＜聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記＞
お使い奮闘記
◇ Introduction ◇
「っきゃぁー！！」
程よく晴れたとある日の正午。客で賑わうここ、白山羊亭に、地を裂くほどの絶叫が木霊した。
店の常連ならば、それが誰の声だったか一瞬でわかったことだろう。
常連でない者達は、その声の主を求めて、悲鳴の聞こえた厨房の奥を覗く。
笑い声や喧騒が、不思議そうな囁きに取って代わるのに、そう時間は掛からなかった。それほどに、その悲鳴が尋常さを欠いていたということだ。
そんな店内の様子もいざ知らず、声の主であるルディアは、大きな小麦粉の袋を覗いて今にも泣きそうな調子で顔を歪めた。
彼女の様子に、料理を受け取りに来たウェイターの青年が首を傾げて問いかける。
「どうしたんだ？ ルディア。まさか厨房に虫でも出たのか？」
冗談交じりにカラカラと笑いながらそう言った青年だったが、 当の少女は聞いてさえいなかった。
それもそうだろう。今朝確認を忘れていた小麦粉が、計量カップ一杯ほども残っていなかったのだから。更に言うならば、今は客の多い昼食時間まっただ中だ。誰かが買いに出れば、人手不足にたちまち店内は混雑することだろう。
青年のからかいに首を振ると、少女は困った様子で裏口と店内を何度か見回した。
意を決して料理人に報告に行こうとした、その時だ。
先程よりも少し静かになった店内に、意気揚々と扉の開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませー」
厨房から顔を出して告げた言葉に、客はひらひらと手を振る。その顔を見た瞬間、ルディアはハッと見覚えのある顔に息を呑んだ。
よく店に来る客人は、常連とまでは言わずとも少女の顔見知りだった。
天の助けとばかりに、客人へ駆け寄ったルディアはポケットから貨幣を出して突如客人に握らせた。
「お願いします！ 後生です！ 今からひとっ走りして、五キロの小麦粉を買ってきてください！ 報酬も、私のバイト代から出しますから！」
その願いが叶えばもう何も要らないとばかりに、ルディアは何度も何度も頭を下げた。
この剣幕に驚いたのは客人の方だ。訪れた直後の出来事に、客人は目を白黒させながらもゆっくりと顎を引いて踵を返した。
「あ、表通りは今、人通りが多いですから、ぶつからないように注意してくださいねー！ 裏通りは人気がありませんから、できるだけ通らないように……って、あーあ、もう行っちゃったか」
たった今鳴ったばかりのドアの音が、再び聞こえて閉じられる。
少女が叫んだ時には既にその姿はなく、ルディアはただただ、自分が使いを頼んだ人物が何事もなく帰ってきてくれることを祈った。
◇ １ ◇
温かな日差しは、どこまでも優しく人々に活力を与えてくれる。
正午を少し過ぎた頃。多少の空腹を抱えたまま、女性――サクリファイスは人混みでごった返す表通りを歩いていた。
重力に弄ばれるまま、流した青い髪が揺れて、彼女は手にした紙切れに目を落とす。
「ここを曲がって、左手の道沿いか。それから……」
まだほんの数分前、顔馴染みの少女の店へと訪れたサクリファイスは、そこでとある頼まれ物をした。
大袈裟に言うならば、この世の終わりを見たような絶望的な様相で。白山羊亭の看板娘、ルディア・カナーズが告げたのは、切れた小麦粉を買って来て欲しいというただその一言だった。
丁度ランチタイムで、人捌けの悪い時間帯だ。誰か一人とて従業員が抜けようものなら、途端にその厨房事情は、ギリギリで保っていたバランスを崩すだろう。
見知った者の頼みであるし、教えられた店の場所はそう遠くもない。
かくて彼女は、財布と簡単な地図の書かれたメモを渡され、入ったその足で白山羊亭を出ることになったのだった。
急ぎの用事である。出来るだけ早足では歩くが、人混みの中のこと。あまり速度を上げて走るわけにもいかず、時折店の看板を探すように辺りを見回す。目的の店名がなければ、また地図に目を落とす。そんなことを幾度か繰り返していた時のことだ。
