<Dream Wedding・祝福のドリームノベル>
幸せのウエディングドレス
ウエディングドレス。
それを着るのは多くの女性の憧れ。
その純白はこれからあなた色に染まるという決意。
あなたが染まったのはどんな美しい色?
「あっ、これ綺麗ですね」
結婚記念日のデートの最中、彼が足を止めたのは貸衣装屋の前。
「フィールさんが着たら似合いそうですね」
「そうかしら?」
「はい」
満面の彼の笑顔。
「結婚式でのウエディング姿はそれはそれは綺麗でしたもん。僕もう一度みたいです」
そんなことを話していると、店から店員が出てきた。
話を聞いてみると、これは幸せ呼ぶウエディングドレスというマジックアイテムらしい。
「それはすごいですね。ぜひ着てみて下さいよ」
そう彼は言う。
「うーん。わかったわ」
マジックアイテムには興味がなかったが、彼が喜ぶ顔が見たかった。
せっかくの結婚記念日。
一生に一度くらいこういうのも良いんじゃないかなと思ったのも事実だった。
彼には待っていてもらって、店員に手伝ってもらいながら着替えをする。
「変じゃないですか?」
「お綺麗ですよ。彼氏さんとはもう長いんですか?」
「か、彼氏!?いえ、結婚してます・・・・」
「あっ、そうなんですね。失礼しました。お二人ともお若いから、今日は衣装を選びにいらっしゃったのかと思ってしまいました。失礼しました」
「い、いえ」
恋人同士に見えるのか。
そんなことを思うと急に恥ずかしくなってくる。
もうずっと一緒で、恋人なんていう甘い関係は終わってしまったと思っていたから、周りからそういう関係に見えるといわれると、どうしたら良いのか分からなくなってしまう。
「・・・・はい。出来ました」
そう言って店員は姿見を持ってきてくれた。
そこにいるのは、自分ではない別の美しい誰かに見えた。
「これが、私・・・」
そう口を開くと鏡の中の女性も口を開いた。
「さあ、旦那様のところへ」
店員に手を引かれるまま彼のものとへ行く。
彼はどんな顔をするだろうか。
喜んでくれるだろうか。
そんなことばかりが頭の中をぐるぐるしていた。
「ど、どうかしら?」
彼の背中に震える声を必死に押さえ込んで声をかける。
その声に彼は振り返り、私を見た途端、真っ赤な顔になって固まった。
「ど、どうしたの?やっぱり変?」
「いえ・・・・あの・・・・すごく綺麗で、あの・・・・僕、何て言ったらいいか・・・・あの、すいません」
「喜んでくれてるの?」
「もちろんですよ!すごく喜んでます!」
「よかったわ」
喜んでくれたなら着た甲斐があった。
「結婚式前の衣装合わせを思い出しますね」
「私も、さっき店員さんに恋人同士なんですか、なんて訊かれて付き合っていた頃のことを思い出していたところよ」
「あの時も、どれも似合いすぎていて絞るのが難しかったですね」
「そうね。結婚式のときもあなたったら、緊張でがっちがちで本当にこの人で大丈夫なのかしらと思ったもの」
「そ、そうだったんですか!?」
「ええ、でも今はあなたでよかったと思っているわ」
「あっ・・・・」
彼の顔がさらに真っ赤になる。
「あなたは?」
「えっ、あっ・・・・」
「私じゃないほうがよかった?」
すると彼はぶんぶんと首を振って私の腰を抱くと
「僕は、フィールさんじゃなきゃ駄目なんです。だからずっと僕のそばにいて下さい」
「まるで誓いの言葉みたいね」
「駄目ですか?」
「全然。誓いは何度立ててもいいと思うもの」
「では、返事をいただけますか?」
「ええ、こちらこそずっとそばにおいて下さい」
「勿論」
嬉しそうに彼は笑って、私の唇にちゅっと口付けを落とした。
「誓いのキス?」
「そうですよ。いちいち訊かないで下さい。恥ずかしいんですから」
確かに、彼の顔はさっきから真っ赤。
「いいじゃない。赤くなってるあなたも可愛いわ」
「そういうフィールさんだって顔赤いですよ」
「そりゃそうよ。恥ずかしいもの。でも、それ以上に幸せだわ」
「僕だって、すごく幸せです」
「よかったわ」
「そして、これからもずっと幸せです」
「えっ?・・・・どうして?」
「だって隣にフィールさんがいるんですよ?どんなことが起きたって乗り越えられます。それに・・・・」
「それに?」
「フィールさんが隣にいて笑っていてくれれば、僕は幸せですから」
「そう」
自分の愛した人が、自分をここまで愛してくれているという事実がすごく嬉しくなった。
「勿論、フィールさんの笑顔は僕が守ります!」
「ありがとう」
彼の笑顔は私が守ろうとここから思った。
なにもかもから彼を守ろうと。
私はそっとお礼と誓いのキスを彼の唇にして、笑った。
「あの・・・・」
気がつくと店員さんがカメラを持って後ろに立っていた。
「「はっ、はい!」」
ハモる様に同時に口を着いて出た返事に店員さんはくすっと笑って
「お写真でもいかがですか?」
そういった。
「お願いします」
いつも私に相談してから物事を決める彼が、少しの間もなくそういった。
「良いですよね?」
「ええ」
少しびっくりしたが、そういう彼も素敵だと思ったし、私も今日の記念が欲しかったので、問題なく了承した。
「じゃあ撮りますよー。笑って下さーい」
― カシャ ―
ストロボの光とシャッターの落ちる音がして特別な結婚記念日は形に残った。
「これ写真立てに入れてかざりましょうか」
「いい案ですね。じゃあ綺麗なのを買って帰りましょうか」
そういいながら私達は貸衣装屋を後にした。
あのウエディングドレスが本当にマジックアイテムだったのかは分からないけれど、私達の繋がりは確実に強くなった。
それだけは事実。
その事実が私にはすごく幸せなことだと思った。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3783 / フィール・シャンブロー /女性/24歳(実年齢124歳) / 異界職】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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フィール・シャンブロー様>
はじめまして、今回執筆させていただいた川知真と申します。
今回はご発注いただきありがとうございました。
今回フィール様も旦那様も結構好きに動かさせていただきましたが、お気に召すものになれば嬉しいです。
今回はご発注本当にありがとうございました。
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