<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


『氷塊討伐』

 聖都エルザードから北に数時間ほど歩いた所に、『邂逅の池』と呼ばれていた美しい池があった。
 しかし、数ヶ月前、その池は一日にして突如姿を変えたのだ。
 池の周りを囲んでいた花々や植木は、全て枯れ果ててしまった。
 ただ、池だけが、寂しくその場所に残った。

 冬の訪れと共に、白い雪が舞い降り、池の周囲を覆い隠していった。
 池は厚い氷に覆われた。
 純白の厚い布に覆い包まれて、池の周辺は一時の美しさを取り戻していた。

 幾多の出会いを見、幾多の想いを受けたこの池は、この時期に、想いの氷塊――氷女を生み出す。
 清らかな女性の姿をした氷女達は、人々が眠る時間に目を覚まし、氷の上で踊るという。
 この場所を訪れた人々の、心を象徴する踊りを。

「でね」
 ルディアは依頼書を見せながら、説明を続ける。
「今年の踊りはとても危険なんですって。何でも、氷の剣を振り回し、夜な夜な踊り狂う……だとか」
 ルディアが持つ依頼書には『氷女の討伐』と書かれている。
 付近に住んでいる人々からの依頼らしい。

・氷女の数は、数十。綺麗な女性の姿をしているが、心はない。
・特定の人物に群がり、池に取り込もうとすることもある。
・苦手な攻撃を受けると、更に凶暴化する。
・愛を叫ぶと追ってくる。

 ……などといった、特徴もかかれている。
「毎年この場所では、冬祭りが行なわれるんです。今回の依頼では、現金の他に、報酬として討伐者の雪像が作られるそうですよ。作ってもらう像は自分の像じゃなくてもいいみたいです。ね、面白そうでしょ?」

**********

 池の周囲には、純白の雪が降り積もっていた。
 月の光を反射して、淡く、きらきらと輝く。
 辺りは幻想的な美しさに包まれている。
「そろそろ現れる時間です」
 中年男性が虎の霊獣人の火炎剣士――虎王丸の背に隠れながら、池を見る。
 辺りは静まり返っており、動物はおろか、植物さえも雪に埋もれ目には映らない。
 ただ、雪だけが。
 そして、平らな黒い空間。池だけが、そこには在る。
「…………」
 賞金稼ぎのケヴィン・フォレストは、ぼーっと池を眺めていたかと思うと、突如懐から四合瓶を取り出す。蓋を開けると直接口をつけ中身を豪快に飲み干した。
「それは、『雪の月』か?」
 料理人ヴァイエストの言葉に、ケヴィンは頷いてみせる。
「そうだ。もらい物だが……かなり美味かった。珍しい酒なのか?」
 ヴァイエストはケヴィンから空き瓶を受け取り、ラベルを見る。
 確かに、銘酒『雪の月』だ。
「雪の月は、エルザードから遠く離れた地で、麹造りから搾りまで一貫して手作りで……」
 ヴァイエストは瓶を片手にケヴィンに説明を始める。
「おいおい! 酒の話はどうでもいいだろ、そろそろ氷女が」
 虎王丸が言った途端、氷より鋭く冷たい目でヴァイエストが虎王丸を見た。
「大事な話をしている。邪魔をするなッ」
 有無を言わさぬ強い瞳に、思わず虎王丸は後退る。
「……ってかお前、何しにここに来てんだ!? 今酒はどうでもいいだろ、酒は!」
 しかし怯まず、ヴァイエストの肩を掴んだ虎王丸だが、今度はあっさり無視される。
 ため息をついて、首を振りながら、虎王丸は周辺住民の方を向く。
「氷女達には、感情はないんだよな?」
「ええ、意思能力はありません」
「そうでしょうか」
 そう言葉を発したのは、シルフェという水操師の女性だった。
「……ええと……氷女さん達はお怒りなのではないかと、わたくし思いますけれど。心が無いとはいいましても、ええ」
「だよな……冬の精霊サンの機嫌を悪くしちまった気もすんだよな」
「ですよね」
 シルフェと虎王丸の言葉に、男達は困り顔になる。
「差し当たっては事情をお伺いしたいところですが、会話は成立するのでしょうか。出来れば原因追及の上で和解を目指したいところです」
 男達はシルフェの言葉に更に困り顔になる。
「訪れた方の心を象徴する踊りなんですよね? でしたらやはり除去なんていう一方的なものはよろしくありません」
 更に更に男達は困り顔になり、おどおどしていた。
「事情、ご存知ですか?」
 にっこりシルフェは男達に微笑む。
「事情、は……ええと、結局壊すしかないんですよー。女性の姿をしていますが、氷の塊なので意思能力はないんですっ」
 涙目で訴える男達。
「ま、単なる氷の塊っつーんなら、討伐してやるよ。ちょっと俺も関係あるかもしんねーし」
 理由はよくわからないのだが、虎王丸の目の前でこの池周辺は姿を変えたのだ。
 それが原因して、今回の踊りは荒れているのだろう。
「待て、まずは俺に行かせてくれ!」
 そう名乗り出たのは、酒の話を終えたケヴィンであった。
「お、おう。なんだかさっきまでと違うぞ、お前」
 虎王丸が怪訝そうに言う。
 先ほどまでケヴィンは、メンバーの中で一番やる気がなさそうに見えたのだが、現在はやけに険しい表情をしている。普段より数倍凛々しくキリッとしている。
「ケヴィン様、まずは交渉です。お怒りを鎮めてください」
 シルフェが微笑む。
「いや、せっかくだから、ガンガン行こうぜッ!」
 虎王丸は笑う。
「いえ、交渉です」
 シルフェがにっこり微笑む。
「いやいや、腕試しの機会だぜ!」
 虎王丸は不敵に笑う。
「いえ、一方的な暴力はよろしくありません」
 シルフェがにこにこと微笑みながら、ケヴィンに言う。
「まずは、動きを止めることだ。油断せず、ぶっ壊せよ!」
 虎王丸は好戦的だ。
「了解ッ!」
 2人に強く頷いて、ケヴィンは一人飛び出した。

