<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>
【炎舞ノ抄 -抄ノ玖-】炎、舞い
聖都エルザードの、街の中に。
嫌な予感がする、火の手が見えて。
……何で、今なんだよ、って。
思ってたこと、考えてたことと、今目の前で起きてることが違ってるみたいな……何かが思い通りにならなかったみたいな、そんな感じの、秋白の呟きが聞こえて。
龍樹はその呟きすらも聞いてる余裕がないみたいに、何だか頭が全部真っ白になったみたいな感じで……火の手のあがった方を見て、ほんの少しの間ぼうっとしてたかと思ったら、弾かれたみたいに、火の手が見えた方に真っ先に駆け出していて。
それを見て、秋白も我に返ったみたいに、龍樹を追うようにして、駆けて行き。
蓮聖も、何はなくともって感じで、地面を蹴って――行こうとして。
でも蓮聖は、一旦駆け出そうとして――でも、龍樹みたいに本当に駆け出す前に立ち止まって、何か、物問いたげに私を振り返って、見て。
私は。
……行く。って。
そう言った。
当たり前みたいに、口に出た。
蓮聖は、頷いて。
それから、時間が惜しいって感じで、龍樹と秋白を追うようにして、駆けて行く。
私も、一緒に、駆けて行く。
……私も。蓮聖も。龍樹も。秋白も。
皆、火の手があがったその場所に、向かうことをした。
駆けてる途中で、思い出したみたいに秋白と龍樹の姿が次々といきなり消えて。でもただ消えて居なくなったんじゃないとはすぐにわかって。……たぶん、走るんじゃなくて、もっと早く目的の場所に着ける別の移動手段――瞬間移動みたいなことができる能力――を思い出したんじゃないかと思う。……逆を言うなら、駆け出す前、初めからその移動手段を取れなかった時点で、秋白も、龍樹も、かなり気が動転していたんだと、思う。
蓮聖だけはそうやって消えなくて、でも遅いわけじゃなくて、獣の脚を使って駆けている私と同じか――ひょっとすると、私より速いくらいで、どんどんとエルザードにまで戻って、火の手があがった場所にまで、近づく。私はそんな蓮聖に言いたいこと――話したいことができたのだけれど、今はたぶん、その余裕がなくて。
また、炉の中の金属みたいな色を帯びた灼熱の炎が、渦巻くようにして立ちのぼった。今度は私のいるところのすぐ近く――近い、と感じただけで、ぞっとする。でも、そこを目指して、そちらに向かって駆けるのは止めない――止められない。時々、ぱん、と爆ぜるような不穏な音がする。物が焼ける臭い。立ち込め始めている煙。まだ、エルザードの騎士団らしい人とかは、見当たらない。そこまで手が回っていないのかもしれない。いち早く気づいたみたいな、遠巻きに見ている人たちがちらほら居る。何があったのかって貌で――火事だ、とか、何かが爆発した、って警告を発してる人も居た。……でもまだ、本当には、何が起きているのかわからないままでいるような、気がした。危ないから、逃げて、と思う。
火なのは、燃えてるのは確かだけど、これは、ただの火事じゃない。
気だけが急くままに、やっと、目標にした――火の手があがった場所にまで辿り着く。
秋白も龍樹も、案の定、先に居た。
……着いたところは、白山羊亭だった。
■
……白山羊亭があったはずの、場所だった。
でも、お店の壁が、半分――ううん、半分以上、壊れて、崩れてて。燃えてる、だけじゃなくて。壊されてもいるんだと、思った。舞が居た。その後ろに、庇われるみたいな位置に、何だか妙に疲れてる感じの慎十郎と……それと、ルディアとか白山羊亭の、お店の人が居た。
