<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


【鬼神幻影】センキアラワル

〜介入〜

「人の姿をした鬼が…街を襲ってきているんだ!!」
 息も絶え絶えにいった男の言葉に街の人たちは動揺し、動こうとしない。
 誰だってそんなことに関わりたくはないのだ。しかし、その中から動いた影が一つあった。
「あんた、大丈夫か?」
 手を差し伸べたのは少年―湖泉・遼介(1856)―だった。年は15歳。逃げてきた男よりぐっと年下だった。だが、その瞳は何者も恐れない強い力を持っている。
「はやく…街を…場所は…あっちに二日…」
 男は差し伸べられた手をつかみ、反対の手で逃げてきた方向を指す。疲れた男で二日。結構遠いがそんなこといっている場合ではない。
「ああ、分かった…とにかくあんたを運ぶからそれからな…」
 ひょいと男をおぶって街の診療所へ遼介は実に頼もしかった…。
 男はおぶさりながら、遼介に敵のことを伝えてきた。
「あいつは鬼だ…鎧を着込んだ…鬼だ。オーガじゃないもっと人間らしかった」
「人間らしい鬼か…そいつは面倒そうだな」
(はやいところこのおっちゃんを診療所で休ませていかないとな)
 診療所の門をくぐり男を預けると遼介は軽く準備運動をはじめた。
「鎧を着込んだとかきくと、中つ国のサムライを思い出すな…あのころより強くなっているとは思うが…たしか、サムライの敵の殲鬼っていうのも人の姿をしてるっていっていたか」
 アキレス腱を伸ばして、駆け出す用意をする。
「とにかく、現場へ直行するっ!!」
 ビュゥンッと遼介は風になった。

〜遭遇〜

 街に着いたとき、既に火の手は回り逃げ惑う街の人よりも地面や街道で死体になっているものの方が目立つようになっていた。
「くそぅ、盗賊ども…いくぞ!!」
 聖獣カードを取り出し、祈りをささげる。
『我は求む、聖獣の幻影…その力を今示せ、汝はティアマットの化身なりっ!!』
 聖獣カードから人の姿をしたヴィジョンが現れる。水をつかさどりし雄雄しき英雄といった貫禄を漂わせていた、
「こ、こいつヴィジョン使いだ!!」
「くそ、数でかかればやれる、。まだ子供だ!!」
 盗賊たち数人は舐められまいと行動に出る。
「人の命を軽く見るやつらには、俺が制裁をくわえてやるっ!! いくぜ!」
 遼介のヴィジョンが光る…しかし、何も起きない。
「はんっ、見掛け倒しか!」
 動こうとする盗賊の足をがしっとつかむ何かがあった。
「?…うわぁぁぁっ!?」
 それは先ほど盗賊たちが殺したはずの人間。助けてぇ助けてぇといいながらしがみついてくる。背中を切られてやられたものはまだいい。
 腕のないもの、顔がつぶれてしまったもの、鬼に着られて胴と顔が分かれているものなどが盗賊たちのほうへにじりより、しがみ付く。
「ひぃぃぃぃ!? この、離せ!! 離せぇぇっ!?」
 引き剥がそうとするが、動かない…という幻覚を遼介を襲おうとしていた賊は見ていた。
幻覚の範囲外に賊たちは何をやっているのかわからないという顔をしていた。だが、それも一瞬。
「オネンネしてろ、おっさんっ!!」
 ゴスッと首筋を峰打ち、一撃で気絶させられていった。ここまでかかった時間は1分もない。無殺で10人をその時間で遼介は片付けたのだ。
「っと、いけね…ボスについて聞くの忘れてた」
 あわてて探るも全員気絶しているか、幻覚で発狂しているかのどちらかしかない。そのとき、すさまじい剣風が遼介の頬に張り手をするように通り過ぎた。
「あっちか…」
 風の吹いてきたほうへ駆け出すと、太い声が聞こえてきた。
「……その首…この俺“戦鬼”鬼雲丸がもらう受けるっ!!」
「やべぇ、間に合えよっ!!」
 持ち前の脚力で遼介は風になった。

