<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


Boy’s&Girl’s Smith
 周囲に広がっているのは薔薇アニキ天使達が大胸筋賛歌叫び人面ミラーボール回りハート乱舞親父愛特製花園アニキバトル筋フィールド。
 その真っ只中に、二人は己の武器と防具を持って立っていた。見守っているのは熱い視線ナンパ癖有イロモノフレンズ人面草&霊魂軍団。
 簡易なコロッセオのような光景が一瞬で形成され、その真ん中に立たされ、なおかつ二人の黄金像が日の光を浴びてきらびやかに光っている。
 二人は同時に思った

((いったい、何がどうなってこんなことになっているのだろう…))

と。

 時は戻り、お昼前のキャリバーン家の工房。
「美筋モーニング桃色乱舞痴話筋喧嘩★なんざぁ、見せ付けてくれやがるってかね?」
 どこから来たのか煌びやかな装飾の目立つ2mを越える巨体の男が現れた。
「どこのおっさんだよ…というか、『美筋モーニング桃色乱舞痴話筋喧嘩』って何だよ、意味不明すぎるってば」
 工房で自前の武器を鍛え終わったエクスが汗を拭きつつ巨漢―オーマ・シュヴァルツ―に対して突っ込みを入れた。顔はなにやらいつも異常に疲れたという顔だ。
「ははは、教育の行き届いてない小僧だな。初対面のナイスガイにおっさんとはいい度胸じゃないか。おまえの親父さんに頼まれてやってきたオーマ・シュヴァルツだ」
 ぐりぐりと身長差と体力を生かした押し付けぐりぐりとを頭部にかましつつ笑顔で対応。目が笑っていたかどうかは想像にお任せする。
「いでででででっ!?で、そのオーマさんが親父に頼まれて何をしに来たんだよ」
「決まっているだろうが、おまえ、親父のためとあらば例え火の中水の中針山を越えてやってくる…それが俺だ!」
 バァーン!! と背景に雷鳴が轟く映像が浮かびめまいのするエクス。
「わ、わかった…とりあえず、事情はわかったから武器選んでくれよ。あんたがやってくれるんだろ?」
 と、出来上がった一般的には武器とはいいがたいキワモノを並べてオーマに選ばせる。オーマは悩みに悩む。例えるならば寒波で野菜高騰のため家計火の車だ。
それが稼ぎ頭であるアニキ直撃を直撃し、
そのことを思うと号泣してしまうような苦渋の選択を迫られている気分だった。
「…とまぁ、そういう経緯で『これ』な」
 オーマが手にとったのはえんどう豆のような形をしたソードだ。なぜか武器なのに香ばしい香りとおいしそうな色をしている。何より、切れそうもないところがいい。
「んじゃ、これで…」
 とエクスが試合の話をしようとしたとき、オーマはカキピースライサーをエクスに握らせた。
「戦うのはおまえだ、それとも何か? 自分の獲物で戦うのは自信がねぇのか? そんなものを使わせるつもりか?」
 ずずいっとオーマが迫ると、エクスは受け取り、わかったよとボソッとつぶやいた。

 そして、そのあとのイーディス家の工房。
 こちらの対応は割りとまともだった。
「ああ、キャリバーンさんとこのおじさんが頼んだ仲介人ね…多分、呼ぶだろうと思ったし」
 はぁと少女はため息をつく。シルトとしては本当は喧嘩をしたくはないのだが、売り言葉に買い言葉で大抵喧嘩になってしまう。そんな現状を良く思っていない。
「どちらにせよ、一回自分達でぶつかりあってすっきりしたほうがいいだろ? ということで、『これで』おまえはあっちと戦うことだ」
 と、これを使えば番犬ラブはにーの親父生絞りお仕置きは防げるかな? などと思いつつリパーシールドを渡す。
「え、あたしが? まぁ、オーマさんの言いたいこともわかるけど…」
 口を濁すシルトにオーマが仕方ないと言いたげに後ろを向く。
「そうか、まあ女に戦うことは強制できないからな…代わりに『アレ』にやらせるか」
 そこにいたのは蠢く魑魅魍魎。禍々しさとか…とりあえず形容しがたい『アレ』がそこにいた。
「い、いや、私がやります!!」
 見せられた後の彼女の答えは即答だった。