朱夏が居た。たぶんお店のどこかだったんだろう瓦礫を間に挟んで、ぎりぎりみたいな、真剣な貌をしてる――何か、覚悟を決めてるんじゃないかって感じの舞と向き合って、対峙するみたいにして。
炉の中の金属みたいな灼熱の炎は、朱夏の纏っているものだった。初めに見た時思った通りに、龍樹の使う、土色の炎みたいな、感じだった。……朱夏は蓮聖の娘だったっけ。何か納得した。顔立ちとかだけじゃなくて、たぶん、よく似てるんだと、思う。
朱夏の目の感じが、何だか変だった。どこか、虚ろな、でも後がないって、もうどうしようもないって、今にも叫び出しそうな、切羽詰まってるみたいにも見える感じで。……何だか、ぞっとした。直感的に、この炎の力を、扱い切れてないんじゃないかって思った。そういう意味で、『獄炎の魔性』の時の龍樹より、危ないような気もした。そうじゃなくても、何だか、飛び抜けて怖い力、だと思えるのに。私の中にある本能みたいなものが、今すぐにでもここから逃げ出したいって、叫んでる――でも、その叫びに従う気には、どうしてもなれなくて。
ここにいなきゃいけないって、放り出すなんてできないって、当たり前みたいに強く思って。実際にそうしている自分がいる。
先に着いたんだろう龍樹の姿があったのは、そんな舞と朱夏の間だった。朱夏に向かう形で、舞の前に出るみたいにしてそこに割って入ってる。朱夏から舞を庇うみたいにしてると、思った。それで、土色の炎も、龍樹のその身を包むようにして、燻るみたいにゆらりとあがっていた。……すぐに戦える態勢だと、思った。
「龍樹、さん」
信じられない、みたいな、でも、ほっとしたような、張りつめてたものがちょっとだけゆるんだみたいな、そんな複雑な舞の声がした。
今までずっとずっと姿を消してた龍樹が、この局面でいきなり、自分の前に来たから、なんだろう。
龍樹は、少しだけそんな舞の様子を――たぶん、気づかいながら、でも。
「…朱夏」
一度も目を離すことをしないで、話しかけた先は、朱夏だった。でも、他に何を言うべきなのか出て来ないみたいで、名前しか呼べないみたいな――そんな、感じで。
朱夏の唇が、歪むのが見えた。
「……やはり龍樹様は、そうする事を選ぶのですよね」
私は、疾うに死んでいる訳ですから――諦めたみたいにそう言い切ると同時に、また、弾けるみたいにして灼熱の炎がいきなり膨れあがり、その場で渦巻いた。その炎に呼応するみたいにして――荒れ狂うその炎を受け止めて巻き込むようにして、土色の炎も燃えあがった。
瞬間的に、視覚が奪われる。でもそのぶつかり合いは、長くは続かなくて。すごい光でいきなり視覚が奪われたのには焦って、これでやられたら何にもならないって思って、私は頑張って防御する形に構えてた。けど、視覚が戻った時――渦巻いた二色の炎が幾らか収まった時には、何事もなかったみたいにそれまで通りに佇んでいた朱夏と、何だか余裕がないみたいな……少し圧されてたみたいな龍樹の姿があった。初めに居た位置からは動いていないけど――ううん、龍樹の方は、地面を踏み締める足を置いている位置からして、少し、退がってたのかもしれない。……たぶん、龍樹が今の朱夏の炎を、止めた。
でも、これまでに私が見た龍樹と、違う。今までの龍樹だったら、まず先に躍りかかって攻撃を仕掛けてる。防ぐことなんか、ほとんどなかったはず。……相手が朱夏だから、舞がそこに居るから。……だから、動けない?
