<PCあけましておめでとうノベル・2006>
超時空温泉と初日の出と
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――トリニティ学園パトモス軍学校特殊機甲科
「翠乃原、今年のクリスマスはどうだった?」
「‥‥余計なお世話です。沖田教官」
サングラスの男と翠乃原咲子の会話は一瞬沈黙した。再び沖田政宗が口を開く。
「‥‥訓練生の件だが、年末年始に連絡は取れないか?」
「はぁ? 学校は休みですが‥‥何か考えているのですか?」
「‥‥温泉旅館に行って初日の出を見ようと思っている」
青い帽子とツナギ姿の細い男の背中を見つめていた女は感嘆の声で応える。
「いいですね☆ 今年の反省と来年の抱負を語るのですね。教官らしい考えです。それで、どこの温泉旅館へ?」
長身の男はスッとチラシをデスクへ落とす。それは断崖絶壁に建てられた旅館が描かれたものだ。赤茶のクセっ毛をポニーテールに纏めた女は表情を戦慄かせた。
「こ、この旅館は‥‥噂では不可解な磁場が発生していると言われている所ではありませんか!? しかもファンタズマが管理を任されているとか‥‥サーバントや異世界の者が召喚された等とも聞いています。‥‥訓練のつもりですか?」
「‥‥初日の出がよく見えるらしい」
再び室内は沈黙に包まれた――――。
●召喚される者たち
――暗雲の空に青白い光が迸る中、光の粒子を舞い散らせて二人の少女は悲鳴と共に出現した。
「「ひやゃあぁぁぁッ!!」」
空中に姿を見せたのは白い肌の少女と小麦色の肌の少女だ。しかも何故か生まれたままの姿ときている。緑の髪と黒髪を舞わせながら、ピッタリと抱き合った少女達は勢い良く眼下の海へと落下した――――。
「なに? 今の飛沫は? ‥‥悲鳴?」
夕食までの自由時間。月代千沙夜は旅館の周辺を散歩していた。突如響き渡った女の悲鳴と、海原に浮かんだ水飛沫に、急いで砂浜へと駆け出す。まさか寒中水泳って事でもあるまい。
「綺堂クンや九条クンなら見なかった事にするけど、今のは確かに女の悲鳴だったわ! シンクレアは厨房だし、幾瀬クンでも翠乃原教官でもない。それじゃ誰? あそこね!」
海岸に捉えた人影に駆け寄り、千沙夜は言葉を失った。切れ長の瞳に映るのは、一糸纏わぬ二人の少女だ。緑色の髪の方は小柄で容貌も躯つきも未だ幼さの残る白い肌の少女で、短めの黒髪の方は自分ほどではないが、ボーイッシュながら小麦色の肌に魅力的な膨らみを浮かばせている。二人はピッタリと寄り添い、雫を滴らせた肢体を小刻みに震えさせていた。
「あ、えっと、大丈夫かしら? キミ達、人魚の類い? 言葉は通じている?」
戸惑いながらも微笑みを浮かべ、小首を傾げて見せる。勿論、人化したサーバントの可能性も否定できない。油断は禁物だ。すると、緑色の髪の少女が、震える口を開く。大きな赤い瞳は既に涙目だ。
「‥‥さ、寒いよぉ〜。ここって、どこですか?」
「‥‥そ、それは冬の海に飛び込んだら寒いわよ」
呆れながら苦笑すると、今度はショートヘアの少女が青い瞳を向ける。
「海って‥‥私達は温泉に入っていたのに‥‥」
どうやら普通の状況ではないらしい。否、素っ裸の少女というだけで普通では無いが‥‥。
「兎に角、いらっしゃい。このままじゃ風邪をひいちゃうわ‥‥。待って! こんな格好で旅館に上がらせると煩い虫が付くわね。待ってなさい。いい? ここから動かないで‥‥あぁ、彼等に見つかったら大変ね。あそこに隠れてなさい」
