<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


祠の奥 + 繋がる時 +



 七色に輝く水を手ですくい、ただ指間を滑らせる。
 幾重にも重なった綺麗な歌声に耳を澄まし、唇を開ける。
 唇だけが紡ぐ、輝かしき時代。
 現在に蹴散らかされ、未来に押しやられた過去は、いつまでも美しい。

「花の都を過ぎれば水の都。 続く平野からは、戦乱が押し寄せて来る」



* * * 繋がる時 * * *



 冷たい空気は、凛と澄んでおり、空を高く押し上げる。
 山本・建一は過ぎ去っていく風のおしゃべりを耳元に聞きながら、喫茶店・ティクルアの木の扉を押し開けた。
 お菓子の甘い香りと紅茶の優しい香り、コーヒーのアロマが溶け合い、店の中は不思議に心地良い温かみを持った香りに包まれている。
 店の奥にある暖炉に薪をくべていたリンク・エルフィアが、扉を開けた事によって鳴った鈴の音に気づき、立ち上がると振り返る。
「建一さん」
「お久しぶりです。 今、少し宜しいでしょうか?」
「えぇ。ちょうど今さっき、最後のお客様が帰られた所なんです。 建一さん、お昼はもうお済みですか?俺達はまだなんで、今から済まそうとしてるんですけど、もし良ければ一緒にどうです?」
 お話ついでに昼食もとろうとしていた建一は、食べてきていないと告げるとリンクが案内してくれた席に座った。 窓からは、北風に翻弄される木々が見て取れる。どこまでも真っ直ぐに伸びた砂の道は、エルザードへと続いており、一人の若い女性が靡く髪を押さえながら足早に通り過ぎて行く。
「建一ちゃん、いらっしゃいなのー!」
 流れ行く雲に心を奪われていた建一は子供特有の高い声に顔を上げると、ピンク色の可愛らしい少女を見つけ、頬を緩めた。
「シャリアーちゃん、お邪魔してます」
「お邪魔なんかじゃないのー! シャリー、建一ちゃんは優しいから好きなのよー!」
 ニコニコと微笑みながらやってきたシャリアーが、建一の隣に座る。
 年齢よりもやや幼い印象を受ける彼女は、食事をする時に気をつけて見ていないと、綺麗なレースのスカートを台無しにしてしまう恐れがある。
「シャリアー、俺の隣に座れよ」
「ヤなのー!建一ちゃんの隣がいーのっ!」
 ぷぅっと頬を膨らませながら頑なに抵抗するシャリアーに、リンクが首を振ると溜息をつく。
 大丈夫ですからと言った時、この店の店長、リタ・ツヴァイの声が厨房から響いてきた。 呼ばれたリンクがそそくさと席を立ち、厨房へと引っ込んでいく。
「あのね、今日のお昼はね、スパゲッティなのー」
 お腹がもうペコペコだと主張するシャリアー。 時計を見れば既に針は二時近くを指しており、小さな彼女にとっては苦行だったろうと、建一はそっと淡い桜色の髪を撫ぜた。
 美味しそうな香りと共に運ばれて来たスパゲッティを前に、お茶を淹れて来たリタが座るのを待ってから皆で「いただきます」と声を合わせる。
 いつ来ても、何を食べても美味しいリタの料理に舌鼓を打っていると、リンクがはたと顔を上げ、建一の目を真っ直ぐに見つめた。
「そう言えば、今日はどうしたんです?」
「また、あの祠に行ってみたいと思いまして‥‥‥」
「水天使ですね」
 気のせいか、リンクの目が光ったように感じた。 建一は口の中に残っていたスパゲッティを飲み込むと、コートのポケットから折り畳まれた紙を取り出し、開いてテーブルの上を滑らせた。
「これは?」
「前回のおさらい‥‥‥と言いますか、あの日、家に帰ってから書き記しておいたんです」
 目を瞑ると思い出す、祠の奥であった出来事。 不思議な現象、優しい音楽‥‥‥瞼の裏に再現される映像に、建一は薄く口元に笑みを浮かべると目を開けた。
「祠の謎は‥‥‥“神々に祝福されし、蒼の妖精。かの者たちの話を聞く時、閉ざされし歴史が再び開く。かの者たちの名を刻め”でしたね」
「えぇ。水天使と入れれば祠が開いたんですよね‥‥‥」
 微かな振動の後に柱がゆっくりと回転し、真ん中から垂直に亀裂が走る。 亀裂から二つに割れた柱の中心部には、階下へと続く階段が伸びていた。 階段の下からはヒンヤリと冷たい、水を含んだ風の匂いと楽しげな歌声が聞こえてきていた。
「七色に光る水‥‥‥角度によって色を変える青の瞳と銀色の髪の少女」
「ソフィナさんと仰るんでしたよね」
 母親の名がオウナ、一番上の姉がセラフィー、二番目の姉がシャイラ、末っ子がエリーンと言っていた。 もっとも、皆恥ずかしがりやでソフィナ以外は二人の前に姿を現さなかったのだけれども‥‥‥。
「レーリアが花の都、ソワルが水の都」
「レーリアは聖女のティレイア様が治め、ソワルは天女のエスカリア様が治めているんでしたよね」
 話しに夢中になっているうち、いつの間にか食事は終わり、空いた食器をシャリアーとリタが厨房へと運び、洗っている音が微かに聞こえてくる。 ジャムを落としたロシア紅茶が振舞われ、建一はお礼を言うと温かな液体に口をつけた。
「ソフィナさんが言うには、あの場所は不思議な場所で、遠い世界同士が通じ合う場所だと言っていましたね」
「えぇ。時を超えた世界をもまたにかける場所だとも」
「ティレイア様に会いに行きますか?」
 リンクの質問に、建一は大きく頷いた。
 物語はほんの少し、登場人物の影を擦っただけに過ぎない。 レーリアもソワルも、まだ健在で、花と水に彩られた街は美しく、何の憂いもなく悲しみもなく、毎日が歌うように過ぎていった日々、歴史的に見ればほんの一瞬の時を捉えただけに過ぎない。
 波はいつだって、上へ下へを繰り返す。幸せだってそれと同じ。上へ下へ、幸と不幸を繰り返しながら進んでいく‥‥‥。



