<聖獣界ソーン・黒山羊亭冒険記>
倉庫に連れ込まれたのは
黒山羊亭に、大慌てで入ってきた人間がいた。
その男は常連の、街はずれの倉庫で力仕事をしている男だった。
「あら……いらっしゃい、今日は来るのが遅いと思っていたのよ――って、あら?」
エスメラルダは彼を出迎えて、意外な様子に目をぱちくりさせる。
彼は息子を連れていたのだ。
「エスメラルダ、今日は飲みに来たんじゃねえ。この子の話を聞いてやってくれるか」
「どうしたの?」
父親の陰に隠れるようにしていたまだ10歳ほどの息子は、父親の服をぎゅっと握ったままエスメラルダを見上げる。
「ほら、話してみろ」
と父親に促され、ようやく意を決したように、子供は口を開いた。
「倉庫にね、お父さんを迎えに行ったんだ。そしたら」
「ええ」
「……変な男5人が、リアラに目隠しして、それからしゃべれないようにして、倉庫に運び込んでるの、見た」
「リアラって言うと鍛冶屋のルーアさんのところの……」
エスメラルダが当惑した顔をする。
目隠しにさるぐつわ。それではほとんど顔が分からなかっただろうが、しかし。
リアラにはひとつ特徴があった。
――彼女は生まれつき背に翼を持っている、特殊体質だったのだ。
「ああ、ルーアの所にさっきたしかめに行ったら、たしかにリアラのやつ家に帰ってないらしいんだ」
男は切羽詰まった声で言った。
「リアラは人売りにとってみれば絶好の餌だ。ひょっとしたら――狙われたのかもしれない」
エスメラルダ、と取り乱した声で。
「ルーアが今にも暴れ出しそうなのを俺の家内が抑えてる。ルーアが無茶をする前に、リアラを助け出してやってくれ。リアラが連れ込まれたらしいのは、9番倉庫だ」
■■■ ■■■
男がそう言い終えた直後に、がたっと近くの席から立ち上がった少年がいた。
「おいおっさん。その話本当か」
エスメラルダは振り向いて、
「虎王丸[こおうまる]……どうしたの、そんな真剣な顔して」
いつもどこかおちゃらけている少年の真顔に怪訝な顔をする。
「どうでもいいだろ。おい、その話本当なんだな?」
「本当だよ!」
答えたのは息子の方だった。
「リアラ、本当に倉庫につれてかれちゃったよ!」
「………」
虎王丸は己の首にかかった太い鎖を強くつかむ。
――彼がそれを首につけられたのは、種族間抗争の中で捕虜になったからだった。
それに、自分自身、人身売買にかけられたことがある。
真剣に。――真剣に。
「許せねえ……」
どすどすとエスメラルダたちのところに来ると、
「俺はその依頼受けるぞ」
と宣言した。
その後ろから、
「僕もだ」
とこちらも深刻な声音。
虎王丸が振り向くと、そこには赤い髪と銀の瞳を持つ、タキシードのウインダーがいた。
蝙蝠の城の城主、レイジュ・ウィナード。
「背に翼があるなら同種族だ。放っておけない」
エスメラルダは思案した。本気になっている者が2人もいる。依頼は人身売買の現場。
生半可な人材を参加させてはいけない。
そう思っていたとき、視線を感じた。こちらをじっと見ている2人の少女……
黒髪の千獣[せんじゅ]と、銀灰髪のアレスディア・ヴォルフリート。
「あなたたちなら熟練の冒険者だわ」
エスメラルダは2人の少女の手を取りにいった。「話を聞いていたのでしょう? この依頼、受けてくれないかしら?」
アレスディアが「ちょっと待ってくれるかな」と困ったようにこめかみをかいた。
「ええと……すまないが、確認させてくれ。ルーアという方はあなたとは別の方で? リアラという子はそのルーア殿の娘??」
男に向かって言う。
「その通りだが……」
男はなぜそんなことを聞かれたのか分からなかったのだろう、不思議そうに首をかしげた。
「で、その子がさらわれるのを、あなたのご子息が見た、ということか??」
「そうだ」
「そうか。いや、人物相関図がわかり辛かったので、確認を」
それはごめんなさい、とエスメラルダが謝った。
「受けてくれる?」
「もちろん」
「私、も」
と千獣がエスメラルダの手を握り返した。