あれこれと脳裏に過ぎるバカ共を思い浮かべては溜息を吐き、気苦労を重ねながら、千沙夜は砂浜を後にした。
「‥‥未亜ちゃん、どうしよう? 私達、何かの魔法で飛ばされたんだわ」
小麦色の少女は、震えながら不安に彩られた瞳で、早春の雛菊 未亜を見つめた。しっとりと濡れた緑髪の少女は、微笑んで励ます。
「大丈夫だよ☆ サバランさん。さっきの女の人も悪い人じゃなさそうだし♪」
「そうかしら? 私には冷酷な魔女か百戦錬磨の女戦士に見えたわ」
確かに千沙夜は冷たい雰囲気を漂わす美女だ。長身と結った漆黒のロングヘアに鋭い眼差し。白い衣服から窮屈そうに晒された胸の谷間を包むレースの施されたアダルティな黒い布地。見様によってはサディスチックな怖いお姉さんに見えなくもない‥‥。
「そ、そんな事ないよぉ。未亜には素敵な女の人に見えたもん♪」
「‥‥そお? うん、そうよね☆ 私の思い過ごしよね♪」
再び冷えた身体を温める為に二人は抱き合う中、未亜はあどけない風貌に安堵の息を漏らした。これで不安感は多少は薄れただろう。それから数刻後、千沙夜は浴衣を持って姿を見せた。
「取り敢えず、これを着なさい。‥‥あん、違うわ。背中から羽織るのよ」
初めて着る浴衣の着方など知る訳もなく、未亜は前から腕を通したのだ。背中も尻も丸見えのまま可愛らしくポーズを決めている。帯で結んでしまえば問題ないが、これでは頭のネジが緩んだ可愛そうな娘だ。真似て着ようとする小麦色の少女を止め、着方を教える。
「ふぅー、シンクレアを連れて来た方が良かったかもしれないわね。でも、厨房で奮戦中だったし‥‥。そうよ、次に帯を締めて‥‥もぉ、私がやってあげるわ」
「‥‥なんだか、胸の辺りとかスースーするわ」
「我慢なさい。私もキミの気持ちは分からなくもないわ。さ、行くわよ」
「あの‥‥さっき厨房って‥‥」
歩き出した美女の背中に未亜は言葉を投げた。
「‥‥なに? お腹空いてるの?」
「違います。未亜もお手伝いしようかなって‥‥未亜、お料理作るの得意なんです♪」
パッと明かりが点いたように少女は笑顔を浮かべた。千沙夜は豊か過ぎる胸元で腕を組むと、細い顎に指を当てて暫し考え込む。
「‥‥良いわよ、あの娘には伝えるわ。その前に事情を聞かなくちゃね☆」
軽くウインクして微笑む美女に、未亜は満面の笑みで応えた。
●厨房只今奮戦中
「シンクレア、‥‥ちょっといいかしら?」
一瞬千沙夜は躊躇った。何故なら逢魔の娘は、慌しく動いていたからだ。彼方此方の鍋が火の点いたまま湯気を漂わせており、台に並べた幾つものマナ板に食材を並べては途切れる事のない包丁の音を響かせていた。左右の三つ編み銀髪を揺らし、パタパタと手を動かしながら答える。
「あ、千沙夜さん? 今とっても忙しいの!」
「‥‥見れば分かるわ。そこでお手伝いさんを連れて来たんだけど、使ってくれないかしら?」
「未亜です! うわあぁ☆ すごーい!」
少女は広い厨房に赤い瞳を爛々と輝かせた。これほど大きな厨房は見た事がない。しかも、見慣れない道具の数々に感嘆の声をあげっぱなしだ。
「まあ☆ 可愛らしい娘さんですね♪ でもファンタズマじゃないし‥‥どなたなの? 浴衣、着てますけど‥‥」
シンクレアは眼鏡に未亜を映し、腰を屈めて微笑みを浮かべた後、小首を傾げて口元に人差し指を当てる。きっと頭の中に大きな?マークが浮かんでいるに違いない。苦笑しながら千沙夜が説明する。
