<PCクエストノベル(4人)>


ハーモニー
MTS作

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 今回の冒険者
【整理番号 / 名前 /性別 /年齢 /クラス】
【3429/ライア・ウィナード/女/27才/異界職】
【2377/松浪・静四郎/男/25才/放浪の癒し手】
【3370/レイジュ・ウィナード/男/21才/異界職】
【3434/松浪・心語/男/12才/異界職】

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1.前夜

楽器職人の村、クレモナーラ。そこでは、今年も例によって音楽祭が行われる。
さすがに楽器職人の村だけあり、音楽祭に関しては、『村』というレベルを越えた祭

りが行われていた。
特筆するべきは、祭りの一つの側面として、主役が人では無くて楽器である場合があ
る事があげられる。
クレモナーラで造られて各地に散っていった楽器達が、その弾き手を伴って里帰りを
する。
そうした趣きが、祭りの一つの顔となっていた。
楽器職人と演奏家、そのパトロン達が楽器を通じて集い、音楽と世俗の狭間で語り合
うのがクレモナーラの音楽祭の一つの顔なのである。
…などという事は、飛び入り参加で音楽祭に参加する一般の音楽好きには、あまり関
係の無い話である。
一般参加の音楽好きが、それぞれの得意とする演奏を披露する。
それもまた、クレモナーラの音楽祭の一つの顔である。
これは音楽祭の前日、クレモナーラ村の入り口、夕暮れの出来事である。
村を訪れる一般参加者の姿が、ここにもあった。
ライアとレイジュのウィナード姉弟と、静四郎と心語の松浪兄弟の、二組の兄弟姉弟
達である。
彼女達は、どうやら演奏会の参加について、少し揉めている様だ…

ライア: 「…というわけで、演奏会には一般参加も出来ますので、
     私達も参加しましょうよ。私、歌いますから」

積極的に仲間を誘っているのはライア。元々、仲間達を祭りに誘ったのも彼女である


静四郎: 「では、横笛で歌に合わせるとしましょうか。
     一人で歌うだけでは、『演奏』とは言いませんしね」

比較的、協力的なのは静四郎である。
最初からそのつもりで、横笛持参でクレモナーラにやってきた。

レイジュ:「まあ、がんばれよ、ライア!」
心語:  「演奏とか、俺達には関係無いしな」

逆に演奏会に興味が無いのは弟達だった。
だが、ライアは、にっこり微笑んで言った。

ライア: 「レイジュは伴奏をお願いしますね。
      ピアノ弾けますよね?」

レイジュ:「え? いや、俺は…」
ライア: 「レイジュは伴奏をお願いしますね。
      ピアノ弾けますよね?」
レイジュ:「弾けば良いんだろう、弾けば…」
心語  :「じゃ、俺は見物してるから、がんばってね」

表情と口調を全く変えずに詰め寄る姉には、逆らっても無駄な事を悟ったレイジュは
、ため息をつきながら頷いた。

心語  :(良かった…ライアの弟じゃなくて)

心語はライアと目を合わせないようにして安堵の息を漏らした。

ともかく、明日は、演奏会である。
レイジュのピアノをどうするかという事が、当面の問題だった。

2.当日(演奏会前)

よく晴れた日である。
村で楽器を造っている…というと、少し違う気がした。
楽器を造るために村がある…といった方が、違和感が無い。
楽器を造るための工房が、まずは存在する。それを中心にして、楽器職人とその家族
が暮らす為の設備がある。
クレモナーラは、そんな村である。
演奏会の当日、ライア達は観光も兼ねて、演奏会が始まるまでの間、村を歩いていた


レイジュ:「とりあえず、ピアノを探そうぜ。
      ピアノが無いと、ピアノは弾けないぞ!」
心語  :「そうだな。ピアノが無いと弾けないな」

弟達が、何やらぶつぶつ言っている。

ライア :「レイジュ…貴方も探して下さいね」

姉は、にっこり微笑んだが、声のトーンがいつもより少し低いようにも思えた。

静四郎 :「鍵盤楽器の工房は、あっちの方らしいですよ。
      行ってみましょう」

静四郎は、マイペースにピアノがありそうな工房に目星をつけていた。
軽く村を歩いてみたところ、楽器の種類毎に、その工房がまとまっている事はすぐに
わかった。
ピアノやオルガンのように鍵盤を叩く楽器は、弦楽器の工房が並んでいる区画の側、
村の中心部に工房がまとまっていた。

心語  :「ふーん、やっぱり鍵盤系とか糸系が人気なのかな?」
レイジュ:「そうだな、何か工房も豪華だよな」

なるほど、外から軽く見ただけでも、工房の大きさや雰囲気に違いあるように感じる

打楽器系の工房は、少し地味にも見えた。
今日の祭り当日も、鍵盤楽器や弦楽器の工房の方に観光客が多いようだ。
一行は観光客に紛れて、鍵盤楽器の工房を訪れる。

ピアノ職人A:ピアノを貸してくれ? 
ライア:「はい、演奏会でピアノを弾きたいと思うのですが。
    出来れば、良いピアノで演奏したいと思いまして」
レイジュ:「うんうん。調律が合ってないピアノでなんて演奏したくないぞ!」

ウィナード姉弟が、何やらピアノ職人と話している。

ピアノ職人A:「飛び入りの一般参加の人は、無料でピアノも貸し出してるぞ」
ライア:「うーん、まあ、所詮はレイジュが弾くんだし、そうしましょうか…」
レイジュ:「嫌だ! 弾くならちゃんとしたピアノがいい!」

