<PCクエストノベル(2人)>
消えた子供たち
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【冒険者一覧】
【1070 / 虎王丸 (こおうまる) / 紋章術士】
【2303 / 蒼柳・凪 (そうりゅう・なぎ) / 舞術師】
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【1】
虎王丸:「アロマさーーん。次はどこをすればいいですか?」
虎王丸はアロマのところでボランティアでをしている。
虎王丸とは小麦色の肌をしたがっちりした体格で、
今はアロマにぞっこんらしい。
アロマ:「そうねー。今度は窓拭きでもしてもらおうかしら」
虎王丸:「了解ッス。アロマさんの頼みなら何でもきけますぜ」
そういいながら虎王丸は窓拭きをしていた、その最中だった。
凪:「こんにちわー」
アロマ:「あら、凪じゃない」
虎王丸:「おー凪!」
虎王丸:「いや、1階の様子を見て気晴らししようと思って」
そう言って凪はなんとなく虎王丸の仕事を眺めていた。
凪はどこにでもいる普通の少年といったところか。黒い髪がよく似合う。
凪:「ねぇ、虎王丸。そのぞうきん見せてよ」
虎王丸:「あぁ、いいぜ」
凪はその雑巾をまじまじと見た。
凪:「虎王丸、これトイレ用のぞうきん。
ぞうきんにはいろいろ使い分けるようになって…」
虎王丸:「あーーうっせいなぁ。おまえは小姑か!」
しばらくすると、凪が窓拭き用のぞうきんを持ってきてくれた。
凪:「ほら」
虎王丸:「ありがとよ」
虎王丸がぞうきんで窓をふく中、凪も同じように窓をふき始めた。
凪:「たまにはボランティアも悪くないな」
虎王丸:「だろ!そーだろ!でもお前は控えめにしとくんだぞ」
凪:「はいはい」
しばらくして。
アロマ:「二人ともーお茶にしません?」
虎王丸:「お茶ッスかー!アロマさんのお茶は最高だから楽しみッス」
そうやって皆でお茶を楽しんでいた。
アロマ:「ねぇ、二人とも。気づいてると思ってるだろうけど、
最近孤児院の子供が帰ってこないの」
凪:「あーそうですよね。最近子供がいませんよねぇ」
と凪は受け答えしたが、
虎王丸:「あーっはっはっは、そうですよねぇ」
と苦しい言い訳とも取れる言動を虎王丸がしていた。
まさかと思い、凪は問い詰めた。
凪:「虎王丸、まさか毎日孤児院でボランティアしてて気づいていなかったとか…?」
凪の視線は冷たい。
虎王丸:「いや、気づいたいたとも。ちょっと度忘れしてただけだぜ」
【2】
まずは情報収集のために街を歩く。
凪:「この辺で子供がどこかに行くのを見ませんでしたか?」
お爺さん:「いいや」
この返事ばかりだった。
虎王丸:「ちくしょー!全然手がかり見つけられねーぜ!」
と言って、虎王丸は地面を蹴った。
虎王丸:「アロマさんを困らせた相手を見つけたら土下座させてやる」
その間に凪はある部分に釘付けになっていた。
『何でも水晶占い』
凪:「ねぇ、あれで占ってみようよ」
凪は虎王丸に提案した。
虎王丸:「俺は占いなんて信じてねーんだよ!」
そんな言い争いの中、占い師が口を開いた。
占い師:「おぬし達はこれからある運命に巻き込まれる」
凪&虎王丸:「運命!?」
それを聞いて、二人はびっくりした。
占い師:「水晶にセクシーなお姉ちゃんが映ってるぞ」
虎王丸:「せくしーなおねぇちゃぁぁぁぁん!」
虎王丸は露骨に水晶玉をのぞいてみた。
占い師:「あ、消えてしもうたわ」
虎王丸:「このやろぅぅぅ、インチキじゃねぇの??」
虎王丸はいきり立つが、
占い師:「それでは占い料金5000コインいただきます」
凪&虎王丸:「5000コイン!!」
ぼったくりだ…ぼったくり以外の間違えではないと思った。
虎王丸は占い師をぼこぼこにする勢いだったので、
凪は卑霊召陣の舞いをした。
虎王丸:「うわー身体がいう事きかねぇ!」
凪:「荒っぽい行動はダメだよ、虎王丸」
虎王丸:「ちょ、凪はそれでいいのかよ〜」
凪:「一応占ってもらったわけだし」
そう言って、凪はサイフから5000コインを差し出した。
そんなことをしている間にもう既に夕暮れになっていた。
虎王丸:「あーあ。今日もダメだったなぁ」
虎王丸は少しあきらめ気味であった。
凪:「ねぇ」
凪は街外れに指を指した。
そこには郊外へと出て行く子供がいたのだ。
凪:「あれ…もしかして追った方がいいんじゃないか?」
よく見たら小さなコウモリが子供を案内しているかのようだった。
虎王丸:「よし、追おうぜ!凪」
【3】
虎王丸:「もう夜だぜー。一体どこに行くんだよ」
虎王丸は面倒くさそうに言った。
するとやがて明かりのついた建物を発見し、
子供はそこに入っていった。
その建物は半円のような形をしていて、
非常におしゃれな建物であった。丸い屋根からは煙突が出ている。
凪:「さて、どうやって入ろうか」
虎王丸:「力でぶち破る!」
凪:「虎王丸、それはやりすぎ。普通の人の家かもしれないじゃないか」
虎王丸:「そんなわけねーだろ」
凪:「とりあえずこのチャイム押そうよ」
ピンポーン
チャイムが外に響きわたる。
お姉さん:「どなた〜?」
そこに出てきたのは、20代の長い金髪、美人で色っぽいお姉さんであった。
(むっちゃ好み!)
