<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


もーにんぐ・てぃー・ぱーてぃー☆


「皆様、ようこそいらっしゃいました」
 空は抜けるように青く柔らかい秋の日差し下で、ブランシア城のメイドが客人を迎え入れる。
「どうぞこちらへ」
 広い庭先に設けられた、洒落たテーブルの上には可愛らしい茶器や軽食がならべられたいた。
 其処から離れた位置には丸々とした子豚がいいかおりを上げ、竈にくべられパーティーの準備は万端といった雰囲気。
「お好な席にお座りくださいませ」

 思い思いに、くつろぎ用意された茶の香りを楽しむ……さぁパーティーがはじまるぞといったときに城の主が中央に進み出た。
「いやぁ。最近面白い物を手に入れましてね」
 取り出したのは、唐草模様の何の変哲もない風呂敷。
「不思議な風呂敷というらしいんですが…これをこうして」
 客人の前に置かれた、茶器の上にふさりとおおいかぶせる。
「ワン・ツー・スリー!、あら不思議♪」
 テーブルの上に置かれていた、美味そうな食事の数々は忽然と姿を消していた。
「で……?」
「なんか知らないんですけど、かぶせたものを消してしまうんですよ」
 楽しそうに笑う主を見つめる全員の視線が冷たい。
「ご主人様…その消えたものはどこへ…?」
 折角用意した、パーティーの準備を消されたメイドの視線もどこか寒々しい。
「ん〜と、この城のどこかにあるはずだよ」
 見渡してみればあれだけあったたくさんの食べ物全てが姿を消していた。

「「「さがせ」」」

 このままじゃ、パーティーになりゃしない。
 一人楽しそうに笑う、城主をよそにその場にいた全員が椅子を蹴って城内に散った。




 盥の中の人魚を置いて、城の中は上へ下への大騒ぎとなっていた。
「いってぇ何処にいっちまったんだ………」
 ぐきゅるるる……オーマ・シュヴァルツの見事に6つに割れた腹が鳴る。
「はらへっなぁ」
 流石のマッチョ親父も空腹の前に、白旗を上げていた。
 子豚の丸焼きに、山鳥と木の実のキッシュ、地元の野菜のごった煮などが綺麗さっぱりきえてしまったのだからたまらない。
 オーマのみならず、パーティーに呼び出された全てのものが家捜しを行っていた。
「まったく、一体全体何考えてるんだ」
 一緒になって、這い蹲るように石の床の割れ目を一つ一つ叩いていた骸骨が喚く。
「お前さんもたべるのか?」
「あたりめぇだろ!折角のパーティーなんだぜ!!」
 一体全体、動く骨格標本の何処に食べ物が消えていくのか……それは、謎であった。
「ほんとに何処にあるんだー?」
 マッチョな肉体に見合った、頑丈な胃袋は限界に近づいていた。
 本人曰く『下僕主夫毒電波腹筋仕様』というオーマの肉体全体がピカピカと点滅している。
「で、その派手な明かりはなんなんだ?」
「良くぞ聞いてくれた!本日の俺のセクシーむふふん筋肉が食べ物のありかを教えてくれるって寸法よ!」
 食べ物のありかを探知すると、桃色に輝くというその肉体は今は黒々とした輝きを放っている。
「で、何か反応はあるんか?」
「あっちの方に、かすかな反応が」
 オーマの指し示す指先がほんのりとピンクがかっている。
 一定のタイミングで点滅を繰り返す様はまるで、ピンク色の蛍の様。
「あっちに何かあったっけなぁ……?」
 骸骨と親父マッチョ、二人が向かった先には重厚な閂で閉じられた、重たげな扉が一つ。
「この先か?」
「おう、びんびんに感じるぜ!」
 とりあえず、開けてみるか?と顔を見合わせ、二人は扉に手をかけた。

『波のり刑事鼠に注意』

 の、張り紙は空腹の二人の目には入らない。
 せーのの掛け声で扉を開けた瞬間。
 ザザー!と大波が二人を押し流す。
「ナミノリデカぢゅう〜!でぢゅ――!」
「どわ―――!?」
「んだ―!!」
 びっくうぇ〜ぶがよんでるぜ!!
 とサーフボードにのった、筋骨隆々なサングラスをかけ黄色に黒のラインのスーツを着た鼠の耳飾りをつけた大男が波に乗って飛び出してくる。
「「ぎゃ――――!!」」
 流される二人と共に波に上に皿に浮んだ、ケーキが流れていった。