〜拮抗〜
 
「「「!!」」」
 キィンッという高い金属音が響き、三種の驚きが現れた。
 一つはティナの助かったという驚き
 一つは鬼雲丸の受け止められたという驚き
 一つは遼介の間に合ったという驚き
「ふぅ…真面目に間に合うとは思ってもいなかったぜ…」
 遼介は分厚い塊のような刀を細身の剣で受け止めつつ、一息ついた。その一瞬の隙をついて鬼雲丸は体当たりを食らわせた。。
「ぐぉっ!?」
 苦悶の声を上げて、遼介は吹き飛ぶが、ヴィジョンが彼を支え、地面への衝突は防げた。      ティナもその一連の流れに乗るように遼介のほうへバックステップし、鬼雲丸を睨む。
「つぅ…おい、あんた。 ここは俺に任せて逃げろ殺されるぞ」
「おいでもあんたでもない…ティナはティナ」
 体勢を整えた遼介がティナを心配して逃げるよういうが、ティナはそっけなく返した。
 遼介はうわーめんどくせーなどと思いつつも、こういう手合いは何を言っても無駄だと思い。敵のほうに意思を向ける。
「邪魔だけはするなよ、ティナ…」
「そっちこそ…」
 強大な敵に対しているというのに、余裕な二人を見て、鬼雲丸は笑った。
「ふふふふ、面白いぞ。この状況で余裕をもてるか!!」
 楽しいといわんばかりに笑い、武器を構える。
「大丈夫か、あいつ…」
「変だけど…強い」
 二人が感想を述べていると。鬼雲丸は吼えた。
「遠からんものは音にきけぇ! 近からば、よって目にモノみよ!! 我はサムライ、“戦鬼”鬼雲丸なりぃぃっ!!」
 すさまじい咆哮に、仲間と思われた盗賊たちも逃げていく。遼介とティナも足がすくむ。
「終わりだ…次会うまでに、強くなってこい…そして、我を止めてみせよ!!」
 鬼雲丸が巨大な剣を振るう、二人が最後に見たのは紅蓮の炎をまとった分厚い剣線だった…

〜転機〜

「ん…」
 遼介が目を覚ますとそこは古びた診療所だった。
「目覚めたかい?」
 診療所の主らしい人物は遼介に声をかけた。周囲を見るが聖都の診療所ではない。
「ここは…どこだ?」
「旅の人が君達を助けてここまで運んできてくれてね。隣街が火事だったようで…やけどがひどいから逃げ遅れかな? でも、命があるだけ感謝しなきゃだめだよ」
 遼介の期待していた答えとは幾分違うが、大体は理解できた…君達?
「君達って…」
「ううぁぅ…」
 聞こうとしたとき、隣のベッドから声が聞こえた。遼介がそちらを見るとティナが苦しそうに横たわっていた。体は包帯で巻かれている。
「……」
「命に別状はないけれど、かなり重傷だね。一週間は安静にしていないといけないよ」
 主はそういって、遼介の肩を叩いた。
「なぁ、その隣町って生き残りは…」
「旅人の話しでは…君達以外は全滅だったそうだよ。盗賊の死体もあったから仲間割れの末ではないかって話しだけれど…」
「そっか…」
 生かされた…。遼介はそれを感じた。盗賊相手にやれてもサムライに勝てなかった。
 それ以上に、何故サムライが街を襲っていたのかわからない。
 今は寝よう、そして考えよう…これから、自分がどうするかを…


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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【PC名(ID)  /性別/年齢         /職業】
湖泉・遼介 (1856)/男/15歳/ヴィジョン使い
ティナ(2447)/女/16歳/無職


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■         ライター通信          ■
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>遼介さん
はじめまして、ご注文ありがとうございました!
ヴィジョン使いは初めてですので、こんな具合でいいのかと悩みつつ書きましたがいかがでしょうか?
センキをベースにしましたが、中つ国の人間が出ていないということで、いろいろ調整に困りましたができたほうだと思っています(思っているだけ?)

連作も検討していますので、また参加していただけたらなと思います。
今回はありがとうございました!