<PCクエストノベル(1人)>



『乾いた大地の戦い 〜戦乙女の旅団〜』

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【1758/シヴァ・サンサーラ/死神】

【助力探求者】

 なし

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 生きている不思議、死んでゆく不思議。この世で生を受けた者はやがて命を終え、死者の国へと向かう。それは生きている者である以上必ず訪れる定めであり、この世界の摂理でもある。当たり前の事であると皆言うけれども、深く考えれば不思議な事である。
 死神としての役割を担うシヴァ・サンサーラ(しう゛ぁ・さんさーら)は、乾いた大地を歩きながら、自分が死神になる為に行った修行のことをふと思い出していた。

 シヴァ:「私は妻を捜す為に死神になった。地獄の使いである私を、死期が近い生者の中には恐れる者もいる。命がある者は、いつか必ず死を迎えるというのに」

 恐れる必要等あるのだろうか。死者の国へ行くのは、怖い事だと思っているのだろうか。シヴァは愛する妻を捜す為、迷わず地獄へ行った。
 天国だろうと地獄だろうと、妻を探す為ならどこへ行くのも怖くはなかった。妻に会えるのならば、どんなに遠い場所へも行けるのだ。
 妻を捜す為の手がかりはないものかと、大地を歩き続けるシヴァの耳に、前方に盛り上がった丘の向こう側から異様に騒がしい音が飛び込んできた。

 シヴァ:「何でしょうか?」

 得体の知れない獣の声に混じり、数人の人間の悲鳴が響き渡ってくる。それを聞いた瞬間シヴァは、この丘の向こうで誰かが怪物に襲われているだと悟った。しかも、襲われているのは女性ばかりだ、ということも。
 そう思ったと同時に、シヴァの体はすでに丘の向こうへと向かっていた。

 シヴァ:「無視をする理由等、どこにもないですからね」

 妻を捜す旅とは言えども、彼女がどこにいるかわからない以上、先を急ぐ旅ではない。シヴァは長い黒髪を揺らし、軽やかな足取りで丘を上がり、そこから下を見下ろした。

 シヴァ:「こんな場所にキャラバンが!」

 小高い丘のすぐ向こう側には、布のテントが立ち並んだキャラバンがあった。
 テントだけでなく、テーブルや椅子、木には洗濯物が干されており生活観が漂うが、それも今はこのキャラバンを襲撃しているモンスターの大群により半分以上が破壊されてしまっていた。

 シヴァ:「女性に手を出すとはモンスターの風上にもおけません!私が退治しましょう」

 シヴァが確認する限り、キャラバンを守ろうとまわりで戦っている人間達は、ほとんどが女性であった。ここは女性ばかりのキャラバンなのだろうかとシヴァは思ったが、今はそれを気にしている場合ではない。
 生きている者の魂を駆る紅い大鎌・ロンギヌスを手に握り締め、シヴァは歩み寄ってくるモンスターに向かって視線を狙い定めた。

 シヴァ:「ここは私に任せて下さい」

 突然舞い込んできたシヴァに、驚きの表情を見せているキャラバンの女性達に、シヴァは柔らかな笑みを見せて彼女達の不安を少しでも取り去ろうしてみせた。

 キャラバンの女性:「突然現れたモンスターなんです!数が多くて苦戦しています!」
 シヴァ:「ええ、そうでしょうね。とにかく、女性が襲われるのを見過ごすわけにはいきませんから」

 大型の獣のような姿のモンスターが固まっているところを、シヴァはロンギヌスで一気に薙ぎ払った。シヴァのロンギヌスが唸り、モンスターを魂を一度に消滅させる。
 シヴァは地獄で戦闘方法についても修行を積んでいる。だから、そこいらを徘徊しているようなただのモンスターなどに苦戦する事はあまりない。
 だが、相手の数が多いとなれば話は別だ。いくら力のない相手でも、数で来られた時程の脅威はないだろう。

 シヴァ:「数が多すぎますね。一体どこからこんなに沢山、集まって来るのでしょうか」
 キャラバンの女性:「このあたり一帯に住むのは、私達だけなのです。だから、このあたりに生息するモンスターが集中して標的にしたのでしょう!」
 シヴァ:「なるほど。このような乾いた場所に住むには、体力もいりそうですしね」
 キャラバンの女性:「とにかく今は、このキャラバンと子供達を守らなければ!」

