<■テラネッツ八世界冒険ノベル■>


■沁みる雪白−AKI−■





 降り落ちる雪。降り積もる雪。降り注ぐ雪。
 ぬくもりにふれてひそかに消える、いっときの形。
 
 ――SECOND

 小さな声で、短く、馴染みのない言葉を転がしてみる。
 その様に頷いてみせる少女の、僅かばかりの生命の形。
 重たげな空をつと見上げ、はらりと落ちる白群と少女を重ねた。
 倦み厭きることとて起きて不思議はなかった程に永い時間を過ごし、これからも過ごす自分。
 十六時間。一日にも届かない刻限を過ごして去りゆく少女。その真逆の生。
 思考を束ねることはせず、雪を眺めて少女を思う。少女へと視線を戻し、また思う。
 ねえ、と呼べば、なんですか、と返る声。心を持った声。雪とはまた違う、存在の。

「聞いても……いい、かな」
「なんですか?いいですけど、その前に雪塗れの頭ちゃんとしてください。ほら」

 ことりと首を傾げるのに呆れた風情の息をつき、少女は自身の頭を示して促した。
 それで素直にぱたぱたと頭上の雪を手で払い落とすと、はい、と満足げに頷かれる。
 小柄な少女は世話焼きであるように思われる。なんとなし唇も綻んだ。

「じゃあ」

 そして、綻んだ唇をそのまま動かして問いを落とす。
 まだ未成熟で華奢な、なんとなく頑なにも見えそうな、その少女に。

「ひとつだけ」

 十六時間。
 そこで重要なのはその時間制限ではない。 
 大切なものは、尊重するべきは、少女の気持ちだ。
 望まぬことはして欲しくない。自身の意志で、十六時間を使って欲しい。
 その望みに、選んだことに、自分は全力で付き合おう。ただそう思う。
 だからまず、この馴染みのない世界で出会った少女に。

「……あなたは、それでいいの?」

 千獣は、ひとつ、少女の意思を含む言葉を求めたのだった。





■沁みる雪白−AKI−■





 ソーンではとんと見当たらない程に高い建物がにょきにょきと生えて、いや建っている。
 ふと見上げると視界に収まるそれらのおかげで空は狭く、どことなし遠い。
 ほろりと吐息を白く零して千獣はあまり見ない形になっている空を眺め遣った。
 となれば自然に足も止まる。が、途端に。
「もう!考え事をするならするで端に寄ってください」
 下方から声が掛かり、建物が並ぶ際へと誘導された。
 見下ろせば光の加減によっては黒にも見えるだろう濃茶の髪。
 アキ――AKIと記すのだというSECONDの少女が千獣の腕を取って歩いている。千獣から、彼女の顔がいささか見辛いのは身長差が主な理由。覗き込むように頭を傾いでみれば生真面目そうな横顔だった。
「危ないじゃないですか、姉さん」
 なにゆえに『姉さん』呼びなのかわからねど、姉さん?と首を傾げた際に――千獣としては実際にそれで気にしないわけだし単に姉とされる出来事があっただろうかと疑問だっただけだったが――微妙なしょんぼり加減が見えた気がするので、姉さん呼びで問題ないとしている。
 それをつと思い返しつつの千獣はアキを見詰めてこくりと頷きひとつ。
 彼女の紅瞳がじっと見る先で、割と近しい色味の瞳がきょろりと居心地悪げに動いた。
「ほ、他の人が、ですよ?別にぶつかられたら転ぶからとか車道に近かったからとか、そんなことは」
 それを誤魔化そうとしてか、早口でしゃきしゃきと捲くし立てたアキながら、はたと口を噤んでしばしの間。
「ちょっとくらい……いえ、あ、危ないですから、ええ。危ないんです」
 ほんのりと頬を染めた少女は声量を落としてぽそぽそ言った。無言で見詰められて墓穴というか自ら本音を吐き出してしまうような流れ。まあ稀と言うわけでもない展開としておこう。
 千獣はといえば視線に含みなぞあるわけもなく、ただ見下ろしていただけであったから、アキの忙しない言葉を聞いて、うん、と再び頷くだけだ。ありがとう、と一言を添えて。
「別に姉さんの為にじゃなくて……っ」
 その一言に咄嗟に反論しかけたアキはもぐりと言葉を呑んだ。千獣はそれを穏やかに見る。
 どうやら少々素直でない性格のようだけれど、つんとした言葉の向こう側にある気遣いはきちんと知れるし、そもそもアキはぽろぽろと素直な気持ちを零しているのだから癇に障ることのあろうわけもない。もとより千獣は簡単にカチンとくるような性分でもないから、アキとの遣り取りに困難のあろうはずもなかった。

