<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>
いぶにんぐ・てぃー・ぱーてぃー☆
「ふぅ……」
「なぁに、しけた面してんだ?夜はまだまだこれからだぜ!」
カタカタと骸骨が奥歯を鳴らす。
ただのお茶会と聞いていたのだが…やたらと、消耗したように感じるのは気のせいだろか……
「ほれ、是でも飲んで気合入れろや」
手には琥珀色の蒸留酒のビン。
「そろそろ、祭りの目玉が始まるぜ」
「何が始まるんだ?」
「あれですわ」
宴も酣。メイドの少女の指差す先、宵闇も迫った広場の真中にやぐらが立てられていた。
「ご主人様が集めたガラクタを一年に一度整理するので……」
「ガラクタじゃないってばぁ」
「この間有志で収穫した芋もゴミと一緒に焼くんだ」
収穫祭もかねた、祭りのフィナーレは直ぐそこまで迫っていた。
先ほどから振り出した雪がやぐらの火を反射し、辺りを明るく照らし出す。
「う〜さむ」
適度に運動してかいた汗が引き、オーマ・シュヴァルツは軽く身震いした。
「いやー今年も景気よくもえてなぁ」
妖しい等身大の人形らしきものやら、前衛的ともいうのだろうかおどろおどろしい絵画その他用途の知れぬものがカタコンベの皆様の手によって投げ入れられていく。
「せっかく集めたのに……」
当の所有者といえば、恨めしげに投げ入れられていくコレクションの数々を指をくわえて見ている。
「うちにも結構いろいろあるけど、ここもそれにもおとらずえれぇ量のガラクタだな」
小山をなさんとするその量にオーマも苦笑した。
「一年に一度といわず、月に一度は処分したいところなんです」
メイドの少女も容赦も未練もなく非情にも火にくべていく。
世界中から集められたものを、処分するにはもう少し時間がかかりそうだった。
「そういえば、芋はまだかえ?」
たらいの中かで、ぴちぴちと水を跳ね上げながら、人魚が騒ぐ。
先日収穫した、芋も一緒に火の中に入れられていた。
「ふむ、だったらちょっとしたスパイスにこれも一緒に燃やしてみるか」
バッとオーマが取り出したのは、毎度おなじみピンク色の腹黒同盟パンフ。
「ファイヤー!」
「そんなもんいれるでない!!」
人魚の抗議も何処吹く風、オーマは何処からともなくとりだしたパンフレットを火の中に大量に投げ込んだ。フェロモンナマエキス入りという謎の文字は幸いにも誰の目にも触れることはなかった。
一気に火力が上がり、焚き火の中から暑苦しい風が吹き抜ける。
「お〜なんだかわかんねぇけどすごいぞ」
骸骨の見上げる先の黒煙は両の腕を高々と振り上げポージングを決めるアニキの形に見えた。
「なんだか食べるのがこわいねぇ」
「なにをいうか、聖筋界の全てを司る親父神の降臨だぞ!」
「そりゃすげぇや!」
骨アニキと親父マッチョのタッグの前に敵はなかった。
「なんだか、筋の硬そうな芋以外全て燃え尽きるとかいう落ちはあるまいな……」
「さぁ…このようなことは初めてですので……」
炎の周りで、ズンダカ、ズンダカ妖しげな勝利祈願のダンスを踊り始めるマッチョの皆様方に、多少の事には動じないはずの城の女性陣も少し引き気味であった。
囁きあう二人の前のダンスが最高潮の波を呼ぶ。
「アニキ!アニキ!!アニキ!!!」
ブランシア城恒例のキャンプファイヤーは、既に妖しげな儀式に成り代わっていた。
「う〜ん、こんな儀式は僕も始めてみるねぇ」
芋が燃え尽きてしまわないかだけが心配の様子の、城の主がそわそわと落ち着かない。
「イクゼ!」
覇威―――――!
何時の間にか依然は筋骨隆々であったであろう、ズゥンビの皆様と親父マッチョの筋肉の祭典。何が起こっても不思議ではなかった。
「これぞ聖筋界の秘儀!マッスルクッキング!!」
とくと見よと、オーマが素手で火の中から取り出した焼き芋が眩い光を放つ。
光が収まった後には、皿に綺麗に盛り付けられた黄金色に輝くスイート・ポテトがあった。
「あの皿は何処から出てきたんじゃ?」
「その前に食べられるのでしょうか……」
「うるせえぞ、外野!筋肉の素晴らしさをその目と舌で確かめやがれ」
同じように芋を取り出した骸骨の手には芋を練りこんだ蒸しパンがあった。
「なんじゃおぬしまで……」
おそるおそるといった様子で、城の面々がオーマの手の中から生み出された菓子に口をつける。
以外にもそれは、繊細な味わいの美味な菓子であった。
「お、美味しいですわ……」
先ほどの光は一体なんの手品であったのだろうか……
「ふふふ…素晴らしき筋肉の前に、出来ないことなどない」
キッパリと言い切るオーマの背後の炎が一層燃え盛り、ポージングを決めるアニキの姿をとった。
「いろいろあったけど……たのしかったねぇ」
「今年もいろいろ集められましたわね…ご主人様」
城の主とメイドの視線の先で花火を手にしてポーズを決めるオーマとディースの姿があった。
何をやるにも筋肉を誇示しなければならない……彼らはそういう存在の様子。
「熱くなにいのかのう」
「ハハハ、筋肉の熱さに比べればこのぐらい……」
「そうか?」
「て、そんなところにセットするんじゃねぇ!?」
爽笑するオーマの尻の下に骸骨が打ち上げ花火を置きすかさず火を点火する。
「ぎゃー!!」
最後の最後まで、お茶会とは縁遠いパーティーは喧騒をそのままに終わりを迎えようとしていた。
【 Fin 】
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1953 / オーマ・シュヴァルツ / 男 / 39歳(実年齢999歳) / 医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
【NPC /カムラス・エル・ブランシア】
【NPC / リーミレイル】
【NPC / エーダイン】
【NPC / ディース】
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
何時もお世話になっております。ライターのはるです。
お届けが遅くなって申し訳ありませんでした。
同盟のパンフを燃やしてしまってよいものか…悩みましたが景気よく燃やさせていただきました。
いろいろと仕込んでおりますが、少しでもたのしんでいただければ幸いです。
ご参加ありがとうございました。
イメージと違う!というようなことが御座いましたら、次回のご参考にさせて頂きますので遠慮なくお申し付けくださいませ。
|
|