<PCクエストノベル(2人)>


海底に眠る失われし文明

〜 機獣遺跡 〜
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【冒険者一覧】
【整理番号/  名前  / クラス 】
【1552/ パフティ・リーフ / メカニック兼ボディガード 】
【1940/ モラヴィ     /    慣性制御バイク   】

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 聖都エルザードを抜け草原を北上していくと、程なくして広い海へと出る。
 太古の昔より広がるこの海は未だ数多くの謎に包まれていた。
 海底深くに眠ると言われる機獣遺跡もまたそのひとつ。太古の昔に失われたとされる機械文明が今もなお誰にも侵されることなく深い眠りについていた。
 多くの冒険家達が遺跡に眠る宝を手に入れようと、海底に眠る遺跡へと挑んでいった。
 だが、その多くは遺跡を守る自律戦闘機械、俗に「機獣」と呼ばれている未知の戦闘機械の手により、母なる海の元へと還っていってしまっていた。
 
 時折、海から嘆きの声が聞こえる時がある。
 それはかつて自分達を創り上げた創造主達を待ちわびる、機獣達の切なる叫びなのだと伝えられている。
 声が聞こえる日は海に出てはならない。出れば機獣の餌食となる。
 ……海岸に住む村人達に古くから伝わる話である。
 
パフティ「装備よし、携帯品よし、と。モラヴィ、準備OKです」
モラヴィ「了解。目的地までを確認するね」

 水上に浮かぶ一艘の小さな船。いや……船ではない、機械仕掛けの乗り物のようだ。
 自らの意志を持って動く乗り物に跨がるその女性の名はパフティ・リーフ(1552)。聖獣界ソーンへ迷い込んだエマーンと呼ばれる人種のひとりである。
 彼女がモラヴィ(140)と呼ぶ乗り物と彼女自身の姿を見て、パフティが何者であるか判断出来るものは少ないだろう。
 この世界を生み出したとされるアトランティスをはじめ、魔法技術が発達した世界においてパフティの姿はまさに異世界の存在である。モラーバ・マーイの改造小型機種とも取れる超小型ドリファンドをさっそうと乗りこなし、レーザー銃を操るその姿は、太古の滅びたとされる超機械文明の遺産の存在を彷彿とさせるであろう。

モラヴィ「目的地までは水深130メートル。潮流と酸素ボンベの量から考えて、調査時間は30分が限度ってところだね」
パフティ「それだけあれば充分です。それに、今回の目標は遺跡の守護者達のパーツですもの。探さなくても向こうから来てくれるはずだわ」
モラヴィ「くれぐれも注意してよ。モラヴィの重力制御システムが無かったら、あっという間にぺしゃんこになっちゃうんだからね」

 水深130メートルといえば、光も殆ど届かない死の世界。ソーンの海と相剋界の海とでは多少なりとも違いがあるだろうが、水中で呼吸の出来ない者にとって死に直結する世界であることには変わりない。
 
モラヴィ「それじゃ、いくよ。水中モード起動、生命維持反重力システム最大出力」
パフティ「目標、機獣遺跡。潜水開始してください」

 鋭い刃のように海の中を駆け抜けていく。あっという間に碧い海は漆黒の色へと移り変わる。
 一般的に光が到達するのは水深100メートル付近が限度だ。中層以上の深層は闇と死が支配する世界。浅層からこぼれ落ちてきたプランクトンを求めて生物達が彷徨う他は、岩と灰と死骸が漂うばかり。赤外線バイザーを通しても、見えてくるのは岩が殆どだ。
 薄暗い海の中で、モラヴィから発せられる照明が唯一の明かりを頼りに、パフティはゆっくりと辺りを慎重に見定めた。
 
 突然、ゴウゥンという激しい音と泡が海底から響いてきた。数秒して強い衝撃がモラヴィにたたき付けられる。
 
パフティ「今のは何です!?」
モラヴィ「海底から岩石が発射されたよ! モラヴィ達を狙って打ったみたい!」

 はっと表情を険しくし、パフティはもう一度周りを見回した。
 岩山と思っていた崖はよく見ると、人工的な加工の後が見える。潮の流れに晒され崩れているが、遺跡をぐるりと囲む塀の跡なのだろう。
 
パフティ「……と、いうことは……」

 プランクトンの霧と先程の衝撃で起こった土煙のせいで良く見えないが、建物らしき姿が眼下に見える。
 崩れ落ちた屋上付近に僅かに見える影に向かい、パフティはスロットルを全開にさせた。
 
