<PCクエストノベル(2人)>
巫女さんクエスト(多分前編)
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今回の冒険者
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1070/虎王丸/男/16才/火炎剣士】
【2303/蒼柳・凪/男/15才/舞術師】
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1.冒険不可能
それは、とある神殿の前だった。
二人の男が神殿の前に居た。
虎王丸「よし、行くぜ?
…大丈夫。きっと何とかなるって!」
虎王丸は言った。
彼は冒険者と呼ばれる人種だ。
仲間と共に、色んな場所を冒険して回った。
今日も、冒険の為に、この神殿を訪れていた。
蒼柳・凪「ここは…いくら虎王丸でも無理だと思うよ?」
蒼柳・凪は言った。
彼は虎王丸と行動を共にする事が多いようだ。
『とりあえず行ってみる』
虎王丸は、いつも言う。
『とりあえず落ち着け』
そんな彼にそう言葉をかける事が自分の役割だと彼は考えていた。
だが、それを差し引いて考えても、この神殿での冒険は無理だろうと凪は思った。
そんな二人の前に、神殿から出てきた一人の女性が声をかけた。
おそらく若いのだろうが、年齢がわかりにくい、不思議な印象を人に与える女性だった。
アーリ神殿の偉い巫女:「だめです。ここは、お通し出来ません」
アーリ神殿の偉い巫女は、虎王丸と凪の二人にきっぱりと言った。
虎王丸「やっぱりだめですか…」
虎王丸が、しょぼんとしている。
それが男である彼の限界だった。
いくら、彼がどこにでも行く冒険者でも、越えられない壁だった。
アーリ神殿の偉い巫女:「ええ、だめです。男子禁制ですから」
虎王丸:「そうですか…」
蒼柳・凪:「あきらめろ。虎王丸」
ひとまず、虎王丸は諦めた。
ここは、ユニコーンを崇める巫女が集う、アーリ神殿である。
ユニコーンが清らかな乙女を好むという特性上、神殿も男子禁制という事になっていたのだ。
いくら虎王丸でも冒険出来ない。
そんな場所に、しかし虎王丸と蒼柳・凪は呼ばれていた。
蒼柳・凪:「では、何故、俺達を呼んだのですか?」
アーリ神殿の偉い巫女:「はい、矛盾していると思っておられるかも知れませんが…」
凪が当然の疑問を口にした。
入れてくれないなら、何故呼んだ?
そういう遊びなのか?
疑問に思う虎王丸と凪に、アーリ神殿の偉い巫女は事情を話し始めた。
アーリ神殿の偉い巫女:「主のお告げがありまして…」
主とは、ユニコーンである。
偉い巫女は、彼女達が仕える聖獣の声を聞いたと言った。
普段は男子禁制のアーリ神殿の周辺で禁欲的な日々を過ごす巫女達だが、時折、遠くに出かける事もあった。
それが、今回のように、ユニコーンの声に直接導かれた時だ。
アーリ神殿の偉い巫女:「巫女を一人、主の所まで送って欲しいのです」
虎王丸:「主…って事は、ユニコーンか?」
アーリ神殿の偉い巫女:「はい、そうなります。
主が会いたいと言っておられるのです。
おそらく、他愛も無い話をして戯れる為に呼んでおられるのだと思いますが…」
そうして、ユニコーンが巫女を呼び出す事は、それ程珍しい事では無いそうだ。
ただ…
アーリ神殿の偉い巫女:「どうも、最近、狙われているようなのです」
近頃、そうして巫女が神殿を離れると、道中で盗賊に襲われる事があるという。男子禁制の神殿で生活を送る無垢な巫女は、盗賊達にとって、財宝として狙うだけの価値があるらしい。
逃げ延びる者も居たが、二度と帰って来ない者も居た。
そこで、虎王丸と凪のような冒険者が呼ばれたというわけである。
虎王丸:「巫女さんをユニコーンさんの所まで連れて行って、帰りも送ってくれば良いって事だな?
