<PCあけましておめでとうノベル・2006>
お年玉争奪トライアスロン
●幕開け
「はいはいみなさぁ〜ん、あけまして〜おめでとうございまぁ〜すぅ♪」
進行役――戌年ということもあり、柴犬を模した被り物を身につけている(ちなみに女性)――の声が響く。
『新年お年玉争奪トライアスロン〜二人の明日はどっちだ〜』
舞台の上方には垂れ幕、そして舞台中央にある巨大スクリーンには、これから参加者たちが競い合う競技ルートの映像が流れている。
「ルールは簡単〜、二人一組で凧上げ、羽付き、かるたあわせの特別トライアスロンに挑戦してもらい、最初にゴールした二人にお年玉をあげる、ただそれだけでぇ〜す♪ 妨害工作も自由ですが〜、武器の持ち込みは禁止していますので注意してくださいねぇ〜? では、健闘を〜〜〜祈るぅ!!!」
ノリにノった進行役、ルール説明やら注意事項やらを演説し、そろそろ参加者紹介へと移ろうかというところ。
「お次はぁ、筋猛き医者、オーマ・シュヴァルツ! 小麦筋が眩しいぜぇ〜、きゃ〜♪」
「アレだな。こいつぁ筋賀新年早々、美筋全筋全霊悶えマッチョで明日の聖筋界親父桃源郷へGO★ってかね?」
私見まみれの参加者紹介など何処吹く風。参加者の中の一人、――勿論舞台の上に居る――オーマはこれからのレースに向けての抱負をつぶやいていた。
大きな体に身に付けるはピンクのふりふりエプロン、なかでも胸元に輝くのは可愛らしいワンちゃんアップリケ。
新年ということで戌年らしく決めてきたということだが…妙に似合っている。
それは彼が普段から家事に勤しむ主夫で――下僕と自称しているようだが――あることに由来しているのだが、それを知るものは、生憎ここにはいない。
しかし本能で感じるところがあるのだろうか、まわりの参加者、ちょっと引いてるのは気のせい?
●腹黒イロモノ親父愛☆
参加者が奇数であったため、進行役のリーダーがその穴を埋めるために参加する。
「あたし、がんばっちゃうよぉ〜?」
組むタイミングを逸し、相手を得られなかったオーマのもとに、やる気満々の進行役が歩み寄る。
オーマに対抗してか、ピンクのふりふり衣装に着替えてきたようだが…年季が足らないぞっ。
「桃色筋親父浪漫を理解するなら話は早い! さぁ行くぞスタート地点に」
がっし! と彼女の腕を掴み駆け出すオーマ。
せめて自己紹介くらいさせてぇ〜! という叫びがエコーを引いていたとかいないとか。
●お揃いるんたった♪
「コツは風読みもだが尤もは全ての美筋術以って凧と親父愛電波同調し華麗に暑苦しく駆け抜けるべし!」
有言実行!どりゃぁぁぁ!
糸巻きを持ち、一陣の桃色風となりて駆けるはオーマ。
凧糸のもう一端には、オーマ特別製の桃色ふりふりハート☆の凧が。
かるたあわせの特製かるたを除く道具のカスタマイズは参加者個人の自由となっているため、どんな凧があがっていても自由なわけだが…
この凧、やはり尋常じゃない。
フリルのひとつひとつが効率よく風を受け、裏面に緻密に書き込まれた『下僕主夫心得666筋箇条』が他の凧へと威圧をかける!
「よっしゃ一番手ゴールインだ!」
片手でガッツポーズ。
凧が落ちないように注意しながら糸を巻き、回収したところで…
「ところで、あいつはどうしたよ?」
ついて来ていると思った進行役、チラリと見え隠れしていた大胸筋に魅了され、足腰ちょっと弱ってます。彼女がゴールして初めてこの種目終了ですんで、次に進むのはもう少しお待ち下さい。
「桃色根性は買うが、筋力はまだまだだなぁ」
頬をかきつつ、くすりと笑うオーマの表情は思いのほか柔らかい。
…こんな表情量産無料配布しているのが、もしも知られてしまったら…どうなるかってのはまた別の話だけれど。
●腹黒引力こそが筋世界を征す
ポージングしたアニキ模様羽子板――二つ揃えてこそ明らかになる、兄弟風合わせ絵仕様だ――を構え、一言。
「己の腹黒妄想魂と呼応させれば玉は相手に届くからな、それを意識してくれよ?」
おいおい、妄想で続けられたら世話ないって。とか天の声が聞こえる気もするが、そこは突っ込み腹黒ナンセンス。
「わかったぁ、了解ぃ〜」
ほら、進行役も納得したしっ。
二人向かい合い、横歩きに進むから互いの遅れを見逃すこともない。
「そうそう、その調子でいいじゃねぇか…ほら、よっ、ほいっ」
まめにオーマが軌道修正するので、そうそう大きな問題もおきずに順調、順調。
一度は羽を取り落としたものの、二度目は慎重になったおかげでミスなく突破。
現在の順位は参加者全体の真ん中ほどってところ。
次の種目で挽回する可能性は、まだまだ残っている。
●目指すは親父札!
