<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


+ ケイの成長日記−レナさんと一緒− +



「うんうん、こう言う事があったのよね!」


 少女・ケイは自分の日記帳を眺めながらくすくす笑う。
 ベッドに寝転がりながら日々起こった出来事を書きとめてあるそれを何度も見遣る。


 毎日毎日いろんなことがある。
 キョウの手伝いをしながらも沢山の人と関わってきた彼女。もちろん平凡な時だってあるけれど、それ以上にはちゃめちゃな出来事の方の方が多い。だから日記はいつだって活気に溢れている。


 ぺらり。
 彼女はページを捲る。
 くすくすくす。
 ベッドに転がって足をバタつかせれば、その場所には軽く埃が舞った。


「あ、懐かしい! そうよ。こう言う事もあったのよね」


 肘を付きながら日記を読む。
 そうして今現在の彼女が読み返すのは……『レナ・スウォンプ』と起こった出来事。



■■■■■



「レナさん、ケイこの服似合うかな」
「かっわいーい! じゃあ、あたしのこのワンピースドレスはどう?」
「きゃー! レナさん綺麗ですー!」


 試着室を二つ占領しているのは一人の少女と一人の女性。
 少女はピンク色のふりふりワンピースを、女性は情熱的な赤のワンピースドレスを身に纏いながら同時に試着室から出て互いを見やりながら褒め称える。店員もそんな彼女達の様子を微笑ましく見守りながら、「こちらの服もきっとお似合いですよ」などと勧めてくるものだからついつい調子に乗って試着を何度も繰り返した。
 当然似合わない物も中にはあったが、それでも自分が気に入った物はそっと横に分けその中から数点選び、所持金に見合った分だけ購入した。


「やっぱ買い物っていうのは、女の子と一緒じゃないとねー。楽しむわよー!」
「次はアクセサリーとかケイはみたいですぅー!」
「じゃあこっちにマジックアイテムも売ってる装飾店があるからそこに行きましょ」
「ケイはレナさんについていきます! マジックアイテムかぁ。キョウにぃさまに買って帰ったら喜んでもらえるかなぁ……」


 既に手には衣服が入った袋が握られており、二人はそのままレナの案内のもと装飾店へと移動した。そこは表通りより少し外れた場所にあったが、むしろその雰囲気が良い。
 「いらっしゃい」と声をかけてくれたのは外見はとても若い十五歳ほどの少女。しかしその実年齢は……それはこの世界では考えてはいけない話である。


「わー、この赤薔薇のチョーカー綺麗じゃないの。どうしよう。買っちゃおうかなぁ〜?」
「ケイはこっちの指輪が気になるのですよ。はっ……! キョウにぃさまの指のサイズを知らない」
「あらら、キョウっていうのはケイのお兄さんよね」
「はい! 血は繋がっていませんから兄弟じゃないですけど、大事なにぃさまです!」
「ふふ、女から男に贈る指輪……良いじゃない、良いじゃない! 今度サイズ測ってきましょ。どういう指輪が良いのかだけチェック付けておけばいいんだから」
「はーい! ところでレナさんはそのチョーカーが気になるんですよね? 買うんですか?」
「そうなのよー! これってさっき買った黒ドレスシャツと絶対に似合うと思うの! でもここで買ったらまたお金が貯まらない悩みが出来ちゃう……っ」
「でも欲しい、と」
「ほんっと可愛いアクセサリーとかって罪よねぇ。あたしの元に来たがるんだから――というわけで、これちょうだいー!」
「結局購入しちゃうのですね」


 ケイは贈り物用に指輪をチェックしつつ、早々に赤薔薇のチョーカーを購入しているレナを微笑ましく見守る。でも彼女が手にしていたチョーカーは確かにレナの首を綺麗に飾り付けそうだとケイも考え、止めには入らない。
 お洒落好きな彼女はいつだって金銭に悩まされているけれど、それでも自分に正直なのだ。欲しいものは欲しい。それは抗えない欲求。ただもちろん興味の無い分野では財布の紐は固い――それだけが唯一の救いと言えよう。


 店を出てまた二人で表通りを歩き始める。
 途中また可愛い衣服を扱っている衣料店を見つけ、二人で突撃し新たに服を購入して袋を増やすなど本日の買い物は絶好調!
 ほくほくとした気分で二人は各自購入した衣服や小物、アクセサリーなどを手に満面の笑顔を浮かべている。
 だが元気なのは元気なのだが、やはり荷物が増えた事もあり肉体は疲れ始める。特にケイは外見だけなら十歳の子供である。それを見て取ったレナはカフェへと彼女を誘い、涼しい店内で二人はティータイムを過ごす事にした。