 そして、現在に戻る。

二人は…

半ばあきらめていた。

「だまされたというか、そんなこといってててもはじまらねぇ…勝負するぞ」
 じりといたるとこから浴びせられる怪しげな視線を受けつつ構えるエクス。
「こうやって、真剣に向かい合うのって…もしかしてはじめて?」
 同じく、怪しげ視線を受け気絶しそうになるのを抑えてシルトも盾を構える。
「二人の仲介人として、この盛大な舞台(ステージ)を用意した! さぁ、全力で戦うがいい!」
 いつの間にやらVIP席に相当するような高い見物席の上に立ち、ばさぁと両手を広げて試合開始をオーマが宣言した。

 先手はエクスが取った。香ばしい香りの漂うソードがシルトに迫る。
「食らえっ!」
「ちょ、本気でくるわけ!?」
 熟練者同士ならまだしも、初心者同士の勝負。白熱した展開にはなかなかならない。
攻撃してもなかなかあたらないのだ。逃げてカウンターして、当たらず避けられてというような試合展開。
「でぇぇい、そろそろあたれよ…な…」
「あ、あんたこと…ちゃんと狙いなさい…よぉ」
 試合開始から、数時間がたち、二人とも息が切れ始めた。使い慣れない武器や盾を振り回しているのだから当然のこと。
「こう…なっ…たら、次で…勝負…だ!」
「いい…わよ!」
 再び両者は自分の信念であるものを構える。オーマはその様子をただじっと見守っている。
 一歩、二歩、三歩と二人は互いのほうに向かってかけ、距離を縮め…
「でりゃぁぁ!」
「やぁぁぁっ!」

 ガキーン…ピキピキピキ。

 二人の武器がぶつかり、ヒビの入る音が響く。
「「やった!!」」
 それぞれ自分が勝ったと思い、喜びの声を上げる…が、しかし…。

 パリーン

 二人の武器が同時に砕け散った。

「勝負あったな…」
 ストンと唖然とする二人の間に降り立ち、オーマが二人の肩を叩く。
「いいか、おまえら、おまえらの鍛えた道具に宿るは力だけでなく両親から受け継いだ想い魂もあるんだぞ?」
 その一言に二人ははっとなり、オーマを見上げた。オーマは続ける。諭すように…
「だからこそ、優劣つけるは如何な事か考えろ、防具は武器護りし盾、武具は防具護りし剣、互いがあるからこそ輝き在りどちらが欠けても意味為さねぇんだよ」
 砕けた破片を集める。手が切れるが関係ない。痛みを感じていないのか、顔に変化はない。
「お前達二人もこんなに粉々になりたいか? 違うだろ? 互いを高めるためにお互い鍛冶をやってきているはずだ」
 お前達の親父さん達もそうやって来たに違いないさと付け加えて。破片を袋に入れて二人に渡した。
「そうだな…自分達の鍛冶で作るものは魂を込めて、互いを護り護られるものだったよな」
 エクスはしみじみと感じていた。お互いが自信を持って作ったもの同士がぶつかり砕けあった。それでは意味が無いと身をもって感じたのだ。
「私は…女だからって負けたくなかった部分もあったけど…本当は、昔みたいに仲良くずっとやっていきたっかったんだ…ごめんね、私が意地っ張りだったから」
 と、彼女は謝った。その態度にエクスはどぎまぎしつつ、照れくさそうに礼でかえした。
「なんだ…えっと…その、俺の方こそ、ごめん」
 二人は手をとり握手して和解をした。気づけば夕日がまぶしい。いつの間にやら観客も闘技場もどこにも無い。
「さすが、親父はカカァには勝てないってなぁ…さて、二人の中も戻ったことだし、これで俺は帰るぜ…おっと、仲直りできたご褒美をくれてやろう」
 ごそごそと内ポケットをあさって本を二冊とりだし、それぞれに進呈した。
「じゃあな」
 夕日を浴びて巨漢が去る。いろいろあったけど、いい人だったなとエクスとシルトは語りあっていた。

 その夜、渡された本をを見て『いい人』という認識を前言撤回したのは言うまでも無い。

                                     Fin

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【1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39歳(実年齢999歳)/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】

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■         ライター通信          ■
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 どうも、新人ライターの橘真斗(たちばなまさと)です。こんな具合でいいのかと不安ではありますが、がんばって書かせていただきました。
他の人の作品を見つつオーマさんのキャラというものを考えたりしました。結果がこんな感じです(汗)
 ソーンでは初めての作品となりました。ご感想をお待ちしております。
 それでは、今回はありがとうございました!!