<PCクエストノベル(2人)>
〜迷宮に残りし意志のかけら〜
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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】
【3573/フガク (ふがく) / 冒険者】
【3370/レイジュ・ウィナード (れいじゅ・うぃなーど)/異界職】
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前回フガク(ふがく)が「強王の迷宮」へと探索に向かってから、だいぶ時が経っていたが、何度見てもギルドの「強王の迷宮」に関する張り紙は張られたままだった。
危険な場所ゆえに探索者自体が減っているのだとは聞いているが、おかげで新たに仕入れられた情報はほとんどない。
常宿の「海鴨亭」にて前回使った地図を見、探索の内容を思い出す。
魔物の数やレベルを考えると、肉弾戦のみで奥まで進むのは難しいように思えた。
最低限、魔法を仕込んだ道具か何かがあればいいと思ったが、はたとあることを考えついた。
ある友人が闇の魔法を使うことが出来たはずだ。
そう思い出してから、すぐにフガクは友人の城へと足を向ける。
蝙蝠の翼を持つウィンダーのレイジュ・ウィナード(れいじゅ・うぃなーど)は、快く承知してくれ、今回同行者と相成った。
フガク:「前回行ったところは、地下2階までなんだよね。地図で言うと、ちょうどこのあたり? でも、部屋に入れなかったんだ。姿は見なかったけど、でかい魔物がいてさ」
レイジュ:「それでは、今回はその場所と、可能であればその先まで行きたいということだな?」
フガク:「そのとおり! 話が早くて助かるよ」
前回も準備に関しては相当念入りにしたつもりだったが、それでもまだ足りない物があると判断して、今回は近接する村では聖水と封印用の道具だけを購入することに決め、残りはすべて聖都エルザードで揃えていくことにした。
やはり品揃えの豊富さでは聖都にはかなわないのだ。
地図は前回使った物をそのまま使用することにし、鏡と十字架の他に、位置を確認するためのコンパスとふたり分の数日間の食糧や薬類を別途買い求めた。
数日間は潜るつもりなので、そのあたりに抜かりはない。
聖都から現地までは乗り合いの馬車を使い、今回はまっすぐに迷宮に隣接する村へと入る。
前回と同様、宿は初日のみ取り、教会へはフガクだけが向かった。
聖水を水袋に詰め、魔物を封じ込める聖句が描かれた札を買う。
今回は戦闘が伴うかも知れないことを司祭に告げると、彼はフガクの短剣を聖水で清めることを勧めた。
丹念に短剣を聖水ですすいで、フガクは宿へと戻った。
その後、再度前回自分が得た情報をレイジュに話し、そこからレイジュが考え得たことを共有してから眠りについた。
強い光が苦手なレイジュのことを考えて、翌朝は太陽が昇りきる前に迷宮へと行くことにした。
迷宮は地下にあるので、レイジュの行動は制限をされずに済みそうだ。
入り口の大扉へつながる長い長い階段を慎重に降りて、フガクはゆっくりと扉を押し開けた。
そして、敵に見つからないように松明は使わず、フガクは入りしなに【三眼兜】を装着した。
まずはフガクが、その後にレイジュが迷宮に足を踏み入れる。
すると、いきなり目の前に下の階へと続く階段が現れた。
迂回も出来そうにないし、階段の向こうに視線を投げても、そちらに空間があるようには見えない。
超音波での探査に長けたレイジュを振り返ると、彼はほんの少し肩をすくめただけだった。
四方が壁に囲まれてはいるが、その向こうには空間が広がっているはずである。
以前来た時は、そちらの方角に広間や部屋があったのだから。
だがこの迷宮は毎回ご丁寧に配置が変わる。
そして今回のような、四方が壁という奇妙な配置を持つ地図はたった一枚しかない。
丸めた羊皮紙の中から、その地図だけを取り出すと、フガクは残りを背負った皮袋にしまった。
両手に広げて地図を見てみる。
この目の前の階段を降りると、すぐに広い空間に出るようだ。
そこからはニ方に廊下が伸び、ひとつは南西で途切れている。
もうひとつは北東へと続き、そちらにさらに下へと進む階段が描かれていた。
今回の目的は、前回探索できなかった地下2階・南西部の地図の補完と、何か掘り出し物が見つからないか探すことである。
フガクはいったん、その地図を床に置いて、コンパスを取り出した。
前回の地図も隣りに広げ、ていねいに前回の南西の部屋を今回の地図で特定する。
レイジュ:「部屋はこの大きさで間違いはないのか?」
フガク:「うん、ない。だけど、そうするとこの右側部分にずいぶん大きな空白が出来るね」
レイジュ:「他の地図と照合してみたらどうだ?」
フガク:「なるほど…そうだね!」
周囲を見回しても、特に敵の気配はない。
そこでフガクとレイジュは大胆に床に地図を広げ、時にコンパスの助けを借りながら、廊下や階段の繋がりや位置を特定し始めた。
大きな空白は、他の地図を見ると廊下だったり、小さな部屋だったりした。
今回もそのどちらかである可能性は高い。
目的地は前回入りそびれた大きな南西の部屋だが、もし余裕があれば、そちらも探索したいものである。
