<聖獣界ソーン・黒山羊亭冒険記>
約束の粉雪
☆★☆
吐いた息が真っ白く宙を揺れ、いつの間にか感覚のなくなってしまっていた耳がツキリと痛んだ。
ふわふわの兎の帽子を深く被る。かじかんでしまった指先に、息を吹きかける。
むき出しの足を折りたたむようにして、コートの中に隠す。
天使の広場の中央で、少年は寒そうに丸まっていた。
エスメラルダはその少年にふと目を留めると、そっと近寄った。
寒そうに震える肩にそっと手を置く――ビクンと、驚いたように肩が上下して、少年が振り向いた。
青い青い瞳が、エスメラルダをその色の中に閉じ込める。
「どうしたの?こんなに寒いのに、一人で・・・」
「ママと約束したんだ。今日、一緒にお食事しようって。でもね、無理なの・・・僕も解ってるんだよ。」
銀の髪が、真っ白な帽子の中で揺れる。サラサラと、音を伴いながら。
「だって、ママは死んじゃったんだ。病気だったんだよ。・・・それでも、約束・・・したから。」
「でもここは寒いでしょう?一緒にいらっしゃい、温かい飲み物出してあげるから・・・ね?」
少年は少し考え込むように俯いた後で、コクリと小さく頷いた。
エスメラルダは少年の手を取ると黒山羊亭に入って行った。
シエラと名乗る少年は、エスメラルダから温かいココアを貰うと、美味しそうにそれをコクリと飲んだ。
甘い香りが黒山羊亭に立ち込めて、寒かった室内をほんの少し温かくさせる。
とは言え、どうしたものか・・・。
エスメラルダは思わずシエラをまじまじと見つめた。
お母さんがもう来ないと言う事を、シエラは理解していた。その上で、約束だからと言ってあの場所で待っていたのだ。決して来る事は無い母の姿を想いながら。
「・・・ねぇ、シエラ君。お母さんと約束したのは、外でお食事する事だけ?」
「うん。外で食事をして・・・その後で、帰りましょうねって。ママが、僕にプレゼントをあげるからって。」
「ね、シエラ君。ママとの約束・・・守りたいのよね?」
「・・・でも、ママは来ないよ・・・。」
「それでも、あそこで待っていたじゃない。あんなに寒い中。」
「だって、約束は約束だから。」
そう言いきったシエラの頭を優しく撫ぜると、エスメラルダは立ち上がった。
「それじゃ、その約束、守りましょう。・・・ママじゃないけれど・・・一緒にお食事して・・・ね?」
シエラの顔がパァっと輝く。
そうは言っても、エスメラルダはこれから店を開けなければならない。それに、シエラのお父さんも捜しておかないと・・・。
誰か来てくれた人に、頼もうか――そう思うと、エスメラルダは扉の方を見つめた。
★☆★
黒山羊亭に入るなり、困った表情のエスメラルダと小さな可愛らしい少年が目に入った。
ここに少年がいる事も珍しいが、それ以上に珍しいもの―――彼女のそんな表情は初めて見る・・・そう思うと、藤野 羽月とリラ サファトは顔を見合わせた。
「なにか・・・あったんですか?」
リラが小首を傾げながら、エスメラルダと少年を交互に見詰める。
彼女のライラックの美しい髪が、サラサラと音を立てて肩から滑り落ちた。
「ちょっと困った事が・・・あ、そうだわ・・・2人とも、今日は何か予定はある?」
「いや、特にはないが。」
羽月は、軽く首を振った。
「そう。それなら丁度良かったわ。実はこの子・・・」
そう言ってエスメラルダは、隣で美味しそうにココアを飲む少年―――シエラがここに来た経緯を語り始めた。
「・・・シエラ君は、ママの事が・・・大好きだったんですね。」
全てを聞き終わった後で、リラはそう言うと、シエラにふわりと穏やかな微笑を向けた。
話をふられたシエラがリラと羽月を不思議そうな瞳で見詰めた後で、満面の笑みを返す。
「うん!ママ・・・大好きだよ。優しくって、いっつも・・・僕の事・・・」
話しているうちに、段々とシエラの瞳が曇って行く。今にも泣き出しそうな顔になり、それでも泣くまいと、必死にカップを持つ手に力を入れる。
