<PCシチュエーションノベル(ツイン)>
乙女は黒を呑み紫へ堕つ
婚姻の儀式が終わり、アルテミシア(3869)に付き従うようにアリサ・シルヴァンティエ(3826)は古の城を歩いていく。空は夜の闇に覆われ星の光も見えない。しかし2人の花嫁の足元は冷ややかな光に照らされている。それは炎の様に温かい光ではない。ただ空に浮かぶ月の狂気を孕んだ様な白い光だった。
廊下から見える庭に咲き誇る一面の薔薇は白い光に照らされて尚闇のように黒く、月光の含んで毒婦の様に艶やかな微笑みで脳を溶かす様な甘い心を堕とす様な妖しい香りを放っている。
死と沈黙を司りながらすべての母胎の黒と神の力の象徴でありながら全てが誕生する前の無を示す白。
アルテミシアの使徒として、花嫁として、そして娼婦としての新しい生を受け歩き出すアリサを受け入れ祝福するかのような景色だ。
「ここよ」
重厚な扉の前でアルテミシアの歩は止まる。扉を開けるよう促され、アリサはそっとその扉を開く。そこは物語にしか出てこないような王侯貴族の、彼らさえも羨むだろう豪華な部屋だった。
「今日からここがアリサの部屋」
一緒の居室だとばかり思っていたアリサは一瞬きょとんとする。しかし部屋を見渡してその真意に気が付く。ここにはベッドがない。
愛を囁く時間、互いの存在を確かめその温もりに身を委ねる最上の時。耳を犯す様な艶やかな声に、目がやける様な一糸纏わぬ白い肌に、肌が粟立つほどの滑らかな肢体に、心を奪われ続けるだろうアルテミシアの存在を、体に心に魂に刻み付ける夜の時間は別室の2人だけの寝所で紡がれていくのだとアリサは即座に理解する。
どれも生まれてから一度も見た事のない、一生ここ以外では見られるはずもない絢爛豪華な調度品ばかり。一つ一つが人の目を引くには十分すぎる存在感の中一歩足を踏み入れた彼女の目を釘づけにしたのは豪奢な黒薔薇をふんだんにあしらった黒紫色のドレスだった。大胆に開いた胸元と背中はマネキンを生きた人形にする程の色香を放ちアルテミシアの花嫁であるアリサにさえ感嘆のため息をつかせるほどだった。
アルテミシアが指を鳴らすと不思議な事にドレスを纏い艶やかに立つ生きた人形はただのマネキンに戻り、甘い毒を含みきった黒いウェディングドレスはアリサの目を惹き続けた黒薔薇のドレスに変わった。
「そんな物欲しそうにしなくてもアリサのものなのに」
くすくすと笑いつつ愛するように舐るようにアルテミシアが耳元で囁けばその愛の言葉が具現化したように耳飾りがアリサを飾る。
「よく似合うわ」
指に黒蝶の口づけが落とされればそこには指輪が、漏らせてた吐息は眩暈がする程甘美で耽美な薔薇の香水に変わり、その香りに浸っているからだろうかアリサの髪も肌も吐息さえも甘く妖しい庭に咲きほこる黒薔薇の様に甘く妖しい香りを帯びていく。
―もっと着飾り美しくなりたい―
―アルテミシア様の愛が欲しい―
闇の婚礼の前、アリサはそう心から願い求めた。
アルテミシア様の愛でその願いがこんなに早く叶うなんて。
心の中に悦びが溢れて止まらない。そして、目の前の調度品に人々の嘆きや悲しみが見えた。
あぁ、そうか。
アリサの口元に愉悦の笑みが知らず知らず浮かぶ。
私の痛みも、恐怖も、憎悪も。全てを知りながら手を差し伸べるどころか、慰めるどこか、見て見ぬふりを知らぬふりをした愚かで醜い私とアルテミシア様の糧になる以外何の価値もない人々から搾取した財がこの調度品の数々。彼らは正しく糧になったのだ。今までの事を考えれば慈悲にあふれたアルテミシア様の所業。貧困にあえぎ這いつくばる人々の姿は身の程を知った彼らにふさわしい姿。
『強欲』『傲慢』
ずっと殺してきた欲望がかなった瞬間だった。
アルテミシアの手が髪を梳けば髪型が、唇を撫ぜれば紅が、瞳に口づければ目元が、アルテミシアの手で声で吐息でアリサの見目は月の女主人に釣り合うように美しくなっていく。
