<PCシチュエーションノベル(ツイン)>
黒薔薇の夢は永久に
女神は堕ちた。
二人は、参列者をそのままに、そっと出入口の扉を開く。
そこは外、ではなかった。広がっていたのはアルテミシアの古城。その最奥にある寝室。
教会でもっとも淫らで背徳的な場所が聖堂なら、古城でもっとも背徳的で淫らな場所がこの寝室なのだろう。
夜の闇と表現するには濃い闇の中、狂気的とも言えるほど鋭い月光が怯えるように遠慮がちに差し込む。そんな淫猥で敗退的な寝室へ躊躇いもなく二人は足を踏み入れる。するとこれから行われる秘めごとを隠す様に音もなく扉が閉まった。
豪奢なベッドにアルテミシア(3869)は腰を下ろす。二人が横になっても、なお広いその前にアリサ・シルヴァンティエ(3826)はそっと傅いた。
そして恭しくアルテミシアのアクセサリーやドレスに手をかけ傍に置いていく。その姿はまさに奴隷の様であった。それだけではない。アルテミシアが纏っていた物達を外す間でも肌に口づけ、指を食み娼婦として奉仕していく。
誰が指図したわけでもない。自ら淫らな行為に従事し己の行動で己を昂らせている。その盲目的なまでに欲しがる行為に、表情に、アルテミシアさえも興奮を禁じえない。
「来なさい。私の淫らな娼婦」
そう手招き。シーツの海に共に沈む。
娼婦として快楽を、花嫁としての愛を感じる事ができる。その事実がさらにアリサの心を昂らせ、幸福感で満たしていく。
衣擦れの音、小さな甘い声、淫質な水音、肌の温もり、荒い吐息、濡れた視線。
全ての感覚がアルテミシアの愛を求め、それを感じられる事がただただ嬉しい。何も我慢せず、何にも怯えず、言動に躊躇いさえもいらない。
「アルテミシア様……」
名を呼び手を伸ばせば、微笑みと共に握られる手。
「どうしたの?私の花嫁」
「あぁ、アルテミシア様。愛しています。貴女だけが私の全て……」
拒まれない。それだけで涙が出る程嬉しい。
娼婦として奉仕することはこの上ない悦び、使徒として忠誠を誓い続けることは無上の誇りと喜び。花嫁あるいは妃として愛に溺れることは言い表せない程の至福の気持ち。
どれもかつての自分では決して手に入らなかった感情。知りもしない、欲しいとさえ思わない感情だっただろう。
しかし、アリサはそのよろこびを知った。誰に糾弾されようとも揺るがない。堕落し背徳に満ち廃退したここが望んだ世界。そう確信している。
背徳の悦びに脳が焼かれ白くなる世界の中、心からそう思った。
「私も愛しているわ。こんな淫らな……夜伽を命じてもいないのに勝手に始める様なアリサを男達が御せるとも思わないわ。奉仕するだけで昂り蕩けた顔で達してしまう様な女は娼婦として生きていくしかないと思わない?」
これだけ淫らになってもこうして苛めればアリサは恥じらいに頬を染める。これすら互いを煽る行為以外の何物でもないと知っていてもアルテミシアは睦言の様にアリサがいかに淫らかを説く。
「はい。私は淫らかでイヤらしい娼婦。アルテミシア様だけの娼婦です」
本当に溶けてしまわないかと思うほど、惚けた恍惚の表情でアリサは答える。その間も奉仕を忘れない彼女を本当に可愛いとアルテミシアは思った。
色々な人間を見てきた、彼らは力を求め、財を求め、知識を求めアルテミシアに助けを求めた。だから与えた。いつか破滅するだろう事を本当は知っていたけれど、関係なかった。求めたからには力が使いこなせる自信があるのだろう。なら、それを証明して見せて欲しい。そう、思っている。
彼女の力は人には過ぎたる、有限の命では御しきれない力。そんな事わかっているはずなのに手を伸ばし、奢りからか、過信からか、堕落し、破滅していく人々を見るのは楽しい。が、いつもその後訪れるのは空虚な感覚だった。
しかし、目の前のアリサは違う。愛の技巧を、言葉を与えれば与えるだけそれらを吸収し求める。彼女の渇望は底が見えない。だからこそもっと与えたくなる。その先を見たくなる。
新しい快楽を刻みつけながらアルテミシアは満足していた。淫らで美しい娼婦を手に入れた事を。魂さえも捧げ、心から自分を敬う使徒を見つけた事を。永遠に続く闇を共に生きる花嫁を見つけた事を。
胸に黒薔薇に抱いて二人は堕ちていくだろう。それは世界を黒薔薇で埋め尽くし、自ら蜜を吸い尽くすまで終わらない。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3869/アルテミシア/女性性/27歳(外見)/甘毒を孕んだ不死蝶】
【3826/アリサ・シルヴァンティエ/女性性/24歳(外見)/堕落へ招く闇天使】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございました。
お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。
今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
また、別の世界でお会いできることを願っております。
お二人の満足と幸福が永遠に続く事を心からお祈りしています。
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