「・・・それでは、シエラ君の好きな物を・・・食べに行きましょう。」
そっと、リラがシエラの小さな肩に手を置く。
そう言った直ぐ後で、チラリとリラがこちらを振り返った。
口には出さないけれども・・・何を考えているのか分かる・・・。
羽月は穏やかな表情でリラとシエラを交互に見詰めた。
「願いは叶わずとも、貴方がそのように行動してさぞかし母上も喜ばれているだろう。」
「ママ・・・喜んでくれる・・・かなぁ?」
「きっと・・・喜んでくれていますよ。シエラ君は・・・ママと良く行ったお店はありますか?・・・お菓子屋さんなら私、詳しいんですけど・・・料理屋さんはあんまり知らなくて・・・。」
「んー・・・特に・・・ないよぉ?僕もお料理屋さん、よく分かんないやぁ・・・。」
しばらく考えた後で、シエラはそう言うとしゅんとした顔で瞳を伏せた。
「好き嫌いは何かあるか?」
羽月の質問に、シエラは軽く首を振った。
「好き嫌いを言う子は、大きくなれないって・・・ママが言ってたから」
「そうか。良い母上だな・・・」
羽月はそう言うと、シエラの頭を撫ぜた。
「好き嫌いがないのなら、美味しいものを出す店を知っているゆえ、案内しよう。」
「・・・そうですね、それでは・・・羽月さんのオススメのお店に行ってみましょう。」
「うん!」
シエラが満面の笑みで頷く。とても嬉しそうなその顔に、思わずほっと心癒される。
純粋で、無垢で、可愛らしいシエラ―――それはどこかリラと似ているようで・・・。
「お料理屋さん・・・も、良いけど、僕・・・お菓子屋さんにも行きたいな。」
そう言いながら、シエラが上目遣いでリラの事を見詰めた。
「んっと・・・おねえ・・・さん・・・?の、オススメのお店・・・とか。」
「私は・・・リラ サファトって言います。・・・こちらの方が、藤野 羽月さんです。」
「リラ・・・お姉さんに、羽月・・・お兄さん?」
「・・・でも・・・今日はシエラ君の、ママとパパです。」
ふわり、リラは穏やかに微笑んだ。その微笑を見て、シエラが本当に―――本当に嬉しそうな顔をして笑った。
「ママと・・・パパ?」
「えぇ。」
リラがほんの少しだけしゃがむ。そうしてシエラと視線を合わせて―――柔らかい銀色の髪の毛を優しく撫ぜた。
「お菓子屋さんは・・・お食事の後に行きましょう?」
「うん!」
シエラは頷くと、リラに抱きついた。
「それでは、店が混まないうちに・・・」
「そうですね・・・シエラ君、行きましょう。」
「それじゃぁ、宜しく頼んだわ。」
エスメラルダが3人を見詰めながら、そう呟く。何かを含んでいるような微笑を浮かべながら、3人を見送った。
「なんだか、本当の親子みたいね。」
その言葉は、もう店から出て行ってしまった3人には聞こえなかったけれども・・・・・。
☆★☆
今日は一段と冷えると思っていたら・・・空からはチラチラと真っ白な“妖精”が舞い降りて来ていた。
可愛らしくも美しいダンスを踊りながら、舞い落ちるは雪―――
「わぁ・・・雪だぁ・・・」
シエラがそう言って、空を仰ぐ。
ハラリ・・・ハラリ
風に揺れながら、ユラユラと上空を漂う。
「・・・シエラ君、手が寒そう・・・」
リラはそう思うと、そっとシエラの手を取った。
シエラの左手と自分の右手を繋いだのを見て、羽月はシエラの右手と自身の左手を繋いだ。
小さな手は冷え切ってしまっていて、とても冷たかった・・・。
「皆で手を繋げば・・・あったかです。」
リラの言葉に、どこか恥ずかしそうな顔でシエラが頷いた。
「あったかいねぇ〜!」
繋いだ手をブンブンと振り回す。その度に、頭に乗っている帽子の耳がふわふわと揺れる。
「シエラ君・・・本当にウサギさんみたいですね。」
「そうだな。」
羽月は頷くと、シエラの方を見詰めた。
本当にウサギのようだった・・・可愛らしくて、純真な・・・。
ふっとリラを見やると、じっと下を向いて固まっていた。・・・具合でも悪くなってしまったのだろうか?今日は、一段と寒いし・・・。