これだけいれば充分、エスメラルダがそう思ったとき――
「ふっふっふっ、人攫いだと」
近寄る怪しい影……
「悪人に人権っつうもんは無い」
きっぱり言い切った人物を見て、エスメラルダの笑顔が引きつった。
「ユ、ユーア……」
「いこーる、俺がそいつらにどんなことをしても許されるってことだよな」
この深刻な状況の中、1人楽しそうに。
そもそも、悪人に人権がないと言っているが実際にはユーアの中では、彼女自身以外の人間の人権はないに等しい。
懐からパッションピンクというとんでもない色をした液体の入った瓶を取り出し、
「最近遠くまで足を延ばして手に入れたブツから作成した薬を直に試せるなんて、俺の日頃の行いがいいからだよな」
ハートマーク。
ちょっと待て、それ薬なのか。
派手派手パッションピンクを見て、誰もがつっこみたくなった。
「つか真面目にやれよ!」
珍しく虎王丸が怒った。冷や汗をかいたアレスディアが、
「は、話を進めよう……まずはその倉庫のことを教えてくれぬか?」
「うん……図面、に、して、ほしい、な……」
千獣はユーアのことを気にしていないようだったが、
「ガキは適当に怪我させない程度に助けてやるとして、誰で試そうかなぁ」
ユーアは独り言を楽しそうにぶつぶつ言っていた。
「ああそうだ。別に誘拐犯じゃなくても怪我した奴誰でもいいのか」
……超危険。
「みんな、怪我しないでね」
エスメラルダが忠告した。
倉庫番の男が、問題の9番倉庫の内部をさらさらと図面にする。
「9番倉庫の持ち主は今いねえ。まさか人攫いのたまり場になっているとは思いもしなかったが」
倉庫の中はほぼがらんどうだ。覚えるほどのこともないかもしれない。
レイジュが顔を上げて、図面を覗き込む3人を見た。
「まず僕に作戦があるから、やらせてくれないか」
「どんな?」
「僕は蝙蝠に変身できる。窓から侵入できるから、中に入ってそれで奴らと取引する」
「取引というと……」
「リアラと僕を交換しないかという取引だ……うまくいくかどうかは、半々だな」
「危険きわまりねえよ」
虎王丸がいらいらしたように言った。
「その取引の最中に、俺が壁ぶっこわして中に入る。その間にお前らリアラを保護しろよ」
と少女たちを見る。
千獣は図面を見てつぶやいていた。
「てんまど、ある……中、のぞける……まず、中の、人たち……様子、見て」
「さすがに真正面から突破は出来ぬ。どこか潜入口がないかを考えてみたい……のだが、虎王丸殿は壁をぶち壊すのだったか」
「ああ。俺は獣化できるからな、簡単だ」
「じゃあ、まず千獣殿とレイジュ殿に窓から中の様子を見てもらい……様子が分かったら一度撤退して改めて潜入口から入るつもりだったが」
「まどろっこしい。様子が分かったら、蝙蝠がとっとと入れ」
虎王丸はレイジュの背中をばしばしと叩いた。
「分かった」
レイジュは静かに応答する。
「レイジュ……取引、の、間、敵、の、意識、が、片寄る……」
「そこに俺様が壁ぶっ壊して入って、さらに大混乱だ」
「それで私たちがひそかに入って……リアラ殿を保護するか」
計画は順調に進むが、横から1人怖い人物が口を挟む。
「で、俺の薬の出番は?」
「………」
「あ、そうか。そこの少年! 壁壊すついでに誰か怪我させろ、そしたら俺の薬の出番だ」
ユーアはどこまでも薬にこだわった。
虎王丸はもちろん無視を決め込んだ。
「そうと決まったら、行くぜ!」
今夜の彼は気合が入って、ユーアのことなど二の次だ――
■■■ ■■■
9番倉庫は静かに闇の中にたたずんでいる。
「外、に、見張り、は、いない……」
感覚の鋭い千獣がそう告げる。
「うっし、近づくぞ」
5人は闇の中を動く。闇に強いレイジュと千獣が先行した。
そして近くまでくると、レイジュは蝙蝠の姿になり、千獣は背に翼を生やし、飛び立った。
目指すは天窓。
9番倉庫の天窓は四角くて、大きめだ。
月明かりで出来る自分たちの影が映りこまないよう注意しながら、屋根に降り立った2人は天窓を覗き込む。
いる。人間が――男が合計9人。
リアラはどこだ?