「出たッ!」
 声を発して、男達が虎王丸や雪に埋もれた岩の後ろに身を隠す。
 パリパリパリ……っと、何かが裂けるような音が響き、池の中から氷が飛び出した。
 それはまさに氷の塊。
 大きな氷の塊が――人の姿をとっていく。
 人間の女性の姿。
「おーっ」
 虎王丸は思わず声を上げた。
 美しい女性だった。生きた人間だったら、是非ともお付き合いしたいものだがっ。
 命のない氷の塊には、いくら虎王丸でも発情したりはしない。
 氷女達は確かに綺麗ではあったが、皆似たような簡粗な姿をしており、特定の人物の姿ではない。
 しかし、その氷の塊が、ケヴィンには知り合いの姿に見えていた。
「あいつだ……やっぱりあいつだ。あのアホが、何やってんだよ、勘弁してくれよ」
 呟きのように言葉を発しながら、ケヴィンは真直ぐ池に走りこむ。
 ケヴィンには今回の件について、心当たりがあった。
 さすがにやる気なさげな素面では申し訳なく、酒を少々入れたのだが――。
 ケヴィンは腰の剣を抜き放ち、振りかぶる。
「行けー! ぶっ壊せ!!」
 虎王丸が声を上げた。
「まずは、謝罪ですよ〜。和解交渉です」
 シルフェがケヴィンに手を振る。
 和解、ぶっ壊す、和解、ぶっ壊す、和解、ぶっ壊す……あのアホ、こっちにも責任が、勘弁勘弁。
 ケヴィンの頭の中で幾つかの単語が絡み合っていた。
「す……っまーーーーーん!」
 ケヴィンは叫びながら……氷女に斬りこんだ。
「勘弁してくれーーーー」
 剣は氷女の肩を掠める。 
「このとーーりだーー!」
 胴に打ち込むが、氷の上に飛び込んだため、体勢を崩して派手に転んで滑っていった。
「和解しよーーーうーーー!」
 そういいながら、投げナイフを打ち込む。
「なるほど、和解交渉しながら討伐ですね。すばらしい!」
 おじ様方は、ケヴィンの行動に妙に感心していた。
「い、いやそうか? でもま、俺も行くぜ!」
 虎王丸がその場を飛び出す。
 無言で刀を取り出すと、ヴァイエストも池に向っていく。
「苦手な攻撃を受けると凶暴化っつーと、焔は使えねぇってことだよな」
 言って、虎王丸は鎖が巻付いた刀を取り出した。
 封印刀――そう呼んでいる刀だ。
「さあて、この辺りでいいか」
 池から少し離れた場所で立ち止まる。
 周辺の雪を踏み固めると、虎王丸は大きく息を吸い込んだ。
「(エスメラルダが)好きだーーーー!」
 池に向い、思い切り叫んだ途端、氷の上を踊り回っていた氷女達が、ぴたりと動きを止めた。
「(エルファリアも)愛してるぞーーーー!」
 瞬間、氷女達が物凄いスピードで一斉に虎王丸の方へ押し寄せる。
 眼を光らせて、虎王丸は笑みを浮かべた。刀を振りかぶる。
「おりゃあっ!」
 ズンッ
 鈍い音がし、氷女の一部が砕けた。
 崩れた塊は氷から土へと姿を変える。
 損傷を受けたものは、一瞬にして腐食し土と変わる……封印刀の能力だ。
「うはっ、氷でも土に変わんのか。でも、水かけたら解けるんだろうなー」
 余裕に笑いながら、虎王丸は、次々と氷を土に変えていく。
「っととっ」
 氷の上ではなくとも、激しく動けば当然滑る。
 虎王丸は何度か転倒しながらも、氷の塊に刀を叩き込み続けるが――いつの間にか、囲まれている。
「そっか、土の上で戦えば、あんまし滑らねぇか。んで」
 足に意識を集中し、脚部のみ限定獣化する。
 両足が白焔に包まれる。
 起き上がると同時に跳び、氷女の頭上を越えて背後から刀を叩き込む。
 土へと代ったその場所に足を置いて踏み込むと、隣の氷女を蹴り飛ばした。
 焔を受けた氷女は――ピシピシと音を立てたかと思うと。
「お、オヤジぃ!?」
 姿を険しい顔つきの壮年男性。“雷オヤジ”へと変えた。
 オヤジが髪を逆なでた姿で、虎王丸に迫る!
「やめやめ、美女の氷像の方がいいッ! ああ、でもオヤジの方が倒しやすいぜーッ♪」
 虎王丸は焔の攻撃を交えながら、封印刀で、冷たい美女(時々オヤジ♪)との戦闘を楽しむのであった。

