<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


■ エルザード祭〜旅籠屋―幻―の出張屋台!? 〜ジェイドックの様子■

 祭りの準備が整い、開催宣言が告げられた聖都の広場。
 人々の楽しそうな声で賑わう中、辛気臭い顔で広場へとやって来た1人の男――ジェイドック・ハーヴェイが居た。
(せっかくの祭りの日だってのについてない……)
 賞金稼ぎであるジェイドックが、少しばかり遠出になったけれども、久しぶりに大物の賞金首を仕留めることが出来、気持ちも、懐具合もほくほくで、聖都へと帰還したのは、数刻前のこと。
 広場を中心に行われている祭りに繰り出す前に、シャワーで埃でも落として少し休憩してから繰り出そうと思いつつ、下宿に戻ったところ、入り口に1枚の張り紙が貼られていた。そこには、大家の都合で下宿をたたむ旨が書かれていたのだ。
(今日から宿無しか……ああ、くそ、美味しいものでも食わないとやってられん)
 遠出で疲れた身体を休める宿が欲しいところだが、すぐに次を探す気力など湧くワケもなく、長旅の荷物を手にしたまま、広場へと来たところであった。
「……ん?」
 美味いものをと食べ物の屋台が並ぶ一角に足を向けたところ、いい匂いが漂ってくる。
 一番端の方で、屋台だけでなく、テーブルや椅子など食べるスペースも設けている1軒の屋台が、その匂いの素であるようだった。
「いらっしゃいませー。お好きな席にどうぞー」
 簡易調理場である奥のテントと、周りに並べられたテーブルの間を行き来している店員――如月誠が、ジェイドックに気付き、声をかけてくる。
 適当に空いている席に座ったタイミングで、お冷を手に、誠がやって来た。
「何かオススメはあるか?」
「今日のオススメ、というか、メニューが1つしかなくて、お祭り限定定食なんだけど……それでも、良かったかな?」
 訊ね返す誠に、「じゃあ、それを頼む」と応えると、彼女は微笑んでから、簡易調理場であるテントの方へと戻っていった。
「夜ー。定食1つ、お願いねー」
 テントの中で、調理をしている女性――闇月夜が、頷いて応えている。
 ジェイドックは調理を開始する彼女の様子を少し見てから、その後、辺りを見回した。
 広場や大通りは、いつも賑わっているのは賑わっているのだが、祭りである今日は、いつもと違った賑わいを見せている。
 夢のような一日に、下宿先が畳まれたのも夢であるといいのだけれど……そういうワケにはいかない。
 どうしたものかと、視線を遠くに向けていたら、再び誠がやって来た。
「お待たせしました、お祭り限定定食だよっ」
 ジェイドックの前に、彼女がプレートを置いた。
 プレートの上には、プレートとほぼ同じサイズの大皿が乗り、その中に、ご飯とメインのから揚げ、グリーンサラダ、更にスープが入った小さなカップが盛り付けられている。
「メイン料理の、トリのから揚げは、特製のおろしダレ。それからグリーンサラダには夜お手製のドレッシングをかけさせてもらってるよ。どうぞ召し上がれ」
「おお、美味しそうだな。早速、いただくぜ」
 誠の説明を受けてから、ジェイドックは早速、から揚げを口に運んだ。
 衣はパリッと揚がっていて、中のトリ肉はジューシーな仕上がりになっている。
「美味いな!」
「良かったんだよ。……っと、他のお客さん来たので。ゆっくり味わってってね」
 接客に向かう誠を見送って、ジェイドックは一口、また一口と食べ進めていく。
 美味しいご飯に、落ち込んだ気持ちは晴れてくるものの、次の下宿先を決めないからには宿無しなことに変わりはない。
 それを思い出して、ジェイドックは頭を抱えた。
「お、おにーさん、どうしたのっ!? 何か口に合わないものでもあった!?」
 頭を抱えるジェイドックに気付いた誠が慌てて飛んできた。
「あ、いや。飯は美味いよ。ただ、頭の痛いことがあって、それを思い出してしまってな」
 定食に問題ないことを告げると、誠は「良かったぁ……」とホッとしている。
「その頭の痛いコトっていうのは……、訊いてもいいコト?」
「ああ」
 訊ねてくる誠に、ジェイドックは今日起こったことを話した。
「まあ、そんなワケで、美味しいもの食べたことだし、次の宿を探さなきゃなんねぇんだが……」
「……うちで良ければ、来てもらえば?」
 ジェイドックの話を聞いていたのだろう、テントの奥で調理をしていた夜が、ぽつりと呟く。
「ああ、それいいね、夜!」
 そして、その言葉に誠がポンッと1つ手を打った。
「うち、に……?」
 夜と誠、2人の間で納得されて、ジェイドックは不思議に思い、訊き返した。
「えっとね、僕と夜とで、旅籠屋やってるんだよ。ちょっと入り組んだところにあるから、なかなか人の入りは少ないんだけども、それこそ夜のゴハンを気に入ってくれた人が、長期宿泊に使ってくれてたりするんだよ。だから、貴方もどうかなーって」
「旅籠屋なのか! それに、こんな美味いご飯付きと来た! それは是非、こっちも下宿先として行かせてもらいたいな!」
 いい話を聞いたとジェイドックは、彼女らの話に乗ることにした。
「じゃあ、今日のお祭りの後で案内するから、また後でここに来てほしいんだよ」
「ああ、それじゃあ、もう少し祭りを楽しんでくるか」
 定食を食べ終えたジェイドックは、席を立つ。
 一時は宿無しの危機を迎えた彼であったが、この出会いを機に、ジェイドックは聖都での新しい生活を始めることが出来そうだ。
 広場に来た時とは真逆の、高揚感を胸に、彼は祭りの他の催しを楽しむために、踏み出していくのであった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

PC
【 2948  / ジェイドック / 男性 / 25歳 / 賞金稼ぎ】

NPC
【闇月 夜 / 女性 / 23歳 / 女将】
【如月 誠 / 女性 / 18歳 / 用心棒】

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■         ライター通信          ■
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 先ずは、大変遅くなりまして、申し訳ありませんでした。
 そして、この度は、ご依頼ありがとうございます。

 物語は終幕を迎えましたが、ジェイドックさんの新たな生活の始まりに、旅籠屋―幻―が関わっていけることが嬉しいです。
 お祭りの一面も、楽しんでいただけましたら、幸いです。