<PCクエストノベル(3人)>
遺跡調査はさらに深く ―機獣遺跡―
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【2377/松浪・静四郎/放浪の癒し手】
【3434/松浪・心語/傭兵】
【3573/フガク/冒険者】
【NPC/アーデル/学者】
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機獣遺跡と呼ばれる場所はまだまだ興味の尽きない場所だ。
一度関わったからには、松浪兄弟は、徹底的に調査するつもりだった。
静四郎:「心語。考えたことがあるのですが」
心語:「……なんだ? 兄上……」
心語の家でお茶を淹れながら、静四郎は真顔で話を続ける。
静四郎:「機獣遺跡の罠は機獣に対して作動しない。さらに、機獣同士で同士討ちにならない。ここは重要だと思うのです」
心語:「……つまり……?」
静四郎:「機獣のどこかに、識別信号を発する何かがあるのではないかと」
心語はうなずいた。
心語:「もし……識別装置を……解析できたら……それを利用すれば……遺跡深部への探索が楽になると……思うんだが……」
静四郎:「わたくしもそう思います」
海中にある機獣遺跡。
海の中で呼吸するための丸薬は、まだ残っている。
静四郎はお茶を飲みながら虚空を見て、
静四郎:「皆様の協力が得られたらと思うのですが……やはり今回も2人で行きましょうか……」
心語:「……いや……」
心語は首を振った。
心語:「……手を貸してくれる人間に……心当たりがある……声をかけよう……」
心語のその判断は。
よかったのか悪かったのか、いまいち分からない結果となるのだが……
機獣遺跡の追跡調査のため、心語が新たに引き入れた人物は、静四郎を見て顔を引きつらせた。
フガク:「うえっ。静四郎さんも一緒ですか」
静四郎:「ああ、フガク様じゃないですか」
フガクと呼ばれる、身長2mを軽く超える大柄な青年は、心語にとって兄弟と言える存在だ。
そして、静四郎にとっては憧れの人。
だが――フガクにとって静四郎は、宿敵だった。理由は……まあ……あれやこれや。
二の足を踏んだフガクに、静四郎はただ嬉しそうに、
静四郎:「フガク様もいらしてくださるなら、今回は以前より楽に調査できそうですね。とてもありがたいことです」
フガク:「いや……その……はは……」
心語:「……諦めろ……フガク……」
こうして、微妙に気まずい空気の中、彼らは3人で機獣遺跡へと向かう手はずを整えたのだった。
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水中でも息の出来る丸薬を飲み、海中に飛び込んだ3人。
機獣遺跡までの道のりはもう慣れたものだ。
一番最初に入り口に降り立った心語は、慎重に入り口の様子をたしかめた。
――以前破壊した侵入者発見システムは、まだ壊れたままだ。
心語:「やはり……復活は……しないらしい……」
静四郎:「ありがたいことですね」
フガク:「大体のところは話で聞いてるけどさ」
フガクは頭をかきながら、ぼんやりとその異様な遺跡を見上げた。
フガク:「噂通り……変なとこだなあ……」
静四郎:「中に入るとますます驚きますよ?」
ふふっと笑った静四郎は、心語、と弟を呼ぶ。
心語はうなずいて、
心語:「フガク……最後尾を頼む……」
フガク:「あいよ」
返事をたしかめ、心語は先頭を歩き始める。
いや、先頭は心語ではない――
静四郎が分身の鷹を生み出し、心語の先を行かせる。いつもの通り、偵察用だ。
静四郎:「以前の調査で、この遺跡は時間が経っても内部変化しないことが分かっています。まずは地図通りいきましょう」
今までマッピングしてきた地図を手に、静四郎が言う。
心語は地図を頭の中に叩き込んでいた。兄の鷹の気配を追いながら、右へ左へ視線を油断なく飛ばし、前に進む。
破壊された壁や天井の罠は、相変わらずそのままだ。
フガク:「ほんっと、へーんなとこだなあ」
最後尾を歩きながら、フガクがしみじみと言った。
どこまでも平面的。永遠に続くかのような金属の壁。
床も金属。靴の裏から感じる感触は、今までにないものだ。
フガクは静四郎の背後から、静四郎の持つ地図をのぞきこんで、
フガク:「お。もうそろそろ、地図に出来てないところへ突入?」
心語:「……兄上……」
静四郎:「まだ、罠は見えないようです」
分身の鷹の目で、静四郎は先行して道を行く。
途中、壁に扉があった。
それを鷹の目で先に見つけた静四郎が、「扉がありますね」と慎重に言うと、
心語:「……入ってみるか……?」