素早く視線を動かし探すと、男たちの内2人が、木箱で囲った空間の前に立っている。見張りのように。
あそこか――
あとは倉庫自体の見張りをしている人間。
出入り口のところに、2人。
残りの5人が思い思いのところにいる。
千獣は天窓のすぐ横の屋根にぴったり耳を当てた。中の音を拾えないか?
少しだけ……聞こえる。
――り―きは――す――
――あ――れば――は――
――あさ――
――あす――
明日の、朝。
断片的な単語を拾うとそうなった。
「私……みんな、に、知らせて、くる」
千獣はばっと翼を広げて、再び屋根から下りた。
レイジュは蝙蝠姿のまま窓を触る。開くか?――開かない。
まずい、中に入れない――
倉庫には他に窓がない。
これはどうしたものか……
下に下りた千獣は、アレスディアが持っていた図面に、男たちの配置を書き込んだ。
「見張り……ここ、に、2人、それから、ここ、に、2人、立ってて……」
「つまりそこにガキがいるんだな」
ユーアも現場に来ると少しは真面目になる。
「明日、の、朝、って、聞こえて、きた」
「それは売買の時間かもしれぬ」
アレスディアが難しい顔をする。
虎王丸が舌打ちした。
「急がねえと」
月は空高く。
朝まではまだ時間があるけれど。
――レイジュが戻ってこない。
どうしたのだろうと、千獣はもう1度空を飛んだ。
レイジュは蝙蝠の姿から人間の姿に戻り、屋根で思案していた。
「天窓が開かない。どうしようかと」
「……壊し、ちゃう?」
レイジュは考えた。今回自分は、悪役として連中の前に出ていくつもりだ。多少の破壊は……
「そうだな」
うなずくと、千獣は拳を作って思い切り天窓に叩きつけた。
バリン! 派手な音が鳴って、天窓のガラスが割れる。
「手は大丈夫か?」
レイジュの心配に、
「平気……行って、きて」
千獣はうなずきを返す。
レイジュはありがとうと礼を言うと、再び蝙蝠の姿になり、割れた天窓から中に入り込んだ。
■■■ ■■■
天窓が割れた音で、倉庫内はにわかに騒がしくなっていた。
「おい! 天窓が割れたぞ!?」
「何者だ!」
「――静かに。聞いてくれ」
若者の声が薄暗い倉庫に響く。
ぎょっと男たちが身構えた。
いつの間に入り込んだのか、タキシードの赤い髪の青年が、倉庫の真ん中に立っていた。
「リーダーは、いないか。話をしたい……」
レイジュは努めて低い声で話をする。
努めて冷えた声で話をする。
悪者に見えるように。まるで吸血鬼のように見えるように。
「おいガキ。天窓を破ったのはお前か」
細身の、頬に十字傷のある男が進み出てきた。
「そうだ」
レイジュは平然と応える。十字傷の男は片眉を上げて、
「何やら度胸がありそうなガキだな。何の用だ?」
「……噂を聞いた。お前たち、背に翼のある少女を手に入れたそうだな」
ぴくり、と男たちが動く。腰につけている剣や、手にしている槍が揺れる。
レイジュは悠然と構え、
「翼を持つ者を要求しているのなら僕が代わりになろう。そんな幼い子供よりも、僕ならもっと有能な稼ぎ手になるはずだ」
唇の端を吊り上げてみせる。
「ちょうど稼ぎを探していた、僕と組まないか」
「お前と組むだと……?」
「ああ」
レイジュは超音波を発して、男たちの位置を常に確認する。
男たちの間には、思いがけない話で動揺するような気配があった。
予定ではそろそろ、虎王丸が入り込んでくるはずなのだが……
十字傷の男はじろじろと値踏みをするようにレイジュを見て、
「お前は何者だ? ただものには見えねえなあ」
「人間の血が欲しい――そんなところかな」
「悪魔か吸血鬼か」
「好きなように判断するといい」
――虎王丸はまだか――
場合によってはレイジュ1人でも戦って、リアラを取り返すつもりだったが、この人数相手ではリアラを怪我させる可能性がある。
仲間の助力を仰ぎたいのだが――
十字傷の男は目を細めた。
「しかし……あの子供の代わり、とは。まるであの子供を助けたがっているかのような言い分だな」
レイジュは動揺を顔に出さないよう、必死に自分を抑えた。
「どうせお前さんも悪人なら、俺たちとしては、両方の儲けが欲しいね」
つまり、リアラもレイジュも――
しまった、こういう展開になるか。
レイジュは焦った。虎王丸はどうした、千獣は伝えてくれていないのか。
レイジュの視線が思わずリアラがいるはずの方向に向かった、その瞬間――
どがああっ!