目を遣った前方に、見覚えのある後ろ姿が掠める。
肩に付く程度の茶の髪の、気を抜けば人波に紛れてしまいそうな小さな身長の少年。
つい先日であったばかりの少年に似た後ろ姿へ、サクリファイスは半信半疑ながら小走りに駆け寄った。
「アンソニア？」
たった一言名前を口にすると、その人物はそれに答えるように振り向いた。
少年の瞳は静かな光をたたえて、やがて驚きに見開かれる。
「あ。あなたは」
「先日ぶりだな。こんな所で会うとは思ってなかったぞ」
まるで友に話しかけるかのように、彼女は気さくにアンソニアの肩を叩いた。
少年は若干眉をひそめたようだったが、特に振り払うこともなく、挨拶代わりに言葉を返す。
「僕だって。まさか、またあなたに会うとは思わなかったよ」
「どうしたんだ？ 買い物か？」
「特に予定があるわけじゃないもの。でも、隠れて抜け出して来たから、あまり大きな声で名前を呼ばないでよね」
つんとすましたような物言いは健在だが、その中には以前にあった棘が見当たらない。
アンソニアの話を聞いていたサクリファイスは、ふむ、と鼻を一つ鳴らすと、いいことを思い付いたかのように手を打った。
「もし、予定がないのなら、少し私に付き合わないか？ 白山羊亭のお使いを頼まれてるんだ。すぐそこまでだが」
「白山羊亭？」
「知らない？ この界隈ではそこそこ有名だ。あそこの料理は美味しいぞ」
気分転換にはいいだろう、と付け足して、彼女は少年の返事を待つ。暫く逡巡していたらしい少年は、しかしすぐに顔を上げて頷いた。彼女の提案を受け入れる合図だ。
「まぁ、丁度暇潰しを探してたところだし。付いていってみるのもいいかもね」
「それなら、善は急げだ」
女性は地図を見せてから、前方の道を指差す。
少年は簡素なメモ紙の文字を見てから、挑戦的に笑って歩き出した。
◇ ２ ◇
「ええと、確かこの辺りの筈だと……」
「違うよ。この位置なら多分、そこの路地を入った所に――」
二人で地図と看板を見回しながら、ああでもないこうでもないと意見を交わす。どうやらルディアの書いた地図は、あまりに急いでいた為簡略化しすぎてしまったらしい。
目印という目印の乏しい図面と、睨めっこしながら歩いていた二人は、不意に路上の真ん中で歩みを止めた。
ほぼ二人同時に、辺りへ巡らせていた視線が一点へ定まる。
露店の並ぶ軒の壁際、一人蹲る小さな子供の姿が目に付いたのだ。見たところ、孤児の一人歩きというわけではないらしい。普及率の高い布地の服に、清潔感のある赤茶の髪。膝に顔を埋めるようにして座り込むのは、少女だろうか。
まだ五つかそれくらいの子供が、何故このような所に一人で？
互いに顔を見合わせたサクリファイスとアンソニアは、喧騒響く街路で佇んで黙り込む。
少年の顔に浮かぶのは、困惑。
それを見て取ったサクリファイスは、しかし彼が次の句を告げる前に颯爽と人の間を縫って少女へ近付いた。
「こんな所でどうしたんだ？」
できるだけ怯えさせないように、サクリファイスは微笑んで子供へ声をかけた。俯いていた少女は一瞬肩を震わせたが、のろのろと顔を上げる。
もう随分と、ここで泣いていたのだろう。目の回りは赤く腫れ、白眼が充血していた。
少女は暫く無言で時折しゃくり上げていたが、女性の伸びた手が頭を優しく撫でると、ほんの少しだけ気を落ち着けたようだった。それからぼそぼそと、絞り出すようにサクリファイスへ返す。
「ママがいないの。いっしょに、おゆうはんのおかいもの、してたのに」
ぽつぽつとこぼされる言葉を聞き取って、サクリファイスは「そう」と相槌を打った。
「ねぇ、あなた使いの途中なんでしょ。だったら、先に買い物を済ませないといけないんじゃないの」
アンソニアが躊躇うように、それでいてどこか怒ったような声をかけたが、サクリファイスはそれに、当然と言いたげな調子で返した。
「一人は、寂しいだろう。迷子なら、せめて母親を一緒に捜すくらいはできる」
彼女の言葉には、使いを急ぎ完了したいと思う半面で、幼い子供を放っておけない優しさのようなものが含まれていた。
雑踏を掻き分けて二人の側へ近付いた少年は、やがて彼女達の様子に、仕方ないと首を振る。
