<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


芋畑ガーディアンズ

●事の発端
 アルマ通り、白山羊亭のウェイトレスであるルディア・カナーズは、ずっと気になっていることがあった。
 カウンター席の隅に陣取って、昼間からアルコールをちびちびやっては時々こちらに視線を投げてくる者がいる。ルディアはこの客の顔をよく見知っていた。ここ数週間のうち、頻繁に店に出入りするようになっていたからだ。
 吟遊詩人、リード・ロウ。
 普段ならばステージの隅で気分の赴くままにリュートを弾いているというのに、今日はそれもない。
 ともあれ、この風変わりな青年のこと。たまにはのんびりと過ごしたいのだろうと思い、昼食時の混雑も手伝ってそのまま放っておいたのである。
 それでも、店が再び落ち着いた時間を取り戻すと、途端にリードが気になってきた。具合でも悪いのか、何か思うところがあるのか。とにかく、お節介を焼いてしまう辺りはルディアの人の良さの表れであろう。

「あのね、リード。人生のお悩み相談なら、乗ってあげても良いわよ。例え力になれなくても、話すだけでも楽になるってものよ」
 おもむろに声をかけたルディアに、はっと我に返るリード。一瞬、目を丸くしたかと思うと、突然声を上げて笑い出した。
(「悩み過ぎて、とうとう気が触れてしまったのかしら?」)
 ルディアが呆気にとられていると、笑いを賢明に抑えつつもリードが口を開いた。
「ああ、すみません。貴女にお話があったのですが、ずっとお忙しそうでしたので」
「あ、そう……」
 心配して損したといわんばかりに横目で軽く睨むルディアを他所に、吟遊詩人はさらに何でもないといった風にのたまった。
「実はこの間テイクアウトしたスウィートポテトがですね、私の同居人になかなか好評でして、出来ればまたお願いしたいと思ったわけです」
 たかがテイクアウトごときで客足が引くのを待ってから注文するような輩は、彼くらいなものである。

 数分後、テイクアウト用の紙袋を抱えたリードが席を立とうとすると、「そういえば……」といつもの調子でルディアが切り出してきた。
「このお芋をうちに卸してくれているオータニさんの所で、奇妙な現象が起こっているらしいのよ」
 彼女の話はこうだ。
 オータニさんの芋畑では、今、収穫期の真っ最中である。当然、この期間は猫の手をも借りたい程忙殺されるのだ。
 ある日、いつものように畑仕事に向かったオータニさんは、芋畑で信じられない光景を目の当たりにすることとなる。
 朝来てみると、何と一反分の芋が掘り起こされて、畝の横に丁寧に並べて置かれていたのだという。
 次の日も、また次の日もその現象は続いた。
 始めは有り難いと思っていたオータニさんも、流石に気味が悪くなってきた。
「どう考えても狸やもぐらの類ではないだろうし、かといってこの時期、あの集落一帯はどの家も他所の畑まで手伝う余裕なんてないって言うのよね」
 人間外の者が関与しているとするならば、捕まえて欲しいというのである。
「犯人を突き止めることができたなら、お礼にお芋だって分けて下さるに違いないわ」
「ふむ。そのご依頼、是非にも引き受けましょう」
 リードはにやりと怪しく笑うと、白山羊亭を後にした。

●偵察、芋畑!
 さつま芋のため……もとい、庶民の平和を守るため、リードと共に立ち上がった猛者達。
「さつま芋ー。お菓子にして食べると美味しいよねっ」
 スウィートポテトがお気に入りのリードの同居人、フェアリーのピアチェを頭に乗っけたシスティナ・ブロイセンが、うきうきと先頭を切って畦道を歩いている。この2人、どちらも芋好きということだけあって、初対面ながらもすぐに意気投合してしまったのであった。
「何かの恩返しでしょうか? その手の話ならどこにでも転がっているものですが……面白そうではありますね」
 と、システィナの後ろをのんびり着いて行くのは、アイラス・サーリアス達男性陣。その親友の話を聞いているのか否か、親父愛大胸筋乱舞染め染めマッチョ全開のオーマ・シュヴァルツが自作の歌を披露する。
「聖筋界芋筋ミステリーに腹黒ビバノンノンとくらぁ!」
 心意気も形からと、芋柄の桃色ふりふりエプロンに泥棒頭巾(ツッコミは腹黒ナンセンス)姿という、強烈なインパクトで登場した彼。しかも、その格好がまた妙に似合っていたりする。
 更に自宅に生息している人面芋やら人面草、霊魂軍団といった怪しげな連中まで引き連れていた。これがまた厄介なイロモノ……いや、なかなかユニークな生物で、親父アニキ系の強面ながら、熱い視線をビシビシと無意味に振りまいている。先程などは、システィナをナンパしようとして、逆に鉄拳制裁を喰らったところだ。
「楽しくなりそうですね」
 リードが好々爺のごとく、のほほんと呟く。