* * *



 ティクルアから竜樹の鳥に乗って山一つ越えた先、人里離れた村の中心部にある祠の前に降り立つと、リンクは竜樹の鳥の背中を優しく撫ぜ、耳元で何かを囁くと後ろに下がった。 砂埃を巻き上げながら羽ばたいた巨大な鳥が、青い空へと吸い込まれて行く。
 人の言葉が分かると言う竜樹の鳥は、どうやら自分のねぐらへと帰って行ったらしい。
「さてと‥‥‥」
「ま、待ってください。手で押してみませんか?」
 祠と向き合い、蹴ろうと足を上げたリンクを慌てて止める。 前回彼は無表情で祠を蹴っ飛ばし、建一を唖然とさせた。 建一さんがそう仰るならと言って、二人で力をあわせて祠を向こう側に押し倒せば、人一人通るのがやっとと言った細い階段が続いているのが見える。
 薄暗い先からはヒンヤリとした風が上って来ており、リンクを先頭として階段を下りる。
 ――― 確か、階段を下りた先には広間があるんでしたよね
 天井へと伸びる一本の柱の周囲に羅列された奇怪な文字 ――― リンクが言うにはこの辺りで使われていた古代文字だというが、建一には記号としか認識できず、何と書かれているのかは分からなかった ――― そしてその近くには小さな台座が置かれ、柱に刻まれたものと同じ文字が刻まれたブロックが数個落ちていた。
 ――― そこに入れる文字は“水天使”で ‥‥‥
 文字を入れ終わると柱が回転し、真ん中に垂直の亀裂が入って階段が現れるのだが ――― 建一はふと、おかしな事に気づいた。
 前回来た時、これほどまで下におりただろうか?
 意外とすぐに広間に行きついた気がするのだが、下りれども下りれども薄暗い階段は先へと続いている。 リンクの持つ灯りが揺れ、風が通ったのが分かる。 通路の天井から落ちてきた水滴が建一の髪を濡らした時、ふいに微かな声が聞こえてきた。
 ギクリと、リンクの細い肩が上下する。足を止め、探るように下を窺うリンクだったが、幾ら目を凝らしても闇は深い。
 建一は全神経を耳に集中させると、息さえも止め、ジッと微かな音に意識を向けた。
 細い声は高く、恐らく女性のものだろう。単調ではない音の揺れは、歌のようだ。
 ――― 歌 ‥‥‥‥‥ ?
 ハッと目を開ければ、どうやらリンクも音の正体に気づいたらしく、建一を見上げて眉根を寄せている。
「どう言うことでしょう?前は仕掛けを解かなくては進めなかったのに‥‥‥」
「‥‥‥そうか、繋がったからだ‥‥‥」
「繋がった?」
「時と時が繋がったんですよ。つまり‥‥‥」
 その先を飲み込んだリンクに、建一は首を傾げ、先を促した。
「つまり、呼ばれてるんですよ」
「ソフィナさん達にですか?」
「いいえ。時にです」
 先を急ぎだしたリンクに、その言葉の意味を尋ねることは出来なかった。
 気を抜けば滑り落ちてしまいそうなほどに危うい階段を下りた先は、透けるような美しい淡い水色の部屋だった。 足元には七色に光る水があり、天井から落ちてくる水滴を受けては綺麗な波紋を広げている。
「きっといらっしゃると思っておりましたわ」
 腰近くまで伸びた、青みがかった銀色の髪、雪のように白い肌に、角度によって色を変える瞳。 ソフィナは柔らかく微笑むと、座っていた石の椅子から腰を上げ、二人を手招いた。
 前回は止まってしまった歌声も、今日は細く続いている。恥ずかしがり屋の姉と妹、母親の姿はやはりどこにもなく、それでも以前よりもどこか温かな雰囲気を感じる。
「ソフィナさん」
「お久しぶりですわ、建一様にリンク様。‥‥わたくしにとってはお久しぶり、とても長い月日が経ちましたけれども、貴方様方にとって見ればほんの数日でしょうか?」
「えぇ、そうです」
「‥‥どのくらいの月日が流れたんですか?」
「平和の花が摘み取られるほど、長い月日が流れたんでしてよ」
「なんですって?」
 建一の驚きの言葉を受け、ソフィナが不思議な笑顔を浮かべると目を閉じた。 それ以上は何も語ってくれなさそうな様子に、思わずリンクと顔を見合わせる。
