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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:10両編成の山手線

●舞い込んだ依頼(オープニング)
「草間さん留守?」
 突然の来訪者に、中にいた面々の視線が集中する。
「初めましてかな? ボクは京師紫(けいし・ゆかり)。たまに仲介で、草間さんに依頼を持ってくるんだけど」
 「金にならない依頼ばかり持ってくる」って邪険にされるから、彼がいなくて助かった。そう口元を綻ばせると、青年は慣れた様子でソファに腰を下ろした。
「急ぎの依頼があるんだ」
 そう言った紫は、吸殻で一杯の灰皿を脇に退け、路線図をテーブルの上に広げた。
「毎日、終電間際に、山手線の代々木→渋谷を一両足りない十両編成の電車が、そして始発直前に渋谷→新宿を一両編成の電車が走ってる、と言う目撃例が二週間前から出てるんだ。同じ頃から、夜中に書店の学参書の棚が荒される事件が相次いでてね。場所は、渋谷駅のあたり。しかも一昨日、近くを歩いてた高生位の‥‥『今時』な女の子めがけて、無人の店内から本が襲って来た」
 一気に喋り終えると、紫はソファから立ちあがった。
「調べてくれるかな? これ以上の被害が出る前に。報酬は成果次第。あ、調査に行く時は是非コレを持って行ってね」
 来た時と同じ唐突さで姿を消した依頼主。残されたのは天神様の御守だけだった。

●情報とは強奪する物である
「お、姐さんこっちこっち」
「だからその呼び方はやめろって!」
 都内某所。テロ対策として消防法ギリギリに設計されているTV局の一室で、サイデル・ウェルヴァは出会い頭の男を張り倒した。
「ったく、なんでわざわざ出向かないといけないんだよ」
 スチール椅子にドッカリと腰を下ろし、長い足を無造作に組んで相手をねめつける。その様はまさしく『悪人』の風貌を呈している。
「うんうん、やっぱサイデルさんはそのポーズが似合うよねぇ」
「どーでもイイから、さっさとネタ寄越しな」
 容赦無い脛への攻撃に、目に半分の涙を浮かべながら、サイデル馴染みのTVマンは、常に持ち歩いている布カバンから数枚の紙切れを取り出した。
「電話でもよかったんだけどねぇ。都合よくガイシャの顔写真を入手すんのに成功したんで」
 当然、ナイショだぞ。
 わざとらしく周囲を見まわし、耳打ちする。しかし男のそんな気遣いはサイデルには無用の物だった。
 彼女の赤い瞳は、誌面を食い入るように釘付けになっている。
「天海雪花。‥‥17歳、高校生か」
「なんでも代々木にある予備校から、中野にある自宅に帰ろうってトコを、運悪く酔っ払いにぶつかっちまってバランス崩してホームから転落して‥‥ドンってヤツだったらしい」
 TVマンが固めた両の手の拳をぶつけ合わせる。
「別に、事故のことはどーでも良いんだ。このお嬢ちゃんの素行は?」
「書いてあるまんま。っていうかそれ以上は流石に無理」
 両親と子供2人の家族構成。姉が某医大に一昨年進学していて、本人も高校1年から塾通いを始めている――受験に対し、相当なストレスを感じる環境である事は間違いない。
「ん‥‥こっちは?」
 雪花の資料に1通り目を通し終わったサイデルは、1枚余計な紙片が混ざっている事に気付いた。まだ調べ途中なのだろう。通う高校と名前、そしてスナップと思しき写真がクリップで留めてある。
「伊崎亜摘?」
「興味あるかなって思ってさ。こないだ渋谷であった変な事件の被害者」
 不思議だろう? 人身事故の被害者と同じ高校なんだ。
 その言葉に、サイデルの瞳が赤く耀く。
「‥‥なるほどね。そういうことかい」
 ポケットにツッコンである携帯を取りだし、今回の依頼を共にこなすメンバーの1人のナンバーをプッシュする。
 コール10回――繋がらない。
 もう1人のナンバーも同様の結果だった。
 おかしい。何かあった時の為にと、必ず電波の入る場所に1人はいるはずなのに。
「おい、ちょっと足貸しな。そうだね、この時間なら車よりバイクの方が良い」
 ガタリと乱暴な音と共に立ち上がったサイデルに、TVマンが困惑の眼差しを投げる。
「何ちんたらしてんだい! てめぇがあたしをここまで呼び出したんだろ。なら帰りくらい送りなっ! 急げ! 渋谷だよっ」
「分かったから、ちょっと待って。はい、小道具さんから預かっといた品だよ」
 駆け出したTVマンの後を追いかけながら、サイデルは渡された1枚の紙を、胸ポケットの中に押し込んだ。