「どうやら異世界から迷い込んだみたいなのよ。海に落ちるのを見たわ。暫らく預かる替わりに未亜クンが手伝いをしたいって。彼女、異世界では料亭を任されるほどの腕らしいわよ」
「へぇ〜♪ 分かりました。未亜さんは私が引き受けるわね☆」
こうしてシンクレアは未亜という助っ人を得て再び戦闘を繰り広げる事となる。
●初めてばかりの世界
夕食の後、未亜とサバランは旅館内を散策していた。
本来ならシンクレアと共に洗い物や翌朝の食事の仕込み等を済ませるつもりだったが、「後は私がやるから良いわよ☆ 折角だから色々と見て回りたいでしょ♪」と言われたので、お言葉に甘えたのだ。しかし、未亜は楽しそうにハシャぐが、サバランは浴衣の隙間が気になってならない。
「未亜ちゃん! そんなに走ったら裾が肌蹴てしまうわ!」
「えぇ〜? 平気だよぉ☆」
クルリと回ってゆっくりと付いて来る少女に振り返って見せるが、既に肩が肌蹴て危うい状況だ。流石にサバランも慌てて駆け寄り、未亜の身なりを正してやる。
「ほら、ごらんなさい。男性に見られたらどうするのよ」
「えへへ☆ ごめんなさぁい。あ、何か音が聞えるよ! サバランさん、こっちこっち!」
呼び止めてはみるが、未亜はパタパタとスリッパの音を響かせて駆けて行った。小さな溜息を洩らし、小麦色の少女も小走りに傍へ向かう。赤い瞳を爛々と輝かせる視線を追うと、見慣れない光景が飛び込む。緑色の台の左右に人が立ち、中央を網状の物で妨げた中を、手にした道具で丸いボールを叩き合っている。互いにボールを叩き合うは、千沙夜と、馴れ馴れしく夕食時に話し掛けて来た綺堂章仁だ。リズミカルな音が交互に響き渡り、緑髪の少女はワクワクしながら左右に首を振っていた。
「わあ☆ なになに? ね、サバランさん、なんだと思う?」
「私も分からないわ。戦っているのかしら?」
刹那、少女達の背後から陽気な青年の笑い声が飛び込んだ。ビクンと小麦色の少女が肩を跳ね上げる。未亜が視線を向けると、茶髪の青年が映った。
「これは卓球ってんだぜ♪ そーだな、友情を深める娯楽道具って感じかな? おう、我ながら良い説明だぜ。どお? 俺と友情を深めないかい?」
「え、遠慮しておくわ。タッキュウってやり方わからないもの」
「はーいはーい! 未亜がやるよーっ!」
ピョンピョンと跳ねる少女の緑髪を縁が笑顔のままグリグリと掻き回す。
「お嬢ちゃんじゃ背丈が足りないぜ。この台の上をラケットでボールを叩き合うんだ。打ち返した時に台を飛び出したら負け。打ち返せなくても負け。無理だろ?」
「えぇ〜! 未亜にもできるよぉ」
簡単には諦めてくれないらしい。尤も、台の高さを調整すれば済む事だが、狙いはサバランだ。お子様に付き合うつもりはない。‥‥と、青年の頭の中に電球がパッと灯る。
「よし、先ずは素振りから始めようぜ。それなら未亜にも出来るだろ?」
こうして、縁の卓球コーチが始まった。
「よし、サバラン! もっと大きく振るんだ! 違うッ、もっと思いっきり!」
「えっと、こう? 違うの? こうッ? えいッ! えいッ!」
青年は前屈みになって必死に指導しながら視線を胸元に注ぐ。サバランが言う通りに素早く素振りを繰り返す度に浴衣が肌蹴て、小麦色の膨らみがチラリチラリと覗いた。
「よしッ! もう少しだぜッ! 連続で振り捲れッ! もっと早くッ! おぉッ、もっ‥‥」
――すぱーんッ★
「ごめんなさい、九条クン? 邪な指導していると今度はラケット当るかもよ☆」
九条縁、千沙夜のスマッシュに撃沈。既に対戦相手の章仁も鼻血を噴いて撃沈済みだ。