…特に問題ないよな?凪?」
蒼柳・凪:「そうですね」
ありふれた話だ。
特に断るような依頼では無い。
というわけで、虎王丸と凪は巫女の護衛という依頼を受ける事にした。
ありふれた話だが、心に期するものがあった。
…巫女さんをちゃんと連れて帰ってきたら、神殿の中に入れてもらって巫女さん達がみんなで労ってくれたりしないかな?
虎王丸は、少しの期待を持っている。
…聖獣の声を聞く巫女。話してみたいな。
凪は巫女の力に興味がある。
それぞれの思惑を持つ二人は、巫女を連れてユニコーンの元へと向かう事になった…
2.巫女さんと盗賊さんとその他
アーリ神殿の巫女A:「じゃあ、そういうわけで、行ってみよう!」
虎王丸:「お、おう。行ってみよう!」
偉い巫女に連れられてやってきた、アーリ神殿の巫女Aの言葉に、虎王丸は頷いた。
なんだか、元気が良い。
ちょっと、イメージしてたのと違うような気がした。
そんな巫女さんを連れて、二人はアーリ神殿を離れる。
蒼柳・凪:「お前には、お似合いだと思うが…」
まあ、別に良いんじゃないかと凪は思った。
男子禁制の神殿でユニコーンに仕える巫女。清楚な巫女をイメージしていたのも確かだったが。
アーリ神殿の巫女A:「久しぶりだな〜!
遠くに行くの!
楽しみだな〜」
とにかく元気良くしゃべる。ちょっとノリが良い変わりに、ちょっと頭が悪そうな娘に見えた。
巫女のコスプレをした街娘ではないかと、虎王丸と凪は疑問に思ったが、一応、神殿の巫女に間違い無いらしい。
虎王丸:「この子、ユニコーンに説教でもされるのかな?」
蒼柳・凪「…ありえると思うよ」
確かに、巫女の衣装は着ているし、女の子の顔はしているけれど、説教の一つもしてやりたくなる巫女だった。
アーリ神殿の巫女A:「えー、み、みんな、こんなもんですよ?
ほ、ほら、男の子もあんまり来ないのに清楚になんかしてられませんって!」
蒼柳・凪 :「でも、ピアスとかネックレスは、さすがに不味いんじゃ…
偉い巫女さんは、いかにも巫女って感じでしたし」
虎王丸 :「そーだ。清楚じゃないと、ユニコーンに怒られると思うぞ?
…ユニコーン、怒るために、あんたを呼んだんじゃないのか?」
アーリ神殿の巫女A:「ぐ、そ、それは…
ま、まあ、何で、わざわざお告げで呼ばれたかは、気になってますけど…」
なるほど、一応、気にしているのか。虎王丸と凪は頷いた。
蒼柳・凪 :「あの…聖獣の声は本当に聞こえるんだよね?」
アーリ神殿の巫女A:「む、し、失礼な!
たまに聞こえますよ、たまに!巫女ですから!」
虎王丸 :「たまになのか…」
たまに聞こえる聖獣…ユニコーン…の声に導かれました。と、巫女Aは言った。
嘘をついているようにも見えない。
ユニコーンが、彼女を呼んでいるのは本当なのだろう。
むしろ、普通の巫女じゃないからこそ、呼ばれるのかもしれない。
一方で、巫女Aは、巫女として見るから変わっているように見えるだけで、女の子としては、全く普通の子にも見えた。
あまりツッコミを入れても可哀想なので、虎王丸と凪は、深く考えないで行く事にした。
…ナンパ相手としては、そんなに悪くないな。
可愛いか、そうでないかで判断すれば、間違いなく可愛い方に入る娘だ。
虎王丸は、少し満足する気持ちもあった。
そうして、虎王丸と凪は、巫女Aを連れて道中を行った。
数日が過ぎる。
虎王丸:「確かに…ずっとついてきてるのが、居るみたいだな?」
蒼柳・凪:「集まるまで、待とうか」
虎王丸:「そうだな」
なるほど、確かに神殿を出ると、誰かがついてくる気配を虎王丸と凪は感じた。
それは、何日も地味に後をつけてくる。
だが、追われているのがすぐにわかった位なので、それ程の脅威とも思えなかった。
おそらく盗賊達が後をつけながら、仲間を呼んで襲撃の機会を伺っているのだろう。
ならば、まとまった所で一網打尽。
そう、虎王丸と凪は考えていた。
アーリ神殿の巫女A:「ねーねー、エルザードに寄っていこうよ!