虎王丸は思った。
お姉さん:「ウチは知らない大人を家に入れるつもりはないんですけど」
虎王丸:「そこを何とか」
虎王丸は頼み込んだが、なかなか入れてくれない。
凪:「あの…ウチは機械設計会社の者なんです。営業で来ました」
お姉さん:「あら、そうなの。私はレイナ。じゃあ入って」
凪の作戦が効いたのか、中に入れてもらえるようになった。
中の様子は研究所といったところか。
ただ、左の方に頭に何かをかぶっている子供が沢山いた。
子供達はにやにやしたり、わくわくしたり、にこにこ笑い出す子までいた。
レイナ:「ウチは最新技術を使って、バーチャルゲームができるようになってますの」
何ならかぶってみます?」
凪は少しためらったが、
凪:「そりゃあ是非使わせていただきますよ!」
と虎王丸はやる気満々である。
専用のヘルメットをかぶった虎王丸に見えた世界は素晴らしかった。
レースゲーム、格闘ゲーム、ロールプレイングゲーム、自分の家をもつゲーム…
虎王丸は自分の任務も忘れて熱中した。
虎王丸:「これ面白いッスよ!これは全国に広めないと」
レイナ:「そうしたいんですけどね、予算などの問題があるんですの。それに…」
レイナ:「このゲームをやりたがらない子供がたまにいるのよ!!」
そう言って、レイナはある子供のところに行った。
子供:「こんなのより外で遊びたいよ〜」
レイナ:「うるさいわね。そう簡単に帰さないよ」
レイナは急に荒っぽい口調になった。
その子供はアロマの孤児院にいた男の子であった。
子供:「凪兄ちゃん、虎王丸兄ちゃん、助けてよぉ」
凪:「そうか。アロマさんの孤児院から子供を連れ出したのはあなただったのか」
レイナはタバコをフーっとふかしながら、
レイナ:「バレたらしょうがないわね。何か悪い?」
開き直った態度に凪は、
凪:「アロマさんのところへ子供達を帰してやれよ」
レイナ:「あら、それはできない約束ね。アロマには散々な思いをさせられたから」
凪:「散々な思いって?」
と凪が聞き返すと、
レイナ:「まーず。私が幼稚園の時の誕生日会の時、
アロマの方が沢山メッセージを貰っていた!」
凪:「そりゃ単にあんたが友達少ないんじゃ…」
レイナ:「小学校の時、私はアロマに短距離走で負けた!」
凪:「そりゃ仕方のないことでしょう」
レイナ:「アロマは志望校に受かったのに私は同じ高校に落ちた!」
凪:「そりゃ単にあなたの勉強不足でしょう」
レイナ:「きーーー!とにかく私の人生を邪魔するアロマが許せないのよ!」
凪:「別に邪魔してないし」
レイナ:「うるさい!」
レイナ:「とにかくあなた達がアロマの手先だということはよくわかったわ」
緊張の糸が走る。
虎王丸:「あ、俺パスね」
凪:「は?」
虎王丸は戦闘をパスをすると言い出した。
虎王丸:「だってこんな美人で色っぽいねーちゃんに攻撃できないもん」
凪はあきれた。
レイナ:「ふーん。そっちの強そうな獣人族は戦わないのね。
坊や一人だけで戦えるかしら?」
凪は正直自信がなかった。凪は本来後方で舞術を踊り、
援護するというのがセオリーだった。
しかし今回は前衛に立って戦わなくてはならない。
凪はごくりと息をのんだ。
【4】
まずは凪が先制攻撃に出た。
凪:「ウィンドスラシュ!」
真空破がレイナを襲った。
レイナは大変すばしっこく、次々と避けていった。
凪:「残念。これはカモフラージュだったんだよ」
凪はいつの間にかレイナの背後に忍び込みキックを入れた。
吹き飛ぶレイナ。
凪:「降参する気になったかい?」
レイナ:「ふふ。まだこっちの技も出してないのに降参するわけないでしょう?」
レイナは呪文を唱えだした。
レイナ:「テンプテーション!」
毒々しい色をした花が舞い散る。
ヤバイ!そう感じた凪はすぐさまレイナから離れ、花びらに触れないように回避した。
虎王丸は完全に技にはまってしまったようで、レイナの言いなりになってしまったのだ。
レイナ:「じゃあそこの獣人族!この坊やをやっつけておしまい」
虎王丸は日本刀を抜き、凪に向かって構えた。
凪も同じように構える。
虎王丸:「白焔!」
凪:「いきなりソレかよ!」
舞い散る炎が凪の袖をかする。
凪「ちくしょう、危ないなぁ。
アイツ本気になったら俺より強いかもしれないからなぁ」
そして休む間もなく日本刀による攻撃が行われる。