ふたりはいったん地図を丸めて、地下へ続く階段を降りた。
地下2階は、奇妙なほど静まり返っている。
階段の位置はわかっているし、その部屋以外の情報は手元にある。
それでも慎重に慎重を重ねて、ふたりは地図の記述に従って目的地に向かった。
前回より少し広めに作られているその部屋の前で、先頭を行くフガクがレイジュを振り返った。
落ち着いた様子で、静かにうなずくレイジュを見てから、フガクがノブを回した。
おそるおそる中をのぞく。
前回と同じだった。
部屋の中央に、何かがうごめいている。
数は増えたのか減ったのか、ここからでは確認できなかった。
フガクは中に飛び込むと同時に短剣を腰から抜いた。
レイジュはその直後に部屋に入り、フガクとは反対の方向へと飛びのく。
魔物たちが一斉に咆哮をあげ、ふたりに襲いかかって来た。
その外見から判断したのだろう、レイジュの方に数多くの魔物が群れて走り寄って来る。
だが、レイジュは顔色ひとつ変えずに、軽く右手を一閃させた。
ブワッ、と宙を引き裂く音がして、形を成した空気の刃が半円状に広がりながら魔物たちに向かっていく。
衝撃波だ。
魔物たちは簡単に上半身と下半身を真っ二つにされ、重い音をたててその場にくず折れた。
床に落ちた瞬間、その身体はさらさらと砂になっていく。
同時にフガクも、聖水で清めた短剣を右へ左へと繰り出して魔物たちを牽制し、ひるんだところに「気」を正面からたたきつけた。
その隙に、腰に吊るした聖水を投げつける。
当たった魔物が、耳をつんざくような悲鳴と共に消え去った。
ふたりは、時には背中合わせに、時には反対方向に飛びすさって、魔物たちを片っ端から片付けて行った。
お互いの死角に、敵が入らないよう注意しながら戦うその姿勢は、一朝一夕の関係では到底無理である。
そうして、四半刻も戦闘を続けたところでようやく、魔物は目の前からすべて消え去ったのだった。
レイジュ:「終わったようだな…」
フガク:「…前回より増えてた気がする…」
レイジュ:「あの魔物たちは冒険者たちの成れの果てだ。ここで次々と命尽き果てた者たちが、そのまま魔物になったのだろう」
魔物たちが跡形もなくなったのを見届けてから、ふたりはゆっくりと部屋の中の探索を始めた。
古びた調度類の間を縫うように歩きながら、レイジュは寝台の陰に金属製の箱が置かれているのに気がついた。
フガクがそれに気付き、レイジュの後ろからのぞき込む。
レイジュ:「魔法も呪いもかかっていないようだ」
フガク:「俺が開けよっか?」
レイジュがうなずき、フガクがレイジュの前に出て、そっとふたを押し上げる。
フガク:「うわ!!」
中から数本の短剣が飛び出して来た。
思わず反射的によけたが、それは罠ではなかった。
レイジュは宙を舞う短剣たちに、手を差し延べる。
すると、その手の上に重なるように、短剣たちがカシャンカシャンと音をたてて乗った。
フガク:「何それ?」
レイジュ:「おそらく『踊る短剣』だろう」
フガク:「『踊る短剣』? 踊るの?」
レイジュ:「その攻撃の仕方が踊っているように見えるために、『踊る短剣』と呼ばれている。そして、製作者の意志がこめられている。それを理解できない者は攻撃され、理解できる者はその意志を尊重するように、と」
フガク:「えっと…どんな意志がこめられてるって?」
レイジュ:「『外へ』」
レイジュはていねいにその短剣たちを両手で持つと、扉を振り返った。
どうやらこの短剣たちは「外へ」出たがっているらしい。
その意図を汲んで、フガクとレイジュはいったん外に出ることにした。
元の通りの道をたどって、長い長い地上への階段を上り、外へと出る。
いつの間にか、日は西に傾いていた。
少しつらそうにその怜悧な顔をしかめたレイジュの手から、ふわりと短剣たちが浮き上がった。
短剣たちの中から、白いまるい光が生まれていく。
そのひとつひとつが、何度もフガクとレイジュの頭上をぐるぐる回り、やがてピタリと止まった。
光:『ありがとう!』
光:『ありがとう!』
光:『外に出してくれて!』
光:『これで帰れる!』
光:『ありがとう! ありがとう!』
空からとつぜん、声が降って来たかと思うと、その光たちは四方八方にきらめきながら飛散して行った。
後には、柄に見事な細工を施した短剣が5本、残ったのだった。
フガク:「結構な値打ちモンだね、これは…」
レイジュ:「そうだな…」
ふたりは今回の戦利品である、美麗極まりない短剣を見つめた。
迷宮の中にはまだまだ、不可思議な武器や防具、道具が転がっているのだろう。
それらをすべて探し出すには、時間も準備も必要だ。
フガク:「まあ、今回は準備万端だからね。明日、もう一回入れそうだけど」
レイジュ:「では、先ほどの部屋の周囲を探索して、ひとつ下の階に降りてみるか。また何かが見つかるかも知れないからな」
フガク:「了解!」
今日のところは宿に帰ることにした。
さすがにあれだけの数の魔物を相手にして、疲労がずっしりと全身にまとわりついている。
ふたりは村に向かって歩き始めた。
明日、再度迷宮に挑戦するために。
〜END〜
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