派手に倉庫の壁が破壊された。
「おらあっ!!!」
虎王丸の、吼えるような声が聞こえた。右手を限定獣化させて、壁をぶち破ったようだ。
ずかずかと入ってくると、
「お前ら、何やってんだよ、あぁっ!?」
レイジュと相対していた男にガンをつける。
レイジュに意識がいっていた男たちのそれが、一斉に乱れたのが分かった。
レイジュはさっとリアラを見張っている男たちに向き直り、吸血剣を抜いた。
「僕との取引に応じなかった罰だ……っ!」
剣を一振り。衝撃波が生まれる。隙だらけになっていた見張りを打ち倒すと、木箱の陰に幼い少女の姿が見えた。
「あんっ!? 何やってんだよって聞いてんだよ、おらあ!」
ドスの聞いた声の虎王丸の怒鳴り声に、男たちが虎王丸に対応すればいいのかレイジュに対応すればいいのかとっさに迷った瞬間に。
残りの3人が、虎王丸の壊した壁から飛び込んできた。
ユーア、千獣、アレスディアの3人は散開した。リアラの方向へ走ったのは千獣だった。
倉庫の見張り番の方へ走ったのは、ルーンアームを黒装に変え、突撃槍を抱えたアレスディア。
ユーアは残りの連中を相手にすべく、倉庫の中央に走りこんでくる。
「悪人に人権はねえよっ!」
はっはあ、と笑いながら、ユーアは剣を振りかざす。
レイジュがもう一度衝撃波をくり出す。千獣がリアラにたどりつく前に、見張り2人に再度ダメージを与えた。
千獣はたどりつくなり、かなりのダメージをくらっていた2人にとどめとばかりに獣化させた拳で殴りつける。
倉庫番だった2人には、アレスディアが立ち向かった。槍を持っていた2人を相手に、突撃槍を突進させる。
レイジュに続いて虎王丸と、予測外のことが立て続けに起こって動揺していた男たちは隙だらけだった。
ユーアが雑魚を叩きふせる。
虎王丸が獣化した拳を、ガンをつけていた十字傷の男の顔面向かって振り上げた。
とっさに剣を抜いた十字傷の男。しかし虎王丸の方が早い。大きく硬い拳は、男を横殴りに殴った。
千獣が縄をうたれ、目隠しをされ、さるぐつわをかまされた少女を見つける。
「リアラ……」
呼ぶと、びくっと震える。
「助けに、きた、から」
千獣は小さな声で言うと、リアラの体を抱き上げた。
アレスディアは倉庫の出入り口の前の2人の脇腹を打って悶絶させる。そして用意していた縄を取り出し、1人1人素早くしばりあげていった。
虎王丸の拳で殴りつけられた男は、1発ノックダウンだ。
「おらあ! 他の奴らも逃がさねえ!」
怒り狂った少年が吼える。倉庫が混乱する。
ユーアが、
「安心しろよっ。俺様が綺麗に片付けるさ」
言いながら、あたふたと剣を抜いた他の男たちを素早く打ちのめす。
レイジュは千獣の動きに注視する。千獣は獣化で大きくした腕で、リアラを大事に抱えると、虎王丸の空けた壁の穴から抜け出そうとしていた。
万事、順調にことが進んでいる。
「アレスディアさん!」
倉庫番に縄をうっていた少女に顔を向けると、アレスディアは心得たとばかりに縄の残りを放り投げてきた。
それを空中で受け止め、レイジュは走る。
まずは、千獣にとどめをさされて失神しているリアラの見張り2人を縛り上げる。
虎王丸は自分がノックダウンさせた十字傷の男の胸倉をつかみ上げた。
「てめ、こら! お前らの売買ルートを吐きやがれ……!」
本気で怒っている今の彼に容赦という言葉はない。
ユーアが雑魚4人を綺麗に打ちのめし、レイジュが駆けてきて縄で縛りあげる。
「うーん、誰を俺の薬の実験台にするかなー」
そんな算段を楽しそうにしているユーアにちょっとぞっとしつつ――
虎王丸に最後の縄を投げた。
