらくらする頭を押さえようと手をやり…自分の頭には無いはずのツインテールを手の先に発見して、思わずぐいぐいと引っ張ってしまう。
???:「いてててて」
 痛みがあるという事は自分の頭に生えていると言う事。
???:「つーこと、は、だ」
 『オーマ』が、普段よりも全く違う高い声にも恐る恐る声を上げながら、他に地面に横たわる3人を見る。
 床にまだ気を失ったままでいるのは、ジュダと、シキョウと――そして、オーマ。
シキョウ:「つうことは俺様ユンナ!?」
 うわなんつう入れ替わりを、と上を見上げれば、そこには酷く満足そうな顔のウォズたちがうむうむと大きく頷いていた。
 やがて、うう…と唸りながら、他の3人が起き出して顔を見合わせ――ジュダの顔をした誰かがユンナを指差して悲鳴を上げた。
ジュダ:「わ、わ、私が――なんでそこにッ!?」
ユンナ:「おー、つうことはおまえさんがユンナか。じゃあ…」
オーマ:「ああああああッッッ、シキョウがふたりいるよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!?」
 シキョウに大きくごつい指を突き付けながら、『オーマ』が叫ぶ。
ユンナ:「待て待てシキョウ。その体を見てみろ、おまえさんは『誰』だ?」
オーマ:「………ん〜〜〜〜〜〜〜」
 大柄な体で、かっくんと首を傾けるオーマが、自分の腕を見て、足を見て、手を伸ばしてつんつんと尖った頭に触れて、
オーマ:「わかったーーーっ、オーマだねーーーーーーーーーっ!?」
ユンナ:「…俺様の区別って髪かい…」
 あたり、と言いつつもがっくりと肩を落としたユンナに、ジュダがむうっと眉を寄せてびしと指を突き付ける。
ジュダ:「ちょっと――ええとオーマ!あなた仮にも女性の体に入っているんだから、女らしい格好しなさいよ!なんであぐらかいてるのよ!口を突き出すのも猫背もやめてよ、って額にしわを寄せないでーっ!!」
ユンナ:「…おまえさんも、ジュダの顔でそうそう七変化しなくても」
オーマ:「あはははははははははははは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!なんだかひとがかわったみたいでたのしいね〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
 腹を抱えて笑い転げるオーマに、
ユンナ・ジュダ:「「かわってるんだってば」」
 ぴし、と突っ込みが入った。
ユンナ:「んでだ。そこのウォズさんたちや」
ウォズ:「む?何だ?」
ジュダ:「さっき、アンチラブラブ空間とか言っていたけど。どういう事かしら?」
 すっ、と座っていた姿勢から、立ち上がる皆。そこに、
ウォズ:「決まっているだろう!最近不遜にも人間に愛などという感情を抱くウォズがいると聞いてだな、その者の性別を変えてやろうと画策したのだ!そのための罠に見事に貴様らが引っかかったわけだ。わははは!」
 大威張りでふんぞり返るウォズたち。――そこに、ゆらりと最後に立ち上がった小さな姿があった。
シキョウ:「………さて。『ヴァンサー』に、その変化術を掛けたおまえたちは……どうなると思う?」
 ユンナとジュダが慌てて、きょとんと立ち尽くしているオーマを2人がかりで抱えて洞窟の壁に貼り付ける。
ウォズ:「――そ。そう言えば…貴様らは…しまったあああああああ!!!!」