用は神経衰弱なわけだが、200枚あるカードを一組に付き2枚ずつしか見れない、という以外はなんでもあり。
他の組がめくっているカードを盗み見してしまってもいいし、そろっていない札ならば、他の参加者から奪い取ってもいい。
勿論二人揃って動く必要もなし。ただ。互いの意思疎通が図れない可能性が上がるけれど。
最終的に5組10枚の札を得ればいいわけだが…参加組数は20組を超えているため、早い者勝ちで、運とスピード勝負だったりする。
とまぁ、そこまで考えて、結論。
「歌に篭められし哀愁なナニをビビビ親父愛キャッチすれば問題ないじゃねぇか」
「でもぉ、早くしないとなくなっちゃうよぉ、札〜」
とりあえず足元の一枚をぺらり。
『なかなかしよを ひとりかもねむ』
取り札だ。
「来たぜ人麿親父系っ」
さっと周囲に目を走らせれば、右手後方に目当ての札を裏返し、下におきなおそうとしている参加者が。
コレはゲッチュせねば親父愛が泣くぜ、とばかりに構えるオーマ。
位置について。
「音速ギラリ!」
よーい、どん! と疾走開始!
相手も様子に気づき、一度手を離した札に手を伸ばす。そりゃまぁ叫びながら向かってきてますから。
「マッチョ大胸筋!」
しかしせっかくの親父札、オーマも譲る気なし!
その胸板に力を混めてっ。
「スライディングセクシー乱舞アタァァァック!」
がばっ! ずざざざざーっ!
コンマ秒差でオーマが先に札に触れた!
もう一枚は進行役が手にしているため揃った札扱いとなり、他の参加者はその札に触れることは禁止となり一組確保。
「うっひゃぁ〜、大丈夫〜?」
てってってっ。 と駆け寄り尋ねる進行役。
今更だけど、役に立ってないぞ、この娘。
3組ほど集めたところで、優勝者決定のアナウンスが流れる。
「勝敗より、楽しんだ物勝ちだろ。もともと、お年玉で何か希望してたわけじゃなかったしな?」
パンパン、と汚れやら埃を払いつつ、にかっと笑って、今日限りの相棒に右手を差し出す。
さて、戻ろうじゃないか。
●今年一年筋オーラ全開宜しくどうぞ
「勝負も終わったことだしよ、みんなで正月パーティやらねぇか?」
戻って言うなり、オーマ自身の能力を持って競技会場がパーティ会場に早変わり。
当人は早速調理道具を取り出し、酒のつまみやらを作り始める。
「俺特製筋料理も振舞うしよ! 新年最初の無礼講の宴って奴で、楽しく締めようぜ」
突然の会場変化に戸惑って居た者が大半だったが、我にかえった者達から順に、席に着き談笑や飲み食いを始めていく。
皆そろってオーマの料理に舌鼓をうち、飲んで食って話して舞って、絡んで怒って泣きあって…
でも最後には皆、笑うのだ。
料理をする手をふと止めて、そんな様子を見やる。
「この一時、皆との出会いが何よりのお年玉じゃねぇかな」
ぽつり、誰にともなくこぼしたつもりの言葉であったが。
「オーマさぁん、この鳥の丸焼き、もう一個作って〜っていうかぁ、おかわり〜♪」
今日一日で聞きなれた声が雰囲気ぶち壊し。
皿を差し出し笑う彼女が、呟きを聞いていたのかいないのか。
「どうでもいいか。よぉしそこで待ってろ、今作るからよ!…ま、おまえさんも今日はお疲れ様だったな」
そろそろあっちの卓の料理もきれかかってたか、そろそろおかわりーって来そうだな?ついでにそっちの分も作っちまおう。
新年最初の正月も、こうして家事に追われて過ぎていく…
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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【1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39歳(実年齢999歳)/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
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■ ライター通信 ■
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新年あけましておめでとうございます。桐島めのうです。
改めまして初めまして、そしてご参加ありがとうございました。
新年最初のお仕事、そして自分にとっては初仕事と言うことで緊張していましたが、楽しく書くことができました、この場で感謝を。
詳しく書くことは出来ませんでしたが、柔らかい表情を量産無料配布していた彼が帰宅後にどうなったか…などと想像しながら後半を書かせていただきました。
…ばれたら本当にどうなるのでしょう、気になります。
ギリギリまで納品を伸ばす結果となってしまいましたが、お口にあいますと幸いです♪
それではまた機会に恵まれましたら宜しくお願いいたします(礼
ありがとうございましたっ♪
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