 シヴァの横でキャラバンの若い女性が、腰から自分の腕の長さほどもある大きな剣を取り出した。細身の体に似合わない、傷だらけの皮製の盾を取り出すと、その女性はモンスターへ間合いを取りながら近づき、モンスターの鋭い爪を潜り抜けてその大きな怪物の体を剣で切り裂いた。

 シヴァ:「ただの娘さんではないようですね」

 その女性の動きが洗練されているのを見つめ、シヴァは彼女が女戦士である事を悟った。まわりにいる女性達も、剣や弓、斧と言った武器を持ち、モンスターと勇敢に戦っている。
 最初このキャラバンを見た時にシヴァは、本来ならいるはずの男達の姿が見えないのに気づき、男達は皆モンスターに殺されてしまったのかと思ったのであった。

 シヴァ:「ここに男の戦士達はいらないのでしょう」

 鍛え抜かれた体をバネのように動かし、キャラバンの女性達はモンスターと戦っていた。そしてその時初めて、シヴァはここが戦乙女の旅団なのだと気づいたのであった。
 彼女達の戦いの様子は見事なもので、地獄での修行を積んだシヴァでさえ、彼女達の勇敢な戦い振りには感心すらしてしまった。

 シヴァ:「彼女達、なかなかやりますね」

 シヴァもロンギヌスでモンスターを追いやり、他の女性達と協力して、モンスター達をキャラバンの外へと押し出していった。

 シヴァ:「これ以上戦う気でしたらどうぞ。しかし、私は死神。死神の仕事は、生きている者の魂を狩る事。モンスターだとて、例外ではありませんよ?」

 最後まで襲撃の手を止めないモンスターに、シヴァは冷たい笑いを浮かべて呟いた。その笑みに恐れをなしたか、モンスター達はついにキャラバンから逃げ去ってしまった。
 キャラバン内のテントはほとんど壊れ、食料や衣服が地面にバラバラになって落ちてしまっているが、ようやく静けさを取り戻す事が出来たのだ。

 シヴァ:「しつこいモンスターでしたね」

 シヴァはそばにいる女戦士にゆっくり話し掛けた。

 女戦士:「ああ、そうだね。けど、これでひとまずは安心だよ。あんたもすまないね。通りすがりの人かい?あたし達の旅団の為に、よく一緒に戦ってくれたよ。ありがとう」

 女戦士が笑顔で礼を述べると、シヴァも一緒に笑顔を見せた。

 シヴァ:「いえ、皆様の頑張りもありました。貴方達の戦いぶり、本当に見事でしたから」
 女戦士:「あたし達は、自分の身は自分で守るように鍛えているからね。このあたりで生活するには、それぐらいの力がないと駄目さ」

 女戦士がそう答えると、向かいにある壊れかかったテントの中から、一人の若い女性が姿を見せた。
 他の女戦士を兵士のように付き添わせている彼女は、歳の頃は20代中頃、といったところであろうか。美しい整った顔立ちに、他の女性よりも沢山の飾りを見につけ、その毅然とした表情からして、このキャラバンのリーダーなのかもしれない。

 キャラバンマスター:「貴方が旅の方ですね。私はこの旅団の長です。この度は有難うございました」

 若い女性とは思えないような落ち着いた態度で言葉を口にし、キャラバンマスターである彼女は深々と頭を下げた。

 シヴァ:「いえ。私はたいしたことはしていませんから」
 キャラバンマスター:「そんな謙遜なさらずとも。貴方が来ていなければ、いまごろ私達は全滅していたかもしれません」
 シヴァ:「そんな、大げさですよ」
 キャラバンマスター:「それでも、貴方が見ず知らずの私達に力を貸してくれた事は、確かです。だから、何かお礼をさせて下さい。言葉だけでは、私の気が済まないのです」

 キャラバンマスターは何度も下げ、シヴァに礼をさせて欲しいと頼むのであった。
 シヴァはお礼なんて必要ないと断ったが、あまりにもしつこく頭を下げるキャラバンマスターに、とうとう根負けしてしまった。礼等何も受け取らないつもりでいたが、ここでこのまま帰るのも、彼女達に悪いような気がしてきたからであった。