「まったくバカな男達ね。私が教えてあげるわ。その前に未亜クンの浴衣ちゃんとしないとね。幸いロリコンはいないけど、九条クンにそんなにサービスしてどうするの?」
「え? あぁッ、未亜ちゃん! ユカタッ! ユカタッ!」
美女が呆れたように微笑む中、サバランが悲鳴に近い声を響かせてラケットをブンブンと未亜に向けて振り捲った。当の本人は小首を傾げるものの、トンでもない身なりになっていた事に後に気付く。
その後、卓球の真似事をしたり、将棋を観戦したりして娯楽室での時間は瞬く間に過ぎて行った。
「タッキュウも楽しかったけど、ショーギも面白かったね☆」
「そうね。‥‥ショーギはまるで小さな戦争みたいだったわ。ザドス軍が持っていたら私達の村は大変だったかも‥‥皆、大丈夫かしら?」
サバランはふと自分の世界を思い出し、顔色を曇らせた。彼女は小さな村からも出た事のない娘だ。異世界に飛ばされた不安が再び脳裏を過ぎるのも分からなくもない。
「大丈夫だよ☆ 汗かいちゃったから温泉に入ろうよ♪」
「‥‥そうね。元々温泉に入っていたんだもの。もしかすると戻れるかも‥‥それも考えものね。また衣服もないまま飛ばされるのはお断りだわ」
二人は笑いながら廊下を歩いて行った。向かうは温泉だ。
●露天風呂にて
未亜は一人、白い柔肌にタオルを巻いて戸を開けた。ひんやりとした外気が風と共に少女の華奢な肢体を撫で、両肩を抱いてプルリと震える。
「あーん、やっぱり外は寒いよぉ。でもやっぱり温泉は外だもんね」
サバランと共に赴いていた温泉も天然であり、至高の一時を途中でお預けを食らった身だ。ここは寒くても露天風呂と心に決めていたのである。因みにサバランは女湯へ行ったらしい。何度も説得したが、抵抗があるようだ。尤も、中世時代なら混浴が当たり前なのだが、サバランの村では文化が進歩しており、生活は中世ながらも混浴は見掛けない。
「あっちから湯気が発ってる♪」
柔らかな明かりが点々と灯る竹の床を楽しそうにステップを踏みながら湯船へと向かった。赤い瞳に映るは大きな岩に囲まれた天然の湯船だ。
「わあ☆ 温泉だぁ♪」
「あら? 確か、未亜さんよね」
湯気の中に浮かび上がったのは、赤茶のクセっ毛をアップに纏め上げた女性だった。名前は確か――――。
「ミドリノハラさん、ですよね?」
「ええ、そうよ。あら? お連れの方は?」
「女湯の方に行っちゃいましたぁ。一緒に入ろうって言ったのにぃ」
残念そうに細い眉をハの字にする未亜。咲子はクスッと笑って見せる。
「仕方ないわよね。私も抵抗はあったんだけど‥‥思い切って入ってみたのよ。‥‥幸い、未だ誰も先客がいなかったけどね」
のぼせたのか、咲子は肌を桜色に染めて寂しそうに微笑んだ気がした。もしかすると誰かを待っていたのかな? と少女は思ったが、年齢の割りに様々な人生経験を積んだ未亜はスックと立ち上がると、思いっきり湯の中へ飛び込んだ。派手に飛沫があがり、明るい悲鳴が薄闇に響き渡った。
「もう〜‥‥元気ね、未亜さんは」
「元気が取柄ですから☆ どんなに辛くても元気に笑っていれば乗り越えられるんです! はぁ〜♪ 気持ち良い〜☆」
瞳を閉じて恍惚の表情を浮かべて湯を堪能する少女を見つめ、咲子も顔をあげると瞳を閉じ微笑む。
「そうね‥‥それが一番ね」
――ガラッ★
ゆったりと寛ぐ中、戸を開けた音が聞こえた。咲子は瞳を開き、慌てて未亜にタオルを巻くよう指示して岩陰に思わず身を寄せる。ゆっくりと近付く人の気配。男か? それとも女か?