虎王丸はそれを取り、十字傷の男を縛り上げると、蹴りを入れる。
「てめえらみたいなのがいるからだな……っ」
ぎり、と歯ぎしりして、虎王丸は憎々しげに男を見下ろす。
「――俺たちゃあんな思いをしたんだよ……!」
「虎王丸殿、そこまでになされよ!」
アレスディアが駆け寄ってきて、少年をおさえた。
「落ち着いて……お怒りは分かった、官憲に突き出そう」
「それくらいでおさまるかよ」
虎王丸はアレスディアを振り払い、
「――明日の朝を見張ってやる。取引相手が来るかもしれねえからな」
そう言い放った。
と――
「俺様の新薬実験開始〜」
るんるんとユーアが十字傷の男の殴られた痕にパッションピンクの薬をぶっかける。
すると――
「うぎゃあああ!? 熱い!」
ぶしゅうう、と煙が立ち昇り、男が一気に覚醒した。
「あれ?」
ユーアがおかしいなとばかりに首をかしげる。薬をかけられた男の横面は火傷したように真っ赤になった。
「熱い! 熱い!」
男は泣きそうな悲鳴を上げる。
アレスディアが慌てて介抱しようとすると、虎王丸がそれを押し留め、
「ちょうどいい……」
ぽきぽきと指を鳴らした。
「売買のルート、吐かせてやるぜ……!」
「虎王丸殿……!」
■■■ ■■■
その夜、とある屋敷に1人の少年が押し入った。
体の一部分が獣のその少年は、屋敷に住まう人々全員を打ちのめした。
――その後の調べで、屋敷は人身売買の元締め関係者の持ち物だったことが判明。
少々乱暴ではあるが、少年の働きにより人身売買に関わった人々の多くがとらえられた。
■■■ ■■■
目隠しをとると、リアラの目の前には父親のルーアがいて。
「リアラ……!」
ぎゅっと抱きしめられ、リアラはようやく怖くて暗い場所から逃れられたのだと知り、ぽろぽろと泣いた。
傍には見知らぬ男女が5人。
その中に、リアラと同じように背に翼を持つ、黒いタキシードの青年がいた。
彼はリアラの頭を撫でて言った。
「その翼で自由に大空へ飛び立って欲しい。大空を飛べても心はいつも闇の中で縛られている大人になどなるな」
少し悲しそうに、微笑んで。
「……僕の、ようにはな」
その言葉はなぜか強く、少女の胸に刻み込まれることとなる――
リアラ。背に翼を持つ少女。
人の悪しき心によって恐ろしい目に遭い、そして人の優しき心によって救われた。
その経験は、彼女にとって永遠にも等しい教訓。
――人の心に触れた彼女の生き様は、それから大きく変わることになる……
―FIN―
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【1070/虎王丸/男/16歳/火炎剣士】
【2542/ユーア/女/外見年齢18歳/旅人】
【2919/アレスディア・ヴォルフリート/女/18歳/ルーンアームナイト】
【3087/千獣/女/外見年齢17歳/獣使い】
【3370/レイジュ・ウィナード/男/蝙蝠の騎士】
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■ ライター通信 ■
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ユーア様
お久しぶりです、こんにちは。笠城夢斗です。
白山羊亭に続き黒山羊亭にもご参加いただき、ありがとうございます。
ユーアさんの薬は使わないと損、ということでこうなりましたw相変わらず書いていてとても楽しいです。
またお会いできますよう……
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