<PCクエストノベル(5人)>
ミニ変化の洞窟
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【2315 / クレシュ・ラダ / 医者】
【2155 / ルーン・ルン / ピルグリム・スティグマータ】
【2176 / ネル・クリフエッド・シルフィ / 母なる魔導師】
【2679 / マーオ / 見習いパティシエ】
【3410 / ファルタータ / ガンマン】
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☆序章
聖獣界ソーンの聖都・エルザード。
その中心部に位置する天使の広場には、ひっそりと掲示板が立っている。
その掲示板には、日々、さまざまなことが書き込まれ、冒険者たちの交流などの役に立っているらしい。
そんな広場前掲示板の前に、ひとりの男がたたずんでいた。
男の名前はクレシュ・ラダ。
銀の髪に緑の瞳の、白衣をまとったやさ男だが、こう見えて有能な医者だったりする。
クレシュ「掲示板……人を募集するには打ってつけ、かな? とりあえず、貼ってみよっと♪」
と、ぺたぺたと張り紙をする。
無造作に張られた紙には、こんなことが書かれていた。
【冒険者募集
行き先■ミニ変化の洞窟
たまにはのんびり、っていうのもありかなー。
小さくなって交流を図りませんかー★みんなで遊びにいきましょう】
クレシュ・ラダ「さ〜て、こんなもんかな〜♪ あとは誰かが来てくれたらいいんだけどな〜。小さくなったら血なんか採らせてもらって〜、あ〜、楽しみだな!」
そしてクレシュ・ラダが立ち去った後、しばらくしてから、何人かが張り紙の前で足を止めた。
まず一人目は、身体の半透明な小柄な少年だった。
金の髪に緑の瞳、背中に巨大な軽量スプーンを背負っている。
彼はマーオ、幽霊でありながら見習いパティシエをしている。
マーオ「なになに〜? ミニ変化の洞窟……おもしろそー! 僕も行ってみたいな。あ、でも僕元々小さいから、さらに小さくなって……米粒くらいになっちゃったら、どうしよう!」
ひとりで騒ぎながら、マーオは掲示板に参加したいです、と書いて立ち去った。
次にそこで足を止めたのは、背中に羽をもつ少女――ネル・クリフエッド・シルフィだ。
かつて天界人だった彼女だが、ぱっと見ではとてもそうとは思えない。
まるで子供のような幼い容姿で、長い赤毛にぱっちりとした青い瞳をしている。
ネル・クリフエッド・シルフィ「ミ……ミニミニの洞窟!☆ うわぁ〜、楽しそうだなぁ〜w 素敵だろうなぁ〜w可愛いだろうなぁ〜♪ そんな所があるなんて……w きっとそこの生き物は全部砂糖ぐらい小さいんだろうな〜w(ぇ …うわぁ〜〜ん!行ってみたいよぅ♪♪どうすれば…とりあえずかきこんどこっと。(カキカキ、きゅッきゅ)こんなもんだね〜☆ お暇に散歩しててよかったなぁ〜。ルナに相談してこよーーっと♪」
どたどたどた……。
騒がしくネルが去っていったその後には、背中に1枚の羽をはやした、金髪の青年がやってきた。
小麦色の肌に、金色の髪、青い瞳の彼の名はファルタータ。翼を持つガンマンとして、それなりに名が知られている。
ファルタータ「俺も行ってみたいんだが、その、ミニ変化の洞窟とかってのに。俺の目的は…小さくなって空を、飛ぶ事、だ。見ての通りの片翼で、空、飛べないから。この大砲に入れるサイズになりゃ、ポーンと、飛べるだろ」
目の前にいるわけでもないのに、そんなことを書き込んで、ファルタータは逃げるようにその場を去った。
その後、最後にやってきたのは、ルーン・ルン。
長い青髪を無造作に伸ばした彼は、張り紙を見てひゅう、と口笛を鳴らした。
ルーン・ルン「葉っぱなんかを敷いてサ、樹の根元を滑り台にしてみんなで遊ぶ、なんて楽しそうだなァ」
そして参加の意を掲示板に書き込んで、立ち去る。
こうして冒険者たちは、5人そろってミニ変化の洞窟へと足を運ぶことになったのだった。
☆本章
壁画のほどこされた洞窟を抜けると、そこは湖だった。