「おー、よう来なすったなぁ」
 人の良さそうな笑みを浮かべて、芋畑で待っていたのは今回の依頼人、オータニさんである。
 麦藁帽子に赤のネルシャツ、オーバーオールといういでたちに日焼けした肌が何とも健康的だ。鍬を下ろすと、首にかけたタオルで額の汗を拭った。
 挨拶を交わしている最中、オータニさんがシスティナの頭の上で寛いでいるピアチェにふと視線を移して、ぎょっとする。
「あんれまぁ、このちっこいのは何だ? 虫だべか?」
「虫言うなぁっ! このビューティ・ぷりちー・ラブフェアリー、ピアチェちゃんを捉まえといて。これだからおっきい族は困るんだよ、ホント」
 『おっきい族』とは、フェアリーより大きな種族を指すピアチェ専用の俗語である。どうでもいいが、彼女の発言が段々オーマに似てきたのは気のせいか。
 頭から湯気を出さんばかりにぷりぷりと怒っているピアチェを、システィナがなだめている横で、
「ひ、ひいぃっ! こっちには魔物がいるべさよ!」
 今度はオーマの手下共を指差し、青い顔で腰を抜かしているオータニさん。まあ、こちらは無理もない。事実、魔物っぽいし。
 なぜだか不適に笑うオーマの背後で、呆れ顔でずれた眼鏡をくいっと押し上げるアイラスであった。自然、溜息も漏れるというもの。

 そんなこんなで一騒動の後、一行は早速手掛かりを得るため、畑を虱潰しに探索することと相成った。
 芋掘を手伝ってくれた存在の痕跡が残っているかもしれないと踏んだアイラスは、被害に遭った畝を歩き回っていた。顔をくっ付けんばかりに慎重に、慎重に。しかし、掘り起こされた後は綺麗に整地されており、目ぼしい糸口は見つからない。件の人物もそこら辺は考えているようだ。
「……これは別の手を打たねばなりませんね」
 顎に手を当て、思案する。
「てぇことは、犯人は少なくともこの畑を大切にしているようだな」
 オーマは犯行状況から次に標的なりそうな芋畑の近くに具現能力で小さな畝を作っている。アイラスにも手伝ってもらって、畝の中にトラップである人面芋と人面草、それから腹黒同盟パンフも手際良く植え込んでいった。
 また、標的になるであろうと予測される芋畑には、霊魂軍団を潜ませることも忘れない。
 かなり不安げなアイラスを他所に、オーマは自信たっぷり、余裕綽々の笑みを浮かべた。

「あたしは、お兄ちゃん達みたいな能力があるわけじゃないけど……それでもできること、あるはずだもんね!」
 決して恵まれた環境で育ったわけではないのだが、それにもめげない健気な純粋娘、システィナ。彼女は次に犯人が現れそうな畝に複数の罠を設置して、捕まえられるか試みようというのだ。トラバサミやとりもちといった古典的な仕掛けをピアチェと共にせっせと配置していく。こういう単純な罠にこそ、案外引っ掛かり易いものである。
「システィナさん、こんなのはどうでしょう?」
 リードが予め用意していた罠(らしきもの)を肩掛け鞄からおもむろに取り出す。何を勘違いしたのか、手に握られていたのは蜂蜜の小瓶であった。吟遊詩人である彼が喉を守るためにいつも持ち歩いている品だ。もっとも、こんなものに惹かれてやって来るとしたら、蟻やカブト虫くらいであろう。だが、
「そうだね。試せるものは何でも試しちゃおう!」
 嫌な顔一つせず、システィナが小瓶を受け取る。本当にこれでいいのだろうか……。