そして、その完成の時。姿見で自分の姿を見たアリサは恍惚とした法悦の笑みを浮かべた。
でも、まだ足りない。
最後にして一番の願いが叶いきっていない。
「アルテミシア様。私を、美しくなった私を花嫁として愛してください」
ねだることにもう恥ずかしさも罪悪感もない。欲しいままに求める様にアルテミシア様は仰った。何も悪い事はない。私はそれが許されたアルテミシア様の使徒であり花嫁なのだから。
「そうね。ならアリサが手本を見せて」
「……はい」
娼婦の様に淫らに誘い惑わし煽って見せろと主人は言外に命じた。少し前の、婚礼の前のアリサなら羞恥心に頬を赤らめ返事も出来なかっただろう。
だが、こくりと頷いたアリサの表情は恋い焦がれた相手に愛を囁かれたかのようにうっとりとしていた。
大きく開いた胸元にアルテミシアの腕を押し付け妖艶に微笑みながら魅せつける様にその細い指先に音を立てて吸い付くき、数センチで唇が触れあう様な距離で乞うように濡れた声で唇で甘く名を呼び、耳朶に口付けながら熱い吐息と嬌声にも似た声で愛を囁く。その姿に清らかさなど欠片もない。ただあるのはどんな聖人の理性をも破壊するほどの艶かしさと色気。一見情欲を煽られているのはアルテミシアのように見えるその行為の中で煽られているのはアリサの方だった。相手の指で犯される口内。自分でもわかる程の淫らな水音や声。脳が痺れるほどの甘い香り。その全てはアリサの意思。自らの意思で全てを捧げ誘惑している事実。どんな風に見えるだろうか。思われるだろうか。そう思考を巡らせれば巡らせる程アリサは昂ぶり黒い瞳は宝石のように潤み白い肌は快楽か恥じらいか朱に染まっていく。
「アリサ……」
囁く様に呟く様に名を呼べばアリサは快楽に溺れた女の様に艶っぽく微笑み、耳元で喘ぐように息を荒げたまま囁く。
「そんな名で呼ばないでください。私は『アリサ』を捨てたアルテミシア様だけの一人の娼婦なのですから」
羞恥に昂ぶり、それでも誘惑を止めない、快楽の為に自分の名さえ簡単に捨て去るその娼婦よりも淫らで堕落した姿にアルテミシアは満足していた。
「そうね。私の可愛い花嫁、そして淫らな私の娼婦。満足するまで尽くし、求めなさい」
「ありがとうございます」
アリサの声はよろこびに震え泣いているかのようにも聞こえた。アリサは自ら深く口づけ赤子が母乳を欲しがるように何度も吸い付き、子供が飴を舐める様に舌を絡める。立てる水音もドレス越しに絡む脚も、肌を求め布の上をまさぐる手付きも慣れすぎていた。つい先刻までキスもしたことのなかった生娘だと言っても誰も信じはしないだろう。熟練の娼婦、生まれ付きの好き者、淫魔と言われても否定出来ない程にアリサの動きも反応も何もかもが情事に精通しすぎていた。
「アルテミシア様」
甘く乞うようにアリサが名を呼べば妖艶な笑みでアルテミシアが応える。甘美で淫猥な情欲と愛の宴は始まったばかり。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━
【3869/アルテミシア/女性性/27歳(外見)/黒の貴族】
【3826/アリサ・シルヴァンティエ/女性性/24歳(外見)/紫の情婦】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼ありがとうございました。
背徳的と言うよりは淫靡で官能的な中アリサ様が身も心もアルテミシア様に心酔している雰囲気が出ていれば幸いです。
お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。
今回もご縁を頂き本当にありがとうございました。
またご縁があることを心よりお待ちしております。
|
|