「……何で今なんだよ」
秋白の声がした。
「どうして今、『灼熱の朱鳥』が『起きて』るんだよ!」
蓮聖も龍樹も、居なかった場所で。勝手に。……秋白は咎めるみたいにして、朱夏に向かってそう叫ぶ。何のことか、私には、わからない。でも、言われた朱夏の方は、何のことだか、わかってるみたいで。……何だろう。周りで炎が荒れ狂ってるのが嘘みたいに、すごく静かに、秋白に微笑って見せていた。
「あなたが、秋白なのですね。でしたら……ご自分の胸にお伺い下さいな?」
「…な」
「あなたの心が揺らいだからこそ、私は私の思うまま、動けるようになりました。あなたは父上様や龍樹様の前で、より効き目があるように私を『起こし』て、苛む道具に使うつもりだったのでしょうが」
それは、私は『今はあなたの一部』かもしれません。
でも、私は私なのですよ。
あなたの思惑通りにはなりません。
「莫迦っ、何言ってるかわかってるのかっ」
「無論。父上様や龍樹様の足枷になるようでしたら、私は何時なりともこの身を捨てますよ」
あなたの手を離れたら、御し切れない事は承知の上です。
それこそ、遠き彼方での『獄炎の魔性』のようになろうとも。
……朱夏は、当たり前みたいに、そんな風に言う。
「舞さんと慎十郎さんの力でもこの『灼熱の朱鳥』を凌げるのでしょう。ならば龍樹様の来て下さった今、もう憂いはありません」
「……朱夏、何を」
「よい方を見付けましたね。舞さんの方が、私などより余程いい。私とは違うから」
人、だから。
……あまりにあっさりと、そう、続けられて。
「あの時。わかったのではありませんか。私の事を。『獄炎の魔性』に身を任せたは――私への贖いのつもりもおありだったのでは」
「――」
朱夏に、そう言われて。
龍樹は――何も言えなくなったみたいにして、止まっていた。構えていたのも解きかけてて、何だか、棒立ちになったみたいな感じがした。
灼熱の炎が、また、不穏に揺らめき、膨らむ――何となく、朱夏の感情に煽られているのかもしれないと思った。龍樹はまだ、戻らない。……そのままじゃだめ、と思う。龍樹さん、って叫びながら、舞が龍樹を押し退けるようにして前に出た。それで、大きく腕を振るう――指二本を揃えて、中空を示すみたいにして勢いよく大きく弧を描いて。その動きに沿って、また違った色の光が――炎がざあっと舐めるようにして生み出された。……さっき、龍樹の土色の炎がしたみたいに、何らかの魔法的な力で朱夏の灼熱の炎を防ぐ力を使おうとしたのかもしれない。それで、舞が、今の朱夏の前に立てていたってことなのかも。
けど。
今のじゃ、少し遅い、と思った。舞の反応より、朱夏の炎が来る方が早い。考えるより先に、私は自分の身を覆う呪符を引き剥がしていた。全て剥がして捨てるつもりで。剥がし切るのももどかしい感じで。剥がした側から、私の中の獣や魔が荒れ狂う――それだけ、私の中にある強い力が表に出て来ている。そのことだけ確かめて。特に、火に強い魔獣の力を使うことを努める――でも、攻撃は絶対にしないで。ただ、防ぎ切るって強く思いつつ、私は舞と龍樹の前、確り自分を庇う形に――腕を顔と胸の前で構えて、朱夏の炎の前に飛び出した。
ちゃんと、舞より早く前に出られる。
熱い、と思った。
……思う余裕があった。
エルザードの外から立ちのぼる炎を見た時、無理かもしれない、って思いはしたけど、本当に炎に炙られてみて、あ、大丈夫だ、とわかる。……少し、ほっとした。これなら、防げる。私で、止めていられるから。……狙うなら、私だけを。他は、狙わせない。
じわじわと痛くなるのが、体がどんどん焼けていくのがわかるけど、一拍遅れてすぐに自力で治せているともわかった。……勢いのある強い炎だから、治すより焼けてしまう方が、少し早い気もするけれど。でも、これならまだ、何とかなる。ちゃんと、立って、動いていられる。
灼熱の炎が、少し、退いた。
少し、びっくりしたみたいな、朱夏の貌が私を見ている。千獣さん――と舞の声がした。声からして、そちらも無事だとわかった。見たら、龍樹もぎりぎりで戻っていたみたいで、舞を庇うみたいに連れて、飛び退っていた。……良かった、と思う。