「花の都を過ぎれば水の都、その向こうの都市は知らねども、続く平野は新たな町への道標。‥‥‥とんだ道標があったものですわ。 あたくし達は、自分達の国が平和だからと言って他の国もそうであると愚かにも信じてしまっていた」
 ソフィナと同じような声質。けれども明らかに硬く突き刺さるような声に顔を上げれば、オレンジ色の髪をした少女が暗がりから姿を現す。背中の真ん中辺りで切りそろえられた髪は緩くウェーブがかっており、瞳はソフィナと同じ、角度によって色を変える不思議な青だった。
「紹介いたします。わたくしの妹のエリーンですわ。 エリーン、こちらが建一様にリンク様です。遠い遠い‥‥とても遠い世界からいらしたのよ」
「未来からお越しなんでしょう?お姉様の声はよく響きますから、聞こえてます。 勿論、声が大きいと言っているんじゃないんですよ。姉様はあたくし達姉妹の中でも一番声が綺麗で澄んでいらっしゃいますから‥‥」
「貴方がわたくしの悪口を言ったわけじゃないってことくらい、分かっておりますわ。 それよりもエリーン、貴方にお願いがあるのです」
「姉様のお願いでしたら、何でも叶えて差し上げましてよ」
「この方々を、ティレイア様の元に連れて行って欲しいのです。この方々のお話は、ぜひティレイア様のお耳に入れる必要があると思うんですの」
「あら、それなら姉様、あたくし達が行かなくとも、ティレイア様がこちらに来てくださいますわ」
「どう言うことですか?」
 建一の声に、エリーンが一瞬だけビクリと肩を震わせたが、すぐに気持ちを落ち着けると「さぁ?」と言って首を傾げた。 彼女が言うには、今朝方聖女・ティレイアからこちらに来ると伝言を預かったきりで、何のために来るのかまでは分からないのだと言う。
「水の伝言と言うことは、緊急と言うことですわよね。 まさか、レーリアでなにかあったのでしょうか」
「レーリアで何かあったんでしたら、ティレイア様が呑気にここにいらっしゃるはずがないじゃないですか。 もしも敵が攻め入って来たのでしたら、ティレイア様は先陣を切って敵の懐に飛び込むくらいのことはしましてよ」
「随分と‥‥‥あ、いや‥‥‥えっと‥‥‥」
 随分と男気溢れる聖女様なんですね。 そう言おうとして、リンクは口を閉ざした。 建一も同じ気持ちではあったが、聖女でも戦うべき時は祈りよりも剣を取って走りこむ人がいるという事を知っていた。そして、そう言った人の方が人望が厚いと言う事も知っていた。
 上に立つ者はいつだって下の者の事を考え、行動しなくてはならない。敵国に攻め入られれば兵の先頭に立って戦い、食料がなくなり民が飢え始めれば進んで自らの食料を出さなくてはならない。普段は民を見下し、いざと言う時に民の背後に隠れるような者に国を仕切る資格はない。
「‥‥ティレイア様がいらっしゃるまで、何かお食べになりません?あまり高価なものはありませんけれど‥‥」
「ねぇ、貴方、建一さんって言ったかしら? 何か楽器をおやりになるんですの?」
「えぇ。今は竪琴しかありませんが、大抵の楽器ならば弾けますよ」
「そう‥‥‥もし宜しければ、一曲奏でてくださらない?」
「喜んで。‥‥曲は何が良いですか?」
「お任せするわ。あたくし、建一さんが何を弾けるのか分からないもの」
 ソフィナが暗がりへと引っ込み、エリーンが建一とリンクからやや距離をとりながらも椅子に腰を下ろす。 人見知りをするものの、姉妹の中でもソフィナの次に好奇心が旺盛で物怖じしない性格のエリーンは、まだ多少は緊張しているものの建一とリンクに悪い感情は抱いていないようだった。
 竪琴の細い絃に指を滑らし、どの曲を弾こうか頭の中で楽譜を検索する。 今のこの状況から考えて、あまり悲壮な曲は合わないだろう。それならば、明るい曲が良いが、あまり明るすぎてもこの場所には合わない。
 暫しの熟考の後、男性にしてはやや細い建一の綺麗な指が、幻想的な調べを紡ぎ出した。 水の上で踊る踊り子と、それを見下ろす満月を歌ったこの曲は、比較的知っている人が多い有名な曲で、リンクが隣で小さく「あぁ」と声を漏らしたのが聞こえた。
 かつては詩がついていたと言うこの曲は、いつしか歌が廃れ、曲だけが残った。