「怒られたって、僕は知らないよ」
「ふふ。その時は仕方ない。さて、そうと決まればまずは情報だな。あなたの名前を聞かせてもらえるだろうか？」
どうやら、アンソニアも手伝ってくれるらしい。それにサクリファイスは笑って頷き、後半は二人を交互に見上げている少女へ向けて問うた。
少女は頭の中で、覚えたての言葉の意味を噛み砕くように、小首を傾げてから呟く。
「シアラ」
「シアラか。母親の今日の服装や、どの辺りではぐれたかは覚えているだろうか？」
少女の目線に合わせながら、再びサクリファイスは尋ねる。
シアラと名乗った少女は、今度は辺りを見回してから、ある一方を指差した。
「あっち」
「ん？」
「あっちから、シアラたち、きたのよ」
少女が指差した方角は、今し方サクリファイスとアンソニアがやってきた方角で。
アンソニアはそれを見るなりため息をつき、サクリファイスは苦笑しながら少女の手を取って歩き出した。
頼まれ事は、もう暫く先延ばしになりそうだ。
◇ ３ ◇
声をかける。人を訪ねる。首を横に振られる。
そうして落ち込んだ心境を隠すような笑みで、「ありがとう」と告げたのはもう何度目のことだろう。
手近な店に入っては、少女の母についてを尋ねる。シアラと同じらしい赤茶の髪を、襟元で一つのシニョンにしているという母親。背丈はサクリファイスよりもやや低く、緑の瞳のようだ。
身体的特徴はこの程度の情報だったが、それでもまったく手がかりがないよりはマシに思えた。
何せ幼い子供の記憶だ。頼りなくとも、あるだけ十分というもの。
『これだけ人がいるんだ。すぐに見付かると思うぞ』
始めは前向きにそう言ったサクリファイスだったが、数メートルごとに何人かの人々へ聞き回る度、彼女はどんどん自信をなくしていった。
「いや、まだだ。必ず近くに居る筈なんだから」
それでも一人そう呟いて、手を繋いだ子供を見下ろす。丁度女性を見上げるように顔を上向けていた少女と、視線がぶつかった。
「おねえちゃん、かなしい？」
「私ではなく、それはあなただろう。すまない、母親を捜すと言ったのは私なのに」
多少ならざる苦さを覚えながら、サクリファイスはそれでも少女へ笑みを向けた。それは本来一番不安である筈の少女へ、これ以上不安を覚えさせない為だったのだが。
「シアラはかなしくないよ。おねえちゃんたちが、いっしょなの」
シアラは、ぱっと野花が開くように笑った。
逆に、子供から気を遣われてしまったようだ。
「私も、まだまだだな」
軽く頭を振ると、それと時を同じくして側の店からアンソニアが出てくる。何故だか落ち込んだものではなく、どこか疲れたような面持ちで。
シアラの母親について、店の店員に聞き込みに行った筈の少年は、それから今にもため息を吐き出しそうな様子で口を開いた。
「……白山羊亭近辺で、見たって人が一人。天使の広場、だった？ まだそんなに時間は経ってないらしいけど」
言葉を途中で切ったアンソニアに、サクリファイスは一筋の希望を見出した。
その後に続くだろう言葉を予測して、彼女は大きく頷く。
「行ってみよう」
本格的に逆戻りとなってしまうが、そのようなことは些細な問題だ。
急ぎの用事だったろうルディアには、罪悪感もある。だが、今はまずこの少女を送り届けることが、最優先事項のように思えた。
◇ ４ ◇
天使の広場では、今日も絶えず噴水で水が循環する。
人々の賑わい、風や木の葉のすれる音。そういったものに紛れて見落とさないよう、サクリファイスは注意深く辺りを窺った。
アンソニアも低い身長なりに、きょろきょろと四方八方を見回している。
「忙しいところをすまないが、この少女に似た女性を見かけていないだろうか？ 赤茶の髪と、緑の瞳。背は私より低く、そこの少年より高いそうなんだが。髪は襟足で一つに丸めているらしい」
側を通りかかった中年女性に、サクリファイスは声をかけた。少年を目で指した時、アンソニアが同じように振り返っていたから、恐らく彼も声をかけた街人へ尋ねていたのだろう。
「いいえ、ごめんなさいね」
中年女性から返ってくるのは、先程と何ら代わりのない答えだ。
