<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


【桜蘭】上巳節激流下り

為了弄潔浄身,能下來河。(身を清めるため、川を下れよ。)
為了弄潔浄心,能下來河。(心を清めるため、川を下れよ。)
称這個東西掛上全部越過龍去。(己がすべてをかけて龍を越え行け。)
因為有那個先,應該抓住東西。(その先に、つかむべきものがあるのだから。)

 3月初めの巳の日を「上巳節:じょうしせつ」といい。
ここ【桜蘭】では心身を清めるために、なぜか激流下りをするのが風習となっていた。
 
 下るのは龍飛川と呼ばれる激流であり、うねりひねりのあるコースが売り(?)の一大スポットだ。
 さらに滝があって、止まれなければまっさかさまというチキンレースも味わえる。毎年行方不明やら身元不明のどざえもんやらが出てくる名所でもあるのだ。

 激流くだりから、チキンレースまでをここでは行う事になっている。

〜起〜

 龍飛川上流の特設会場はにぎわっていた。ほとんど出場者がいないと思われた激流下りも、外部から来た屈強な男や女たちの出場に盛り上がりを見せている。
 その中の一人シグルマも胸の高鳴りを感じていた。
「祭りはいいねぇ」
 体をほぐしつつ駆けつけ一杯。ここの老酒はなかなか美味い。土産に持っていこうかと思った。そんなことをしていると、10代後半くらいの独特な服を着た少女がやったきた。
「そこのヒトちょっといいアルか?」
「ん?俺か?」
 上から下まで眺めるが、趣味じゃない。もう少し、こうあったほうが…
 ズベシッ!!右上段ハイキックが後頭部にヒットした。
「そこ、ワタシのこと胸ナシと思ったアルね?」
 図星だ、しかも長身である自分にハイキックが届いているところがさらに驚いた。
 そんなことは関係ナシに相手は話しかけてくる
「そそ、お酒すきそうアルネ〜。特選の仙酒というのがあるけど、飲みたいあるか?」
 ひょうたんに入った酒をちゃぽちゃぽと揺らしながらハイキック女はシグルマに近寄ってきた。
「まだ飲んでない酒だな…、よこせ」
 多腕族である彼の4本の腕がつかもうと動くが、ハイキック女にひょいひょいとかわされた。
「タダではないアルよ、ちょーっとだけ協力してくれればいいだけアルから」
 子供のような屈託のない笑顔を浮かべて彼女は自己紹介をした。
 大熊猫飯店の焼・煌(チャオ・ファン)。彼女の店の宣伝をして欲しいとのことだった。
「旗でもつければいいわけだな。ん? チャーハン?」
「ふぉほあちゃぁっ!!」
 再び後頭部に右上段ハイキック。だが、シグルマも今度は見切れる。腕で軽くガードと思いきや、からぶらせて足払い。ずどーんとシグルマがコケ、チャオはその下敷きになってしまった…
「お、おもいアル…」
「なんだか分からんが、酒はもらっておくぜ…契約成立っと」
 

〜承〜

 大会の運営側の方で筏はあらかた組みあがって用意されていた。自分の趣味にあったものをチョイスする。
 それだけの作業である。多くの選手が選ぶ中、シグルマが選んだのはずっしいとした筏った。雄雄しきその姿は竜のようにも見える。
「よし、こいつに決めた…名前は天竜丸」
 手に持っていたナイフで筏の端に名前を彫る。こうすると筏に命が宿るとかそんな気がする。
 感慨にふけっているところにチャオがやってきた。
「これがアナタの筏アルか? それじゃあ、宣伝よろしくアルよー」
 と愛くるしいパンダのイラストが書かれた旗を勝手に飾りだした。
「へいへい…まぁ、スポンサーのご意向には答えなきゃ…といったところか…」
 オールを4本持ち、スタート位置まで筏を動かしていった…。