 ――― 確かに、歌い難い曲だとは思いますが、いつかは歌を聞いてみたいものです
 今はこの曲を歌える者は、世界に二人しかいないと言う。 しかしそれが誰なのか、どうして彼・彼女のところにだけ歌が残っているのかを知る者は誰もいない。
 いつの間にか紅茶とケーキを持って戻ってきたソフィナが、建一の奏でる美しい曲に心を奪われ、目を閉じながら聞き入っている。エリーンもどこか夢見がちな瞳で虚空を見つめており、リンクだけが建一の曲よりもケーキと紅茶に心奪われたらしく、一心不乱に食べている。
「♪舞い踊り 舞い狂い 全てをゆだね 満月を誘う」
 曲も終盤に差し掛かった時、唐突に澄んだ綺麗な歌声が響いてきた。 顔を上げれば暗がりから、目に痛いほどに見事な金髪をした女性が一人、こちらに歩いて来ていた。
「♪平和を願い 争いを厭い 狂おしいほど 民を愛し」
 祈るよりも剣を取り、満月に問うならば舞い踊り
 流れ行く時を止める術はなく、ただ無常に過ぎる時の中
 足掻き、苦しみ、いつしか時を止める術はやって来る
「♪時と時が繋がるこの場所で」
 純白のスカートの裾をつまみ、歌い終わった女性は深々と頭を下げた。
「ティレイア様‥‥‥」
「お久しぶりですね、ソフィナにエリーン。お姉様とお母様はお元気ですか?」
「はい、ただいま呼びに行って‥‥‥」
「良いのです。今日は未来から来たと言う方々に会いに来たのですから」
「こちらが山本・建一殿、こちらがリンク・エルフィア殿です」
「そうですか。初めまして、わたくしはティレイアと申します。レーリアを治める聖女です」
 至極丁寧な仕草で名乗ったティレイアは、建一とリンクを頭の先から爪先まで見つめると、胸の前で手を組んだ。
「ここは、時と時が繋がる場所。平和が崩れたその日、未来からこの世界を救う勇者が現れると伝説にあります」
「えっ!?」
「勇者なんて、そんな‥‥‥」
 驚き、戸惑う二人の様子をどこか楽しそうに眺めていたティレイアが、髪色と同じ金の瞳を細めると、毒々しいまでに赤い色をした唇を開いた。
「この場所には、本来ならば普通の方は入って来られないんです」
「立ち入りを禁止されていると言うことですか?」
「いいえ。血を選ぶんです、この場所は」
「‥‥王家の方か、救世主様しか入って来られないんでしてよ」
「特に男性は、純粋な王家の血筋の方しか入ってこられないんですの。女性ならば分家の方でも入ってくる事が出来るのですが‥‥‥不思議ですわよね」
「それは、この先に聖なる力の源の聖女様が眠っておられるからじゃないかしら。王家の始まり、第一聖女様‥‥‥お名前を口に出すことすら恐れ多い、尊くも偉大なお方です」
「わたくし達は、聖女様を御守りするのが役目なんです」
「この国は、今から滅びの道を辿るんです。敵国に攻め込まれ、レーリアもソワルも陥落、全ては灰燼に帰す定め」
「どうしてそんな事が分かるんです?」
「‥‥‥聖預言者・ハーベス様のお言葉は絶対です。そして今日、聖預言者の予言の二つ目が当たった。滅びの道を回避する唯一にして最後の手段が、貴方がたなんです」
「ちょ、ちょっと待ってください。色々と難しいお話が多くて‥‥‥」
「そうそう、勇者様だって突然言われてもいまいち実感が湧かですよ」
 混乱する建一とリンクと同じように、ソフィナとエリーンもティレイアの話をよく理解できていないらしく、眉根を寄せている。
「そうですね‥‥‥一気に喋っても、到底理解できることではありません。わたくしも、ソフィナとエリーンに事の説明をしなくてはなりませんものね。 今日は一旦、元の世界にお帰り下さい。既に時は繋がりました、今度来る時は今日の続き、さほど遠くない未来で会う事が出来るはずです」
「俺達にとって見れば、物凄く遠い過去なんですけれどね‥‥‥」
「私達の未来は貴方がたの過去ですけれども、いずれはそちらの世界と完全に時が繋がる日が来るでしょう」
 廃れし都は輝き出し、息絶えた国は復活する。
「今は、暫しの別れです ――――― 」
 ティレイアの右手がふわりと宙を撫ぜた時、建一の目の前が真っ白になった‥‥‥。



