<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


想いは温かな光のように

 ソーンの閑静な住宅街。すっきりとしながらも適度な生活感と温かさを感じる日の当たる部屋にエスメラルダ・ポローニオ(3831)とこの部屋の主人サクラ(3853)の姿があった。

「ねぇ。エスメラルダちゃん」
 柔らかいベッドに腰掛けたままサクラが口を開く。その誰もを魅了する美しい声には少しだけ決意の様な物が見えた。
「ん?どうしたの?」
 不思議そうにサクラの瞳を覗き込むエスメラルダの瞳はきらきらと輝きサクラの本来の姿つまりセイレーンの鱗をも思わせる。

「前にも話したけれど、セイレーンは不老長寿の美女しかいない種族なの。血も肉も霊薬になるわ。だから乱獲された時代もあったそうよ。セイレーンは人と距離をとったみたいだけれど、セイレーンの話は人々の中から消えなかったわ。私の親友や恋人も私がセイレーンだと知ると欲望に狂って捕まえて売り飛ばそうとしたり……」
 サクラの脳裏に親友や恋人の姿が走馬灯のように浮かんでは消える。彼らの笑顔、優しい言葉。そして……
 彼らの笑顔も言葉も本当だと思っていたし、きっと本物だった。しかし、欲望は人を変えてしまう。だからこそエスメラルダにだけは知られてはいけないと思ってきた。心を許した彼女も変わってしまう事が怖かった。
「エスメラルダちゃんに本当の姿を見られたあの時全部が終わった気がしたの。驚いた貴女の顔を見た時貴女も今までの人々と同じなんだろうって思ったの。でも違った。綺麗と言って、大事って、ずっと一緒にいるって、言ってくれたわね。本当に嬉しかったのよ?私の本当の姿を知ってもそういってくれる人はいなかったんだもの」
 温かな気持ちが心にあふれたのを今でも覚えている。あの時のエスメラルダの言葉、表情、まっすぐな瞳、その全てをついさっき起きた事の様に鮮明に憶えている。

 サクラの身体は全てを語る前に知らず知らずのうちにエスメラルダを抱きしめていた。
「エスメラルダちゃん。好きよ」
 静かに聞いていたエスメラルダが、本当に心を通わせたあの時の様ににっこりと微笑み、大好きだと答えようと口を開こうとしたが、その言葉は唇を震わせることはなかった。温かさのある柔らかく優しい質感のものが唇をふさいでいたのだ。それがサクラの唇なのだと理解するまで時間はかからなかったが、即座に真意を読み取れるほどエスメラルダは同性間の感情に造詣がある訳ではなかった。
 戸惑いで動けないエスメラルダの額や頬、瞼や耳朶、首筋。優しいキスの雨は親愛ではなく、本来なら異性間で抱くだろう恋愛のそれを意味する言葉と共に降り注いだ。エスメラレルダはそういう事に理解はあるが興味がある訳ではない。なかったはずだ。しかし
『嫌じゃないわ』
 祈りの様な愛の囁きとキスの雨に嫌悪感は覚えない。いきなり親友だと思っていた女性から愛の告白をされたこの状況に戸惑いこそするがその気持ちを嬉しいと思っている自分がいることを彼女は自覚した。

「サクラ……」
 エスメラルダの囁きとも呟きとも取れる声にサクラの動きが止まる。
「ごめんなさい。気持ち悪いわよね」
 愁いを帯びた瞳を伏せサクラは離れようとするが、その瞳は次の瞬間大きく開かれることになる。一瞬の間。
「エ……スメ……ラルダ……ちゃん……?」
 サクラが次に言葉を発する事が出来たのはエスメラルダの唇が彼女の唇から離れた時だった。
「嫌じゃないわよね?」
 そう言ったエスメラルダの顔は少し火照りいつもより赤みを増していた。
「ええ」
「サクラの事好きよ」
「ありがとう。私も愛してるわ」
 愛の言葉を交わし穏やかで温かい時間が流れていく音を聴く二人。誰かに心を許すことの心地よさ、安心感、幸福感。そんな優しい感覚が心と言わず体に浸み込みいっぱいになっていく。
「エスメラルダちゃん。キスしていいかしら」
 サクラの囁きに頬の赤みが増しながらも頷くエスメラルダ。そして柔らかい唇同士が触れ合う。慣れたそぶりで唇を舌でなぞったりするサクラと、恐る恐るぎこちない動きで追いかける様に舌を出したりするエスメラルダ。
「エスメラルダちゃん、口を少し開けて」
「え?」
唇が触れるかどうかのところでサクラが囁き、思考の追い付かないエスメラルダが反応したところで深く口づける。その濃厚な愛にエスメラルダの思考は全くと言っていい程ついていかないがやはり嫌悪感はない。それどころかもっとサクラといたいと言う気持ちが強くなっていくばかりだった。


「キス、初めてだったのね」
 愛の交感の後、サクラが穏やかに微笑みながらそう言った。
「……!」
 図星を突かれたエスメラルダは言葉が出ない。ただただ恥ずかしいばかりだ。いや、彼女の職業や生い立ち、性格を考えればそこまで不思議な事ではないのだが、真っ向から指摘されるとやはり恥ずかしい。
「初めての相手が私で嬉しいわ」
 そう言ってそれが本心だというように太陽の香りのする茶色の髪に口づける。
 髪へのキス。その意味をエスメラルダはまだ知らない。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3853/サクラ/女性性/27歳(外見)/信愛と熱愛の意味を知る歌姫】

【3831/エスメラルダ・ポローニオ/女性性/20歳/大事と大切の違いを知る商人】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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サクラ様、エスメラルダ様初めまして。
今回はご依頼ありがとうございました。

エスメラルダ様の心の動きや、サクラ様のまっすぐな思いを表現したいと思って執筆させていただきました。
これからお二人がどのような道を歩まれるかわかりませんが、優しい愛がお二人にずっと降り続きますようにお祈り申し上げます。

お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
またご縁があることを心よりお待ちしております。