 一方、ヴァイエストは氷女を崩す――のではなく、押さえつけると、銀狼刀で、ザクザクと削いでいた。
 そして鋭い眼で、氷の目を見定める。目に沿って刀の先をタタタンと、垂直にたたきいれる。
 途端、氷女は崩れ落ち、氷の塊へと戻る。
 ヴァイエストは大きな袋を出すと、氷を回収する。
「珍しいな。魔法生物とはある種違うかもしれないが、普通では手に入らない「素材」であることに変わりはない」
 懐から取り出した液体を周囲に振りまいた。
 赤く染まる。
 削がれた、身体。
 赤く染まった欠片。
 それはまるで、氷女が流した血のよう……には見えはしない。夜なのでっ。
 甘ーい香りが漂う。
 ヴァイエストはシャキーンとマイスプーン!を取り出すと、削いだ氷を一口、口に運ぶ。
「こ、これは……っ!」
 ヴァイエストは、ガクリと膝をつく。
 普通だ。
 やはり、珍しい食材は、そう簡単には手に入らぬということかっ。
 ヴァイエストは拳で氷を叩いた。
「すまーーーーんっ」
 ツルッ、ステッ、ゴン。
 顔を上げたヴァイエストが見たものは、氷女に飛びつきながら、派手に転ぶケヴィンの姿であった。
「お前が、アイツが、お前がっ」
 言いながら、ケヴィンはぽかぽかと氷女の頭を殴っている。
 外見はまともに見えるのだが、どうも酔っているようだ。そりゃそうだ、あの強い酒を一気飲みしたのだから。
 氷女はケヴィンを振りほどこうとはしない。次第に池の氷と同化し、沈んでいく。ケヴィンも引き摺りこまれるように一緒に。
「…………」
 くるり。
 とりあえず、ヴァイエストは無視をした。だって面倒なので。
 もうあの酒持っていないだろうし。持っていたら助けたんだけどね、もちろん酒を。

