<PCシチュエーションノベル(グループ3)>


不思議なドレスは禁断の香り?

「ま、負けました……」

 明らかに不本意そうなレイン・フレックマイヤー(3836)の声が部屋に響いた。


 ここはブランネージュ・オーランシュ(3824)とその従者ローズマリー(3825)が住まう洋館。二人の恋人であるレインは遊びに来てはブランネージュと卓上遊戯に興じ、ローズマリーの淹れるお茶とお菓子を楽しむ日々を送っている。
 恋人を二人同時に持つ事は不貞行為であるだとか、誠意がないなどと世間では言われる事もあるが、三人の関係は実に良好である。そこには上辺だけの平穏ではなく三者三様ではあるが互いを想い愛し合っているからこそある甘く穏やかな時間がいつも流れている。
 今日もそうして一日は過ぎていくのだとレインは思っていた。だから、いつもの卓上遊戯が罰ゲーム付きになったとしても、街でよく見る恋人達よろしく、女性が彼氏に腕を組んでほしい。甘いものが食べたい。と甘えるようなものだろうと考えていたし自分より大人であるところのブランネージュがレインを困らせる事はない。そう確信していた。


「これを着て頂けないかしら」

 そう言って取り出されたのは一着のドレス。博士として大人顔負けに大学で働くレインが固まった。目を閉じまた開く。やはりドレスだ。

「ブランネージュさん。あの、ボクは男ですし、それは成人女性用のドレスのようです。胸元の開き具合から考えてブランネージュさんやマリーさんがが着た方が似合うと思います」

 レインはある意味当然の抗議をする。言葉こそ流暢で冷静に聞こえるが、顔は真っ赤になり声も若干上ずっているように聞こえる。

「お嬢様。あまりレインさんを困らせちゃいけませんよ」

 くすくすと小さく笑いながら助け舟とともにローズマリーがお茶を出してくれる。曇りやすい銀のスプーンはこの家同様丁寧に彼女に手入れされているのか一点の曇りもない。

「大丈夫ですわ。レインさん。これは纏った者にぴったりに変化するマジックアイテムですもの。それに、ローズマリーも可愛いレインさんの姿、見たいでしょう?」

 ぴくりとローズマリーの長い耳が動いた。

「……そろそろ帰ります」

 嫌な予感を感じてレインが席を立つ。その肩に優しく褐色の手が置かれ、

「レインさん、向こうで着替えましょう」

 罰ゲームの執行が決まった。

 
「あの、ボクは……」

 そう言いながら別室でローズマリーに言われるままにドレスを纏っていくレイン。なんだかんだ言って恋人(しかも二人とも)にお願いされては断れないのが惚れた弱みというものだろうか。
 埋まる程に大きかったはずのドレスは彼の身長に合わせ小さくなり、平らで違和感しかない胸元は隙間を埋めるように小さく膨らみを帯びた。その姿はどこからどう見ても小さなレディだった。

「さあ行きましょう」
「え、いや、鏡を……」

 どこか弾むような声のローズマリーに連れられ、自分の姿も確認しないままレインはブランネージュの元へ戻った。


「……!!」

 部屋へ戻るとブランネージュの驚いた顔がレインの目に飛び込んできた。両手で覆われた口元からは小さい悲鳴のようなものも聞こえ、やっぱり着なければ良かったとレインは思う。大学内でも年齢や容姿について言われることはあるが、男性にドレスなど似合うはずもない。そうレインは認識を強くする。

「脱いできます」

 部屋に背を向けようとした時、後ろにいたローズマリーとぶつかり抱きしめるような形になってしまった。

「すみません」

 そう詫びてから離れようとするが、ローズマリーが離してくれない。不思議に思っているとブランネージュがやってきた。その目が鈍く輝いて見えるのはレインの気のせいではないだろう。