 事を成し得た一行は、オータニさん宅にて早めの夕食をいただき、夜に備えて暫しの休息を取った。

●張込、芋畑!
 十七夜月が中天に懸かっている。流石に満月ほどの明るさとまではいかないが、そこそこ不自由しない程度の月光が静々と降り注いでいた。
 昼間のうちに目ぼしい張り込み場所の見当を付けていた一行は、物置へ潜み、犯人が現れるのを今か今かと待っていた。ここは畑の真ん中に据えられた小屋で、農具を納めてある。当然、決して広いとは言い難く、大人4人とフェアリー1匹が隠れれば、それでもう十分満室となってしまう。
 土の臭いと熱気が室内を満たす中、システィナが懐中電灯を顔の下から当てて、はしゃいでいる。
「何か良いよねぇ、こういうの。わくわくしちゃう!」
「では、怪談話でもしますか?」
 リードがオータニさんの奥さんの差し入れであるコーヒーを紙コップに注ぎながら、賛同する。殆ど修学旅行の夜のノリである。
 ちなみにアイラスが機転を利かせて小さな窓に厚手のカーテンを取り付けているので、懐中電灯の明かりが外部へ漏れることはない。

 夜半過ぎ。
 欠伸を噛み殺しつつ、いい加減、このまま何事も起きないのではと一同が思い始めた頃。
「おおっ、来た! 来た来た来たぁーっ!!」
 突然オーマが立ち上がり、興奮気味に(但し声量は押さえ気味で)叫ぶ。尋常でない彼の様子にあ然としている皆へ、「いつものことですから、お気になさらず」とアイラスが慣れた調子でフォローを入れる。
 どうやら、桃色筋肉親父は件の畑に仕込んだ霊魂軍団より発信された謎電波をキャッチしたらしい。この電波こそ、主人へ異変を知らせるものなのである。
 小さな銀獅子に変化したオーマを先頭に、足音を極力立てないよう皆が小屋を後にする。
「気配からして、犯人は複数のようですね……」
 誰に言うともなく呟くリードを尻目に、3名はそれぞれ芋畑へ散らばって行く。

 システィナは懐中電灯を片手に昼間、罠を仕掛けておいた箇所を見て回っていた。
 1つ目の罠。トラバサミ、外れ。
 2つ目の罠。とりもち、外れ。
 3つ目の罠。蜂蜜、外れ。
 段々と不安になる気持ちを抑えつつ、必死で暗闇を走る。
 4つ目の罠であるコッペパン1欠片まで来た時、システィナはそこでもそもそと動いている生物を見つけた。野良犬が畑を荒らしているのだろうか。……違う。そういった野性的な気配ではない。
 懐中電灯をそちらへ向けて、よく見てみようと近づく。すると、
「あれぇ〜、眩しいだよぉ〜」 
 全身の力が一気に抜け落ちてしまいそうなテンションである。
 そこにいたのは、なんと頭にトンガリ帽子を乗せた30センチ程の小さな老人――小人だった。辺りには、掘り起こされたさつま芋が規則正しく並べられている。十中八九、この小人こそ一連の珍事の犯人であろう。
「うわぁ、ちっちゃーい」
 思わずまじまじと見入ってしまうシスティナに、小人がコッペパンを手にしたまま、くるりと回ってみせた。
「おら、ちっちゃいだよぉ〜。かわゆいブラウニーちゃんだぁよぉ〜」
 ブラウニーは愛想を振りまきながら、どさくさ紛れに逃走しようと試みる。が、自分の使命は目の前の人物を捕まえることだと思い出したシスティナによって、あっけなく捕獲されてしまった。
「あうぅ〜、放してけろぉ〜」
 哀れっぽい抗議の声を上げるブラウニーへ、システィナは心の中で「ごめんね」と呟いた。

●朝焼け、芋畑!
「うう、勘弁して下せぇ〜」
「見逃して下せぇ〜」
「おらを食っても美味しくないですだぁ〜」
 3人のブラウニーは、冒険者達の手中でじたばたと暴れている。いかにも同情を引くような惨めさだが、実際は嘘泣きである。
「取って食われたくなければ、なぜこのようなことをしたのか、理由をおっしゃっていただきましょうか」
 眼鏡の奥で青の双眸を光らせて、冷ややかに見下ろすアイラス。足元ではミニ獅子のオーマがわざと低い唸り声で威嚇する。
「おら、悪いこたぁなーんもしてねぇですだぁ〜」
「んだんだ〜」
「無実なおら達を食っちまおうっていうあんたこそ、悪モンですだよぉ〜」
「んだんだ〜」
 ブラウニーが一斉にじろりとねめつけた。
 締りのないねちっこい物言いが、無性に神経を逆撫でする。しかし、元気印システィナはその程度のことには臆しない。
「でもね、オータニさんはちょっぴり困っているみたい。だから、お話を聞かせてくれると嬉しいな」
 一点の曇りもない彼女の笑顔に調子に乗ったブラウニー共が、ぽっと頬を赤らめ、体をくねらせる。
「あんた、優しい人間ですだなぁ〜」
「良い人間ですだなぁ〜」
「おらの嫁っこになって欲しいですだなぁ〜」