凪は長い武器を持っていないため、身をかわすしかなかった。
凪:「やばい…このままでは追い込まれる」
そんな凪にある名案が思いついた。
凪は高く飛び上がり、
凪:「こっちだぜ。虎王丸」
凪は虎王丸を自分の望む場所に導いた。
うなり声をあげてやってきた虎王丸は凪のところにやってくる。
凪はそんな虎王丸を蹴り倒す。
虎王丸は攻撃には強いのだが、足元などには弱いのだ。
凪:「許せ虎王丸。ウィンドスラッシュ!」
真空破を流し込み、虎王丸を遠くまで飛ばした。
そしてその先にはレイナがいたのだ。
レイナ:「きゃ!ちょっと重いわよ」
二人が重なったところで、凪は舞いを始めた。
凪:「氷砕波!」
レイナとついでにかわいそうだが虎王丸にも吹雪が舞っていった。
レイナ:「きゃー!寒い!寒いわよ!それに視界が見えない」
吹雪が落ち着いたところで、凪はもう一度聞いた。
凪:「降参する?」
レイナはうんとうなずいた。
【5】
凪と虎王丸はまず子供達を解放した。
凪:「あんまりゲームばっかしちゃダメだぞ」
子供:「はーい。でも楽しかったよ」
意外と楽しかったという感想の方が多かった。レイナは間違っていなかったのだろうか?
虎王丸:「おら、綺麗なねえちゃん」
レイナ:「レイナよ。名前で呼びなさいよ獣人族」
虎王丸:「じゃあレイナ、アロマさんのところにあやまりに行くぞ」
レイナ:「〜〜〜〜〜〜!それだけはやめて!アロマは苦手なのよ」
凪:「でも謝りに行くのが筋ですよ」
と、凪と虎王丸は謝りに行くことを薦めた。
もう外は明け方になっていた。
アロマは早起きで洗濯などをしていた。
虎王丸:「アロマさーん」
虎王丸の大きな声が響きわたった。
凪:「子供達帰って来ましたよ〜」
驚いたアロマが外を見てみると、まるでハーメルンの笛吹きのような
子供の行列ができていた。
アロマ:「まぁ…ほんとに帰ってきてくれたのね」
アロマの目には涙がにじんでいた。
虎王丸:「レイナ、謝るんだぞ」
虎王丸がレイナに謝らせようとしている。
レイナ:「わ、悪かったわね」
虎王丸:「もっとちゃんと謝る」
レイナ:「申し訳御座いませんでした」
とレイナは頭を下げた。
虎王丸:「頭を下げたってダメだ。ここは土下座だろ」
アロマ:「あぁ、虎王丸くん、そこまではいいから」
虎王丸:「ったく、アロマさんは優しいんだから」
レイナは顔を上げた。
虎王丸:「今回はアロマさんの優しさに免じて許してやる。
もうこんなことすんなよ」
レイナ:「わかってるわよ。にしても…」
レイナはアロマの方を向いて言った。
レイナ:「あんたも不器用な生活をしてるのね。
アンタくらいの頭なら研究所にでも行けるでしょうに」
アロマ:「いいの。私は子供が好きだから…」
帰ってきた子供達は孤児院の庭で元気よく遊んでいる。
虎王丸も一緒になって遊んでいるようだ。
アロマはご飯の支度をしている。
凪は縁側でぼーっと過ごしていた。
レイナ:「隣、いいかしら」
レイナは凪の隣に座った。
レイナ:「今回、アロマの孤児院の子供達を実験台に使ったのは
悪かったと思ってるわ」
レイナは髪をかきあげる。
レイナ:「でもね、いつも『幸せ』って作れないものかなって思うのよ。
アロマにいつも先を越された時、どうしようもない悔しさがこみ上げたわ。
そんな時に脳内だけでも幸せになれたらって…今はゲームしか作れないけど」
凪はそれを聞いて、
凪:「そうやって悔しい!って思うことが大事なんじゃないですか?」
と答えた。
凪:「人間って砂利道を痛い、痛いと思いながら歩く生き物だから、
そこで楽をしちゃいけないんですよ。
そこで楽をすると、きっと人間でなくなる…」
レイナは凪の方を見ながらそうかもねと思った。
凪:「子供達、楽しそうですよね」
凪は庭を指して言った。
レイナ:「ほんと…私のゲームをしている時も楽しそうだったけど、
ちょっと表情が違うみたい」
二人は夕暮れになるまで、子供達をながめていた。
アロマ:「そろそろ晩御飯よー」
アロマの声が響きわたった。
そこで子供達とそれに混じって虎王丸までもが喜んで中に入って行った。
アロマ:「お二人さんの分もあるわよ」
レイナは少し照れくさい顔をして、
レイナ:「じゃあいただいて帰ろうかしら?」
と言った。
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