都会なんだよね!」
虎王丸 :「いや…そんな時間無いだろう?まあ、帰り道にな」
蒼柳・凪 :「虎王丸に抑え役をさせるとは…」
巫女Aのワガママを聞くのにもなれた。
能天気な旅が続く。
また、別のある日、巫女Aが言った。
アーリ神殿の巫女A:「虎さん!凪さん!
なんか、危ないのがつけてるから気をつけろって、ユニコーンさんが言ってますよ!
いえ、本当ですって!私、巫女ですから!」
何かのお告げが聞こえたらしい。
…ほんとかな?
二人は一瞬思ったが、腐っても巫女だ。巫女が嘘のお告げを言うとも思えない。
虎王丸と凪は、野営用のテントを広げ始めた。
今日の旅はここでおしまい。そんな感じだ。
蒼柳・凪:「では、巫女さんは、この中で、じっとしていて下さいね?
多分…騒がしくなると思いますが」
低い声で凪が言った。巫女Aがおとなしく従う。三人は、一休みでもするようにテントに入った。
巫女A:「えへへ、キャンプみたいで楽しいですね?」
虎王丸:「まあ、そうだな!」
巫女と虎王丸は楽しそうだ。
虎王丸:「…て、遊んでる場合じゃないぞ!!」
蒼柳・凪:「全くです。
…巫女さん、すいませんけど、しばらく静かにしてて下さいね?」
巫女A:「はーい…」
巫女Aは元気無く言った。
確かに、別に遊んでいるわけでは無かった。
虎王丸と凪は声を潜めて様子を伺った。
盗賊達の目的は、巫女さんを捕まえて帰る事である。
テントそのものに火を着けたりするような事は、しないはずだ。
ならば、巫女さんをテントの中に入れて隠しておけば、外に立たせているよりは安全だ。
そして…
二人はテントの表と裏から別れて、一気に外に飛び出した。
剣と銃を、それぞれ手に取っている。
こうやって、いきなり外へ出れば、それが奇襲になる。
外に居る盗賊達は、不意を突かれて動きが止まった。
虎王丸:『んじゃ、巫女さんを頼む!』
蒼柳・凪:『ああ』
一言だけ、言葉を交わした。
それで十分だった。
虎王丸は、そのまま盗賊たちの方に切り込んで、凪はテントを離れずに周囲を警戒した。
自然に、虎王丸が攻めて、凪がサポートする形になっている。
昨日や今日、コンビを組み始めた二人では無かった。
虎王丸の炎を纏った剣が、盗賊達を全く寄せ付けずになぎ倒していく。
凪は後方でサポートに回る。
盗賊達は、彼らにとっては手ごわい相手ではなかった。
だが…
蒼柳・凪:「巫女さん!平気ですよね?」
凪は冷たい汗をかきながら、テントの中に声をかけた。
巫女A:「あ、は、はい!
へ、平気ですよ?」
巫女さんの声が返ってきた。無事なようだ。
凪は少し安心した。
それから、また、辺りを見渡した。
明らかに気配がおかしい。
背筋が寒い。
何かが居る。
盗賊達など、問題では無い。もっと危険な物が近くに居る。
そんな気配を凪は感じていた。
炎が風を切る音をたてながら、虎王丸がまた一人、盗賊を斬った。
…なんだ?何か居るのか?