少しだけど朱夏の炎が退いたから、口を開く余裕も、できた。
「朱夏、手を汚しちゃ、だめ」
「…あなたは」
「私が、できるだけ、止めるから」
朱夏は、何だか、こうしてるのが本意じゃないみたいな、感じがした。舞と、龍樹と話してて、秋白にも、自分の意志だって言ってはいるけど、舞と慎十郎でしのげるとか、龍樹が来たからとか、何だか、止めてもらえることを前提にしたい、みたいな言い方に、感じたから。
だから、私も、言葉で、止めるって、ちゃんと言う。
みんなにも、そうして欲しいから。……だから、まず、自分から。
……目の前にいる、朱夏にだけじゃなくて。
さっきの、続き。
さっき、蓮聖が、言ったこと。
私の心に刺さって抜けない、どこか、祈りみたいな、望みを聞いてしまったなら。
話したい事が、ある。
やっと、話せる。
「蓮聖、何も話さないの、だめ。人として、生きたい、なら、もっと、人を信じなきゃ、だめ」
やっぱり私には、蓮聖の望みを、罪とは言えない。
でも、過ちは犯している。
……何も話さないこと。どんなに誰かのためだって言い訳したって、話さないってことは、信じていないってことだから。
「龍樹も、朱夏も、秋白も。みんな、もっと、言葉を、交わす。ちゃんと、話し合って、考えて」
私にはわからないことだから。
わかってるひとが、わかってることを、ちゃんと話して、わかってないひとにも、聞かせて。
それで、どうしたらいいかを、ちゃんと、考えて。
「蓮聖は、秋白と、向き合う。私は、あなたたちの、理は、わからない、けど、でも」
ちゃんと話ができなければ、どうしようもないんだってことくらいは、わかる。
秋白の言っていた『特別な資格』が何かもわからない。でも、二人がちゃんと生きられるなら、私の何をどう使ってもいい。
代わりが要るなら、なる。
「秋白も。秋白の優しい人は、それでも、秋白を、受け入れて、くれると、思う。でも」
今やっていることは、その人が嬉しいと思うことじゃないと思う。
その人とちゃんと生きられるようになるなら、私をどう使ってもいい。蓮聖に怒るなら怒ってもいい。
でも、このやり方は、だめ。
「…千獣さん」
「朱夏も、話したいこと、ある?」
「…私は…」
「朱夏」
蓮聖の声。
どこか苦しそうな辛そうな表情のままで、朱夏の名を呼ぶ。朱夏の目がそんな蓮聖に向く。
そして。
「『私』を見ては、下さいませんか」
「それは…」
「『私』は死んだ『私』とは違うのかもしれません。ですが、なら、『私』は何ですか」
問う声と一緒に、また、灼熱の炎がぶわっと膨らむ――膨らんだ炎の圧が舐める先を見定めて、そちらに飛び込み、盾になる。……今度の防御にはさっきとは違う魔獣の前肢を使った。さっきまでの腕――前脚は焼かれ続けて組織が壊され過ぎたから、治るのに少し時間がかかっている。
……盾にと飛び込んだ先は、今度は蓮聖の前。
炎の勢いは、すぐには、退かない。
狂ったみたいに舞う炎と共に、朱夏の言葉が続く。
「…『私』は『何』かを考えました。父上様と緋桜の娘――あってはならぬものと見做された、その魂の残りかす。何故『私』を生んだのですか。それが無ければ何も始まらなかった。龍樹様も――」
初めから、『私』と『同じもの』になろうとなどしなかった。
今にも泣き出しそうな貌で、朱夏はそう続けて。
……灼熱の炎の勢いが、また、増した。
■
燃え盛る炎熱を受け止めている中、どこからか、現実味の薄い、遠い声が聞こえて来た気がした。……誰も汝を認めぬのならば、不死鳥の名に於いて汝を認め、茨の夢へと導こう。炎の内より何度でも甦るが我が印。生と死の狭間に惑う者、汝の守護を担い、汝の心に応えよう。……そんな風に、何だか、元々居る場所も、考え方も、全然違うみたいな、声。
何となく、聖獣かな、って気が、した。でも私の守護聖獣とは、違う気がした。
なら、朱夏の……かな、って。
そう思ったら。
そうだ、って、頷かれた気がした。
それから。
汝は朱き夏を認めるか? って。
問われた気がした。
……問われたことが変な気がした。
だって、朱夏は、初めから、ちゃんと、ここにいるから。
