<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>
【鬼神幻影】センキアラワル
〜侵略〜
盗賊団が来たのは突然だった。平和だった日常があっという間に、地獄へと激変した。
自分を拾ってくれた村人はティナを家の片隅にいるように指示したあと、外に出て行った。しばらく大人しくしていたが、家の焼けるにおいを感じて約束を破り外に飛び出したら、周囲は昨日までのものとは明らかに違っていた。
「燃え…てる」
ティナは目の前に広がる光景を見て、ぼそりとつぶやいた。
人々は逃げ惑い、ごろつきのような男たちが男を殺し、女を奪っていく。ティナにも盗賊らしい男が襲いかかってきた。見世物にしたような人間のような男が…
「…許さない」
男の突撃をかがんでかわし、鋭い爪でカウンター気味に斬りかかった。
「ぐぉっ!? この獣が…」
思わぬ反撃だったため、脇腹をやられて衣類と地面を赤く染めながら、盗賊は絶命した。ティナは自分の爪についた血を少し見つめる。初めて人に刃を向けた…その肉を切る感覚が残こした爪を…
「おい、アンドレがやられた! この女を抑えるぞ!」
硬直していた仲間の盗賊がはっと我に帰り、仲間を呼び出していく。
「…!!」
その声にティナも気づき、動き出す。この状況を作った本当の敵を探すために
(ここのひとたちはいいひとだった…わるいひと、みつける)
それだけを心に決めて駆け出した。
〜遭遇〜
街の中央の広場に鬼は陣を引いていた。自警団をつぶしたことにより、街はほぼ抵抗なく抑えられていく。盗賊たちは金品や若い女を連れだしてきて、自分たちのモノにしていく。鬼はじっとその様子を眺め自嘲した。
(異世界で侵略をするとは思わなかったなあ…皮肉なものだ)
「おかしら、あらかたすみました。ただ、変な獣人が逃げ回っているようで」
「ようし…それなら…ん?」
立ち上がって去ろうとしたとき、背後から気配を感じた。
「そこにいるのは誰だ、殺気が漏れているぞ。不意打ちをするのであればもっと気を抑えることだ」
ティナが物陰から出てくる。手下たちは逃げたやつだと鬼に伝えた。
「ほぅ…シノビ…ではないようだな」
「っ!!」
近づいてくる鬼に、ティナ本能で威嚇をする。ほとんど裸の姿であるが、汗がどんどんあふれてくる。この感覚は初めてだった。
「フシャァァァッ!」
四つんばいになって威嚇をする。そうでもしなければ、腰が引けてしまうのだから。
「まだ、修羅場の数が足りないか…良かろう相手になってやろう」
鬼は己の体の中から分厚い鉄の塊のような刀を取りだし振るう。すさまじい剣風が起こり、街を燃やす炎を吹き消した。飛ばされそうになるのを必死にティナはこらえて、先手を取ろうと飛び掛る。
「すきだらけの動きだ、この程度っ!!」
分厚い刀を軽々と操り、ティナを切裂こうと動いた。
「足元、隙があるっ!」
動物並みの運動神経で飛び掛る起動を変化させて足元にヘッドスライディングするように動いて腱を切りにかかった。
「なにっ!?」
予想外の動きに鬼はひるみ、腱にダメージを与えられた。さすがの鬼も片ひざをつく。ティナは転進、再び攻撃に出た。
(攻撃とめたら負ける)
「面白い、面白いぞ女っ!!」
鬼は一瞬目を閉じ、再び見開いてティナを睨んだ。その目は蛇のように禍々しい。
「……ぅ…あぅ!?」
その目を見た瞬間ティナは全身にしびれが広がっていくのを感じた。体が硬直し、動けない。
(う、うごけない)
「まさか、攻撃系武神力を使わなきゃならなくなるとはな…」
鬼は懐からしおりのような髪をだすと、それを切られた腱に当てて立ち上がった。
「ぅ…そ…」
ティナはその光景に驚くがろれつすら回らない。体を動かそうにも小刻みに震えて思うように動かない。鬼が近づく、一歩、二歩、三歩。
「少しは楽しめた…だが、ここまでだ! その首…この俺“戦鬼”鬼雲丸がもらう受けるっ!!」
ティナに向けて分厚い刀が振り下ろされた。
〜拮抗〜
「「「!!」」」
キィンッという高い金属音が響き、三種の驚きが現れた。