「リラさん?」
心配になって声を掛けてみると、ややあってからリラが顔を上げた。
「あ・・・なんでもありません。」
「そうか、それなら良かった。」
そう言って優しく微笑むと、リラもふわりとした甘い微笑を返してきた。
「ね、あそこ??」
シエラが羽月の手を揺らし、目の前の明かりを指差す。
段々と近づく光はオレンジ色で、小さな木の看板には、羽月が言っていたお店の名前。
羽月は扉を押し開けると、リラとシエラが入ったのを確認した後で、そっと扉から手を放した。
何が食べたいのかと訊かれたシエラは、戸惑いながらも首を振った。
メニューを読んでも何が何だか分からないと小さい声で言い、それなら羽月さんに決めて頂きましょうか?とリラが助け舟を出すと、嬉しそうに頷いた。
暖かな店の中で、シエラは着ていた真っ白なコートとウサギの耳つき帽子を脱ぐと、隣の椅子に綺麗に畳んだ。
少し高めの椅子は、シエラの足を床から遠ざけ、不安そうにシエラが足元を覗き込む。
それを見ながらリラが、落ちないから大丈夫ですよ。と優しく言い、羽月が、落ちそうになったら助けるので、大丈夫だ。と力強く言ってくれた。
それからしばらく経って、美味しそうな香りと共に運ばれて来た料理を見て、シエラは目を輝かせた。
温かなラムポーク、薄っすらと白い湯気を立てるシチュー、ホカホカのパンの乗ったお皿の端っこには、ちょこりと四角いバターが乗っている。
出来立てのパンの上に、バターを乗せれば、トロリと溶けて甘い香りを漂わせる。
ふわふわのパンはどこか懐かしい味で、体の隅々に行き渡るほどに温かかった。
シチューをスプーンで口に運べば、シエラが口の端につけてしまい、それをリラが苦笑しながらナプキンで拭いてあげる。
水を取ろうとしたシエラの服の裾がシチューの中に入りそうになり、慌てて羽月が裾を押さえた。
美味しい料理は会話も弾む。
他愛もない話だったけれど、その全てが温かく色づき、鮮やかに光り輝く。
食事をし終え、お腹がいっぱいになった後も、3人はしばらく話に花を咲かせていた。
★☆★
お店を出た後で、少し寂しそうなシエラの横顔を見ながら、リラがある提案をした。
「クリスマスが近いし・・・プレゼントやオーナメントの売っているお店が沢山ありそう。・・・見てみましょうか。」
「うん!」
しゅんとしていた顔が、パっと花開く。
クルクルと表情の変わる、素直な子だった。
その笑顔は限りなく無垢で・・・シエラが微笑めば、優しい気持ちになれた。
「シエラさんは、好きな色などはあるのか?」
突然の言葉に、シエラは視線を彷徨わせた。
ややあってから、遠慮がちに口を開き―――
「白は、スキ。すっごいキレーなんだもん。」
「私も・・・好きです。雪の色ですね。」
「純粋な色だな。」
そう言って、そっと瞳を閉じる。
純粋な色―――何ものにも染まらない、限りなくピュアな色。
けれどもそれは、周囲のものに染められやすく、それ故に淡い儚さを纏っている。
ふっと、シエラの横顔を見詰める。
その色は、とてもとてもシエラに似合っていた。
周囲のものに染められやすく、それでもまだ染められていない、純粋な色。
―――きっと、子供はみんな、そうなのだろう。限りなく無垢で、純真で・・・周りに染められてしまう危険と隣り合わせ。それだからこそ、儚く美しいのかも知れない。一瞬の輝きだから、人の心を動かせるほどに力強く光るのかも知れない。
空から舞い落ちるこの雪も、いずれは地に落ちて染められてしまうのと同じように―――。
一瞬が故に美しく、刹那が故に儚く、それでも・・・時の中に閉じ込めてしまえば永遠に輝き続ける。
思い出と言う、時の鳥籠の中に・・・・・。
ふと顔を上げると、丁度良さそうなお店があった。
クリスマスの飾りつけをし終えたお店は、色とりどりに輝く電飾に染められて美しく輝いている。
「この店に入ってみるか。」