フガク:「慎重になるばかりがいい行動とは限らねえぜ」
フガクががははと笑うと、心語はその通りだとうなずき、
心語:「……扉に……罠が……ないかどうか……たしかめなくては……な」
静四郎:「心語、気をつけて」
心語:「大丈夫だ……」
会話をしている内に、心語の目にもその扉が見えてきていた。
今までの経験で、ひとつ察していることがある。
この遺跡の、罠や機獣の目などは決まって――赤い。
赤い光に注意すれば、大体の罠は避けられるような気がしていた。
心語:「とは言え……扉は……開けたら、罠が発動……というのが……一般的か……」
静四郎たちを一定距離を空けた位置で止めて、自分だけで扉の前に立った。赤い光がなかったので、堂々と。
ノブがない。
どうやって開けるのだろうと思案し、扉を観察する。
静四郎の鷹がすぐ傍を通り過ぎた。
静四郎:「心語。扉の中央に、妙な模様がありませんか?」
心語:「ああ……あるな……」
直線を組み合わせたような、何とも言えない模様が、10cm角のマス状にある。
――機獣遺跡では、何事も"察知"することで物が動く。
となると……
心語は何気なく、その妙な模様の部分に手をかざした。
ヴオン……
重い音がして、模様が赤く光った。しまった、と危機を感じて身構えた心語の前で、
扉が――しゅっと、信じられないほど軽く、横へ動いた。
一瞬、驚いて身が固まった。こんな開き方をする扉など、ソーンにはない。
しかし、固まっている場合ではなかった。
心語:「………!」
心語の思考が一瞬で切り替わる。目の前で――
無数の赤い光が。
一斉に、心語の方を向いた。
静四郎:「心語!」
鷹の目で事態に気づいた静四郎が緊迫した声で弟を呼ぶ。こんな事態は予測していなかった。
心語が愛刀「まほら」を抜く。
おいおい、とフガクがショートソードを抜いた。
フガクにとっては、初めて見る『機獣』だ。
心語:「……少し、予定外だが……」
静四郎:「20体はいます……!」
フガク:「げっ。おい、これは破壊しちまっていいのか?」
心語:「……この部屋内の機獣は、破壊してしまって……いい……」
却って遠慮なく、思い切りいける。心語は機獣がしかけてくる前に、先に飛び込んだ。
まほらを振るって機獣の胴体を次々と叩き割っていく。動力源が胴体にあると分かった以上、攻撃する場所は胴体が一番いい。
フガクが遅れて飛び込んで、
フガク:「あーと、あんまり近づかないで、この赤いめんたまに注意して、胴体攻撃、な」
あらかじめ心語に教えられていたことを口の中で繰り返し、剣を繰り出す。
静四郎は鷹の目で戦況を見ていた。いざとなったら彼の能力で心語とフガクを護ることも可能だったが、今は必要なさそうだ。
心語のまほらはすでにコツをつかんで、犬を四角くしたようないつもの機獣の胴体を着実に破壊している。
フガクは最初は戸惑っていたようだが、その大きな体を器用に動かして赤い目玉から発射されるレーザーをかわし、剣で胴体を叩き折っている。
フガク:「ほんとだ。意外とやわだなー、こいつら」
フガクは驚いているようだった。
フガク:「もっと頑丈なのかと思ってたぜ?」
心語:「……一応……遠距離攻撃用の……機獣だから……と、推測しているが……」
心語はぶつぶつつぶやいた。
心語:「今、思ってみると……この遺跡の奥に……もっと、違う機獣が……いるかもしれない……こいつらは……あくまで、尖兵隊……なのかもしれないな……」
フガク:「なるほど――なっ!」
ばきっ! 近づいてきた機獣の胴体を振り下ろした剣で叩き折ったフガクは、
フガク:「尖兵隊はあくまで威嚇。それほど戦闘能力を持っている必要がないかもしれないってわけか」
心語:「できれば……もっと強い機獣がいるなど……考えたくはなかったんだが……」
しかし、彼らはまだ遺跡の深部まで行っていない。重要な部分に達していない。
フガク:「しっかし、この部屋はなんだ? 機獣だけが詰まってんのか?」
機獣のレーザーをかわしつつ、フガクが部屋を見渡す。
一面金属の壁の部屋は、面白いほどに何もない。
静四郎:「機獣を待機させておく場所だったのかもしれません」
部屋を鷹の目でのぞきこみながら、静四郎は言った。
心語:「しかし……兄上……この機獣たち……問答無用で襲いかかってきたぞ……」
静四郎:「……やはり、識別装置の存在が濃厚ですね」
フガク:「おらよっと!」
ラスト! とフガクが最後の1体を叩き折った。
20体もの機獣も、心語とフガクという2人の戦士の前ではもはや敵にならない。
フガク:「よしよし。この型の機獣だったらもう俺も楽に倒せるぜ」
心語:「……他の型の機獣、か……」