一つはティナの助かったという驚き
一つは鬼雲丸の受け止められたという驚き
一つは遼介の間に合ったという驚き
「ふぅ…真面目に間に合うとは思ってもいなかったぜ…」
遼介は分厚い塊のような刀を細身の剣で受け止めつつ、一息ついた。その一瞬の隙をついて鬼雲丸は体当たりを食らわせた。。
「ぐぉっ!?」
苦悶の声を上げて、遼介は吹き飛ぶが、ヴィジョンが彼を支え、地面への衝突は防げた。 ティナもその一連の流れに乗るように遼介のほうへバックステップし、鬼雲丸を睨む。
「つぅ…おい、あんた。 ここは俺に任せて逃げろ殺されるぞ」
「おいでもあんたでもない…ティナはティナ」
体勢を整えた遼介がティナを心配して逃げるよういうが、ティナはそっけなく返した。
遼介はうわーめんどくせーなどと思いつつも、こういう手合いは何を言っても無駄だと思い。敵のほうに意思を向ける。
「邪魔だけはするなよ、ティナ…」
「そっちこそ…」
強大な敵に対しているというのに、余裕な二人を見て、鬼雲丸は笑った。
「ふふふふ、面白いぞ。この状況で余裕をもてるか!!」
楽しいといわんばかりに笑い、武器を構える。
「大丈夫か、あいつ…」
「変だけど…強い」
二人が感想を述べていると。鬼雲丸は吼えた。
「遠からんものは音にきけぇ! 近からば、よって目にモノみよ!! 我はサムライ、“戦鬼”鬼雲丸なりぃぃっ!!」
すさまじい咆哮に、仲間と思われた盗賊たちも逃げていく。遼介とティナも足がすくむ。
「終わりだ…次会うまでに、強くなってこい…そして、我を止めてみせよ!!」
鬼雲丸が巨大な剣を振るう、二人が最後に見たのは紅蓮の炎をまとった分厚い剣線だった…
〜転機〜
「ん…」
遼介が目を覚ますとそこは古びた診療所だった。
「目覚めたかい?」
診療所の主らしい人物は遼介に声をかけた。周囲を見るが聖都の診療所ではない。
「ここは…どこだ?」
「旅の人が君達を助けてここまで運んできてくれてね。隣街が火事だったようで…やけどがひどいから逃げ遅れかな? でも、命があるだけ感謝しなきゃだめだよ」
遼介の期待していた答えとは幾分違うが、大体は理解できた…君達?
「君達って…」
「ううぁぅ…」
聞こうとしたとき、隣のベッドから声が聞こえた。遼介がそちらを見るとティナが苦しそうに横たわっていた。体は包帯で巻かれている。
「……」
「命に別状はないけれど、かなり重傷だね。一週間は安静にしていないといけないよ」
主はそういって、遼介の肩を叩いた。
「なぁ、その隣町って生き残りは…」
「旅人の話しでは…君達以外は全滅だったそうだよ。盗賊の死体もあったから仲間割れの末ではないかって話しだけれど…」
「そっか…」
生かされた…。遼介はそれを感じた。盗賊相手にやれてもサムライに勝てなかった。
それ以上に、何故サムライが街を襲っていたのかわからない。
今は寝よう、そして考えよう…これから、自分がどうするかを…
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛ ★PCゲームノベル★ ┗━┛
【PC名(ID) /性別/年齢 /職業】
湖泉・遼介 (1856)/男/15歳/ヴィジョン使い
ティナ(2447)/女/16歳/無職
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■ ライター通信 ■
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>ティナさん
はじめまして、発注ありがとうございました。
なんというか、とあるゲームの野生児を思い出しながらリプレイを製造してみたしだいです。お気にめされたでしょうか?
いきなりバットエンド風味ですが、懲りずに参加していただけるとうれしいです。
また、機会あればお願いいたします。
今回はありがとうございました!
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