一面に花が咲き、太陽はやわらかな光を投げかけている。ピクニックにはもってこいだ。
そんな湖のほとり、洞窟の出口の辺りに、3頭身になった5人がいた。
ネル「うっわぁ〜☆ 本当に小さくなってるよぉ〜☆」
中でもひときわはしゃいでいるのがネルだ。
小さくなったのがよほど嬉しいのか、あたりを跳ねまわっている。
ファルタータ「……大砲まで、小さく……」
だが、それとは対照的にどんよりとしているのがファルタータ。
どうやら、大砲に入って空を飛ぶという夢は、大砲も一緒に小さくなってしまったために果たせそうになさそうだ。
マーオ「まあ、そんなに落ち込まないで。ほら、今日のお弁当、がんばって作ったんだよ!」
それを一生懸命、マーオが励ましている。
この日のために、朝から早起きをして作ったお弁当やお菓子は、見ているだけでお腹が鳴りそうなできだ。
ルーン「ま、大砲は無理かもだけどサ、これなんか悪くないと思うけどネ?」
ルーンも一応、励ますつもりはあるようで、大きな花びらをひらひらと振り回している。
これを持って高いところから飛び降りれば、確かに、ひらひらと少しだけ空を飛んだ気分になれそうだ。
ネル「もし、どーしても飛びたかったら、ネルが一緒に飛んであげるよ! ね!」
と、ネルがファルタータに飛びつく。
ネルの背中にある6枚の羽は自由に大きさを変えることができるので、多少重いものと一緒でも、飛ぶことはできるのだ。
ファルタータ「……ありがとう」
そんな気遣いに、ファルタータは恥ずかしそうに礼を言う。
クレシュ「よかったねえ、夢が叶いそうでさ! さーて、それじゃみんな、どこでお弁当にしようね〜?」
などと、他の人の注意をお弁当やお菓子に引きつけながら、クレシュはちょっとずつ指先や腕なんかに傷をつけて、血を採取していく。
うまく痛覚をはずして傷をつけているせいもあり、クレシュの行動に気づいている者はいないようだ。
クレシュはさりげなく全員ぶんの血液を採取し終えると、それをケースに入れて白衣のポケットの中へと納めた。
マーオ「いきなりご飯のことだなんて〜。もうちょっと、色々探検とかしたいなぁ」
ネル「探検、楽しそ〜☆」
ファルタータ「……悪くなさそう、だな」
ルーン「あ、あそこなんかどうかナ?」
ルーンの指した先には、細長い葉っぱがゆるやかに斜めになっている、背の高い草があった。
のぼるのは大変そうだけれど、上から一気に滑り降りたら楽しそうだ。
ネル「よぉ〜し、誰が最初に上までつくか競争ーっ!」
と、叫ぶが早いか、ネルはぱっと葉っぱに飛びついた。
マーオ「僕だって負けないんだから!」
ルーン「こういうのは苦手なんだけどネェ…まあ、がんばってみるかなァ」
ファルタータ「……サバイバル、か。得意分野だな」
クレシュ「うぅん、ワタシみたいな医者には分が悪い競争だなぁ」
ネル「えっへへー。みんな、はやく、はやくぅ!」
ネルは羽の助けも借りて、どんどん上へとのぼっていってしまう。
他の4人は地道に葉っぱをのぼろうとしているから、なかなか上に進めない。
ファルタータはこういうことに慣れているのか、それなりに上の方にいたが、クレシュやルーンは苦戦している。
マーオに至っては、背中のスプーンが邪魔でうまくのぼれないようだ。自分が幽霊だということを、忘れているらしい。
ネル「わぁ〜い、いっちばぁーん!」
真っ先に上にたどりついたネルが、すとん、と葉っぱの上に腰掛けた。
すると葉っぱは大きくしなり、ネルは葉っぱの上をすべるようにして落ちていってしまう。
ネル「きゃぁ〜!」
叫び声こそあげているものの、本人は至って楽しそうだ。
だが、問題は、まだ下の方にいる4人だった。
ファルタータ「……!」
まず、最初の犠牲者になったのは、ファルタータだ。
ネルの足が顔にクリーンヒットして、そのまままっさかさまに落ちていく。
先ほど、ルーンから渡された花びらのおかげでひらひらとはしているけれど、このままでは地面にぶつかるのも時間の問題だ。