 暗闇の中、建一は身体を起こすとオレンジ色の光りの向こうにいるリンクに視線を向けた。 何かを考え込んでいるらしい横顔は、建一が起き上がった事に気づいていないらしい。 声をかけるべきか待つべきか、真剣な表情に迷っていると、リンクがふとこちらに顔を向けた。
「体、痛いところとかありませんか?」
「えぇ。 何かを真剣にお考えでしたけれど‥‥‥?」
「あの世界の事について考えていたんです。滅んだ都、レーリアとソワル‥‥‥その過去に何があったのか、調べてみようと思うんです」
「‥‥‥僕もお手伝いします」
 建一は力強くそう言うと、立ち上がった。



END


 ◇★◇★◇★  登場人物  ★◇★◇★◇

 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


  0929 / 山本建一 / 男性 / 19歳 / アトランティス帰り(天界、芸能)


  NPC / リンク・エルフィア


 ◆☆◆☆◆☆  ライター通信  ☆◆☆◆☆◆

 前回の続きと言うことで、少しお話を突っ込んだものにしてみました。
 ティレイアの登場と第一聖女、敵国、聖預言者ハーベスなど、謎単語が沢山出現しましたが‥‥
 この先の物語を作り上げていくのは建一君であり、
 この先の物語を見るも見まいも建一君の決断によって変わります。
 どこの部分に突っ込み、未来を変えるのも変えないのも建一君に委ねられています。
 それでは、この度はご参加いただきましてまことに有難う御座いました!