『あら? 誰もいないようね。シンクレア、一番風呂みたいよ』
『本当? それじゃ、月見酒と洒落込みますか♪』
「シンクレアさん達だぁ☆」
声を聞いた未亜が両手をあげて飛沫を散らせる。誰もいないと思ったばかりに、千沙夜は身構えたまま固まり、シンクレアはお銚子とお猪口を乗せたお盆を落としそうになって慌ててバランスを取っていた。湯気の中には苦笑を浮かべる14クラスの女教官も見える。
「一番風呂じゃなくてゴメンなさいね」
「いえ、構わないわ。ちょっと驚いただけよ」
「未亜さんに翠乃原教官☆ いかがです? 月見酒♪」
こうして露天風呂は四名の女達の宴会場と化した。勿論、例え異世界の者だとしても、未亜にお酒は勧められない。三人が頬を紅潮させて至極の表情を浮かべる中、ちょっぴり少女は残念そうに指を口元に当てていた。
平穏な刻が流れる露天風呂。しかし、それは束の間の出来事となる。
『ひぃやっほーい!! ブラボーッ! こーんよーくーッ!!』
『おいおい、恥かしいだろそりゃあ‥‥』
響き渡ったのは男の破廉恥な程の叫び声だ。後に続く落ち着いた声は恐らく彼だろう。咲子は思わず咽り、未亜が背中を擦る中、千沙夜とシンクレアは軽く溜息を吐くと、湯から上がった――――。
『未亜ちゃん? もうあがったぁ? 私、そろそろあがるわ』
暫らく息を殺して見守る中、高い木製の衝立越しに少女の気だるそうな声が響いた。
(あ、サバランさん! どうしよう‥‥いま出てもいいのかなぁ‥‥)
未亜が戸惑う中、事態が急変する事を未だ知る由も無かった――――。
●今年の抱負を胸に
――2006年1月1日AM。
「いっひひひ、それじゃ、行くぜ!」
幾瀬楼は二カッと笑みを見せると、前方に手を翳し、魔の刻印を輝かせた。腰ほどまで伸びた黒髪が舞い踊る中、手に装着されたのは爪型魔皇殻『セーフガードマスタリー』だ。彼女は尚も力を解放し、翳した先に円形状の障壁を模らせた。それをゆっくりと移動させ、地面に下ろす。
「さ、乗った乗った♪」
「わあ☆ えいッ」
誰もが躊躇する中、未亜が軽く緑髪を舞わせてピョンと障壁に乗る。慌てたのはサバランだが、魔法の一種と納得したものの恐る恐る足を踏み入れ、次に四方神結が続いた。残るはトリニティ学園の面々だが‥‥。やはりオリジナル魔皇殻には一抹の不安が残る。
「本当に大丈夫なの?」
「ここからでも初日の出はよく見える筈ですけど」
「いいじゃん♪ より高い方が眺めも良いぜ? ほら、星渡、てめぇが先に乗らなくてどうすんだよ!」
仕方なく不安気に星渡学が上がる。千沙夜、シンクレア、追って章仁、縁と続き、残ったのは沖田政宗と咲子、そして、霧生勇、ジャスミン・ウィタードだ。初老の男が小刻みに震える金髪ソバージュの少女に青い瞳を向ける。
「なんだ怖いのか? 背中に乗るかね?」
「けっ、結構ですわ! きゃッ、ちょっと、こら、セクハラ親父!」
灰色髪の男は軽々とジャスミンを肩車して、喚き捲る少女が頭上で暴れる中、そのまま微笑みながら障壁に上がった。仕方がない。二人の教官も後に続いた。全員乗ったのを確認すると、桜はゆっくりと翳した手を天空へと掲げてゆく。
「行っくぜーッ! そーらッ高い高ーい♪」
魔皇の手の動きと共に障壁が舞い上がった。未亜は楽しそうに満面の笑みを浮かべるが、サバランはあまりの高さにピッタリとしがみ付いて離れる気配がない。暴れていたジャスミンは勇の灰色の髪を思いっきり掴んで「落としたら承知しませんわよ!」と震える声を洩らしていた。
「お、初日の出だぜ!!」
