<PCクエストノベル(5人)>
ほんの僅かな休息 〜ルクエンドの地下水脈〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1953/オーマ・シュヴァルツ/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
【2081/ゼン /ヴァンサーソサエティ所属ヴァンサー 】
【2082/シキョウ /ヴァンサー候補生(正式に非ず) 】
【2083/ユンナ /ヴァンサーソサエティマスター 兼 歌姫 】
【2086/ジュダ /詳細不明 】
【助力探求者】
なし
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ルクエンドの地下水脈。
そこには、嘗て水脈だったものが、水の流れが変わった事により人が通れる程の道として残り、迷宮の様相を呈している。
異界と繋がる場所があると言う噂があり、または地形的にもやや引っ込んだところにあり、水脈の数が多いことから水脈の中を根城にしている盗賊がいるという噂もあったりで、水脈の繋がりを研究する者や、無数にある水路の跡を調べて新たな発見が無いか探しに来る冒険者以外にはあまり歓迎されない場所だった。
だが――。
オーマ:「む!?」
突如、ぴりぴりと後頭部を直撃した気配に、オーマ・シュヴァルツがばっと後ろを振り返る。そちらは壁であり、誰がいるわけでもない。
が、オーマの視線はそこを通り抜けて遥か向こうを見ていた。目を細め、焦点が合わないモノを見る時のような姿勢で。
オーマ:「こっちから、で、この強さっつう事は……ルクエンドか?」
ピンク色のエプロンに赤や黄色や青のハートのアップリケを付けたオーマが、無意識に焦がさないようフライパンの中身を掻き回しながら首を傾げる。
――ルクエンドには異界への門が存在する。それが、どういう状況で開くのか、または閉じるのか、気配が現れるのかは全て謎だった。
とりあえずオーマには敏感な探知機能が備わっているのだから、いつどこで発生しても問題は無い。瞬間で閉じてしまうような『門』なら、オーマが出向くまでも無く無害に違いないし、それくらいならこの世界のあちこちで開いては閉じている様子を何度かキャッチしていたから心配はしていなかった。
ただ、なんと言うか、ルクエンドは――門が非常に開きやすい上、その場に固定される時間が長い。相性が良いのだろうか、とオーマが首を傾げる事さえある。
今回もその類なのかもしれないが……。
でも。
何かが違う、とオーマは肌で感じ取っていた。
異質なのは肌に浮き上がる自分の反発する気で分かる。そのくらいの異質さでありながら、何故かオーマは一片の警戒心も浮かんでいない。
ただ変な波動なのが分かるだけ。
それも、言葉で例えるのがとても難しい異質さだった。
オーマの言葉を借りるなら、
オーマ:「筋肉マッチョが全身金粉ショーで踊りながらマッスルポーズの神像がでっかく乗った神輿を担いでるような雰囲気」
――――と、いうもの。
飛び散る黄金の飛沫やむんむんとした熱気まで想像できそうな世界だが、オーマは嬉しそうににんまりと笑うと、用意していた大皿の上にざあっと大量の野菜炒めを盛って、火を止める前にもう一度その方向を眺めたのだった。
オーマ:「ほーら出来たぞ。たんと食え」
シキョウ:「いただきまあああす!!」
まだほかほか湯気の立つ、見るからに熱そうなそれに猛然と箸を突き込んで、たっぷりの野菜を口の中へ放り込むシキョウ。
ゼン:「……野菜嫌いだっつってんのに、何で毎日毎日……」
対して、その隣にいるゼンはちょびちょびと少しずつ摘んでは口に運んでいる。