「ママ、このお店に入ろうって、パパが。」
「・・・え?・・・あ、はい。入りましょう。」
ボーっとしていたリラがハッとした表情で顔を上げ・・・慌ててそ店の中に入った。
「シエラさん、これは・・・」
「あ、熊さんだぁ〜!見て見て!パパ、熊さん!」
「可愛らしいな。」
羽月がシエラの気を逸らしている間に、リラがそっとお店から出て行くのが見えた。
それを視界の端に留めた後で、再びシエラとの会話に戻る。
「パパ・・・これなぁに?」
「鳥・・・あぁ、鶯と後ろに書いてある。」
そう言ってクルリとぬいぐるみを裏返すと、値札のついてある紙の端っこに“ウグイス”とカタカナで書かれていた。
「あ!見て!ウサギさんだよ!ウサギさん!はい、パパ。」
シエラがウサギのぬいぐるみを羽月に手渡した時・・・リラがそっと帰って来た。
それに、穏やかな微笑を向けると優しく迎え入れた。
シエラがぬいぐるみコーナーに気を取られているすきに、羽月がリラに耳打ちをする。
「無事に買えたか?」
「・・・はい。喜んでくださると・・・良いですね。」
「きっと喜んでくれるだろう。リラさんがシエラさんの事を想って買ってきたものなのだから。」
その言葉に、リラは小さく頷いた。
「ママ!見て見て!これ、ママみたいだよ?」
そう言ってシエラが持ってきたのは、ライラック色の可愛らしいウサギのぬいぐるみだった。真っ赤なサンタクロースの衣装に身を包み、真っ白な袋を提げ持っている、どこか儚げな印象のウサギだった。
「リラさんにそっくりだな。」
「・・・そうですか?」
「うん!ママみたいだよ!」
そう言ってウサギを見せるシエラの視線に合わせるように、リラはしゃがみ込むと、にっこりと微笑んだ。
「有難う御座います・・・それでは、こちらのウサギさんは・・・シエラ君みたいですね。」
羽月の持っているウサギのぬいぐるみを指差すと、リラは言った。
そうかなぁと小声で言って、考え込むように首を傾けた後に、シエラは大きく頷いた。
「それじゃぁ、こっちはパパ?」
黒い毛に、青の瞳のウサギを取って来るとシエラは羽月に差し出した。
「随分と可愛らしいが・・・」
「・・・良いじゃないですか。みんな・・・ウサギさんで。」
リラが立ちあがり、羽月に微笑みかける。
「ママ!あっちも見ようっ!」
「えぇ・・・」
シエラに手を引かれ、リラは玩具売り場の奥へと進んで行った。
それを見た後で、羽月はそっと手に持ったウサギをレジに持って行った―――。
☆★☆
玩具屋を後にして、3人はリラオススメのお菓子屋さんに入ると、クッキーを3缶買った。
1缶はシエラと“お父さん”のために、1缶はエスメラルダのために、そして最後の1缶はリラと羽月のために・・・・・。
黒山羊亭へと帰る道の途中・・・丁度天使の広場の前に来た時に、リラと羽月は足を止めた。
どうしたの?とこそ、口に出しては言わなかったものの、シエラが不思議そうな瞳を二人に向ける。
繋いでいた手を離し、シエラの前に立つとリラが先ほど買った袋を差し出した。
「今日1日の・・・パパとママからの贈り物です。これをつけて、風邪なんてひかずに・・・元気に生きる事。・・・新しい約束です。」
「ママ・・・パパ・・・。」
嬉しそうな顔で、リラから袋を受け取ると、キュっと胸に抱いた。
しっかりと抱きしめ―――
「・・・ありがとう・・・」
それは今日見た中で一番無垢な微笑だった。本当に、白が良く似合う子だと思った。
カサカサと音を立てて袋を開け・・・中から出てきたのは真っ白な帽子とマフラー、そして手袋だった。
ポンポンのついた帽子は暖かそうで、長いマフラーはシエラの事をすっぽりと包んでくれるだろう。手袋の甲の部分には可愛らしい雪の刺繍が淡い水色で入れられており、それをはめて遊びまわるシエラの顔が直ぐにでも浮かんできそうだった。
「真っ白・・・」
「良く似合っている。」
羽月はそう言うと、少しかがんでシエラの頭を撫ぜた。