 どうしてこんなに親しげな様子なのかとは少しだけ、不思議だけれど。

 並んで食事を摂りつつ説明された『SECOND』についての情報の中にも、初対面の相手にも親しい設定があったりするものなのだという部分なぞは無かった。うっかりと聞き流してしまっていたりはしていない、とも思う。話はちゃんと聞いていたはず。
 かといって起動者とやらの立場に千獣がなっていて、それで態度が知己のものというのでもないらしい。そして心当たりはそれ以上には見つけ出せない。
 と、いうかだ。
 そもそもアキが千の名前を知っていたり、心を許しているような態度を示したり、そんなことに対しての心当たり以前に、世界を渡った心当たりからして千獣にはないのである。かといって、探してどうなるものでもなさそうだった。

 つまるところ、それは結局不思議なことだけれど。
(……うん)
 不思議なだけの事柄なのだと千獣は判じていた。
 説明のつかない出来事というものも少なくはないのだから。
 なによりも千獣自身、全てに理由を求める性質でもない。あるがまま。ごく自然に場を受け入れるだけ。
 そうしてただ十六時間をアキと共に過ごすだけ。彼女と一緒の時間を、全力で。過ごすだけ。
「…………」
 相変わらず舞い落ちる雪のひとつふたつと映す瞳を瞬かせ、千獣は無言のままアキへと手を伸ばすと頭頂の雪をそっと払った。見上げてくる大きな眸に微笑みかけると、一拍置いてから少女は慌てて千獣の肩辺りの雪なぞを指摘し出したが、それは咄嗟にお礼を言い損ねたところからの気恥かしさだかなんだかが原因だろうと思われる早口。
「先に自分に積もってる雪をどうにかしてください」
「アキ、の髪の方が……濡れて、風邪をひきそうだから」
「同じだけ姉さんにも積もってます。ほら落として」
 ぱたぱたと白い手が動き、小さな唇も動く。世話焼きの言葉。
「雪で湿るのは姉さんも同じなんですよ」
 もう、と唇を尖らせそうにして零すアキに言われるまま素直に自分でも雪を、千獣は払う。
 道行く人々は誰も、歩道の端に佇む二人を気に留めなかった。ちらりと見る人が時折に居るだけで、大半はただただ横切っていくだけ。千獣の服装に奇異の目を向ける者は一人として居ないまま。
(むしろ、気付いていない、みたい)
 包帯と呪符で覆われた自身を見下ろし、それから周囲の人々を見て千獣は改めて思う。
 せいぜいが少し個性的な服を着ている程度の感覚で受け止めているようで、それはアキと屋内でお喋りだけに興じる予定ではない身としては有難いことでもあった。場合によっては着替えをなんとかする必要もあったから――そこで、首を捻ったり文句を言ったりしながら衣服の準備に駆け回るアキが想像出来てしまう。そんな慌ただしさも悪くはなかったかもしれない。
「姉さん?どうしたんですか?」
 長くはない時間でのあれこれを考えては唇をやわらかく曲げる千獣を、アキが見上げて問う。微かに寄せられた眉は不機嫌からではなくて、怪訝に思ったからのものだ。だから問うた一瞬だけで、眉間は滑らかな肌に戻る。
 ふるりと首を揺らして千獣は小柄な少女に応じると、そっとその小さな手を取って引いた。
「なんでも」
 道端にアキが促したのと丁度逆に。
 道端から千獣が促して、一緒に歩道の半ばに戻る。
 案内を、と短く告げれば心得てアキは触れている千獣の手を握り直した。