オーマ:「そりゃもう。ゼンやシキョウのために決まってんだろ? 体が大きく育つために必要なモンは野菜の中にたーっぷりと詰まってるからな。シキョウを見ろ、美味そうに食べてるじゃないか」
ゼン:「シキョウを基準にすんなっての。こいつは出されたモンを出された以上に食うじゃねえか」
シキョウ:「ええ〜〜〜。だってだって、おいしいよ〜〜〜?」
そう言いながらもせっせと箸を運ぶシキョウの目の前にあった大皿の山はあっという間に消えようとしている。
オーマ:「こら、シキョウ。もう少しゼンにも残してやれ。そこまで美味そうに食べてくれるのは俺様非常に嬉しいがな」
シキョウ:「うんっ」
そういわれて大人しく箸を置いたシキョウを恨めしげに見るゼンが、だがシキョウの何かを期待する目でにこにこと見詰められ、根負けして半分意地で動物性たんぱく質の非常に乏しい野菜炒めを頬張った。
オーマ:「それじゃ、食べててくれ。俺様ちぃっと出かけて来るからな」
シキョウ:「おでかけ!?」
途端、目を大きく見開いた上にきらきらと輝かせながらシキョウがオーマを見る。その視線にちょっとたじろぎながらも、軽く頷いたオーマが、
オーマ:「ああ。ルクエンドの方に妙な波動を感じたんでな」
ゼン:「……さっきのあれか?」
オーマ:「そうだ」
ゼン:「俺パス。オッサンだけで……」
シキョウ:「シキョウもいく〜〜〜〜〜〜ッ!」
ゼン:「何ぃぃっっ!?」
がしっ、とオーマにしがみ付いたシキョウがわくわくとその目を輝かせてオーマを見詰め、
オーマ:「――ゼンも来い。こうなったら止められねえ」
ゼン:「マジかよぉぉ……」
オーマの苦笑を帯びた声に、心底嫌そうに頭を抱えた。
そこへ、
ユンナ:「なあによ、煩くて寝ていられないじゃないの」
ふらりと寝起きらしいユンナが現れて、シキョウがオーマからユンナへと突撃をかます。
シキョウ:「あのねあのね。ルクエンドにいくの〜〜。ユンナもいっしょにいこー?」
ユンナ:「ええ? ……オーマ、どう言うこと?」
説明を求められたオーマが、妙な波動を感じて、これは調査に行かねばと思ったところ、シキョウが付いてくると言い出して……と言うと。
ユンナ:「ふうん」
ちろりとオーマの表情を見てから、
ユンナ:「行きたいんでしょ?」
軽くため息を付きながらそう言った。
オーマ:「分かるか」
ユンナ:「分かるわよ。シキョウと同じくらい目が輝いてるじゃないの」
ユンナの指摘通り、オーマは行く気まんまんで、シキョウと同じ――いやそれ以上に目を輝かせていた。その様子を見て、そして自分の腕にしがみ付いているシキョウを見て、
ユンナ:「仕方ないわね。行きましょ」
オーマよりもシキョウの期待する目に負けて、小さく苦笑しながらその柔らかな髪を撫でた。
*****
ユンナ:「……私。目の前の扉を開けるのが凄く怖いんだけど」
ゼン:「お、俺は嫌だぞ。開けに行くなんて絶対嫌だからな!」
異界の門――というか、見たままの扉が、地下水脈に入って少ししたところにでんと立っている。それがただの木製の扉では無いのは、そこから感じ取れる……桃色と言うのか非常に濃厚なフェロモン臭とでも言えばいいのか、扉を開くのをオーマでさえ一瞬躊躇してしまうような波動が漂い、周囲の材質までも金ラメの入ったラブ空間へと変貌を遂げようとしていた。
近づいて耳をすませば、扉の内側からは、とても楽しそうな奇声を上げて何かがうぞうぞと蠢いている音が聞こえてきたり。
オーマ:「だっ、だが! 俺はこの先にあるモノを見極めたい。つうか是非見たい」
シキョウ:「シキョウが開けてもいいなら開けちゃうよ?」
ゼン:「駄目だ駄目だ駄目だ」