くすぐったそうに瞳を閉じ、甘えるように羽月の手を取ると、ギュっと両手で包み込んだ。
「あのね、僕もね、ママとパパに・・・プレゼント。」
ごそごそと上着のポケットをあさり、中からなにか小さな物を2つ取り出すと、それぞれに手渡した。
―――それは飴だった。
コロリと手の上で転がる小さな飴は、苺ミルク味だ・・・・・。
「甘いのね、食べると・・・幸せになれるって、ママが言ってたから。」
「・・・そうですね・・・有難う御座います。」
「本当に素敵な母上だ。・・・有難う。」
そう言って一呼吸置いた後で、羽月は穏やかに微笑んだ。
「これは私からのプレゼントだ。」
シエラに手渡すのは、玩具屋で見ていたあの真っ白なウサギだった。目が痛くなるほどに、純白のウサギだった。
そっと、まるで舞い落ちる雪に触れるかのように、シエラはウサギを抱いた。
「あ、いたいた。捜したわ。」
背後からそんな声が聞こえ、振り返った先―――エスメラルダと優しげな顔をした男性が一人、こちらに向かって走って来ていた。
★☆★
月の光を纏いながら、雪は降り続けていた。
ハラリ ハラリと、どこか頼りなさ気に揺れる雪は、今にも淡く消えそうなほどだった。
「温かなものがシエラさんにとっていい思い出となれば良いが・・・・・」
寒くても温めてくれる思い出と共に、ホンの僅かでも記憶に残るよう。
―――約束を、果たせたと思えるように・・・・・。
遠い空に祈る。今は亡き、シエラの母親に。
シエラの無垢な思いが届いていますようにと。
ふと隣を見やると、リラが止っていた。
「リラさん・・・?」
羽月も足を止め、リラの方を振り返った時―――リラが小さな袋をこちらに差し出した。
「プレゼントです・・・。」
「え・・・」
「・・・開けて見てください。」
ゆっくりと袋を開け・・・出てきたものは藍染の綺麗なハンカチだった。
「綺麗だな・・・有難う。」
本当に綺麗な色だった。和服と良く合うその色は、きっとリラの配慮だろう。
羽月は何も言わずに、リラに袋を差し出した。
リラがそれを受け取り・・・袋を開け・・・中から出てきたのはあのウサギ達だった。
黒い毛に青い瞳の―――シエラが羽月のようだと言ったウサギと、ライラック色の、サンタの衣装を着た―――シエラがリラのようだと言ったウサギだった。
今日の思い出に、ずっと残るように・・・。
「羽月さん・・・」
「家のどこかに飾ろう。夏でも冬でも、一年中。」
「・・・はい。」
そっと袋に戻すと、リラは大切そうに袋を握り締めた。
そして―――
触れる指先から感じる心地良い温度に、この先の幸せを願った・・・・・。
〈END〉
◇★◇★◇★ 登場人物 ★◇★◇★◇
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1989 / 藤野 羽月 / 男性 / 17歳(実年齢17歳)/ 傀儡師
1879 / リラ サファト / 女性 / 16歳(実年齢20歳)/家事?
◆☆◆☆◆☆ ライター通信 ☆◆☆◆☆◆
この度は『約束の粉雪』にご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
そして、初めましてのご参加まことに有難う御座いました。(ペコリ)
さて、如何でしたでしょうか?
ご夫婦でのご参加と言う事で、シエラと3人で親子のような感じになるようにと思いながら執筆いたしました。
静かな雪の中、穏やかな雰囲気を上手く描けていればと思います。
視点の関係上、一部個別になっております。
クリスマス近くと言う事で、ノベル内にプレゼント交換(?)のシーンも入れてみました。
少しでも楽しんで頂けたならば嬉しく思います。
それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。
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