 SECONDという存在の根底がそうなのか、それともアキが設定がそのように在ったのか。
 十六時間をアキに付き合おうと考えた千獣が「どうしたいか」と訊ねたとき、アキはぽかんと呆けてから表情を取り繕った。千獣と一緒に十六時間を過ごすことについては迷わず肯定したというのにだ。そこから「ええっと」と呟いて思案すること幾許か。
 街を一緒に回りましょう姉さんも色々と見るべきですから目的がないと言うのなら仕方ないですし。
 そんな決断をアキが下したのは二人の頭の天辺を雪が覆う少し前のこと。

 で、あるからして再び歩き始めた千獣とアキには明確な目的地というものもなく、ただただのんびりと手を繋いで街の中を散策中だった。相変わらず降り落ちては髪を飾る雪を時折に払いながらショーウインドウの品々を覗いたり、甘い香りに足を止めたり、そんな緩やかな移動だ。
 アキのはきはきとした説明を首をふりふり頷いて千獣は聞く。
 聞きながら、アキの表情を見る。歩いているときも見るけれど、今は少し解りやすい視線の動きがあるので更に見る。アキはその視線の揺れを気付かせまいとしているので千獣の視線に気付かない。
 さて千獣が見る先でアキは何を見ているのかと言うと。
(……ぬいぐるみ……)
 ソーンでも目にする可愛らしい、丸みを帯びたシルエットのふかふかした、それ。
 胸中で千獣が呟いた通りのぬいぐるみ。もこもこふわふわと感触を想像させるそれが二人の眺めている店舗の隅にちょこなんと鎮座ましましていた。アキはそちらへ泳ぎかける視線をどうにか抑えているというわけだ。いやまあ抑えきれていないし隠しきれていないし誤魔化しきれていないわけだけれども。
 アキは可愛いものが好きなのだろうとは、昼食を終える頃には確信を持てる程に繰り返した場面である。
 本人はそれを知られたくないらしく、無理に硬質なデザインのカップを手に取ったりもしてみせていたが、気を許している分だけうっかりと滲み出てしまうのだろうか。靴だ服だ人形だ手帳だカーテンだと用途から何から様々な物を対象に、可愛いという印象を与える模様や形状の代物にアキは反応しきり。
「好きな、もの……隠す必要はないと、思う、けど」
「――っな、何か言いました?」
 今もぬいぐるみをちらりと見ては逸らすアキの様子にそっと話す千獣。
 アキはあわてふためいて振り仰ぎ、それから勘違いがどうこうと誤魔化し再び。
 それを受け流して千獣は繰り返して話してから、アキの手を取って店の入口へと向かった。
 一緒に街を回る中でアキが興味を示すもの、好むもの、それらを見つけては近付き手に取り眺めて話す。
 千獣はアキに満足できる十六時間を過ごして欲しいのだから、ごく当たり前の、それは行動だった。


 時間の、時間の蓄積に関わり無く、
 二人は当たり前に、近しく親しく街の中を巡って過ごして、そうして。



 ** *** *



 ――十六時間。
 それが短いのかどうかは知らない。
 時の針が進む距離と人の充足とが比例するとは思わない。
 けれど、自己の終焉までの刻限を計るようになった当人――アキにとっては、どうなのだろう。

