<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


【桜蘭】夏の海、月のゼリー

藍的天空誰的東西(青いそれは誰のもの)
ェ廣的海誰的東西(広い海は誰のもの)
多少人支配的事不被ェ恕的(何人たりとも支配することはできない)
自然的恩惠大家的東西(自然の恵みは皆のもの)

〜起〜

 ヤンクンが観光に来てあきらめて返ろうとする人達へ声をかけ、引き止めれたのは2人だった。
「ああ、チャオさんお久しぶりです」
 といつもの優しげな笑みで挨拶をしたのは水着にシャツを羽織った格好の山本建一(0929)だ。
「おー、ずいぶん前に手伝ってくれたヤマモトさんアルね。今回も手伝ってくれたらレシピ伝授するアルよ」
 チャオ・ファンも笑顔で答えた。
「それにしても、すごいクラゲですね。中華では前菜とかで食べたことありますけど……」
「ふっふっふっ、どんな料理になるかは秘密アル。無事、事件解決したらヨ」
 回収され、焼かれているクラゲの死骸を見ながら建一は以前食べた中華の味を思い出す。
 チャオは不敵な笑みをうかべ、ギリギリ届く建一の背中を叩いた。
「私も協力させてもらおう。しかし、怪物を食べようというのはしっかりしているというか、ちゃっかりしているというか」
 ガチャガチャと真夏の海に似合わない漆黒の甲冑で現れたのは同じく黒い翼を持った天使―サクリファイス(2470)―だった。
「巨大な剣アルね〜、いろいろときれそう」
「触るなっ! あ、いや、すまない……少々特殊な事情があるんだ」
 そっと手を伸ばすチャオだったが、サクリファイスは血相を変えてその手を払った。
 奇妙な態度に疑問を抱くチャオ。
 しかし、そんなものは頭の片隅に押し込み、行動にうつりだす。
「よし、ヤマモトさんは水着だけどウチとサクリファイスさんは違うから、着替えてから行動に移るアルよ! えいえいおー!」
 人一倍気合を入れて、クラゲ退治作戦は動き出した。

〜承〜

「こんなところアルね」
 チャオが着てきたのは、白に華の模様が描かれたチャイナドレス風のデザインをしたチュニックだった。
 シュノーケルと浮き輪、そして腰には商売道具である刃物一式を下げていた。
「あー、チャオさん。遊ぶ気マンマン?」
 その格好に少し汗をかきつつ建一は突っ込みを入れた。
「うちは本気アルよ、本気と書いてマジのコトネ」
 ばーんと効果音がつきそうなポーズで拳をグッと握った。
「うーん、さすがに着慣れないな……」
 海の家で水着をかりたサクリファイスは着替え終わるとなれない格好に戸惑いながらも更衣室から出てきた。
 水着が良く似合っている。
「サクリファイスさんもお似合いですよ」
「か、からかうな! 鎧だといざというときに困るだけでだな……遊びじゃないんだからな! 遊びじゃ!」
 建一に笑顔でほめられると、さらに恥ずかしさがこみ上げてきたのか顔が赤くなる。
「私は空から敵の位置を探ってくる。誘導するからまずは船かなにかできてくれ」
 ばさぁと4枚の翼を広げるとサクリファイスは大空へ飛び立つ。
「それじゃあ、僕達もいきましょう」
「ヤンクン、船のほうは用意できてるアルか?」
 サクリファイスを見送ると、山本とチャオは出発の確認をする。
 チャオの舎弟である、ヤンクンがタイミングよく戻ってきた。
「あ、はーい。一応準備できてますよー」
「それじゃあ、船をこぐのも頼むアルよ」
「チャオさんのほうが体力あるんじゃ……」
 ヤンクンの呟きを聞いたチャオは鉄拳で回答をした。
「うちはか弱いレディーあるよ。船を漕がせるとは何事アルか!」
(う〜ん、チャオさんのほうが強いとおもうけど……ここは言わないほうがいいかな)

「小型のクラゲはまだまだいるようだな」
 空を飛びながら海をみると、ところどころ青ではなく、白くなっていた。
 波ではなく、クラゲの群れである。
 異常事態であることは一目瞭然だった。
「親玉はわからないな……もう少し沖にでてみるか」
 翼をひゅっとおりたたみ、体を傾ける。
 速度が一瞬おちたかとおもうと、斜めに降下する。
 水面付近にくると、再び翼を広げ水面を蹴って飛び上がった。
 そのときだった。

 ザバァァ!
 