 騒がしいブラウニー3人組は終始、このような具合で1つ話をするにもあちらに一転、こちらに二転と要点を得ない。皆がぐったりする中、話し終えた時には東の空がもう赤々と染まっていたのである。
 その内容を要約すると、元々、ブラウニー達はとある貴族の屋敷に仕えていたのだという。口達者な彼らではあったが、それに負けず劣らず仕事も人間2人分以上こなす。主人には十分可愛がってもらっていた。
 だがしかし、その幸福も長くは続かない。
 主人の死去をきっかけに屋敷は没落。行き場を失った3人組は『はぐれブラウニー』として、路頭に迷うこととなる。
「そんな時であったのよぉ〜」
「地獄の中に神様を見たのはよぉ〜」
「地獄の中に仏様を見たのはよぉ〜」

 3人はいつしか随分と立派な芋畑――つまり、ここら一帯を歩いていた。ふと見ると、オータニさん夫妻がせっせと野良仕事をしているではないか。
 オータニさんは手を休めることなく、また奥さんとの談に余念がない。
「今年の芋はまた、元気の良いこったでなぁ」
「本当に。それもこれも、畑の神様のおかげだわね」
 とまあ、このような他愛もない会話である。
「豊作なのは有り難いんだが、この時期になるとどうにも腰痛が酷くて適わん。うににゃ、せがれも娘もおらんし、こりゃもう猫の手でも借りたいくらいだべ」
 冗談を豪快に笑い飛ばすオータニさん。まさか盗み聞きしている輩がいようとは露知らず……。

「そんでおらはこの畑の芋掘りを手伝うことにしただよぉ〜」
「おらの手を貸してやることにしただよぉ〜」
「猫の手なんかより、ずーっと役に立つからのぅ〜」
 嬉々として理由を述べるブラウニー達は別段、悪びれた風でもなく、くるくると無意味に畑を走り回っている。
「ま、確かに悪気はないんだろうけどな」
「悪気はなくても、人騒がせではありますよ」
 呆れ気味にぽりぽりと後頭部を掻くオーマと、苦笑を浮かべるアイラス。
 その背後で眠い目を擦りながら、システィナが至極もっともな意見を述べた。
「帰ろっか……」

●芋いっぱいパーティ
 一行はオータニさん宅に戻ると、一部始終を掻い摘んで報告した。
「なるほど。いや、奇妙なこともあるもんだべな」
 冒険者達の労を労いつつ、オータニさんは何度も頷いた。そういうわけならと、連れて来た(というか、勝手に着いて来た)ブラウニー3人組を暖かく向かい入れる方針だ。
 それはともかくとして、夜中中走り回った挙句、ブラウニー達の話を明け方まで聞かされていた一行はくたくただった。
 風呂で畑の泥を落としてから、奥さんの用意してくれたトーストとかりかりのベーコンエッグ、ホットミルクで軽い食事を済ませる。言葉少なに朝食を終えると、すぐさまベッドへと倒れ込んだ。

 次にアイラスが目を覚ますと、既に陽は中天にあった。柔らかな秋の日差しが、薄いカーテンを通して部屋の中に斜光を落としている。
 ゆっくりと階段を降りて居間の扉を開けると、談笑している仲間達、それから例のブラウニー共が出迎えた。
「おはようさん〜」
「お寝坊さん〜」
「怠け者さん〜」
 ……誰のおかげでこうなったと思っているのか。
 すっかりと寛いでいるふてぶてしい彼らを無視して、ソファへ腰を下ろす。と、そこへオータニさん夫妻が入ってきた。
「あんた達にはすっかり世話になったべな」
 お礼といっちゃ何だが、と庭へ案内される。言われるがままに着いて行くと、桃色エプロンのオーマが忙しそうに立ち回っていた。
「おう、お代わりなら十分あるからな。じゃんじゃん食ってくれよ」
 手にしていたさつま芋ブレッド山盛りのバスケットをどんっとテーブルに置いて、再び台所へと駆けて行く。
「うわぁ、ふかし芋ー!」
「スウィートポテトもあるよ!」
 システィナ、ピアチェの芋コンビ(勝手に命名)が夢見る少女のごとく目を輝かせている。卓上には他に焼き芋、芋羊羹、芋金団といった菓子類は勿論のこと、炊き込みご飯や味噌汁、シチュー、天ぷら、グラタンなどまである。どれもこれもにさつま芋がふんだんに使われており、これはちょっとしたさつま芋パーティだ。
「何からいただこうか、迷ってしまいますね」
 芋コンビに便乗して、アイラスもいつになく嬉しそうだ。
「うん。これ、すっごく美味しい!」
 システィナが大学芋をかじりつつ感心していると、奥さんがうっとりと感嘆の溜息を漏らす。
「殆ど彼が作ったのよ。私なんかより手際が良くてねぇ。お互い独身なら、婿になって欲しいくらいよ」
「おいおい!」
 目を丸くして、大袈裟に驚くオータニさん。向かいの席では、当のオーマが照れたように呟く。
「いつも家でやらされているからな」
 ……ほんの少しだけ、オーマの複雑な家庭事情が垣間見えた気がした。
 ブラウニー3人組は、大好きなお喋りをするのも惜しいといった風に、芋料理をひたすらがつがつと詰め込んでいる。