「いったいご主人様は何処にかくしてしまったのでしょうか?」
「今更いっても仕方あるまい」
 女性陣はいたってマイペースに客室の隅々探して周る。
「あ、ありましたわ」
「此方にも、茶葉が山と積まれておるぞ」
 カーテンの陰やら、天井裏やらその隠し場所は節操がない。
「悪くならないうちに探し出しませんと」
「そうじゃな」
 見つけ出しても食べられなければ仕方がない。
 戦いは時間との勝負でもあった。

「ぎゃーだれだここに番犬なんてはなったやつは――!」
「さすがは珍品ぞろいの城だな」
 三つ首の地獄の番犬も骨を見て我先に飛び掛る。
 腹から清清しい笑い声を響かせ、オーマがその状況を微笑ましそうに見る。珍品を集めるのが趣味の主のペットも珍獣ぞろいであった。
「見てないで止めろ――!」
 必死で逃げる骸骨の手からハムやソーセージが零れ落ちる。
 天敵の犬に悲鳴を上げる骸骨と、城の番犬の鬼ごっこはオーマが止めに入るまで暫く続けられた。

 暗パン、蝕パンと書かれた妖しげな棚の奥からリボンのかけられた焼き菓子の詰め合わせ。
「お〜こんなところにも」
 青、ピンク、紫と節操なく光るマッスル親父の腹筋が食べ物のありかを教えてくれる。
「そういえば肉がねぇぞ肉が!」
「そういわれてみると……」
 骨のくせに肉とは何事かとは突っ込まずに、オーマが唸る。
「熱い男の祭りには、肉は定番だよな」
「そう、それとプロテインな」
 うんうんと頷く骨格標本のどこにプロテインが必要なのだろうか……
「ん?この反応は……」
 両手に抱え切れないほどの食べ物を抱えていた腕の上腕二等筋が鉛色に輝く。
「今までにない反応だぜ!」
「何!」
 これまでにない香ばしいよい香りが扉の向うから流れてくる。

『みちゃだめv』

 可愛らしく書かれた文字とハートマークは、見なかったことにして。ふさがった両の手で器用に、ノリと勢いをそのままに二人は自棄に重たげな扉を開けた。
「「………」」
 呆然と顎を外したオーマと骸骨。暫しの沈黙の後、パタンと静かに扉を閉めた。
「な、なななんだ今のは!?」
「……やっぱり、この手の城には定番なのか……」
 あがあがと見てはいけないものを目にした二人は共に慌てたように辺りを見渡す。今のを誰かに見られはしなかったか……
 そにあったのはショッキングピンクのライトの下に並べられた、鞭や手錠、鎖や黒皮のボンテージスーツ、三角木馬や回転台といった妖しげな機器の数々。丁度ライトの当たる中央にこんがりと直火であぶられた、子豚の丸焼きが見えた。
「ひょっとして、カリスマカカアがあそこで……」
「なんだって―――!」
 人魚の汗と嬌声の響き渡る様を思い浮かべ唖然とする。
「て、姐御がグリルされても焼き魚にしかならねぇ気がする」
「いや、反対だ下僕主夫のカリスマがあそこで俺たちに漢気を注入すべく、日々ここでその腕を振るってるにちがいねぇ」
 誰に……と聞いてはいけない。
 オーマの妄想は留まることを知らず、暴走の域に入り自身の空想に身悶える。
「ん〜となると、ここのお館は焼き鳥か」
 妖しい部屋の中の子豚は流石に諦めざるを得ず、骸骨が残念そうな声をあげる。そんな彼も再び扉を開ける気にはなれない様子。
「流石はカリスマカカアがいるだけあるな、ということは……きっと城主もカリスマ番犬カカア天下ハニー迎えた暁には毎晩ここで………」
 むふふでうふふな妄想を胸にかかえたまま、男たちは獲得した食料を手に一先ず城の中庭へと戻るのであった。


「お疲れ様〜、よく見つけ出したねぇ」
「散々な目にあったぜ……」
「お前さんにも、あんな趣味があったとはなぁ……」
 城の主をみる視線が何処か寒々しい。
 とはいえ、食料も取り戻しパーティーの幕はようやっと上がったのであった。




【 Fin 】



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


【1953 / オーマ・シュヴァルツ / 男 / 39歳(実年齢999歳) / 医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】


【NPC /カムラス・エル・ブランシア】

【NPC / リーミレイル】

【NPC / エーダイン】

【NPC / ディース】


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■         ライター通信          ■
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何時もお世話になっております。ライターのはるです。
相変わらず訳の分からない城へのご訪問ありがとうございます。
オーマさんの好奇心により(?)謎な城主のコレクションの一部がばれてしまいましたが如何でしたでしょうか……?

イメージと違う!というようなことが御座いましたら、次回のご参考にさせて頂きますので遠慮なくお申し付けくださいませ。