 シヴァ:「では、私からお願いをさせて下さい。探して欲しいのです、私の妻の居場所を」
 キャラバンマスター:「妻?では、貴方は、人を探しているのですね?」
 シヴァ:「はい。何の手がかりもないのです。1日でも早く妻を捜したいのです」

 シヴァがそう答えると、キャラバンマスターは小さく頷き、シヴァに笑いかけた。

 キャラバンマスター:「そのような事でしたら喜んで。この旅団で一番の占い師に、奥様の居場所を占わせましょう」

 キャラバンマスターに呼ばれてやってきた占い師はまだ若く、青い透き通るようなローブで身を包み、シヴァの前まで来ると、水晶玉を掲げて地面へと座り込んだ。

 占い師:「あなたが妻を捜しているのですね?」

 占い師の問いかけに、シヴァは黙って頷いて見せた。

 占い師:「あなたの妻は…そうか、魂の存在であるのですね。これは厄介ですが、やってみましょう」

 占い師は水晶玉にシヴァの姿を映し、そして何かの呪文のようなものを唱えた。集中力を高めるまじないなのだろうか。

 占い師:「ふむ、これは…うーん、そうなのね…」

 占い師にしか見えない何かを、彼女は今心の中で見ているのだろう。だが、その表情は曇っており、眉間にはしわを寄せていた。
 何が彼女に見えているのかシヴァは気になって仕方がなかったが、集中力を乱してしまってはいけないと思い、彼女が目を開けるまで一言も言葉を発しないようにしていた。
 やがて、占い師は目を静かに開き、シヴァの顔をまっすぐに見つめた。

 占い師:「残念ながら、私にはその人を探し出すことができません」
 シヴァ:「それは、どういう事ですか?」
 占い師:「暗闇に包まれていて、何の手がかりも見えないのです、お力になれず、申し訳ありません」
 目を伏せる占い師に、シヴァはしばらくの間の後、静かに笑い話し掛けた。

 シヴァ:「いえ、お気になさらず。貴方のせいではありませんよ」

 やはり自分で探さなければならないのだと、シヴァは心の中で呟いた。

 占い師:「貴方の探している方がどこにいるのかはわかりませんが、この世界には魂の通り道になっている場所があると聞きます。生者と死者の国の境目になっている場所には、多くの魂が集まると言う話を聞いた事があります」
 シヴァ:「そのような場所なら、私も存じています。異国で三途の川、と呼ばれる場所等がそうだと言う話ですが。そこにいけば、妻の手がかりが見つかるでしょうか」
占い師:「残念ながらそれはわかりません。境目になっている場所は、1つとは限りません。死者の国は無限大に広がっているという話ですからね。ただ、奥様がどこにいるかにしても、生まれ変わった魂がどこへどのようにして行くのかは、そのような場所ならわかるかもしれません。死にゆく者、生まれ変わった者の魂は、その場所を通るという事ですから」

 占い師が言った暗闇というものが何を示すのかはわからない。少なくとも、それほど行き着くにも難しい場所にいるに違いない。生者と死者の国の境目となっている場所も、どこにあるのかわからない。
 それでも、シヴァの気持ちはまったく変わらなかった。占いでどんな結果が出ようとも、妻の魂を探し出す旅をやめる事は決してないのだから。



 シヴァはキャラバンで一息入れたあと、身支度を整えて再び妻を探す旅へと出た。ここへ来た時となんら変わりのない姿と気持ちで、しっかりと前を見つめシヴァは歩き出す。
 何時の日か、必ず妻の転生者に出会えることを信じて。(終)



 ◆ライター通信◇

 はじめまして!WRの朝霧と申します。クエストノベルの発注、どうもありがとうございました!クエノベは初めてでしたので、少々緊張気味です(笑)
 シヴァさんと戦乙女によるモンスターとの戦いを、じっくりと書かせて頂きました。前半はバトルシーンを中心に荒々しく、後半は占いのシーンを中心に、物静かな雰囲気で書いております。シヴァさんの設定を物語に反映させながら、今回の話を書かせて頂きました。シヴァさんは上品な雰囲気がありますし、口調が丁寧なので、あまり荒々しい雰囲気の戦闘シーンと、感じられないかもしれないですけどね(笑)
 それでは、どうもありがとうございました!