短く簡潔な返答に、サクリファイスは頭を下げて「そうですか、ありがとう」と返した。
当然のことだが、目撃談のある場所で聞き込みをしたとして、すぐに見付かるわけもない。別の人物へ尋ねていたアンソニアに目配せすると、少年も肩を落とした様子で首を振った。
「これだけ人が居るとね。僕の方は隠れ蓑になっていいけど、逆に人を捜すとなると」
「そう気を落とすな。ここで目撃した人が居るということは、きっと近付いて……」
近付いてる筈なんだ、とサクリファイスが紡ごうとした時だった。
彼女の黒漆の瞳に、ほんの一瞬、赤茶の髪が映って人影に紛れる。その刹那の間硬直するように前方を凝視していた女性は、「あ」と言葉を発するよりも先に足を踏み出していた。
翻る、赤茶の髪を一つに纏めたリボンが、もうあと十センチ。
無我夢中で駆けるその足がもう一歩を踏み締めた時、サクリファイスの掌は確かに誰かの肩を掴んだ。
肩を掴まれた女性は、一度びくりと身体を震わせて、こわごわと背後を振り返る。その瞳は新緑のような緑。
両手には紙袋が抱えられ、買い物の途中のようだった。
「あの、どちら様ですか？ わたし、急いでるんです」
蒼白な表情で、女性はきょろきょろと辺りを窺う。怯えると言うよりも、何かを捜しているようで。
「すまない。つかぬことを聞きたいのだが、シアラという子供を知っているだろうか？」
サクリファイスは、緊張に震える心臓を押さえながら問いかけた。
やがて彼女の一抹の望みは、確かな確信として変わる。
「シアラ？ シアラを、知っているんですか？ どこに……！」
「あぁ、よかった。やっぱりあなたが彼女の母親だったんだな」
益々顔を青くする婦人とは対照的に、サクリファイスは気の抜けたように笑った。
やっと、見付けた。
そんな気持ちで胸が満たされて、それから彼女達へ駆け寄って来るアンソニアとシアラの姿を捉える。
二人ともサクリファイスの突然の行動に驚いていたようだが、少女の方は彼女と相対する女性を見た瞬間すっかり別の驚きが取って代わったようだった。
「ママぁ！」
「あぁ、シアラ！ よかった。気付いたらあなたが居ないんだもの、心配したのよ？」
「ごめんなさぁい！ も……もう、ひとりで、おみせ、みたりしないの」
「ええ、これからはきちんとママに言うのよ？」
たまらずといった調子で駆け出した少女を、その母親が受け止めて抱きしめる。荷物が足下に落ちるのもお構いなしで、婦人はシアラを力一杯抱擁した。
何度も頭を下げる母親と、満面の笑みで別れの手を振る少女に手を振り返し、サクリファイスとアンソニアの二人は踵を返す。
「一件落着、だな」
「スッキリした顔するのは別に構わないけど、あなた、何か忘れてない？」
「ん？ あぁ、そうか。小麦粉を届けないと」
大分時間がかかったな、と独りごちる女性に、やれやれと呆れたような少年の声が重なる。
肩を竦ませて先に歩き出そうとしたアンソニアをちらと見てから、サクリファイスはふと何かに思い付いたように言った。
「ショートカット、しちゃおうか」
「え？ 何を――」
振り返り様に疑問符を投げかけた少年だったが、それ以上の言葉は喉の奥へと消えていく。
気付けば女性は少年の手を引き、人足の少ない一角へ彼を導いた。
何をするつもりだろうか。少年でなくとも、恐らくそう考えただろう瞬間。
サクリファイスは一際強く一歩を踏み切り、少年を抱え上げて目を瞠る跳躍力で宙へ跳ねた。
「うわっ、ちょっと！？」
「大丈夫だ、私は堕ちても戦乙女だぞ？ 暴れなければ落とさないさ」
「そういう問題じゃなくて！」
空を駆け上るつもりかと思えた足は、しかし次の一歩を踏み出す前に女性の背に生えた翼によって一息に地上を離れた。
日の下には少々不似合いな、けれどつやのある闇色の翼。四枚のそれが力強く羽ばたいて、二人は街の家々よりもほど高い場所に居た。
「このままお使いを済ませて、白山羊亭へ戻ろうかな。その時は、ちょっと遅いが、一緒に昼食でもどうだ？ 付き合ってもらったお礼を兼ねたものなんだけど」
そんなことを話しながら、二人は真っ直ぐに小麦粉店へ向かっていく。