●都会の闇
「ちょっと、そこのキミ! こっち!」
 身を呈して迫り来る本から亜摘をかばっていた室田・充(むろた・みつる)の耳に声が飛び込んできた。次の瞬間、亜摘が誰かに手を引かれて走り出す。
「ほら、お兄さんも」
 顔を上げた充に、金の髪に瞬くネオン光を反射させたクリストファーが手招きを繰り返す。突然見舞われた怪現象に、軽いパニックを起こしていた充の思考を、そのリアルな輝きが現実感を取り戻させる。
 場所を移そうとしているのだと直感し、充はなおも襲い来る本を交わしながら亜摘とクリストファーの後を追いかけた。
 都会の闇は深い。
 数分と走らない内に辿り着いた、人気の皆無な路地裏で先んじていたシュラインも合流し、4人になった彼らは顔を見合わせた。
「ナンでだよ。なんでアタシばっかり!」
 頭上をかすめて飛んだ学参書に、たまらず亜摘がヒステリックな悲鳴を上げる。
「話が違う!」
 間近に迫った分厚い赤い表紙の問題集をコートで叩き落とし、充が唸った。現在、何が起こっているのか正確に把握しているわけではないが、先ほど亜摘から聞いた話だと、本屋から離れさえすれば怪現象は消えるのではなかったのか?
「そんな事、言ってる場合じゃないでしょ」
 どこの誰かは知らないが、おそらく同じ目的でここにいるのであろう充にシュラインが、脱ぎ捨てたコートを振り回しながら現実を指摘した。
「だよね。とりあえずこの子を守ることが先決」
 亜摘を背後にかばい、クリストファーが同意する。見えない何かが起きていて、自分の能力ではそれを打開する術がないのなら、今やれるだけのことをするしかない。
「もうイヤだっ、神様!!」
 亜摘が冷たいアスファルトにうずくまり絶叫する。彼女の手には、充から渡された天神様のお守り。
 他意はなかった。
 ただ、祈っただけだった。
 この不可解な自分を襲う理不尽な現実から逃れたいと。
 ゾワリ
 冷たい何かが4人の背中を走り抜けた。感じる能力を持った者がこの場に居合わせたら、この瞬間に起きた気配の変化に悲鳴をあげたかもしれない。
 一瞬の静寂。我知らず、息を飲む。
「‥‥ヒッ」
 誰のものとは知れない、喉の奥に詰まった短い叫び。
 ユラユラと浮き上がった、無数の瓶やカン。先程までよりの明から害意――殺意を感じるそれら。
「‥‥洒落になってないよね」
 冷たい汗がにじむ掌で、充がコートを握りしめる。ずっと本を払い続けた為に酷く型崩れし、所々綻んだそれは既に寿命が近い。無論、シュラインとクリストファーのものも同様の状態だ。
「もうイイ加減にしてよっ!」
 夜の静寂を裂く甲高い声。
 誰もがその時の到来を直感し、祈り瞼を強く落とした。
「そこまでにしときなよ、『天海雪花』」
 金切り声のような音をたて、重力に反していたものが一斉にアスファルトに転がり落ちた。