「……あ、えっと」
 千獣は咄嗟に受け止めた缶の熱が手の平を侵すに任せ、表情を繕い損ねた少女を見遣る。
 プルタブとやらを開け損ねたというには無理のある失敗だった。指先をかけてもおらず、ただ缶を握り直そうとしていただけの手が取り落とした。滑らせただとかでもない。明らかに動きが凍った。不自然に。
「開ける前、で、よかった、ですね」
「…………」
「姉さん、本当に反射神経がよくて、すぐに」
「…………」
 かじかんだ指を動かすようにぎこちなく、アキは千獣の手から缶を受け取った。
 自動販売機から誰かが何かを買っていく。それを離れた場所から視界に収めて二人。
「あの、別に」
「アキ」
 言い募ろうとするのを名前を呼んで留め、千獣は再びアキの手から缶を預ると代わりに小さなぬいぐるみを押し付けた。アキが言い出さない代わりに千獣が言い出して買ったぬいぐるみ。ささやかなそれを抱えさせ、片方の手を掴んで歩き出す。引っ張っていく。
「……姉さん」
 随分と暗くなった。自分達が出会ったのは朝方だったから、随分と時間は過ぎている。
 つまりはアキの時間が残り僅かだと――手が動かなくなった一瞬は、まさしくその証明だ。
「たまにあるんです。個々で差はありますけど、動かせなくなること。わたしは軽いから幸運ですよ。ちょっと今のは驚きましたけど、中身を零したりもしていませんし」
「……どうしたい?」
 手を引かれるまま着いてきて、合間にそれを説明するアキの声が途切れたところで千獣は言葉を挟んで止める。
 歩くのはゆっくりと、人の流れから少しずつ逸れていつぞやの如くに建物の側に。けれど完全には止まらない。
 動かなかったアキの手を握って千獣は緩やかに道を行く。空からは白く雪が落ちてくる。結局ずっとやまなくて、足元もちょっとだけ滑りやすい。もっとも千獣にとっては「この程度」と言ってもいいようなものなので、アキがよろけないようにとだけ気をつけていた。
「どうしたい、って」
「アキは、どうしたい?」
 少し前から指先を何度も見ていたのを知っている。握っては吐息を零していたのを知っている。
 時計を気にしていたのを知っている。目を逸らしながら見ようともしていたのを知っている。
 ――十六時間の果ては近い。
 アキの手が、千獣の問いに僅かに力を返した。応じて指先に力を入れて握り返す。
 どうしたいかと言ってくれたら最後の一瞬まで千獣はアキの力になる。
 十六時間、どうしたいかと問うた結果の街巡り。それで充分だというのならそれでよかった。
 けれど終わりを意識し始めて表情が翳ってしまったまま、だというのに街を回るのはアキが本当に楽しめるのか。千獣をもてなす十六時間ではなくて、アキが自分の為に使う十六時間だというのに。
 千獣と過ごすことは楽しいと何かの拍子に洩らしては焦ったり照れたりしていた。
 それは最初に「それでいいのか」と問うたときと答えが変わらない何よりの証拠だ。
 だから、後は「どうしたいか」を、アキが終わりを案じているこのときに――二人で十六時間を過ごす、そこに望むことを。SECONDの自己主張がどのようになっているのか、それさえも個々であったとしても確かにあるのなら、今。

「――公園」

 ぽつ、とアキが声を落とした。ほんの少し、揺れた声。
「公園に行きましょう。朝、姉さんが来たあの公園」
「……アキが、待っていてくれた……公園、だね」
 揺らぎには気付かないふりをして千獣はアキの手を握りなおした。
 手の平をぎゅうと捕まえてぬくもりが逃げないくらいにしっかりと。
「そう!朝早くて寒くて、わたし本当に大変だったんですよ」
「頭にも、肩にも、雪が」
「積もってました。だってずっと降ってるんだもの」
「払わなきゃ……こんな風に」
「だから姉さんは自分の方がすごい状態だって気付いてください」
「……そう、かな?」
「そうです。まったくもう」
 話しながら公園を目指す。
 途中で一度足を止めて、千獣がプルタブを開けて二人で飲んだ。ホットココア。
 甘くて温かさを残した飲み物が咽喉に残ると言いつつ飲み干した。
 公園は建物がぎゅうぎゅうに並んでいた街中とは対照的に、広くて、そして静かだった。
 並ぶ木々、積もる雪に隠される街路、椅子まで雪で湿った四阿。
 夜闇に覆われた空間で白く零れて積もる雪が浮かび上がる。
 白と黒は街灯の存外と頼りない光端でぼんやりと滲んで混ざっているようでもあって。
 千獣とアキは公園の中、いっとき言葉を胸の中に仕舞い込んで並んで歩き、それから空を見上げる。
 手を引いていたのは千獣だったけれど、公園を歩く頃にはアキが先に動いて千獣はそれに倣っていた。
 つと振り返ってアキが笑った。姉さん。幾度目かの呼びかけ。千獣は頷いて笑い返す。
 立ち止まり立ち止まり、けれど歩みは止まらず、二人。
 ただただ一緒に、笑って、話して――ただ、一緒に。