水平線の彼方から、太陽が浮かんで来る。次第に輝きを増してゆき、放射される陽光が闇を照らし出す。頃合を見て、サングラスの男が口を開く。
「さあ、今年の抱負だ!! 皆、それぞれの胸に刻めッ!!」
手を組む者もいれば、掌を合わせる者もいる。昇ってゆく朝日に向けて瞳を閉じた。
――みんなが幸せになりますように☆
刹那、異世界人の身体から光の粒子が舞い出す。それぞれが瞳を開き、別れの瞬間を感じた。
「シンクレアさん、一緒にお料理できて、未亜、とても楽しかったよ☆」
「私も楽しかったわ♪ 向こうでも美味しい料理を作ってよね☆」
「うんッ! 未亜、頑張るよ☆」
緑の髪をふわりふわりと舞い揺らし、端整な風貌に涙を潤ませながら、千沙夜達にもお別れを告げてゆく。そんな中、粒子が瞬く間に泡に如く舞いあがると、そのまま異世界人は消失した。
きっとそれぞれの世界で暮らしてゆく事だろう。
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★PCあけましておめでとうノベル2006★┗━┛
【整理番号(ウェブID)/PC名/性別/年齢/職業】
【w3a525maoh/九条・縁/男/25歳/特殊機甲科14クラス訓練生】
【w3a548maoh/月代・千沙夜/女/30歳/特殊機甲科13クラス教官】
【w3a548ouma/シンクレア/女/23歳/特殊機甲科13クラス教官】
【w3g589maoh/幾瀬・楼/女/24歳/特殊機甲科13クラス教官】
【w3k917maoh/霧生・勇/男/61歳/特殊機甲科13クラス教官】
【3941/四方神・結/女性/17歳/学生兼退魔師】
【1055/早春の雛菊 未亜/女性/12歳/癒し手】
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■ ライター通信 ■
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明けましておめでとうござ‥‥と言える時期ではありませんね(^^;
今年も宜しくお願い致します。お久し振りです☆切磋巧実です。
この度は発注頂き、誠に有り難うございました☆ 値上げしておりますのに、沢山参加して頂き、嬉しい限りです。
さて、いかがでしたでしょうか? アクスの皆様も普段以上に描かせて頂いたつもりです。切磋的には、異世界人も召喚され、おかげさまで物語の幅も広まったと思います。‥‥と言いますか、広がり過ぎてバランス調整させて頂きました。つまり他のノベルに登場していたりする場合もあります。よろしければチェックしてみて下さいね。
参加ありがとうございます☆ まさかここで出会えるとは思いませんでした。もう、初っ端から大変でしたね。因みに温泉では髪は解いているのか纏めているのか、そのままなのか微妙でしたので、細かく演出していません。お好きなように脳内補完して下さいね。
それにしてもサバラン選んで頂けるとは(笑)有り難うございました☆ 適材適所もナイスです♪ いいコンビで楽しく調理していたんだと思いますよ。
因みに送還後は再び温泉です(笑)。大丈夫☆ 浴衣は異世界のものなので元の格好のままですから。再び堪能して下さい。
あと、この出来事は送還と共に忘れてゆきます。夢くらいの記憶となるでしょう。
楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
それでは、また出会える事を祈って☆
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