何かにショックを受けた様子のアンソニアだったが、暫く口を噤んでいた少年は、ため息の後にふて腐れたように呟いた。
「仕方ないから、最後まで付き合ってあげるよ」
「そうか、ありがとう」
見知らぬ者が聞いたならば、何と尊大な態度なのかと腹を立てることだろう。しかしサクリファイスは、それが少年なりの了承だと理解していた。
「まったく、いくら僕が小さいからって、これはないんじゃないの」
「ん？ 何か言ったかな？」
「べーつーにー！」
後にぼそぼそと呟かれた少年の言葉は、風を切る音に掻き消される。勿論尋ね返した女性だったが、今度は僅かに怒りの籠もった大声が、少年の口からもたらされた。
日はまだ高く、人混みはまだ引かない。
それは昼を半分ほど過ぎた頃の、他愛もない小さな出来事。
◇ Outro ◇
「もうっ、何やってたんですかぁー！ お昼時で一番大変だから、サクリファイスさんにお使いを頼んだんですよ？」
「遅くなってごめん。ちょっと、ハプニングがあって」
白山羊亭に戻って、サクリファイス達を出迎えた第一声がそれだった。
金の髪と同色の瞳の少女は、盆を両手にサクリファイスの元へと詰め寄る。その鬼気迫る形相から、ルディアがどれほどサクリファイスの――否、小麦粉の――帰りを待ちわびていたかが窺い知れた。
怒られるだろうとは、予想していたサクリファイスだ。
率直に頭を下げて謝罪を口にしたのだが、ルディアの意識はそれと同時に別の方向へ向いたようだった。
「あれ？ サクリファイスさん、その人は？」
「あぁ、アンソニアだ。先日、仕事をしていて顔見知りになった。お使いやトラブルに付き合ってもらって、昼食を抜いたようだから、ここで一緒にどうかと思って」
「ははぁ、そういうことなら、私もサービスしないわけにはいきませんよね」
元はお使いを頼んだ自分が原因でもあるのだから、とルディアは半袖を捲るふりをして二人を席へ案内する。
「二名様入りましたー！ 腕によりをかけて、美味しいお料理出しちゃいますよ」
実際に調理するのはルディアではないのだろうが、サクリファイスは笑って「それは楽しみだ」と返した。
案内された二人は、憂いの晴れた様子で席に着く。
「お疲れ様」
どちらともなしに、口を突いて出る言葉。
二人同時に、示し合わせたように告げられるのは、共に行動した者への労いが籠もった言葉だった。
◇ Fine ◇
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【2470 ／ サクリファイス ／ 女性 ／ 22歳 ／ 狂騎士】
【NPC ／ アンソニア・クレスフォード ／ 男性 ／ 15歳 ／ 貴族】
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■ ライター通信 ■
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サクリファイス様。
初めまして、こんにちは。
この度は、「お使い奮闘記」への参加依頼ありがとうございます。
そして再びのご依頼、再びのお目見えを心から嬉しく思っています。
前回の「緊急募集、使用人よ集え！」に続き、またも我が家のNPC「アンソニア」を共演させて頂き、ありがとうございました。サクリファイス様との掛け合いは書いていて面白く、書き手としては満足のいくものを書けたのではないかと思います。
前回「使用人」の方の作品がドタバタとしたものになってしまったので、今回はゆっくり、ほのぼのとした作品を目指してみました。
サクリファイス様の諦めない根気良さ、人を放っておけない優しさなどを上手く表現できていれば幸いです。
実は「ショートカット」のくだりが一番書くのを楽しみにしていて、気付けばキーが勝手に進んでいました（笑
天翔る（元）戦乙女、格好いいですね。
それでは、今回はこの辺りで締めさせて頂きます。
再びのご縁に感謝し、またのご縁があることを願って。
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