 飛び込んできた光の矢に、機獣達は警報を高鳴らせる。
 眠っていた警備システムが警報に反応し、錆びついた音を立てながら遺跡の壁を変形させていった。
 これ以上は危険だ。
 パフティは本能で察知して、一瞬だけ重力システムを逆転させて急停止を試みた。
 強い負荷がかかると同時にモラヴィの動きがぴたりと止まる。すぐに負荷は治まるものの、体全体に襲いかかった重圧にパフティは瞬間的に呼吸を失った。

モラヴィ「パフティ! 平気!?」
パフティ「ええ……だい、じょぶ。それより……」

 眼前にゆっくりと巨大な大砲が姿を現していた。
 長い間海の中にいたというのに侵食された様子のない、すらりとした金属の銃口がパフティ達に照準を合わせる。
 
パフティ「モラヴィ!」
 
 モラヴィが急発進するのと、砲撃が発射されるのはほぼ同時だった。
 一番近くにあった扉を破壊しながら、遺跡の中へと飛び込んでいく。侵入者を破壊しようと、壁から次々と杭の形状をした槍が打ち出されてきた。
 雨のように降り注ぐ槍を何とか紙一重で交わすも、無傷では済まされず、モラヴィの出力が僅かにではあるが徐々に低下し始めていた。
 
パフティ「モラヴィ! 大丈夫ですか?」
モラヴィ「ん、へーきっ。それよりパフティは自分の心配をして! ここで怪我でもしたら大変だよ?」

 モラヴィにサポートしてもらっているとはいえ、パラフィひとりでは本来到達することなど出来ない場所だ。生命維持装置が少しでも破壊されれば生きて戻れないだろう。
 
モラヴィ「この先にある壁の向こう側に酸素濃度が高い地域があるよ、この数字……地上と同じだ」
パフティ「……もしかしたら、かつての住民達の居住地かもしれないわね」
モラヴィ「よし、ショートカットするよ!」

 「腕」を伸ばし、モラヴィは前方の壁にレーザー砲を打ち付けた。
 途端、穴へと吸いこまれるように一気に潮が流れ、木くずのようにパフティ達は水流に押し流されていった。

 流された先にあったものは広い講堂だった。
 幾重にも折り重ねられた金属のパイプが太い柱のように整然とそびえ立つ講堂内は水の流れる音以外何も無く、静寂を保っていた。
 あれほどしつこく襲いかかってきた機獣達の姿も見当たらない。何より講堂内は清浄な空気が満たされており、ここが本当に海底にある古い遺跡なのかと信じられない心境であった。
 
モラヴィ「有機体の反応は無いみたいだよ。装置だけが動いてるんだね……」

 ぽつりとモラヴィが呟く。機獣達は主人のいない屋敷をずっと守っているのだ。自分達が守るべき屋敷は海の底へと沈み、そこに住む人々も既に過去の記憶の中にしかいない存在となっている……それでも、ただひたすらと与えられた仕事をこなす機獣達。時が彼らの仕事を終えさせるまで、ずっと彼らはこの場所を守っているのだろう。
 
パフティ「少し歩いてみましょう。何か見つかるかもしれないわ」

 辺りを警戒しながら広間の奥へと進んでいくと、眼前に白銀の機獣達の姿が見えてきた。
 
パフティ「これは……」
モラヴィ「活動はしていないよ。起動部分が損傷しちゃって、動かなくなったみたい」
パフティ「そう……。この子達は役目を終えて、眠りについているのね」

 出来る限り傷つけないように、そっと鉄板をはがしてパフティは内部にあった動力部分を取り出した。
 コードを外し、モラヴィに備え付けられているバックパックへと部品を収めていく。

パフティ「念のために動力部分を外しておけば、万が一作動するようなことがあったとしても安心ですものね。モラヴィ、どの程度なら後は運んでいけそうかしら?」
モラヴィ「うーん……あまりたくさんは運べないよ。脱出のことを考えると、ね」
パフティ「そうですね……出来る限りでいいわ。お願い」
モラヴィ「りょうかいっ」

 「腕」を伸ばし、モラヴィは機獣の上部のもぎ取った。さすがに全てを運ぶのは難しいが、メインである頭部を中心に持って帰られれば充分だろう。
 
パフティ「調査物資はこれでよしとして、後はどうやって帰るか、ですね」

 恐らく機獣達は更に警備を固めて遺跡の周囲を見張っているだろう。
 スーツの酸素も残り少ない上に、先程の戦闘でモラヴィのボディにも損傷が見える。
 強引に突破するのも1つの方法だが、生命維持に回している動力を突破の機動力に変換しなければならないため、生身であるパフティの体に大きな負担がかかってしまう。