●導かれる答え
「天海雪花、高校3年。こないだあった人身事故の被害者。そしてそっちの本強襲事件被害者の伊崎亜摘とは高校一年の時のクラスメート」
 青い髪をかき上げ、黒い革手袋で覆った指先で、サングラスを引き抜く。夜目にも鮮やかな紅い瞳が何もないはずの虚空を真っ直ぐに見据えた。
「あんた遅すぎ」
 現れた草間興信所でよく顔を合わせる、最近名の売れてきた女優――サイデルの登場にシュラインが肩の力を抜く。
「彼女、僕たちと同じ今回の件の調査員なんだ」
 予告ない新たな人物の登場に、更に身を強張らせた亜摘にクリストファーが、正面を見据えたまま説明する。
 転がった空き缶が充の靴先をかすめて、無機質な音をたてた。
「悪いね。ちょっと情報取りに行ってたら遅くなっちまった」
 シュライン達4人と対峙する位置で立ちつくしたままのサイデルが、見知った顔に軽く視線を流す。しかし、それも束の間のこと。彼女は再び、やや見下ろす高さの宙を眺めやった。
「さぁ、正体を現したらどうだい! お嬢ちゃん!」
 『現す姿があるんならね』、そうシュラインが指摘しようとしたその時、居合わせた全員の視界が白く霞んだ。
 突然湧いた靄は、微振動を繰り返した後、透けるような淡い人影を形成し始めた。
「‥‥幽霊って誰にでも見えるんですね‥‥」
「いや、そうじゃないだろ」
 立て続けに起こる現実の中の非現実に、言葉をなくした充にクリストファーが返す。
 理由は分からないが、何かの力が作用して、本来見えるべきでないそれを視覚化させているのだ。人の領域を外れた能力を持つクリストファーには、なぜか漠然とそのことが理解できた。
「‥‥天海?」
 地上すれすれに立つ、白い人影の姿を亜摘が恐る恐る確認する。
 色は分からないが、プリーツスカートにリボンタイとダブルのブレザー。きっちりと着こなされそれは、自分のものとは別物に見えたが、間違いなく彼女たちが通う高校の制服だった。
「違いないね?」
 正面からサイデルに問われ、亜摘は首を縦に振った。
 間違いない。彼女は2週間前に不慮の死を遂げた天海雪花だ。1年の時にクラスが同じだっただけの親しい間柄ではないが、常に学年上位に位置し、教師陣から覚えめでたい彼女のことを知らぬ者はいない。
「ふ〜ん。やっぱ受験に対する不満とかってヤツか」
「チガウと思う」
 受験に対する不安を引き摺ったが故の行動だと判断したサイデルに、亜摘が横から口を挟む。
「天海は受験のコト、全然シンパイしなくてイイくらい頭よかったし」
 バカなアタシはお守りに縋らなきゃいけないんだけどさ。
 現れたのが見知った顔であったせいか、それとも順応性が高いのか。おそるおそるクリストファーの背から顔を出した亜摘が御守を握り締めていた手を開く。
 キッと雪花の瞳が鋭くなる。
「お守り、欲しいの?」
 シュラインが持ってきていた御守をポケットから取り出した瞬間、それが弾け飛んだ。
『そんなもの要らない! ‥‥アンタなんか、遊んでるダケのくせに。努力もしないで神頼みするなんて卑怯っ』
 指差し叫ぶその剣幕に、亜摘が再びクリストファーの背後に姿を隠す。名を呼ばれてから安定していた気配が、急激に傾く。サイデルとシュラインが再び身構える。
『ワタシなんて学校と塾と家の往復ばかり! いっつもいっつも、あと一駅行けばアンタ達が遊んでる渋谷だって分ってるのに、その手前で降りて、そしてバカみたいに勉強させられて家に帰るだけ!!』
「遊びたかったんだ」
 ピリピリと張り詰めた空気に、穏やかな声が一石を投じた。
「だよね。だから学参書に当たって、遊んでる亜摘ちゃんを襲ったんだ」
 羨ましかったんだね。
 息が詰まるような毎日から逃げ出したかったんだね。
 一歩一歩、雪花に充が語りかけながら近付く。
『‥‥貴方に何が分かるって言うのよ‥‥』
 フルフルと首を振り、雪花が後ずさる。
「分からないよ。でも遊びたいって気持ちは分かる。誰だって本当はいつだって自由な自分でいたいんだ」
 充の手が、雪花の頬に触れるように空を撫でた。
「遊ぼう?」
 雪花の瞳に戸惑いが滲む。
 その時、息を詰めて事の成り行きを見守っていた世界に、突然電子音が鳴った。
 雪花が事故にあう数日前にラジオで公開されただけな人気アーティストの最新曲。まだ着メロ配信されていないその曲は、クリストファーが大学の友人にせがまれて作ったものだった。
 全員の視線が携帯を握ったクリストファーに集中する。
「いや、好きかなって思って」
 充が笑い出す。つられて他の3人も吹き出した。
「ほら、せっかく良い音楽もあるんだし遊ぼう」
 充が手を差し出す。シュラインもサイデルも差し出した。
「なんかさ、ワケわかんないけど遊ぼうよ。なんだったらアタシのカラダ、貸して上げてもイイからサ」
 亜摘も手を差し伸べる。
 見開かれた雪花の眼に銀色の滴が浮かび上がる。そして生を失った少女は、自分に向けられた手を取った。

