<PCシチュエーションノベル(ツイン)>
聖女堕印 ―黒蝶の甘毒―
黒髪の聖女が一つの想い。いや、祈りを胸に床に就く。
それは、背徳。神への裏切り。
けれど彼女、アリサ・シルヴァンティエ(3826)はそのことに気が付かない。
そのまま、夜の闇に溶ける様に眠りに落ちていく。
彼女が目を覚ますと、いつもの聖堂。
しかし、そこに祀られている女性像は、黒き月光の蝶アルテミシア(3869)の姿へ、豊穣をもたらす日光を思わせる温かい雰囲気だった空間は、脳を溶かすような蠱惑的で背徳的な雰囲気へ。月の狂気と言う言葉を体現したかのような空間へと変わっていた。
「アルテミシア様……」
祈りながら唇から零れた恍惚としたその呟きは昼間の物腰の柔らかな聖女のそれでも、大の男が縮こまる程の厳しさを持った魔法医師のそれでもなかった。
「どうしたの?アリサ」
いつの間に背後にいたのか、アルテミシアの細く長い指がアリサの髪をすきながら首筋に触れている唇がそのまま動いた。
「あぁ……アルテミシア様。私今祈っていました。アルテミシア様に全てを、私の全てを捧げたいと。夢ではなく現実で愛されたいと」
生まれて初めて恋する相手に告白する少女のように、芽生えた初めての感覚に動揺する初夜の生娘の様にその声は恥じらうように震えながらも甘美な響きを持っていた。その声、言葉からすべて真実だろうとアルテミシアは確信した。首筋に這わされた唇の笑みが深くなる。
「いけない子。でも仕方ないわよね。誰も貴女を愛さないんだもの」
アリサの表情が曇り、視線が床へと落ちていく。その表情にアルテミシアは目を細めた。勿論アリサには見えていない。首筋から耳朶へと唇を移しながらアルテミシアは指が鳴らされる。
すると二人の前に黒縁の姿見が現れた。
「顔を上げて鏡を見なさい」
アルテミシアの声が、唇の動きがアリサの耳を侵していく。その声の甘さに、唇から伝わる熱に浮かされる様にアリサが顔を上げる。
そこに映し出されているのは2人の女性。
黒蝶羽の漆黒のドレスを着たアルテミシアと黒紫の薔薇を模したドレス。メイクも髪型も、香さえアルテミシアに染められた妖艶なアリサの姿だった。
「見て、アリサ。こんなに美しくなれるの。こんなに素敵なアリサを人は敬遠し、助けてくれるはずの、守ってくれるはずの親までもが捨てた。考えなさい。思い出しなさい。今の両親もいつも治療に来る男たちもどんな目でみているのか。知っているでしょう?知っていたでしょう?それに、何度も命だって狙われた。アリサの神様はどうしてそんな酷い仕打ちをするのか分る?」
「私が……混血……だから、です。アルテミシア様」
その声に、表情には明らかな怒りと憎悪が見える。
「そう、でもアリサは見て見ぬふりをした。気が付かない振りをして優しくしたわよね。でも、何も変わらなかった。もう無理しなくていいわ。アリサを不幸にする奴らは先に不幸にすればいいのよ。財を巻き上げ、その財でもっと綺麗に一緒に愛し合いましょう」
そうすれば、奴らは何も出来なくなる。と最後に耳元で囁かれた言葉にアリサは陥落した。
「アルテミシア様の様に……美しく……アルテミシア様と愛し合える……?」
夢の中にいるかのようにうっとりと聞き返すアリサにアルテミシアは微笑みながら頷いた。
「欲しいままに求めなさい」
その言葉が魔法をかけたようにアリサの中に欲があふれた。
もっと着飾り美しくなりたい。
もっと美味しい物を食べたい。
その為の財が欲しい。
アルテミシア様の愛が欲しい。
みんなみんな、もっとみじめに底辺を這いまわればいい。
私がどんな悲しい思いをしているのか、痛い思いをしているのか、恐怖も何もかも知らないような、そんな愚かな連中など私とアルテミシア様の糧となるのが当然の報い。
白い聖女の魂が穢れ黒に染まっていく。
その体に触れ、心にふれているアルテミシアにはそれこそ手に取るようにそれがわかった。自然と深くなる笑み。
自分の夢にアリサを引き込み背徳的な儀式を行いながらその心にふれ直接、甘い毒を注いでいく。神も人もアリサを愛するどころか疎み敬遠している。愛しているのは自分だけ。アリサに必要なのも自分だけ。
そんな言葉の毒を。
気持ちが高ぶり上気したアリサの頬にふれその唇をアルテミシアが、そっと優しく奪う。触れるだけのキスからゆっくりと舌を絡め深く深く口付けていく。時にゆっくり、時に焦らし、時に翻弄するその口づけはアリサの心も体も魂も溶かし、光の届かない黒い闇へ落としていく。
アルテミシアの思惑も彼女の与える快楽も何も知らない清らかな乙女は与えられる熱に、快楽に戸惑いながらも浮かされ応じてしまう。そのうち、そっとアルテミシアの腰に手を回し、甘い吐息を吐きながら自ら背徳の口づけを求めていた。
その姿は、初めてのお菓子に夢中になっている子供のの様でありながら、快楽に溺れた娼婦の様だった。
もうアリサに、光はなく、アルテミシア以外、目の前の快楽以外何も見えていなかった。その魂は漆黒に染めりきり、聖女は誰の声も、神の光も届かない、救われないほどに闇に堕ちてしまった。
「アリサ?」
唇におあずけをするように人差し指を当て、アルテミシアは最後の一滴を落とす。
「次に会う時、本当の婚姻と帰依の儀式を行うわ」
「……アルテミシア様」
唇に当てられた指をどかすように手を取りアリサはアルテミシアに口付ける。水音と甘い吐息、そして愛の囁きだけが聖堂に響いた。
そして目が覚める。
部屋をアリサを月光が青く染め上げている。
使え、奉じてきた神はこんな充足も、快楽も、「よろこび」も与えてはくれなかった。そして世界の真実さえ隠し教えてはくれなかった。
全てアルテミシア様が教えてくれた。与えてくれた。
もう神も人もいらない。
「アルテミシア様さえいれば……」
その口元は妖艶に歪んでいた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3869/アルテミシア/女性性/27歳(外見)/蠱惑的な黒き薔薇】
【3826/アリサ・シルヴァンティエ/女性性/24歳(外見)/堕ちた白い聖女】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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アルテミシア様、アリサ様、はじめまして。今回はご依頼ありがとうございました。
アルテミシア様の妖艶な雰囲気とアリサ様がそれに魅了され染められていく様、背徳的なムードが出ていれば幸いです。
お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。
今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
またご縁があることを心よりお待ちしております。
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