ウィナード姉弟は、引き続き、ピアノ職人と話している。

静四郎:「一晩限りのレンタルというわけには、いきませんか?
     私達の他にも、そういう事を考える人たちは居るかと思いますが…」
ピアノ職人:「まあ、確かに。そういうお客さんも居るな」

結局、見かねた静四郎が口を挟み、ピアノに関してはレンタルという事で話がまとまった。

心語:「じゃ、ピアノも見つかったし、レストランでも行こうぜ。腹減った」

待ってましたと、心語は言った。

ライア:「いえ、先に少し音を合わせてから行きましょう」
レイジュ:「うーん、そうだな。
      飯喰ったら、やる気無くなりそうだしな…」

先に音を合わせる事になった。
一行は、また適当に街を歩く。
祭りの当日、観光客で賑わった村だが、音楽祭だけの事はあった。
夕方からの演奏会に参加すると思われる者達が、そこかしこで演奏をしている。
ライア達も、そうした演奏家達に紛れて、音合わせを始める。

心語:「うむー、音外れてるぞ、兄貴。
    レイジュも何かおかしいな。
    ライアさんは、ちょっとはしゃぎ過ぎだよ。もうちょっと落ち着いた方が…」

一人、演奏会には参加しない心語が、音合わせを聞いて、色々と注文を付けている。
レイジュが何やら心語をにらんでいたが、心語は気にしない。
さすがに急造の演奏チームだけに、音合わせには中々苦しみ、のんびりと観光をする
余裕は無くなってしまう一行だった…

3.当日(演奏会)

夕方、日が暮れ始めてからが祭りの本番である。
太陽の届かない夜に、松明や魔法の明かりを灯して光を作り出す事。それは、自然に
反する行為である。
楽器というのも、同様に人の手によって造った機材で、自然には存在しない音を作り
出すのだから、似たような物なのかもしれない。
自然に反した明かりの下で、自然に反した音を楽しむ。
何と人間は、不自然な存在なのだろう?
…などという哲学じみた事を考える者は、音楽祭の会場には、ほとんどいない。
ただ、光の下で音楽を楽しむのみである。
音楽の楽しみ方には、弾く楽しみと聞く楽しみがあるわけだが、今回、ライア達の一
行は、その両方を楽しもうとしていた。
まずは、祭りに招待されてきた音楽家達の演奏が続く。
彼らの楽器は、全てクレモナーラ製である。
楽器達の里帰りという、音楽祭のメインイベントだ。
それがしばらく続き、夕方から夜へと時が流れ、酒も回ってきた頃からが、ライア達
、一般参加者の時間だ。
音楽を愛する者達の自由な演奏という、音楽祭のもう一つのメインイベントである。
あまり見かけない楽器で演奏をする者達が居る。
早いテンポのリュートの演奏に、音が低いリュートの演奏を重ねて打楽器でリズムを
取り、歌を歌う者達が居た。
『ロック』と自称するそのスタイルは、ライア達も驚いた。
そうして何組かの演奏が続き、ライア達の順番がやってきた。

心語:「ふぁーあ、じゃ、がんばれよ。みんな。
    いや、俺は眠くないぞ。本当だぞ」

眠そうに客席で手を振る心語に見送られ、3人はステージへと上がる。
『ロック』のように独創的過ぎる演奏等が続いた後で、少しやり辛い気持ちもあったが、まあ仕方ない。
歌い手のライアが前に立ち、静四郎は少し斜め後ろに構える。ピアノの心語は、下がった所で演奏の準備に入った。
静四郎は静かに眼を閉じて、ライアの歌声だけに集中する。
レイジュは、少しはしゃいでいる姉の姿を見てため息をついた。
前奏などという、気の利いた物は無かった。
まず、ライアが歌い始めた。
すぐに静四郎が横笛の演奏を重ねる。
レイジュのピアノが重なったのは、2フレーズ目からだった。
『ロック』のような独創的な演奏とは違う。
昔から知っている歌を、知っているようにライア歌う。静四郎は横笛は合わせる。レイジュはピアノを奏でる。そして、心語は聞く。
それもまた、音楽には違いない。
飛び込み参加で練習不足な事は確かだが、それでも一つの音楽には違いない。
ライア達の演奏が終わると、観客からは拍手が飛んだ。
口元に手を当てたライアは、キスを手に当てて観客へと投げた。『ロック』の雰囲気にあてられたわけでもないが、少し、大胆になっている。
静四郎は、冷静に観客に一礼した。
レイジュは、少し照れている。

心語:「すやすや…」

いつの間にか、心語は眠っている。眠っているのだから、仕方ない。
そんな風にして、ライア達の演奏は終わった。

心語:「い、いや、寝てないって。聞いてたぞ、ほんとに!」

あまり説得力の無い心語の言葉を聞きながら、ライア達も観客へと戻った。
ひとまず、満足がいく演奏が出来た。
次の者達が演奏を始める。
雰囲気にもよるが、このまま朝まで演奏が続く事もあるのだ。
音楽祭は、まだまだ終わらない…

 (完)

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(ライター通信もどき)

お買い上げありがとうございます、MTSです。

兄弟と姉弟が一組ずつだったのですが、
ここの兄弟姉弟は、なんとなく、
兄姉の方が何となく強そうな気がしましたので、
そんな風に書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?

ともかく、お疲れ様です。
重ね重ね、お買い上げありがとうございました。

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