 本来、ヴァンサーと言えども、無傷のウォズを封印するのは無謀きわまりない行為、とされている。それは、傷を負ったウォズは魂さえも疲弊させてしまうため、封印する時の力がそれほど必要ではないからだと言われているのだが、実際の所その辺りの仕組みを解説出来た者はいない。
 けれど、目の前のシキョウは、真っ赤な瞳を冷たく凍り付かせながら、その場にいた数体のウォズを、何もしないまま一瞬で封印してしまったのだった。
 ――途端、静かになる洞窟内。あるのは、ただ、その場に残ってしまっている妖しげな具現波動のみ。
シキョウ:「……帰るぞ」
 さっと踵を返したシキョウの肩に、ぽん、とユンナが手を置いた。
ユンナ:「まーまー。せっかくのピクニックなんだ。そう急がなくたっていいじゃねえか」
シキョウ:「しかし。この波動を片付けてしまわない事には」
オーマ:「え〜〜〜〜。もっとこのままでいようよ〜〜〜。だって楽しいよ〜〜〜?」
 いつもの自分の体とは違う、それが酷く楽しいらしい。最初の目的である頭身が縮まる効果も、そうなった時の自分の動きを確かめたいからに他ならなかったのだから、これでも良かったらしい。
ジュダ:「そうねえ。…もう少し。いいんじゃない?ね」
シキョウ:「………」
 しぶしぶながらも、ユンナが手際良く用意していたランチを、ナマモノたちが用意したレジャーシートの上に広げ始めた事もあって、シキョウもその場に腰を下ろしたのだった。

     ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

オーマ:「うーーーん。やっぱり自分の体はいいねえ。つうかシキョウ、おまえさんちぃっと笑いすぎじゃねえか?何か顔が引きつるような」
ユンナ:「それを言うなら、オーマも!…大口は開けるわ、表情をどんどん変えるわ、気が気じゃなかったわよ」
オーマ:「いや、それは…っつうか…ジュダ、大丈夫か?」
ジュダ:「………痛い」
 最近では滅多に使わなくなった顔の筋肉を長い事行使したせいで、ジュダは両の頬を押さえていた。じんじんと今ごろは筋肉痛が襲っている頃だろう。合掌、と呟いて、
オーマ:「シキョウはどうだった?」
 るんるんと楽しそうに歩いているシキョウに訊ねる。
シキョウ:「うんっ、と〜〜〜〜〜ってもたのしかったよ〜〜。いいなぁ〜、オーマはいーーっつもあんなばしょからシキョウたちのことみてるんだね〜〜」
オーマ:「まあな。まあ、いい事ばっかりでもねえけどな」
シキョウ:「シキョウ、おおきくなったらオーマくらいのおおきさになりたいな〜〜」
ジュダ:「…やめておけ。あれでは無駄に大きいばかりで良い事は無いぞ」
 すかさず言ったジュダに、そう?とかっくんとシキョウが首を傾げる。
オーマ:「本人を前にしてそう言うこと言うか」
ジュダ:「…当たり前だ」
 ジュダに味方して、いつものような軽口の応酬になった時に起こるナマモノたちのオーマへの攻撃を受けつつも、オーマは楽しそうに、そしてジュダはほんの少し無表情を解いて言葉を交わす。
ユンナ:「ほーんと。羨ましいわ。男同士の友情ってねえ」
シキョウ:「そうかなー?ユンナも、いれてーっていえばいれてくれるよ?」
ユンナ:「…そうかしら」
シキョウ:「そうだよ!だって、オーマもジュダもだいすきだもんッッ」
 ――どうやら、大好きな人は良い人だと言いたいらしいシキョウに、ユンナがにっこりと笑ってありがと、と呟く。
シキョウ:「あ。でもね、たのしかったけどね」
 ちょっと照れたようにシキョウが笑うと、ユンナの腕を取って腕を絡ませながら、
シキョウ:「ユンナにもはいりたかったな〜〜〜。だってユンナ、シキョウよりずーーーーーっとおとなのひとなんだもん〜〜」
 そう言ってにぱっと笑いかける。
ユンナ:「そう言ってくれると嬉しいわ。でもね、いつかきっと追い越されちゃうわよ。だってシキョウはとっても可愛いんだもの、ね」
 その顔に、ユンナがにっこりと花が咲いたような笑みを見せて、ぎゅぅっ、とシキョウを抱きしめていた。
オーマ:「おうおう。見せ付けてくれちゃってまあ。…どうだ、俺たちも」
ジュダ:「全力で断る」
 そんな2人を、オーマとジュダが、なんとも言えない表情で眺めていた。


-END-