心語はまほらを背負い直し、嫌な可能性だ……とつぶやいた。
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部屋を出て、もう一度廊下を進む。3人で進む道は、いやになるほど静かで不気味だった。
壁に赤い色を見ては、心語が破壊する。
心語:「罠は……ひとつだけ残しておけばいい……」
それが、当初の予定だった。
天井にある目玉。まほらを投げつけて破壊。
最後尾にいるフガクは、
フガク:「後ろから来る様子はまったくねえなあ……」
ショートソードを手にしたまま、うーんとうなっている。
静四郎:「思ったよりも、遺跡の防御は固くないのかもしれませんね」
心語:「……油断は……大敵だが……」
途中、いくつもの扉を見かけたが、
心語:「……今度は……うかつに入らぬように……しておこう……」
静四郎:「そうですね。部屋の調査はまた次の機会にしておきましょう」
フガク:「まっ、それが妥当だわな」
そして――
とうとう、扉の奥を除いて一通り、マッピングが終わった。
途中にひとつだけ罠を残しておいた。あとはそこを利用して……
心語:「機獣を……呼び寄せる……」
3人で、残しておいた罠の元へと向かった。
天井から侵入者を見張っているその目玉。
心語:「あれに映れば……機獣がやってくる……」
フガク:「1体、残しておくんだったな?」
静四郎:「はい。サンプルとして1体」
今回は、胴体を持ち帰りたい。
そしてそのために、フガクの能力が必要不可欠なのだ。
心語:「フガク……頼む……」
フガク:「任せとけっ」
フガクはにかっと白い歯を見せる。
3人は顔を見合わせ、うなずきあう。
そして、心語が。
心語:「……では……行く……」
すっと、天上に設置された赤い目玉の視界内に、入った。
がしょん……
遠くから、すでに聞き慣れた足音が聞こえてくる。
がしょん、がしょん、がしょん
足音だけで心語は数を把握しようとする。
心語:「20体以上……来たな……」
静四郎:「防護壁を張りますよ」
静四郎が両手を広げて念じると、不可視の障壁が3人の前に発生した。
幻の盾。この技は、3分しかもたない。
心語:「フガク……3分以内で……決める……」
フガク:「OK!」
そして2人の戦士は、前から後ろから集まってきた機獣に相対する――
心語:「前は……俺が行く……」
心語がまほらを抜きざま走り出した。機獣の群れの中に突っ込んでいく。
フガクは反対方向へ走り出す。
フガク:「わりーがお前ら倒されてくれよっとな!」
ショートソードがうなる。大柄な彼を狙おうとする、機獣のかたつむりのような赤い目玉がばきばきと折り取られていく。
敵が接近してきたことで、機獣の胴体から針が飛び出してきた。
フガク:「おっと」
身軽に避けて、胴体に向かって剣を振り下ろす。めきりと簡単に機獣はまっぷたつになった。
心語は全身を回転させるような動きで、まほらを勢いづけて振り回す。次々と機獣の目玉が飛び、胴体が破壊される。
ときどき発射されたレーザーも、胴体から飛び出てきたコテや針も、静四郎の幻の盾が跳ね返す。
サンプル機獣を手に入れることはフガクに一任している。心語の方は、全滅させることを考えればいい。
もう何度も戦った相手だ、てこずることはない――
フガク:「さて、数も減ってきたしそろそろかね?」
つぶやいたフガクは、さっと視線を走らせ機獣の動きをたしかめてから呼吸を整えた。
気。
それが、フガクの操る不可視の力だ。
気を操ること――
心語にはできない、フガクの得意技――
不可視の『気』を、触手状に伸ばして、フガクは機獣の1体をからめとった。
破壊せずに、サンプルとして残すこと。
そして気の触手をたもったまま、剣で残りの機獣を破壊していく。
空中では、気の触手にからみとられた機獣が、無機質な手足をぎしぎしとばたつかせていた。
そして、サンプル体を残した最後の1体が破壊される――……
心語:「フガク……よくやってくれた……」
フガク:「任せろって言ったろ?」
静四郎:「ありがとうございます、フガク様」
フガクは見えない触手を動かし、そっとサンプル機獣を床に置く。
心語は素早くその機獣の目玉部分をつかみ、折り取った。
それから手足と首を叩き折る。
胴体だけは傷つけないよう……
心語:「……うまく……いきそうだ……」
静四郎:「何よりですね」
フガク:「一応俺の触手で運ぶか。たしか胴体に動力源があるってことはまだ動くんだろ? 胴体から変なもん飛び出してきたらコトだしな」
心語:「頼む……」
フガクの触手にからみとられた機獣の胴体は、ときどききしむような音を立てた。