「可愛いですわ。こんなに可愛くなるなんて。少し奮発して冒険商人さんから買った甲斐がありましたわ。ドレスが体に合うだけじゃなく体がドレスに合う効果もあるんですのね」

 髪にブランネージュの指が触れる。しかしいつもと位置が違うように感じる。レインがそっと自分の髪に手を伸ばすと短かったはずの髪が結い上げられている。髪飾りも付いているようだった。

「いけないことをしているような気になりますわね」

 そう熱っぽいブランネージュの言葉が吐息混じりに耳元で生まれる。さっき悲鳴だとレインが思ったのは、確かに悲鳴ではあったが、恐怖や嫌悪の悲鳴ではなく、俗に言う黄色い悲鳴というやつだったのだ。

「あのっ……」

 突然のことにどうしていいか分からないレインは一旦落ち着こうと口を開くがその唇はブランネージュの柔らかい唇で塞がれた。

「そう思わない?」

 心臓が早鐘の様になり混乱し始めたレインをよそにブランネージュはローズマリーに同意を求める。
「赤くなって可愛いですねレインさん」

 ローズマリーもレインの唇を奪うと優しく微笑みかける。その微笑みがやけに艶めいていてレインの心臓はもう壊れそうなくらいに早くなっている。

「レインさん」
「レインさん」

 両の耳に同時に甘い囁きが流れ込む。
 いくら二人と深い仲だと言ってもレインは女性経験豊富ではない。いつもは穏やかな時間が流れているのであまり気にならないが、こういうアダルティなムードはドキドキしてしまう。なんとかしなければと心が警鐘を鳴らすが、頭の回転が鈍く思考が追いついていかない。
 そうこうしているうちに、徐々に長く深くなる口付け。唇以外にも、髪や耳、頬、首筋、胸元……夜の交わりの様なキスの雨がレインに降り注ぐ。
 相手は二人。ブランネージュと深く口付ける間に、ローズマリーが他の所にキスを落としたり耳元で愛を囁く。逆も同じ。
 気持ち良さと混乱と好きな女性達の香りや柔らかさで変な気持ちになりそうになったレインだったが、その前に、体が持たず意識を手放した。


「大丈夫ですの?」

 目を覚ますと、ローズマリーの膝に頭を乗せていた。傍ではブランネージュが心配そうにレインの顔を覗き込んでいる。

「私も少しはしゃぎ過ぎてしまった様です。申し訳ありません」
 ローズマリーがしょんぼりとした声で謝る。

「大丈夫です」

 レインも彼女達に悪気がないことはわかっているし、恥ずかしかったが悪い気はしなかったというのが本音のところだ。
「お二人が悪気がないのは知っていますし、ボクも……その……慣れていないだけで……」

 頬を染め俯きながらも小さく、嬉しかったです。と続いたのを二人は聞き逃さなかった。

「いけない趣味に目覚めてしまいそうですわ」
「私もです。お嬢様」

 レインが二人から再びキス攻めにあったのは言うまでもない。

「あ、あの、せめて鏡……」
「いけませんわ。レインさんの可愛らしい姿は」
「私とお嬢様だけのものですから」

 このシンクロ率はレインでもすごいと思う。だが、そんな彼女達だからこそレインは愛おしいと思うのかもしれない。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3836/レイン・フレックマイヤー/男性性/15歳/18のmaterial advantage】

【3824/ブランネージュ・オーランシュ/女性性/26歳(外見)/白のQueen】

【3825/ローズマリー/女性性/24歳(外見)/黒のQueen】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 はじめまして。今回はご依頼ありがとうございました。

 大人の雰囲気を持ちながらまだ大人になりきれないレイン様とそんな彼を慕うお姉様方のとある日と言った感じで日常の一部を切り取る様な形に致しましたが如何だったでしょうか。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 ソーンの世界は閉じてしまいましたが、お三方の穏やかで温かな日々がずっと続くことをお祈りしております。
 また別の世界でお会いできることを楽しみにしております。