ファルタータは身体をねじると、花びらをパラシュートのように広げた。
そうして片方の翼をはばたかせて、なんとか落下速度をゆるめてみたりする。
ネルはといえばのんきなもので、ファルタータにぶつかったことなどなかったかのように、そのまま葉っぱの上をすべっていく。
ルーン「うわっ、ちょっと、危ないヨ!」
あわてた様子で、ルーンが腕を広げる。
クレシュ「……キミ、そっちの方が危ないと思うよ」
クレシュが冷静にツッコミを入れた。
その言葉通りに、ルーンは頭からまっさかさまに落ちていく。
ルーン「うわわわっ」
マーオ「危ない〜っ!」
と、マーオが軽量スプーンを差し出した。
ルーンはそれに当たってばいぃ〜ん、とバウンドして、やわらかな草の上へと着地する。
クレシュ「ま、ケガしちゃってもワタシがいるから大丈夫ではあるけどね〜。あんまり無茶はしないようにね!」
と、少し医者らしい忠告をしてはいるものの、クレシュ自身のことはあまり考えに入っていないらしい。
ルーンに続いて、葉っぱの上をすべってきたネルの直撃を受ける。
クレシュ「きゃー!」
ネル「わ〜、きゃ〜!」
ネルは悪びれた様子もなく、クレシュにぶつかると、ぼふんっ、と下草の上に落っこちた。
クレシュも落っこちて、頭から草の中に突っ込んでしまう。
そうしているうちに、ファルタータがうまく着地した。
ファルタータ「……飛んだ……」
ファルタータは感動しているらしく、花びらを手にしたまま、目を閉じて喜びをかみ締めている様子だった。
ネル「えっへへへ、楽しいねっ」
クレシュ「ちょっと危ないけどね」
マーオ「でもこのくらい運動した方が、ご飯とかもおいしいよ!」
ルーン「あ、いいネェ。それじゃ、じゃんじゃん運動しようかー?」
ネル「さんせーいっ。あ、ネルね、今度はあそこいきたーい☆」
と、ネルが指したのは、まるで樹上の秘密基地、とでもいった感じに、うまく草がからまりあってできた場所だった。
高いところの草がうまくからまりあっているというか、誰かが形を整えたかのように、たいらになっていたりする。
マーオ「お弁当食べるのによさそうな場所だね」
ネル「だよね〜☆」
クレシュ「じゃ、あそこまで行こうか」
ルーン「あそこまで着く頃にはお腹ぺこぺこになってそうだしネェ」
ファルタータ「……(まだ感動の余韻に浸っている)」
ネル「また競争にしよっかー☆ いちばんの人には、うーん、えっとぉ〜」
マーオ「1個、多く作っちゃったイチゴタルトを進呈!とかは?」
ルーン「おー、タルト作ってきたんだ? いいなァ」
クレシュ「それじゃあ、出発ー!」
わあっ、と、4人は走り出す。
ファルタータはそれに気づかずに、まだひとりで余韻に浸っている。
☆終章
ミニ変化の洞窟を抜けて、戻ってきた5人は、どこか疲れた様子ながら、目をきらきらと子供のように輝かせていた。
ネル「楽しかったね〜☆ また行きたいなっ」
ルーン「そうだねェ。マーオのお弁当、おいしかったナ〜」
マーオ「え、そうかな? よかった、気に入ってもらえて」
クレシュ「うんうん。イチゴタルトもおいしかったし、シュークリームも皮はさくさくで中身はふんわり甘くってねー」
ネル「ネル、今度はチーズケーキが食べたーい!」
マーオ「じゃあ次はチーズケーキ作ろうか?」
ルーン「いいナー、リクエストしたいナー」
マーオ「あ、うん、なんでもいいよ!」
ルーン「それじゃ、今度はゼリーがいいネェ、これから暑くなってくるしネ!」
クレシュ「ワタシはそれなら、プリンがいいなぁ…焼きプリン…」
ファルタータ「……アップルパイが食べたい」
マーオ「よーしっ、じゃあ、今度はチーズケーキとアップルパイと焼きプリンとゼリーで! 目いっぱい作っちゃおうかな〜」
そんな風に騒がしくも楽しそうに、冒険者たちはまた、エルザードへと帰っていく。
今度はどこへ行こうかと、希望に胸を膨らませながら。
出かける前より、少しずつ仲良くなった仲間たちとともに。
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