空中に浮かぶその四角い物体は、異様なことこの上なかった。
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アーデル:「やあ! 待っていたよ」
機獣学者アーデルは、うきうきした様子で彼らを出迎えた。
アーデル:「今回は動力装置を持ってきてくれるということで……僕もわくわくしていたんだ」
心語:「……一応……動力装置が……あるはずの……胴体……だが……」
アーデル:「うんうん、これが胴体なんだね」
フガクの力で空中にぷかぷか浮いているように見えるその物体にも、アーデルは動じない。にこにこと笑って、
アーデル:「さあ、僕のラボに持ってきてくれ」
フガクは初めて入るアーデルのラボにぎょっとしたようだった。見たことのないものがたくさん転がっている。
その中には、前回松浪兄弟が回収してきた、機獣の体の一部もあった。
アーデル:「その胴体はまだ動いているね。うんうん。楽しみだ」
静四郎:「うかつに触ってはいけませんね。どうしましょうか」
心語:「兄上の……盾で……護っては……どうだろう……」
静四郎:「そうしましょうか」
静四郎はもう一度幻の盾を生み出した。アーデルの前に障壁が出来あがる。
フガクがラボの机の上に胴体をゆっくり下ろすと、嬉々としてアーデルは胴体にくいついた。
ドライバーを使って丁寧に胴体を開いていく。
静四郎:「アーデル様。わたくしたちの推測では、機獣には何かしら識別装置がついているのではと思っているのです」
アーデル:「なるほどねえ」
静四郎:「胴体にそれらしきものはついておりますか?」
アーデル:「ちょっと待ってくれるかな」
やがて、配線がぎっしりつまった機獣の胴体の中身があらわになる。
アーデル以外の3人には、何がなにやらさっぱり分からなかったが、アーデルはしきりにうなずいていた。
アーデル:「あったあった。動力源だ。うん、これは非常に変わった装置だね」
心語:「……どのように……?」
アーデル:「このような造りをしていれば、あらゆるエネルギーを動力に変えられる。うん、つまるところこの機獣の動力源は何でもいいようだ。光でも水でも何でも」
その言葉に、松浪兄弟がさすがに驚いた。フガクだけは、首をかしげて聞いている。
アーデル:「機獣遺跡が元から水力を動力にしていなくても、別によいということになるね。うんうん。なるほど」
静四郎:「それで、識別装置は……」
アーデル:「うん、うん、――ここを、こうして――と、なるほど、うん、こうか」
学者は没頭し始めて、静四郎の声が聞こえなかったようだった。
ここはしばらく、研究させておくのがいいだろうと、3人は押し黙る。
そして数十分も経ち、フガクが大あくびをした頃。
アーデル:「よし、分かったよ」
アーデルは顔を上げて3人を見た。
アーデル:「識別装置だったね。ちょうど、首の下にあたるかな。そこから第3の目のごとくのぞいてるものがあるよ」
静四郎が手を打った。
心語がゆっくりと、
心語:「……その装置を……復元することは……可能だろうか……あるいは、作成……」
もし識別装置を持つことができたなら、もう機獣に襲われることはないだろう。
機獣相手にてこずることはなくなったとはいえ、まだ遺跡の深部には至っていない。たくさんの部屋ものぞいていない。
それらを調べるために、今まで相手にしてきた機獣や罠とは違うものと戦わなくてはならないかもしれないのだ。
アーデルはうなずいた。
アーデル:「可能だよ。かなり簡単な造りになっている」
意外な言葉だった。
いや、むしろソーンに、それを再現できる力があることに驚くべきなのか。
静四郎:「識別装置を作成してほしいのですが、よいでしょうか」
アーデル:「任せてくれ。僕としても腕がなる」
学者はどこまでもわくわくした様子でそう言った。
識別装置。それが手に入る。
機獣遺跡をさらに深く調べることが可能になるだろう。
――その先に、何が待ち受けている?
分からない。けれど彼らは、止まらない――
アーデルの手によって解析されていく機獣の体の内部のコードが、からみあった謎のようで、皮肉な色をかもしだしていた。
―FIN―
ライターより--------------------
こんにちは、笠城夢斗です。
機獣遺跡編、ご発注ありがとうございました!
一度は大変ご迷惑をおかけしまして、申し訳ございませんでした。
もう一度書く機会をいただけてとても光栄に思っております。
本当にありがとうございました。また皆様にお会いできますよう……
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