「皆さん、派手にやってらっしゃいますねえ」
 シルフェは雪を固めてつくった椅子に座って、皆の様子を見守っていた。
「それにしても、近くにお住まいの皆さんは詳しい事情をご存知なのですよね? そろそろ話してはいただけませんか?」
 シルフェの言葉に、中年の男達が顔を合わせる。
「いえ……実はですね。この辺りは私達がとてもとても大切に管理していた聖地だったのですが、ある時、一人の大魔神が現れ、天候を操り、池を死の池に変えてしまったのです!」
「あら、それは大変です。それで、池が怒っているんでしょうか」
「そうです。そうに決まっています! それまで、ここは聖地でした。可愛い女の子の集まり、開放的になる絶好の癒しスポットだったというのにー、しくしくしくしく」
 男達は泣き出してしまった。
 そういえば、シルフェも聞いたことがある。
 以前、この池には、多くの少女達が出会いを求めてやってきていた。
 それを聞きつけた所為か、ここで商売が始まったかと思えば――いつの間にか、整備され、無料のガイドまで存在していた。
 その人員全ては、男だとか。中年以上の男や亜人ばかりだと。
 そんなオヤジはともかくとして、少女達の純粋な思いを吸収し、池の氷は綺麗な踊りを見せていたのだろう。
 しかし、次第に少女達より、オヤジ達の姿が増えていたという。
 そしてついに、裁きが下された。
 不純なオヤジ達を成敗すべく、天から大魔神が光臨し、この池周辺に死の雨を降らせたのだ!
 草木は枯れ、池はよどみ、女の子は現れなくなって、オヤジ達は泣いている。
 そんなところだろう。
「……なんか、少し……というか、大きく違う気もするけれど、そういうことにしておきましょう」
 妄想を終えて、シルフェは一人ほわんとした笑みを浮かべながら納得していた。
「あああ、お嬢さん、少しお年を召していますが、我々の女神となってくれませんか!」
 その柔らかな笑みを見た中年男が、シルフェの手を握った。
「お年を召しているって……」
 シルフェはまだぴッちぴちの17歳だ。
「好きですーーーー!」
 男達がシルフェに群がった瞬間、池の氷女達が、音を立てて一斉に向ってきた。
「あ、あわわわ、好き、ではなくですね、嫌いではないというか、愛しているわけでもないわけではなくてですねーーーー!」
「ダメです、私には心に決めた女の子達がー!」
「ぎゃーーー!」
 男達は訳の分からないことを叫びながら、氷女達に潰されていった。
 シルフェといえば。
 雪の椅子に座ったまま、変わらずニコニコと回りを見回している。
 彼女の周りには、水浸し状態だ。
 いえ、綺麗な氷女達が間違って自分の方にも向かってきたので、手持ちの聖獣装具「海皇玉」で、軌道を変えて差し上げてただけなのですー。元凶のオヤジさん達の方へ。
「さて、そろそろ皆さんも終わられたようですよ」
 氷女達の下敷きになった男達に話しかけるが、返事は無い。
 沢山の女神に抱かれて陶酔しているようだ。……多分。