彼も、嫌な気配を感じていた。
盗賊たちに紛れていて気づかなかった。だが、確かに別の何かが居る。
盗賊達は、さっさと片付けてしまった方が良いと思った。
虎王丸は焦る。
焦りが、彼の刃を鈍らせた。
…あいつは、放っておいても大丈夫だな。
凪は、ひとまず虎王丸の事は忘れた。人数も大分減った雑魚の盗賊相手なら、もう彼を援護する必要も無いだろう。テントの周囲の気配に気を集中した。
舞術を使わずに、息を潜める。隙を作ってしまう事が怖かった。
まず、相手の位置を掴まなくてはならない。
凪は動かない。
だが、完全なる静も、また舞踏の一つ。
凪は息を潜め続けた。
やがて、近づいてくる気配を感じた。
凪は何も無い空間に向けて銃を構え、引き金を引いた。
手ごたえが無い。
そのまま、見えない何かが近づいてくる。
避けられたようだ。それが、相手を怒らせたようだ。
凪は自分のすぐ脇に、熱を感じた。
熱い。炎のようだ。
虎王丸:「馬鹿!ぼーっとしてんな!」
炎を纏った虎王丸の剣だった。
熱い。炎のようだ。
虎王丸は凪のすぐ脇を駆け抜け、水平に一閃する。
半円状に広がった虎王丸の剣も、しかし空振りだった。
蒼柳・凪:「ぼーっとしてるわけじゃない!待ってたんだ!」
凪は言い返す。
嘘を言ったつもりは無いが、しかし、それでも見えない敵の動きが掴みきれていたわけでもない。
虎王丸が来なかったら、攻撃を受けていた可能性が高いと思った。
一応、言い争いをする余裕は残っていた。
虎王丸の体から白焔が上がる。
虎王丸:「どこだ!出てこいよ!」
怒鳴り声というより、雄叫びだった。
相手が雑魚なら、それだけで勝負が付いてしまう声だった。
虎王丸が前で、凪が後ろの、彼らの形になった。
だが…
蒼柳・凪:「…いや、もう居ないみたいだ」
静かに凪が言った。
もう、気配は感じられなかった。
虎王丸が小さく舌打ちをした。
盗賊は、すでに壊滅している。
巫女さんを狙ってきた者達は、全て居なくなったようだ。
蒼柳・凪:「巫女さん、もう平気ですよ?」
ひとまず、凪はテントの中の巫女さんに声をかけた。
しかし返事が無い。
虎王丸が、無言でテントに駆け込んだ。
一枚の紙が落ちていた。
虎王丸が、荒っぽく拾い上げる。
女の子の筆跡で、文字が書かれていた。
『なんだか危なそうなんで、土っぽい魔法で地面を掘って、ひとまず逃げちゃいますね〜
人の多い場所なら大丈夫だと思いますんで、近所のエルザードまで行って来ます。
ユニコーンさんの聖地で合流しましょう。!
べ、別にエルザードに遊びに行くわけじゃありませんから、心配しないで下さいね?
では、さようなら〜』
あなたの心の巫女さんA。
裏に、女の子の筆跡で署名がされていた。
虎王丸の肩が震えている。
怒りという感情だ。
蒼柳・凪:「虎王丸!どうした!」
凪が入ってきた。
虎王丸が何も言わず、巫女Aの置手紙を凪に手渡した。
足元を見ると、人が一人、ぎりぎり通れる位の穴が開いていた。それは遠くまで続いている。
自然の土に穴を開ける聖獣の魔法というのを、凪は聞いた事があった。
ひとまず、巫女の置手紙を、凪も読んでみた。
読み終えた凪の肩が震えていた。
怒りという感情だ。
虎王丸:「エルザード行くぞ!」
蒼柳・凪:「はあ…」
とりあえず、見えない敵が巫女さん見つけるより先に巫女さんをとっ捕まえてやる。虎王丸は決意した。
凪は、正直、どうでも良いという気がしたが、まあ、虎王丸と一緒に行く事にした。
二人の男は、巫女さんを追って走り出す。
彼らが目指すは、エルザード。
この地で一番栄える街であり、普通の女の子なら一度は遊びに行ってみたいと思う都会であった。
その後、二人が巫女さんに再び会う事が出来たのかは、別の話である…
(完?)
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(ライター通信もどき)
初めまして、今回はお買い上げ頂き、ありがとうございました。
巫女さん、戦いというイメージでMTSが書くと、こんな感じになりました。
気が向きましたら、後編の発注もお待ちしています。
正直、ひさしぶりに発注があったのでびっくりしました。
重ね重ね、ありがとうございました…
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