〜転〜

 レースが始まった。重量が重いため、スタートではシグルマの筏は出遅れる。
 それでも四本の手でオールをこいで加速する。
「んなくそぉっ!」
 直線では明らかに不利だ。そう思っているとカーブに来る。
「ここで曲がり…」
 曲がりきれずにやや大回りに、小回りの効く筏はスピードを保ってよけていくが、同じくコーナーで速度を落としている筏も多くある
「うおりゃあぁ、沈めっ!!」
 二本のオールでこぎつつ、残り二本で筏を殴りつける。
 ガツンッ!!
「うわぁ!?」
 シグルマの一撃でコントロールを失った筏が岸や、川の中にある岩にぶつかり壊れていく。
「ざまぁみろっ!!」
 そのままカーブを抜けて、次のコースに進んでいく。トップとは大分差がついているが気にしない。筏をつぶした爽快感の方が楽しかった。
 チャオからもらった仙酒をぐびっと飲んで、気合充填。そこはジグザグに流れるところだった。連続したカーブに加速している筏は減速を余儀なくされている。
 そこを逃さずシグルマの攻撃が唸る。無論、シグルマに攻撃を仕掛けてくるのもいるが、硬い天竜丸はびくともしない。
 そして、近づいたところにカウンターで攻撃を加えていき、筏を沈めていく。
「甘い甘い、この竜はそう簡単にはとめられないぜ!!」
 シグルマの一騎当千の戦い方に観客は多いに盛り上がっていた。歓声がコースの両端から聞こえてくる。それに手を振って答えてシグルマは進む。
 ひねり、そして再びカーブに差し掛かる。だが、遅いのは大分倒してしまったため、攻撃をしようにも届かない上に、こちらのコーナリング性能の悪さになかなか距離が取れなかった。
「くそっ、仕方ねぇ…」
 舌打ちをしていると、目の前からコースが消えた。滝ではないが、ちょっとした段差があるのだ。オールを全力でこいで加速する。
 バァァンッ!!と勢いに乗って天竜丸が飛ぶ。きれいな弧を描いて着水。ザパーンと飛沫を上げて、水面を揺らした。
「ははっ、まだまだこれからだぜ!!」
「なんて、むちゃくちゃな…」
「ありえなーい」
 その光景を見たほかの選手たちは唖然としている。
「ボーっとしていると、つぶすぞお前ら!!」
 竜に乗った巨漢は突き進んだ。
 最後のストレートに入ると、さらに加速をする。まだ1番は見えない、雑魚はほおって置いて加速する。
 しばらくすると、ドドドドドという音が聞こえてきた。
「そろそろ最後の滝か…」
 コースの先は滝になっていると説明を受けていた。ロープが水中にもぐっているのでそれをつかみ、岸まで筏を動かすのが最後の仕事となる。加速しすぎればつかみ切れない。ここが最後の調整になり、よりぎりぎりでつかむのが男というものである。
 シグルマの先頭を下っていったものたちが速度を落とし始める。ロープをつかむためである。
 シグルマは速度を保ちオールを構えた。これがラストだ。
「おらっ!これでくたばれ!!」
 その攻撃で沈む筏も2,3。だが、優勝はできない。一番の強豪らしい相手を見つけ、攻撃にでた。
「優勝はもらった!!」
「そうはさせない!」
 引っ張っていたロープをはなして、急に距離をとる。シグルマは攻撃をはずした。
「くそっ!!…ん、やべぇ遊びすぎた!?」
 はっと振り向くともう滝があった。今の筏の加速では飛んでしまうだろう。バァァァンッ!!
 シグルマの眼前にまぶしい太陽と澄んだ空、そして、くるりと向いて手のひらくらいの大きさの滝つぼが見えた。そして加速していく…そのとき、シグルマの目には竜が見えた。

〜結〜


 シグルマが気つくとそこはチャオがいた。露天の簡易ベッドの上らしい。春らしい緑の香りがただよってきた。
「ん…天国にしちゃあしけたところだな」
「なーにいってるアルよ。 ここは桜蘭、アナタは生きているアルよ」
「だよな、天使がこんな…な、なんでもねぇ」
 シグルマは何かいおうとしたがチャオの殺気を感じ口をにごらせた。それに満足したのかチャオは笑顔になり仙酒を薦める。
 シグルマもぐいっと飲んで一息つく。一仕事の後の酒は格別に美味い。
「宣伝にはなったからか? 優勝はしてねぇけど」
「ま、そういうことアルね〜祭りも盛り上がったので無問題(モーマンタイ)」
「もーまんたん?」
「モーマンタイ。問題ないってことアルね。 でも、こっちにきたなら少しくらい言葉しって置かないとダメあるよ?」
 聞きなれない単語をシグルマは聞き返すとチャオは笑顔で答え、再び返す。
 それにシグルマは不敵に笑い、答えた。

「再一杯(ザイスーベイ)」


                                      終幕
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【PC名(ID)  /性別/年齢         /職業】
シグルマ(0812)/男/29歳(実年齢35歳)/戦士

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■         ライター通信          ■
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はじめまして、橘真斗です。
 このたびはありがとうございました!キャラクターが動かしやすかったので楽しく書かせていただきました。
 多腕族らしさと荒っぽさがだしてみたつもりでしたが、いかがでしょうか?
 余談ですが、実は隣の県なんですよー(何)またの発注お待ちしております。