●1両編成の山手線
『別に、満足したから成仏するとかってヤツじゃないから』
 仄かに白み始めた東の空を背に、雪花が笑った。口調とは裏腹に穏やかなその表情に、一同は彼女の気持ちをそれぞれに推し量る。
『‥‥でも、スッキリした。遊ぶのって大変ね、ワタシには向いてないわ』
 スゥッと亜摘の眼前まで近寄り、触れられない手が体温に溢れる彼女のそれに重ねられる。
『ゴメンね――羨ましかったの。ずっと』
「アタシだってアンタのことが羨ましかったよ。センセー達のお気に入りで成績だって良くってサ」
「隣の柴は青いって昔から言うしね」
 充が二人の少女を宥めるように告げる。その言葉に『本当にそう』と雪花が目を細めた。
「遊びたかったら、僕を呼んで良いよ。今度は新宿案内するから」
 女の子に優しくするなんて特別大サービスだからね、わざとらしく仰々しく付け加えた充の言葉に、雪花が礼儀正しく頭を下げた。
『ありがとうございます。でも、いくから』
 「何処へ」とは誰も問わなかった。ただ彼女の『未来』を胸の奥で祈った。
『それじゃ、ワタシ帰ります』
 バイバイと小さく手を振って雪花が5人に背を向けた、かと思うと振り返りサイデルに駆け寄る。
『貰って行きますね。折角準備してくれたんだし。ワタシの人生の合格通知ってことで』
 フフと雪花が笑うに合わせて、サイデルが胸ポケットに忍ばせていた知人に作ってもらった合格通知が宙に浮きあがる。
 気付かれてたか、とちょっと不本意そうに眉を顰めたサイデルだったが、ニカっと笑うと豪快に雪花の背を叩いた――手が空を切ったのは、全員が見ない振り。良いのだ、気持ちの問題なのだから。
『じゃ、またいつかどこかで』
 プリーツスカートの裾を翻し、雪花の姿が閉ざされた筈の駅構内の中に消えて行く。
 そんな彼女を見送るように、一曲のメロディが響き渡った。卒業式の定番となった唱歌。それと気付いた瞬間、シュラインが高らかに歌い始める。
 クリストファーの携帯から、とても急造したとは思えない見事に和音構成された曲が凛と冷えた空気を裂くように溢れだし、命の息吹を与えるシュラインの美しい声が紡がれる。
 やがて始発前の山手線の線路に、1両だけの電車が現れた。
 眠らない街で一夜を過ごした若者たちが、それを指差し歓声を上げる。
「そうか。あの娘がこっそり来てたから、行きの電車は乗ってる車両が消えてて、そして朝になると、また帰って行くから彼女だけの電車が走ってたのね」
 遊びたい。でも早く帰らないと学校に間に合わない。みんなに遊んでいることを気付かれたらいけない。
 抑圧され続けた心の引き起こした現象。
 音を立てずに走り去る電車を見送りながら、独り言のように呟いたシュラインの答に、クリストファーとサイデルは今回の草間興信所としての依頼の終了を感じた。
 また明日も見れるかな?
 どうやらタイミングを逸したらしい若者の声を耳に、5人はそれがもう二度と現れる事のないことを確信していた。