「はー、結構買っちゃったかなぁ。でも服って買っても買ってもすぐにまた目を惹くデザインのものが出るからお金が幾らあっても足りなーい!」
「レナさん、ケイの倍は買ってますよね。服だけじゃなくって小物もアクセサリーも」
「だってあたしに似合う服やアクセサリーって『着て』とか『身に着けて』って言ってるみたいなんですもの。くーっ、本当に今日購入した服を着て出歩くのが楽しみでたまんないわぁ!」
「でもレナさんって本当自分に似合うものだけ購入してるからすごいなぁってケイは思うのですよ」


 二人で冷たい飲み物を頼みながら本日の戦利品をがっつりと見やり、楽しげな会話をする。レナはそれはもうお洒落に関しては手は抜かず、むしろ「どこどこの店は品揃えが良い」「あそこの店はちょっと高めかな」などと教えてくれ、ケイはそれを参考にふむふむと頷いていた。
 ふとケイは自分の買った服の袋をそっと開き、中に納まっているピンクのワンピースを見やる。


「キョウにぃさま、これ見て可愛いって言ってくれるかな」
「ケイの思い人ってそんなにつれない人?」
「つれないっていうか、やっぱり子供として見てもらえていないっていう感じです……。ケイ頑張ったら大人の姿にもなれるんですけど、それでもやっぱりまだまだ中身が子供っぽいから……」
「あー、子供扱いは嫌よねぇ。まずは相手に自分が『女』だって認識させなきゃ! まずはそこからよ!」
「そういうレナさんこそどうなんですか?」
「う…………ま、まぁ、そ、それなりの反応なんじゃなーい?」
「つまり、レナさんの思い人さんもつれない人なんですね」
「――わーん、ケイー! ちょっとあたしの愚痴を聞いてよ、ねぇ!」
「はい、もちろん聞きますよー♪」


 レナの思い人。
 彼女が言うに「頑張ってお洒落しても全くつれない」という話から始まり、性格はどうだとか、ここは直して欲しいけどあそこは魅力的だとか、でもやっぱり「つれない」のも良いだとかそれはもう怒涛の勢いで愚痴が唇から飛び出てくる。
 ケイはというとそんなレナの言葉を笑顔で受け止めながらジュースを飲んでいた。だって彼女には分かっているのだ。
 なんだかんだ言っても最終的には「それでも好き」に落ち着くのだという事に。


「あー、本当アイツにはもっとあたしのこと認識させなきゃ駄目だわ!」
「でもレナさんの傍にいてくれるんですから大丈夫だとケイは思いますけどねぇ」
「うー……そうかな。お洒落してもそんなに対して言葉かけてくれないとかちょっと、うん、お洒落好きとしては厳しいんだけど……あー! もうどうしよう!!」


 わぁっとレナは自分の顔を両手で覆い、テーブルの上に伏せる。
 でもケイは笑みを崩す事無く彼女を見守り続けた。やがてレナは身体を起こし、そして肘をテーブルの上に付きながら自分の頼んだジュースの中に浮かんでいる氷をストローで突きながら、ため息を一つついた。
 そして。


「でも、それでも好きなのよねぇ」
「ケイもキョウにぃさまがつれなくても『それでも好き』なのですよ」


 ほら、彼女はやっぱり言った。
 『それでも好き』は魔法の言葉。愚痴をも粉砕してくれる不思議な文章。
 この恋心は止められないから、どうしてもその言葉一つで全てが片付いてしまう。


「お互いがんばりましょ!」
「振り向かせる人がいる限りは頑張るのですよ!」


 恋する女は美しい……というより、この二人の場合はエネルギーに溢れている。
 思い人が自分の事をもっとより深く認識してくれる事を夢見ながら、まだまだ二人の買い物は続くのであった。







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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3428 / レナ・スウォンプ / 女性 / 20歳(実年齢20歳) / 異界職 / 異界人】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、発注有難うございました!
 今回はうちのNPCと買い物ということでこんな感じとなりましたがどうでしょうか!!

 また機会がございましたら遊んでやってくださいませ!
 レナ様の恋も応援しております^^

 ではでは失礼いたします。