シキョウ:「ぶー」
その時、背後にかつん、と固い足音が響く。
ジュダ:「……そうだ。そこは、ヒトが入って良い場所ではない」
ゼン:「――ッ!」
その声を、気配を感じ取った瞬間、戦闘態勢に入ったゼンが、手の中に生み出したナイフを腰溜めにしてぶつかって行く。
が、その刃先はジュダにぶつかる前にくにゃりと内側に曲がってゼンの手の中に消え、そしてジュダはゼンの方向を向いてさえいなかった。
彼の視線は、ユンナとシキョウにのみ向けられている。
オーマ:「珍しいな。俺たちを止めに来たなんて」
ジュダ:「……」
ふいと僅かに目を逸すジュダ。その動きをオーマは見逃さなかった。
オーマ:「っておまえさん、まさか止め立てするのはユンナとシキョウだけじゃねえだろうな!?」
ジュダ:「……俺は。……オーマの実力なら良く知っているからな」
俺は!? と言い出しそうなゼンが、敵わないのを承知でもう一度ジュダに飛び掛ろうとした、その時。
扉が、内から溢れ出すピンクとブルーの入り混じった光と共に大きく開き、その場にいた五人を全て飲み込んで行った。
*****
女生徒:「校長先生、おはようございまーす」
オーマ:「おう、今日もいい笑顔だ! せんせいは嬉しいぞー!」
全生徒数が200に満たないこぢんまりとした雰囲気の学校で、オーマは校長となって生徒たちの面倒を見ていた。
元々人懐っこい部分があり、面倒見も良い事から名物校長として生徒のみならず保護者にも慕われており、オーマは毎日を満足して過ごしている。
ジュダ:「校長。冬の行事について質問が……」
そこに現れたのが、生真面目そうな姿のジュダ教諭。手に書類を持ち、てきぱきと学校行事のプログラムを組んでいく彼は、裏の校長とも言われており、実質的な運営は彼の手によって成されていると言っても過言ではない。
そんな彼を、遠巻きに眺める女生徒たちがちらほらといる。オーマのように開けっぴろげに誰とでも仲良くしてくれる男にも憧れを持つ生徒がいないわけではないが、教師と生徒という何よりも厚い壁を自覚しつつ、どこか影のあるジュダを恋い慕う者の方が多かった。
ユンナ:「……先生」
そして、その女生徒たちに混じって鮮やかなピンク色のツインテールを揺らす少女がここにいる。
ユンナは知っている。その他大勢の生徒に混じっている彼女だけは、ジュダの視線が変わる事を。立場上滅多な事は言えないうえに、プライベートな事は全くと言っていいほど話さないジュダだから、確信を得る事は非常に難しいのだが――それでも、ユンナは信じている。
自分だけはきっと違うと。
シキョウ:「あー、ジュダせんせーい。おはようございま〜〜〜〜す♪」
そこへ、辺りのざわめきを一瞬でかき消すような声が響き渡り、校門からダッシュしてジュダへ飛び掛った女生徒がいた。
ジュダ:「ああ、おはようシキョウ。……ふむ。今日も顔色は良いようだ」
シキョウ:「えへへ〜〜〜」
緑色の髪の、大きなくりくりした目の少女がぽんぽんと頭を撫でられて嬉しそうに微笑み、遠目にしか見る事が出来ずにいる女生徒たちの嫉妬の炎がめらめらと燃え上がる。
ユンナ:「……し、シキョウちゃん」
友だちという以上に何か深い繋がりを感じながらも、こうした開けっぴろげの行動には今も慣れる事が無い。――というか凄く羨ましい。
色恋の気配を感じさせないのが唯一の救いだが、シキョウがジュダを大好きだというのは誰が見ても分かるから。
もしユンナが同じ事をしたら、きっと非難ごうごうでジュダにまで迷惑がかかるのは必至だと分かるだけに、それが悔しくて切ない。
ゼン:「っだぁぁっ、てめぇまた! おいこらそこの越権教師、シキョウから離れやがれっっ!」