モラヴィ「ステルスモードで強行すれば切り抜けられると思うよ」
パフティ「相手がどういう基準でこちらを把握しているかわからないうちは効果的ではないわ。もしかすると私達が知らないシステムが搭載されているかもしれないもの」
モラヴィ「そうだね……」
パフティ「……でも、いい案ですね。少なくとも砲弾は撃てなくなるはずだわ。その間に突破しましょう」

 相手は侵入者を防ぐガーディアンなだけで、遺跡を離れてしまえば追ってはこないだろう。
 事実、遺跡の中に入るまでは彼らの姿を見かけることすら無かったのだ。何とかして塀の外へ脱出してしまえば、後は海という自然との戦いだけである。

モラヴィ「一気にいくよ。振り落とされないよう、しっかり捕まって!」

 モラヴィはパフティを乗せ、あふれ出ている水流の中へと飛び込んだ。ぐんぐんと流れを逆流すると同時に周囲にシールドを展開させる。
 パフティの読み通り、機獣達はモラヴィに気付き襲いかかってきたが、レーザー砲で進路を防ぐものだけ打ち倒し、ひたすら遺跡の外へと走り抜けた。
 
 無事に機獣の機体を持ち帰ることが出来たパフティは早速、機器の解析に取りかかった。
 
パフティ「すごいわ……この機体を造った技術者は私達と同じ……いえ、それ以上の技術の持ち主のようね」
モラヴィ「モラヴィよりすごい?」
パフティ「機体の耐久性と操作性においては、ね。でも忘れていないかしら? 自律行動が可能な人工知能を彼らは搭載していない……モラヴィ、あなたは自分自身で成長できる機器なんですよ」

 一瞬、彼女の言う言葉の意味がわからず、人型形態に姿を変えていたモラヴィはきょとんとパフティを見上げた。

パフティ「今はまだ多少なりは彼らに負けるかもしれませんが、いずれ彼らを越えるマシンへと成長出来るのよ」

 ソーンに来て以来、モラヴィは急激な変化を遂げている。ソーンの魔法文明をエマーンの機械技術に上手に取り入れることにより、相剋界では存在しなかった人型形態へと姿を変えることが出来るようになった。
 その他にも守護聖獣「リヴァイアサン」の力の一部を引き出し、水魔法を衝撃波として変えることが出来る。パフティのメカニックとしての技術の高さとも言えるが、なによりそれらを柔軟に受け止め、己の力と変換出来るモラヴィならではの進化とも言えるだろう。

モラヴィ「でも、どんなに優れてても、大切な人が一緒にいないのは淋しいよ」
パフティ「……そうね。彼らも本当は自分達を造ってくれた人達と一緒に居たかったでしょうね……」

 遺跡が何故海の底へ沈んだのかは、まだ全くの謎とされている。これだけ高度な文明が何故滅んだのか……そして、文明が滅んだにも関わらず遺跡を守り続けているのは何故なのだろうか。

モラヴィ「パフティ……パフティはどこにも行っちゃだめだよ!」

 ぎゅっとパフティを抱きしめ、勢いとまらず彼女を押し倒した。
 
パフティ「こらっ! 作業中は邪魔しちゃだめって言ってるでしょう?」
モラヴィ「だって……だって……」
パフティ「大丈夫よ。心配しなくても、生きてる限り私達は一緒、でしょう?」

 パフティは穏やかな微笑みを浮かべた。
 嬉しさのあまり、モラヴィは再び強く彼女を抱きしめる。
 
パフティ「こ、こらっ! どきなさい! ……ちょっと……いい加減に、しなさい!」

 スパナを握りしめたまま、パフティは思いきりモラヴィの頬を殴りつけた。
 思わぬ攻撃に、パフティの一撃は鮮やかに決まり、モラヴィの体は軽やかに宙を舞った。
 
パフティ「今大事な作業中です! 戯れるのは後にしてください!」
モラヴィ「……は、はい……」

 呆然としながら返事を返すモラヴィ。
 再び作業を再会する主人の姿を、彼はただじっと見つめていた。
 
終わり

------<ライターより>------------------------------

ご依頼有り難うございました。
MT6は地味に未参加のため、混乱時空世紀の解釈において、多少違いが発生しているかもしれませんが、ご勘弁願います(汗)
……パ、パラレルワールドで!(まって)

それでは、また別の物語でお会い出来ますことを楽しみにしております。

(文章担当:谷口舞)