 それは、ごくごく自然にまばたきを一つばかり。それだけのことだった。
 冷え込んだ朝のエルザード。そこで瞼を閉じて、開いて。
 目を開けたときには見覚えの無い街路樹と雪景色の中に千獣はいた。
 そしてその正面にアキはいた。それだけのこと。ただそれだけの。
 ささやかな、不思議の、それだけの出会いではあった。けれど。



 アキの形が崩れていくのを千獣はひたと見詰めていた。
 ほろほろと体の端から髪の先から肌の輪郭から崩れていく。
 淡く儚く、幻のようにアキが終わる。
 降り落ちる雪が滲ませて溶かしていくように、ほろりとアキが。
 白が触れて沁み込んでそうして雪にしていくように、アキは。
 ほろほろと崩れていく。アキが形を失っていく。アキが喪われる。
 千獣はアキの赤茶の瞳と視線を合わせて名前を呼んだ。
「アキ」
 ことりと首を傾ぐ少女の表情までもが儚く見える。
 けれど双眸がきらきらと瞬く風であるのに笑みを誘われて、安堵した。
 教えて、と口にした答えを予想出来たような気がしたから。
「……良かった?」
 その問いが含むものは十六時間の中の全てと言うべきか。
 終焉を前に恐れたとして、その瞬間に至ったとして、それまでの時間を思い返してみたとして。自身の望むところはどうであったかと考えてみたとして。
「姉さんったら」
 アキは千獣の問い掛けにゆるゆるとかぶりを振った。
 何を今更だとか、言わなきゃ駄目ですかだとか、そんな意味合いで。
 それから動きを止めると千獣をじっと見詰めて唇を薄く小さく開いて閉じて。

 浮かべた笑顔。そこに儚さなんて欠片もなかった。

 雪が降る。ただただ降り落ちて降り積もる。
 アキは雪と一緒に消えてしまってもういない。
 けれど千獣は閉じた瞼裏にアキの姿をきちんと残している。
 笑ったアキに千獣も微笑んだ。勿論と言ったアキに千獣は言った。
 ――それは良かった。
 何気ない遣り取り。その中にどれだけのものがあるかは当人達だけが知る。
 雪が髪を飾り頬を撫でるに任せて確かめる十六時間の記憶。そこにアキは確かに居て。
 ひやりと澄んだ空気を吸って目を開く。千獣の前にはもう誰もいない。けれど居た。
 そのまま顎を上げて天を仰ぐ。暗い底から白い泡が溢れて地上に渡る。変わらずに。変わらずに。
「……生と、死の、サイクル……」
 ぽつりと千獣の唇が開いて音を紡いだ。詩歌の如くに響く呟き。
 見上げる空は暗くて雪はひときわ浮き上がる。ほろほろと注がれる白。
 泡沫の白が溢れるこの中で十六時間。自分とアキは共に過ごして。
「ぐるぐる、廻る、その、輪の、中で……また、いつか……会う、そのとき、まで」
 仰ぐ先に見えるのは夜の空。暗い暗い空。そこから零れてやまぬ雪。
 いつかは溶け崩れて形を失うばかりのいっときの雪白は、けれど土に沁み入り巡りゆく。
 そうして人も――SECONDも、同じように巡る先がきっと。
「……バイバイ……」
 そっと天に落とした言葉は永劫の別離の為では、なくて。

 降り落ちる雪。降り積もる雪。降り注ぐ雪。
 ぬくもりにふれてひそかに消える、いっときの形。

 けれどまたいつか、そのいっときに触れる為の。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3087/千獣/女性/17歳/異界職】
【NPC/AKI/女性/--/SECOND】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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毎度ながらのギリギリお届けになります、ライター珠洲です。
LOWEとどちらにしようかと思ったのですが、仲良し女の子という想像でAKIとなりました。
色の感じも似ているならば姉妹だ姉妹!と勝手に考えてウキウキしたりもした次第です。
千獣様の思う雪の中の十六時間と重なる雰囲気があればいいと思いつつ。
御参加有難うございました。