認めるも認めないも、ない。
当たり前みたいにそう思ったら。
……炎が私の体を焼く速さが、何だか、遅くなった気がした。
■
「ちょっとっ、黙って聞いてれば、龍樹さんも蓮聖様も…秋白って子も、なんでここまで千獣さんに言わせちゃってるんだよ! あたしもどうやったらいいのかとかはよくわからないけど、これ、本来なら少なくとも自分たちで何とかしなきゃならない筋合いのことだよねっ!? いくら何でも千獣さんにそこまで頼るなんてだめでしょっ!?」
怒鳴るみたいな、舞の声がした。
その時になって初めて、なぜか、私を焼いていた炎の勢いも、弱まって――すぅって消え始めていることに気がついて。
あれ? と思った。
「……千獣の姐さんに先に言われっちまったが。おれだってどう使って貰ったって構わんぜ。元々そのつもりでソーンに来てるんだ。まぁ、ちィとおれらが思ってたのたァ向きが違うようだが。だが全部事を収める為にゃ、まとめどころは同じなんだろ」
慎十郎の声もした。
なんでかわからないけど――怪我とかしてる訳じゃなさそうだけど、私が合流した時にはもうすごく疲れた様子でいて……今は、瓦礫に寄りかかって座り込んでいる。
今、口を開かれて初めて気がついたみたいに、朱夏がそれを見て。え、ってびっくりしたみたいな声をあげていた。それまでびっくりした貌は時々見せてても、声まではあげてなかったのに。なのに、まさか、って口走ってまでいて。慎十郎が自分を見ての朱夏のその……大き過ぎる気がする反応に何だか妙な貌してて。……その時にはなぜか、朱夏が纏う炎はもう、ほとんどなくなってて。
何だろうって思う。思うけど、それより。
そんな事言ったって、もうどうしようもないんだよ! って、叫ぶ秋白の声がした。
話して事が片付くようなら……初めから殺す事を選びなどしませんよ、って、厳しい龍樹の声がした。
二人のそんな言い分を聞いて、私は少し、悲しくなる。
でも、今は、二人は牙じゃなくて、ちゃんと言葉をぶつけてた。それだけでも、これまでと違うと思う。人の気持ちとか、考え方のことで、答えが一つにしかならないことなんて、ない、と思うから……だから、本当に別のやり方は選べないのかなって、秋白にも、龍樹にも、まっすぐ聞く。
私も、もっと考えるから。
と。
違うんだ、と全部否定するみたいな、苦しそうな蓮聖の声がした。
みんなの視線がそこに集まる。
蓮聖は、ゆっくりと頭を振っていた。
「――…秋白。お前はそもそも『私の代わり』になどされていない。『世界』に、代わりにお前を選び直したと『仮に見做されていた』だけだ。――…龍樹。秋白を殺しても、お前の望むように事が変わりはしない。ただ、朱夏を『もう一度死なせる』事になるだけだ。秋白は私を脅かすものじゃない。脅かされていたのは秋白だ」
え? と思う。
「どちらもただの勘違い。だが勘違いをさせ惑わせたのは結局私。私が『生きた』揺り戻しで、『世界』が歪んだ、それだけだ。…考えてもみろ。『世界』は一人の勝手な意志でどうこう形を変えはしない。幾ら望んだとてわざわざ身代わりなど立ててくれる程甘くは無い。秋白。龍樹。二人とも――いや、私があの緋桜の花精に惹かれ、生み出した朱夏も同じか。皆、私に振り回されただけだ」
……たぶん、全部引っ繰り返るみたいな話なんだとは、思う。
蓮聖の話した内容。また、いきなりの話で、よくわからないことが多かった。でも……蓮聖の言う、『世界』って、何だろう。私たちのいるここで言う、ソーン世界自体、みたいなことなのか、それとも、何かのたとえなのか。
わからないけど、たぶん。
それが、蓮聖を縛っているものの大元にあるんじゃないかって、気がした。
【灼熱の朱鳥、収束(成功)】
××××××××
登場人物紹介
××××××××
■視点PC
■3087/千獣(せんじゅ)
女/17歳(実年齢999歳)/獣使い
■NPC
■朱夏
■舞
■夜霧・慎十郎
■佐々木・龍樹
■秋白
■風間・蓮聖
(名前のみ)
□ルディア・カナーズ
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