 お腹が満たされて、アルコールも程よく回ってくると、しゃしゃり出てくる者が1人。リードである。
「宴には音楽が付き物ですからね」
 いつものごとく愛用のリュートを抱えて、爪弾き出した。
 どこかの民謡だろうか。不思議な旋律だが、緩やかな懐かしい響きである。
 さらりと紡ぎ終えると、拍手が起こった。軽い会釈で答え、それが納まるのを待ってから、再び弦の上に指を当てる。
 今度はアップテンポのダンスミュージックだ。アイラスの得意な笛の音色も加わって、誰からともなく立ち上がり、手に手を取って踊り出す。
「楽しいのぅ〜」
「嬉しいのぅ〜」
「愉快だのぅ〜」
 足元では、ブラウニーがオーマの手下である人面芋や人面草と共に、ちょこちょこ踊っている。
 宴は空が茜色に染まるまで続けられたという。
 すっかりとご馳走になった上、帰り際にさつま芋のお土産までいただいて、一行は帰路に着いたのであった。


―End―


【登場人物(この物語に登場した人物の一覧)】

◆オーマ・シュヴァルツ
整理番号:1953/性別:男性/年齢:39歳(実年齢:999歳)
職業:医者/ヴァンサー(ガンナー)/腹黒副業有り

◆アイラス・サーリアス
整理番号:1649/性別:男性/年齢:19歳(実年齢:19歳)
職業:フィズィクル・アディプト/腹黒同盟の2番

◆システィナ・ブロイセン
整理番号:2182/性別:女性/年齢:16歳(実年齢:16歳)
職業:不明

※発注順にて掲載させていただいております。


◇リード・ロウ
NPC/性別:男性/年齢:23歳
職業:吟遊詩人

◇ピアチェ
NPC/性別:女性/年齢:7歳
職業:花の守り手

◇その他NPC:オータニさん夫妻/ブラウニー3人組/ルディア・カナーズ


【ライター通信】
 こんにちは。ライターの日凪ユウト(ひなぎ・―)です。
 この度は、白山羊亭冒険記『芋畑ガーディアンズ』にご参加いただきまして、誠に有り難うございます。そして、お疲れ様でした。
 
 幼い頃、靴屋さんの小人の話を耳にしたことがあります。残念ながら、どこでどういう風にしてかは忘れてしまいましたが。
 夜、働き者の靴屋さんが寝ている隙にどこからともなく小人が現れて、やりかけの仕事をしてくれるそうです。
 実際調べてみますと、正確にはブラウニーではなくレプラホーン(=レプラコーン)という小人が妖精の靴屋であるのだとか。もしかすると先に述べました靴屋さんの小人の話も、元々はここら辺から来たものなのかもしれませんね。

 システィナさんでは初めまして! ですね。明るくて元気なシスティナさんのプレイング、とてもほのぼのとした気持ちで拝見させていただきました。可愛い!
 ピアチェと共に『芋コンビ』結成です。妖精は『陽』の力を好むと申しますから、きっとピアチェもシスティナさんの純粋さ(そして芋好き)に惹かれたのでしょう。
 なお、違和感などありましたら、テラコンにて遠慮なく著者までお申し付け下さいませ。

 それでは、またご縁がありましたら、どうぞよろしくお願い申し上げます。


 2005/10/21
 日凪ユウト