<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


この胸いっぱいの愛をあなたへ

 指を絡め約束を交わした日からもうどれほどの月日が経っただろうか。花の咲き乱れる街のすぐそばに留めたカムイコタンからぼんやりと月を見つめながらミルカ(3457)はふと昔のことを思い出していた。
 蘇るいくつもの記憶。そこにはいつも義父ディーク(3466)がいた。例え、その場にいなくても何かにつけ、彼の事が脳裏によみがえった。

『俺はあくまで父としておまえを愛している』

 指を絡めた日の彼の言葉が引っかからない訳ではない。その声は真剣そのもので小手先のごまかしや、その場しのぎの言葉でないことはミルカ自身が一番分かっていた。

「カムイコタン。おとんは……」

 返答はない。
 本人の気持ちはつまるところ本人にしか分からない。
 第三者がどんなに推測しようが、考えようが、分かろうとしようが、本当の意味で分かることはない。
 カムイコタンの沈黙はそう言っている気がした。

 寝室でディークは部屋の隅にある『明日の為』のドレスと礼服を見ていた。
 明日、このドレスを着るミルカはいつも以上に綺麗だろう。女性なら一度は憧れる婚礼のドレス。今の彼女ならそれこそ女神のように美しく着こなすだろう。

『あたしのとなりもおとんのとなりもほかの人じゃいやだわ』

「わかっている。……俺も、そう思っている」

 涙ながらにあの日言われた言葉に手を組み一人答える。その姿は祈りの様だった。


 次の日。
 結婚式当日は晴天だった。

 友人たちが祝福する中、ヴァージンロードを二人は歩く。
 ヴァージンロードは娘が生まれてから結婚するまでの親子の軌跡を辿る旅の様なものだと誰かが言っていた。
 だとするなら祭壇の前からは親子の軌跡は消えてしまうのだろうか。そんな思案がふとディークの心に陰を落とす。

 しかしそれは一瞬だった。

 穏やかな微笑みと共に投げられたミルカの視線には迷いも不安も何もなかった。しかし、腕に絡められた指は心なしか震えている。
 ディークは静かに頷き微笑み返すとそっと腕に力を込める。いつも笑顔だからと言ってその心がいつも晴れであるとは限らない。支えられてどうする。そんな気持ちがディークの不安を拭い去る。

 ディークの腕からミルカの手が離れ親子の旅が終わる。そして空に浮いた手を取ったのはディークの反対の手だった。
 親子の旅を終え、これからは夫婦として二人は人生を共にするのだ。

「私たちは結婚し夫婦となろうとしています」

 二人の声がハーモニーを生みながら教会に響く。

「健康な時も」

 ディークが言葉を続け、そっとミルカの方に視線を投げる。するとミルカが歌うように
続きを述べる。掛け合いのように誓いの言葉は続く。

「そうでない時も」
「この人を愛し」
「この人を敬い」
「この人を慰め」
「この人を助け」

「私たちの命の限り固く節操を守ることを誓います」

 そして、再び二人の声が重なりその言葉が消えてしまわない様に口づけを。こうしてミルカの初めてのキスは無事、初恋の男性に捧げられたのだった。



「ねえ。おとん。約束まもってくれてありがとう」

 フラワーシャワーの中ミルカの笑顔は太陽にきらめいた。

「もう、おとんじゃないだろう?」
 ミルカの数年にもわたるアタックの末にディークは娘としてではなく一人の女性として彼女を隣に置くことを決めた。
 だが、元来ディークは流されるような男ではない。ミルカへ娘への愛以上のものを持っていなければそんなことを決めたりはしなかっただろう。だからこそ、そこはしっかり言っておきたかった。
 誤解のないように一人の女性としてもすきだというべきか一瞬悩んだが、流石にそこまでは恥ずかしく、今夜二人になった時にでも言おうと思った。

「……ディーク?」

 そういえば名前を呼ぶのはいつ以来だろう。と思いながらミルカはディークの名を口に出すが、呼びなれない名前はどうしてもしっくりこない。

「ううん。おとんはおとんよう。まわりなんて関係ないわ。おとんはあたしのだいすきなおとんで、一番たいせつな男の人だものねえ」

「まったく……」

 そういうところも愛しいと思ってしまう自分はもうミルカの事を何も言えないな。と思ってしまう。しっかりと線引きをしていたはずだったがいつから惹かれていたのだろう。

「集まってくださーい」

 呼ぶ声にミルカは愛する人を見上げおねだりする子供のような表情をした。肩をすくめディークはミルカをお姫様だっこする。王子が姫にするように。

「おとん。ありがとう。これからもずっと一緒よう?」
「わかってる」

 満面の笑顔のミルカから花束が空へ放たれたのはこのすぐ後の事。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3457/ミルカ/女性性/18歳/純粋な愛の花束を】

【3466/ディーク/男性性/38歳(外見)/虹色の愛の花束を】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お久しぶりです。またお会いできて光栄です。

 ご結婚おめでとうございます。前夜の不安と当日の幸せいっぱいな感じが描けたなら良かったと思います。これからも様々な愛を交歓がありますように心からお祈りしております。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 別の世界でもまたお会いできる事を心からお待ちしております。
 これからもお幸せに。