●それぞれの現実
「ったく、アイツめ。中途半端な情報寄越しやがって」
 受験がらみの情報ばかり寄越して、雪花が成績優秀だった事を伝えなかった情報提供者をサイデルが罵る。
 当然、聞く者は何処にもいないのだが。
「ったく‥‥だからツメが甘いって言われるんだよ」
 知っていたら、もっと違う小道具が用意できただろうに。そう思うと、なんだか微妙に悔しい。
「お疲れ様でした」
 世間の人間が目覚めの時を向かえる、ほんの少し前の時間。まだ薄暗い街を皆と別れ、一人帰路についていたサイデルの前に、不意に一人の人間が姿を現した。
「‥‥てめぇかい」
 物思いに耽っていた所に、突然声をかけられ、思わず弾んだ息をそうと気付かれないようひそませてサイデルは、今回の事件の依頼人――京師・紫を迎えた。
「どうでした?」
 興信所を訪れた時と変わらぬ黒のコートに黒のスラックス。肩にかかる黒髪を無造作に一まとめにした、なんら変哲のない姿が、浮遊するように現実と非現実の狭間をさ迷っていたサイデルの思考を現実に引き戻す――引き戻されて、サイデルは紫の質問の意味が何処に係るのか計りかねて、眉根を寄せた。
 そんな彼女の様子に、紫は瞳の奥を小さく揺らし微笑んだ。
「はい、報酬です」
 コートのポケットの中から取り出され、そっとサイデルの手に乗せられた物。
 それは親指の指先大の澄んだサイデルの髪の色と同じ、青い色をしたガラス玉だった。
「ボク、現物支給派なんです。だから草間さんに嫌われるんですよね」
 ニコニコと捉え所のない紫の笑顔と、手の中のガラス玉を見比べてサイデルは溜息をつく。
 あれだけの労力の報酬がこれっぽっちじゃ、確かに厭われもするだろう。
 しかし、ガラス玉をそっと握り締めると、不思議とそんな理不尽さへ対する怒りは湧いてこなかった。
 その様子に、紫は満足げに頬に刻んだ笑みを深くする。
 不意にサイデルの視界を目の眩むような輝きが灼いた。
 夜明け――だ。
 都会のビルに幾重にも乱反射した光に、思わずサイデルはその赤い瞳を伏せる。
『大事にしてね。いつかきっとキミの見たいものをたった一つだけ見せてくれるよ』
 ただし、ボクが側にいる時にだけどね。
「え?」
 耳元で囁かれたような、幻聴のような声。
 聞き直したくて慌てて目をあけたサイデルの前に紫の姿はなかった。
 手の中のガラス玉が朝日を浴びて、キラキラと七色の光を放つ。
 フワリと一日の始まりを告げる風が、清々しくサイデルの青い髪を揺らす。

 非現実の世界が終わりを告げ、また新たな現実が幕を上げる。
 けれど彼女の手には、この夜に起こった出来事が全て『現実』であることを証明するように、小さなガラス玉が握り締められていた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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  【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
クリストファー・グリフィス / 男 / 19 / 大学生
サイデル・ウェルヴァ    / 女 / 24 / 女優
室田・充          / 男 / 29 / サラリーマン
シュライン・エマ      / 女 / 26 / 翻訳家その他

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■         ライター通信          ■
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初めまして、観空ハツキです。この度は京師紫からの最初の依頼を受けて頂き、ありがとうございました。
紫最初の依頼――ということで、観空にとっても初の東京怪談だったのですが‥‥如何だったでしょうか? 書いている間に2002年になってしまったりで、とにかく『初』づくしの一品だったのですが、少しでも皆さまにお気に召して頂ける事を祈っております。
さて、今回の依頼ですが。4人の探偵の関わり方次第で入手できている情報が微妙に異なります。少女達の詳しい話、時間的な流れを追いたい方は、別の参加者の結果をご覧下さい。
そして、作中に出て参りましたナゾのガラス玉ですが、紫も申しております通り、紫が登場するシナリオでのみ有効なアイテムとなっております。何が見えるかは貴方次第。もし今回の紫からの依頼をお気に召して頂けましたら‥‥またお仕事をご一緒出来ることを願っております。

サイデルさん、かっこいい女性ですね。観空はこんな女性が大好きです(笑)。
雪花の情報へも最短で辿り付いて頂き、ありがとうございました。サイデルさんの女優としての成功もこっそり楽しみにしております。