「片付いたぞー!」
 虎王丸が封印刀をぶんぶん振り回しながら、歩いてくる。
「その刀を仕舞え!!」
 ヴァイエストは虎王丸と距離を置きながら、怒鳴った。
 損傷させたものを、腐らせる刀――料理人ヴァイエストにとって、忌むべき刀である。
「おー」
 虎王丸は刀を仕舞いながら、足を滑らせ体勢を崩す――!?
 ドサッ。
 刀に頭をつぶけかけ、必死に身体を捻り、顔から雪につっこむ。
「あ、危ねぇ……自分を腐らせるとこだった?」
 この刀――持ち運ぶのは危険かもしれない。
「では、帰りましょうか」
 シルフェがにこにこと皆を迎える……が、一人足りない。
「ケヴィン様はどちらに?」
「あっ」
 虎王丸とヴァイエストは同時に池を見た。
 池に張った氷は、大抵は氷女と化し、虎王丸とヴァイエストに処理されていた。
 残っていた氷は、食材としてヴァイエストが確保し、特大風呂敷に包み、引き摺っている。
「…………」
 3人同時に風呂敷を見る。
 開いてみると……。
「まあ、素敵な氷像です」
 シルフェが感嘆する。
 案の定、ケヴィンの氷像が紛れていた。
 虎王丸が軽く炎を起こし、解凍する。
「おおーい、大丈夫か?」
 ケヴィンはむくりと起き上がると。
 くるりと振り向いて、皆を見た。
「…………」
「大丈夫か、さみーだろ?」
 虎王丸の言葉に答えもせず。ぬぼーっとした表情で、池を見て、氷女がいないことを確認すると……スタスタスタスタすたすた――。
「おーい?」
 振り向くこともなく、ケヴィンは無表情で一人、帰っていった。
「なんでしょう? 表情まで凍ってしまったのでしょうか。さっきまで、あんなに一生懸命謝罪してたのに」
「だよな、あんなに元気に斬りかかってたのに」
 シルフェと虎王丸は揃って首を傾げる。
「あ、ああそうだ」
 虎王丸は懐から写真を数枚取り出す。
「報酬、雪像作ってくれるんだったよな? 俺じゃなくて、この写真の人物の像作ってほしいんだけど」
「はあ、構いませんが……」
 依頼主の男達が写真を覗き込む。
「男の子、ですよね」
「もちろん、みりゃーわかんだろ」
「はあ……」
 言いながら、男達は残念そうにため息をついた。
「俺の像は不要だ。代りにこの氷を報酬としてもらっていく」
 ヴァイエストが確保した氷――それは、氷女の欠片だけではない。池に残っていた氷をも砕いて確保した。
 荒々しい感情が篭った氷女よりも、純粋な池の氷は美味であった。
「では、わたくしは、あの氷女さん達をリクエストします」
 シルフェがにっこり笑って言った。
「そうですか、でしたら、先に帰られた方もいれて、その4体にいたします」
「おう、頼んだぞー」
 写真を渡し、虎王丸は封印刀を今度こそ仕舞い、帰路につく。
「よろしくお願いします」
 シルフェは微笑んでお辞儀をすると、虎王丸の後に続いた。
 ヴァイエストの姿は既になかった。足下に何か大きなものを引き摺った跡だけが残っている。

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「あれ? ルディアさん、今日の氷はなんか違うわね。いつもよりお酒が美味しく感じるわ」
 カウンター席の女性客が言った。
「はい。今日の氷は、とある料理人さん曰く、“邪念が抜けたばかりの神秘的な名水”の氷だそうです」
「そっかー。それじゃ、もう一杯いただける?」
「畏まりましたー!」
 白山羊亭に元気な声が響き渡る。

 店内の掲示板には、新しいポスターが一枚貼られていた。
『邂逅の池・冬祭り開催!』

 ……さて、どんな雪像が出来上がったのでしょうか。
 数日後に開催される、冬祭りでご観賞下さいませ!

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2994 / シルフェ / 女性 / 17歳 / 水操師】
【1070 / 虎王丸 / 男性 / 16歳 / 火炎剣士】
【3425 / ケヴィン・フォレスト / 男性 / 23歳 / 賞金稼ぎ】
【3139 / ヴァイエスト / 男性 / 24歳 / 料理人(バトルコック)】

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■         ライター通信          ■
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ライターの川岸です。
『氷塊討伐』にご参加ありがとうございました!
お陰様で、きれいさっぱり片付きましたので、1年間何事もなければ、来年は綺麗な踊りが見れることでしょう。
それでは、よろしければ後日納品予定の冬祭りで、像をご確認くださいませ。