 と水中から触手のようなものが伸びてきた。
 ヒュンとサクリファイスはそれをギリギリのところで回避する。
 ドバァァと波しぶきを上げながら、触手は海に沈んだ。
 その大きさはサクリファイスと同じサイズだった。
 海面に出ていた部分でそれならば、触手全体や本体は想像をはるかに超えたサイズであることは予想できた。
「見つけたな。すぐに連絡しにいかなければ……」
 高高度へ飛び上がると、サクリファイスは船あるほうへ飛び立った。
 
〜転〜

 サクリファイスの呼びかけに応じて建一達がのった船が襲われた地点へ近づく。
「確かに、強い力を感じますね……」
 静かすぎる海を見渡しながら、建一は意識を集中させた。
「どうする? 再びおびき出すか?」
「そうしましょう、僕がもぐります」
 建一はシャツを脱ぎ、周囲に風の精霊をまとった。

 ジャブンと水中にはいる。
 目の前には白い岩……いや、そのように見えるほどの巨大クラゲがいた。
 クラゲが白い体に光を走らせる。
 数え切れないほどの触手が流れ星のように尾をひきながら、建一に迫る。
『んっ!』
 シュンッシュンッシュンッと襲い掛かる触手を水中であるにも関わらず、建一は交わす。
 かわしきれないものは高速で魔法をとなえ、水流のバリアを張りはじき返した。
『大きいですね……これはこのまま戦うのは少し厳しそうです』
 建一の声が、聞こえたのか聞こえなかったのか判らないがクラゲはその全身を大きく広げ包み込んできた。
『これはまずいっ!』
 離れて逃げようとするも、触手が伸び建一の行く手を阻んだ。
『このままだとまずいですね……』
 口では言うものの建一の顔に危機感はない。
 手で印を結び、高速で呪文を詠唱した。
 
 一方、サクリファイスのいる空中にも変化が訪れた。
 風が巻き起こり、竜巻がおきだす。
『サクリファイスさん! 今から敵を打ちあげますから、後は頼みます!』
 風と共に聞こえてきた建一の声にサクリファイスは頷き、竜巻と距離をとって【魔断】を構える。
 【魔断】に炎が湧き出し、刀身を真っ赤に染め上げていく。
 そのとき、竜巻も規模をましビュウビュウと音を立てた。
 目の前の嵐の中を【白いモノ】が横切り、昇っていった。
 バァッと嵐がやみ、空中からクラゲが落下しだす。
 宿った炎はすでに白く輝きだしている。
「ッアァァァァァァッ!!」
 獣のような咆哮をあげて、サクリファイスが落下してきたクラゲに上昇しつつ接近。
 刃をカシャと向け、下から上へとふりあげる。
 綺麗な弧をえがき、クラゲは真っ二つになった。
 切り口は焼き焦げ、炭になっている。
「よーし、ヤンクン。回収するアルよ!」
 チャオは落下してきたクラゲに飛び掛り、手持ちの包丁で細切れにしながら嬉しそうに叫んだ。

〜結〜

 ジュジューと焼ける音と共に、海の家に香ばしい匂いが漂った。
 船の代金として、チャオたち一行は海の家でアルバイトすることとなったのである。
 ものめずらしいクラゲ料理に返りそうだった観光客達は集まり、店は繁盛している。
「なるほど、こういう調理法ですか……」
「アイスにもできるんだな……」
 チャオのクラゲを調理する姿に建一とサクリファイスは見入っていた。
 建一にいたってはしっかりとメモを取っているほどだった。
 カウンターにはクラゲ冷やし中華、クラゲアイス、クラゲゼリーなどが並び、ウェイトレスが運びだしている。
「こら、あなたたちも働くアルよ! あとで食べさせるアルから」
「その約束、必ずだぞ! あ……いや、珍しいから……な」
 サクリファイスはくわっとして言い放ったあと、照れくさそうに頬を掻いて訂正した。
 そんなことをしていると、次の客がやってきた。
 3人は声をそろえていう。
 
「歡迎光臨!(ファンイングアンリン)」


                                      終幕
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【PC名(ID)  /性別/年齢         /種族・職業】
山本建一(0922)   /男/19歳(実年齢25歳)/人間・アトランティス帰り
サクリファイス(2470 /女/22歳/堕ちた戦乙女・狂騎士)
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■         ライター通信          ■
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どうも、橘です。
久しぶりのチャオシリーズはいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのならば、幸いです。

感想など、お聞かせいただければと思います。

>山本さん
お久しぶりです。またの参加感謝しています。
そういうことで、文中でも久しぶりと表現させていただきました。
魔法についてはAFOの資料から持ってきましたがいかがでしたか?
何事にも動じない姿が気に入っていただけたらと思います。

>サクリファイスさん
はじめまして。このたびは参加ありがとうございます。
ちょっとツンデレっぽくなりましたが、大丈夫ですか?
リテイクなど寄せていただけたら対応したいので遠慮なくどうぞ

このたびは参加本当にありがとうございました。
それでは、運命の交わるときまでごきげんよう。

2007/08/16 橘 真斗