<PCシチュエーションノベル(ツイン)>



――その気持ちを知るために――

「……結婚って、どんな気持ちなんだろう?」
 ロザーリア・アレッサンドリは、ぽつりと疑問を言葉にする。
「突然どうしたんですか?」
 ロザリーが脈絡なく呟いた言葉に、アリサ・シルヴァンティエは少し驚いたように言葉を返した。
「書いてる小説で結婚式のシーンがあるんだけど、花嫁の気持ちが分からないんだよ」
「花嫁の気持ち……」
 アリサが言葉を繰り返すと、ロザリーは小さなため息を吐きながら出された紅茶を飲む。
「結婚式がどんなものかってのは分かるし、想像から書く事は出来るよ」
「……」
「けど、花嫁の気持ち、結婚式に臨む人たちがどんな気持ちなのか、それが分からない。アリサは神官でもあるんだし、花嫁がどんな気持ちか分かるんじゃない?」
 ロザリーが問い掛けると、アリサは困ったような表情を浮かべる。
「私は神官ではありますけど、結婚の経験はありませんし…ロザリーさんの知りたい事をお教えする事は出来ませんけど……」
「……アリサでも分かんないかー、どうしても知りたいわけじゃないけど……分からないってなると、余計に知りたくなっちゃうのは何でだろうね」
 ロザリーが苦笑気味に呟くと「良い方法がありますよ」と、アリサは手をパンと叩きながら
「ちょうど教会でイベントを開催中ですし、試しに形だけでも経験してみませんか?」
「形だけでも?」
 アリサの言葉に、ロザリーは首を傾げながら聞き返す。
「ウェディングドレスを着て、メイクもして、そうすれば少しは分かるかもしれませんよ」
「……形から入る、かぁ。でも、あたしが着てもいいの?」
「構いませんよ、時期的にドレスは多く用意してありますし試着イベントもしてますから」
 アリサはにっこりと微笑みながら答え、ロザリーはせっかくの申し出を受ける事にした。

※※※

「そういえば、突然訪ねて来たあたしが言うのもなんだけど、いいの?」
「……いいのって、何がですか?」
 ロザリーの髪を結いながら、アリサはきょとんとした表情で言葉を返す。
「他にも教会に訪ねてくる人がいるんじゃない? あたしにかかりっきりで大丈夫なのかなって思っただけ」
「心配はいりませんよ。今日は来客の予定はありませんから。さ、メイクをしますから目を閉じていて下さいね」
 アリサの言葉に頷き、ロザリーは目を閉じる。
 メイクをするのは初めてではないけど、これからウェディングドレスを着るかと思うと、少しだけ胸がドキドキするような感じだった。
「ロザリーさんは素材がいいから、私も腕が鳴りますよ」
 アリサの言葉を照れ臭く感じながら、まだチークもしていない頬が赤く染まる。
(……花嫁の気持ちって、こういう感じなのかな?)
 誰かにメイクをしてもらって、どんな仕上がりになるかドキドキして……誰かに見てもらいたいって気持ちは分からないけど、きっと今のあたしに近い感情なんだと思う。
(ふーん、悪くはないかな?)

※※※

「ふふっ、出来ましたよ」
 アリサはメイク道具を片づけながら、ロザリーに言葉を投げかける。
 今まで多くの人にメイクを施してきたけど、今回ロザリーに行ったメイクが一番の出来栄えかもしれない、とアリサは心の中で呟く。
「……メイク1つで随分変わるんだね」
 自分でするメイクとは違った雰囲気になっており、ロザリーは少しだけ驚く。
「ロザリーさんは、ちょっと簡単に済ませてしまうところがありますし……ちゃんと時間を掛けてメイクをすれば、これくらいにはなりますよ」
 けど、とアリサが言葉を続ける。
「ロザリーさんは美人さんですから、私もいつも以上にメイクを頑張った気はしますね」
 にこにこ、と微笑みながら呟く言葉に、ロザリーは少しはにかんだ。
「次はウェディングドレスですね、こちらに来て下さい」

※※※

「わ、色んな種類のウェディングドレスがあるんだねぇ……」
 アリサに案内された部屋には多くのウェディングドレスが並んでいて、ロザリーはその煌びやかなドレスに心が高揚していくのが分かる。
「ウェディングドレスと一言で言っても、色々な種類があるんですよ。それぞれが気に入るドレスを探すため、試着イベントも行っているんですよ」
「へぇ、ドレスが着たいわけじゃなくて、気に入ったドレスじゃないと駄目なんだね」
「そうですよ。結婚式は一生に一度、生涯添い遂げる人と行う大切な儀式。どんな事であっても妥協は許されないんですよ」
「ふぅん……」
 アリサの説明を聞き、ロザリーはとあるウェディングドレスの前に立った。
「ロザリーさんは、そのウェディングドレスが気に入ったんですか?」
「うん、何か綺麗だなーって。これ、着ても大丈夫?」
「いいですよ、それじゃそのドレスに合うティアラやブーケを持ってきますね」
 アリサは嬉しそうに呟くと、そのまま奥の部屋に向かって行く。
 最初はロザリーに協力する形だったが、なんだかんだ言ってアリサも楽しそうだった。

※※※

「わぁ、すごく綺麗ですよ! ロザリーさん!」
 ウェディングドレスを着たロザリーを見ながら、アリサが手を叩いて喜んでいる。
 ロザリーは物語から生まれたせいもあり、結婚への気持ちは今一つだけど、結婚を願う気持ちは知っている。
 ただ結婚式に臨む気持ち、花嫁の気持ちが分からなかっただけ。
「どうですか? 少しはロザリーさんの疑問に答える事が出来ましたか?」
「うん、はっきりと分かったわけじゃないけど…何となく感じる事は出来た気がする」
 アリサの言葉に頷きながらロザリーが答える。
(……結婚式のシーン、書きなおそう。多分今なら、前に書いたもの以上のものが書ける)
 鏡で自分のウェディングドレス姿を見つめながら、ロザリーは心の中で呟いていた。
「ロザリーさんがドレスアップした姿、魔法の絵筆で描き残してありますからね」
「アリサ、今日はありがとね。何か色々と勉強になった気がするよ」
「ふふ、どういたしまして」


――登場人物――

3827/ロザーリア・アレッサンドリ/21歳(実年齢2歳)/女性/異界職
3826/アリサ・シルヴァンティエ/24歳(実年齢48歳)/女性/異界職

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ロザーリア・アレッサンドリ様
アリサ・シルヴァンティエ様

初めまして。
今回執筆させて頂きました水貴透子と申します。
今回はご発注頂き、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂けるものに仕上がっていれば幸いです。

それでは、またご機会がありましたら宜しくお願い致します。

2014/7/8