ジュダ:「……全く。何度言えば分かる? その態度は教師に対するものではないぞ」
ゼン:「それがどうしたよ。え? てめぇがしてる事だって教師がするもんじゃねえだろうが?」
シキョウ:「ゼンー、なんでそうまいにちジュダせんせいにつっかかるの〜?」
ジュダからいつもの挨拶を終えてつと離れたシキョウが、困ったような顔で校門から息せき切って駆け込んで来たもう一人の生徒、ゼンを困ったように見る。
ゼン:「っ……い、いいじゃねぇかよどうだって!」
そしてゼンは、シキョウから目を逸らしながら、拗ねたように口を尖らせるのだった。
オーマ:「やれやれ。毎朝賑やかな事だな」
ジュダ:「……すみません。俺のせいで」
オーマ:「なあに。おまえさんが何か行過ぎた事をしてるわけじゃねえし、いいさ。ところで――」
にこやかにオーマがジュダに、話があると言ってひと気の無いところへ誘う。
ユンナ:「あら。どうしたのかしら、先生たち」
同年代の少女たちに囲まれている筈なのに、その貫禄と言いゴージャスっぷりが年齢詐称疑惑を浮かび上がらせているユンナが、その様子を見てつつつつ、とこそこそ後を付けて行った。
そして、シキョウとゼンはと言うと。
シキョウ:「これからなにするの? ここでみんなであそぶ?」
ゼン:「違ぇ。てめぇ学校に何しに来てるんだ? 勉強するに決まってるだろ。……俺はフケるが」
シキョウ:「ええええええ〜〜〜。ゼンがふけるならシキョウも〜〜〜」
ゼン:「だあああっ、そんなのは連れ立ってやるモンじゃねえだろ!」
同じ年くらいの生徒たちに囲まれながら、漫才のような会話を繰り返していた。
ジュダ:「校長。話とは?」
オーマ:「あーそれなんだが」
こりこり、と首筋を困ったように掻きながら、オーマがジュダを見る。
オーマ:「来月に控えた聖夜のイベントなんだが、重要な役をする者が急に都合が悪くなったと言ってきてなぁ」
ジュダ:「……つまり、俺にその役をやれと言う事ですね」
オーマ:「うむ。急な事で申し訳ないんだがね。学園の子らにその人物の扮装をしてプレゼントを配って回って欲しいんだ。出来るか?」
ジュダ:「……他に、人の手が無いのなら、仕方ないです」
ふうとため息を付きながらも了承したジュダに、うむうむと満足そうに校長のオーマが頷き、それから空を見上げてこういった。
オーマ:「俺がこうして校長でいられるのも、ジュダのお陰だな。いつも何気ないところでフォローしてくれて助かるよ」
ジュダ:「……いえ」
元々同期の二人だったが、いつの間にか道が分かれ、こうして同じような職場にいながら立場が全く違うものとなってしまったのだが、それでも二人の間に流れる何らかの情は残っている。いやむしろ、互いの立場が明確になってからその情の繋がりは増したような気さえする。
ユンナ:「……ジュダ先生。オーマ先生……」
そんな、誰も入り込めない空間を作り上げている二人を、授業が始まったと言うのにユンナはそっと木の陰から見守っていた。
――二人と同じ同期にいながら、何故か再び生徒としてこの学校に現れた彼女が。
……年齢詐称は噂ではなかったらしい。
そして、秋は過ぎ、ジュダが白いヒゲのお爺さんに扮して学校中を練り歩いた聖夜直前の学校イベントが終わり、新年を迎え――春が来て。
それでも、オーマやジュダならいざしらず、ユンナ、シキョウにゼンの学年が上がる事は無かった。
春は学園周囲の山から山菜摘みをし、夏は海水浴と山登りに興じ、秋はキノコ狩り、クリ拾いに芋掘り、学園祭そして体育祭。真っ白な雪が降る季節は学校総出で雪合戦。
新入生の顔ぶれが何年経っても変わらない事も、学校行事の中で行われた事が無い入学式と卒業式の二大行事が無い不自然さにも、誰もが気付かなかった。いや――気付かないようにしていたのかもしれない。
この閉じた世界には、殺伐とした空気は無かったから。
――陰惨な予感漂う未来も、必要としなかったから。
*****
だが、そんな世界にも終わりは訪れる。
オーマ:「ジュダ先生。それとユンナ。――後は、シキョウとゼン。丁度皆そこにいたな」
楽しい。――毎日が楽しいのだが、何度も何度も季節を繰り返すうちに、心の中のどこかに澱が溜まっていくような気がしてならなかった四人に、にこにこと笑いながらオーマが話し掛けて来た。
ジュダ:「どうしたんですか」
オーマ:「ああ、いやな。――そろそろ卒業式しようかと思ってな。どうだ?」
ユンナ:「卒業式?」
かくんと首を傾げたユンナに、オーマが大きく頷く。
オーマ:「そう。卒業式だ。この学校のな。そういややってなかったなと思ってさ」
シキョウ:「えー。いまでもたのしいのに」
ゼン:「……いつ、やるんだ?」
まだちょっぴり遊び足りなさそうなシキョウの隣で、押し殺した声を上げるゼン。
オーマ:「そうだな――」
何故、他に教師も生徒もいるというのに、この四人を名指しで選んだのか。
オーマにも分かっていなかったに違いないが、
オーマ:「『今』で、いいんじゃねえか?」
にまりと笑いながらその言葉を発したオーマは、校長としてのそれをかけ離れた、いつかどこかで見た笑顔になっており。
――ぴしり、と、世界にヒビが入る音がした。
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あれだけ長い時間を過ごしたように思えたにも関わらず、オーマたちが家を出てから一晩も経っていなかった事が分かったのは、オーマたちが病院へ戻って後。
オーマ:「結局なんだったのかはわからねえが、箱庭みてぇなモンだったのかもなぁ」
ジュダ:「……まあ、な」
オーマが校長だったのが納得いかないと思っているようで、曖昧に言葉を返しながら、ジュダがルクエンドの方向へ目をやる。
オーマ:「楽しかったな」
ジュダ:「……それは、否定しない」
ある時を境に、それまでの人生を一変させる出来事に何度も遭遇してきた二人だから言える事だったのかもしれないが、ジュダのその言葉には深い感慨がたっぷりと詰まっていた。
オーマ:「つーわけで今年の聖夜はよろしくな」
ジュダ:「――なんだと?」
オーマ:「え? だから聖夜のじいちゃん役。あーんなに学校で楽しそうに配ってた癖に、今更拒否すんのか?」
ジュダ:「……あれは――おまえが指名して来たからだろう」
にまりとオーマが笑う。
オーマ:「けど、嫌じゃなかったんだろ?」
ジュダは、言葉に詰まったか、それとも別の感情の故かオーマの問いには答えず、くるりと踵を返す。
オーマ:「待ってるぜ?」
ジュダ:「……好きに、すればいい」
そう言ってすたすたと去って行くジュダの後姿を眺めながら、オーマも自分の病院へと歩き出した。
誰が用意した舞台かは知らないが、ある意味ではオーマたちが望んでいた世界があそこにあり、そして堪能した。
……心残りが無くなるくらいには、遊び倒しただろう。
ほんのちょっぴり、あれだけののんびりゆったりとした世界に未練が無いわけではないが、それでも、自分が生きる実感を得る世界はここなのだと分かっているから。
――だから、恐らくあの時には全員が戻って来たいと願ったのだと思う。
いくら楽しくても、永遠に続く事は無い、と。
悲しいかな、それを知り尽くしている者たちだから。
-END-
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