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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


『裏罠愚出斗(りびんぐでっと)』
------<オープニング>----------------------------------------------------------
 バブルが弾け、日本経済は混迷の一途を辿っている。
 そんな時代の波を受けて潰れてしまった梶野病院は豪華ホテル並の設備がウリと言う成金趣
味な病院であった。
 だが、世間に言われる直接の原因とは別に、異様に多い医療事故や医者・看護婦が定着しな
い為、病院として成り立たなくなってしまい潰れてしまったと、まことしやかに囁かれている。
 かつての絢爛な建物も手入れする者も無く、風雨に晒され、雑草の伸びるに任せた結果、廃
墟と化してしまっていた。
 そんな病院に入っていく人影が26。
 暴走族『裏罠愚出斗(りびんぐでっと)』の者達であった。
「おっ、ここすっげーよ。俺達のアジトにしようぜ」
 そう言って宴会の準備を始める面々。そんな彼等の周りをうっすらと白い霧が取り巻き始め
ていた。
 ………そして、忘れ去られた場所に響く絶叫。

 とぼとぼと警察署を出てくる少女。リーダー城島雄吾の妹の奈月だった。
 十日前から帰らない兄を心配して警察に来たのだが、札付きの悪である雄吾達はどうせその
辺で遊んでいると決め付けられ、門前払いされたのだ。
 正門を出た奈月は走って銀行に行くと、預金を解約する。
 そして、真っ直ぐある場所に向かっていた。
『草間興信所』
 お金の入った封筒を握り締めながら、震える手でドアを開いた。

----<王優月下の場合>----------------------------------------------------------
 ドアを開いてやってきた少女の形相を見て、思わず草間は苦笑してしまう。
 また、この手の依頼か。ったく、金にならねえな。
 普通の探偵であれば、商売なのだから規定金額に満たない依頼と言うのは見合わせる物なの
であろう。だが、そこが草間のお人好しな所なのか、何故か草間興信所にはそんな依頼ばかり
来るといった有様だ。
「お願いですっ! お兄ちゃんを探してくださいっ!!」
「まあ‥‥‥。気持ちは判らんでもないが、座って落ち着いて話してくれ。状況が判らないん
じゃ、探しようが無い」
 懐に手をやろうとする草間の肩に王優月下(おうゆう げっか)がにんまりと笑いながら手
を置いた。
「レディが二人もいるんだからさ、煙草はカンベンしてよ」
「レディ? ああ、このお嬢さんと‥‥‥誰だ?」
 考え込む草間は、商談というか別の事件でここに足を運んでいた久我直親(くが なおちか)
に答えを求める。だが、久我は苦笑を浮かべて目を背けるばかり。
「な、な、なんなんだよおっ!」
「レディって言うか、こむ‥‥‥あいたたたたっ!?」
 肩に置いた手にぎゅうっと力を込める月下。
「ねえ‥‥‥今、小娘って言おうとしなかったぁ?」
「小麦色に焼けて魅力的って言おうとしたんだよっ!」
 ‥‥‥いや、焼けてないし。
「あ、あの‥‥‥」
 あまりに下らないやりとりに痺れを切らしたのか、女の子は声を上げる。
「お客さんが焦れてるぜ」
 久我のその言葉に少女は気後れしたのか、俯いて視線を彷徨わせた。
「すみません、そんなつもりは無いんですけど。あの、兄を探して欲しいんです!」
「それはさっき聞いたな。で、どういう状況で行方不明になったんだ?」
 草間に促されて少女が語った状況。十日前にいつもの様に走りに出た兄。良いアジトになる
建物を見つけたと話していた事。それがどうやら病院跡である、という事。
「漠然とした情報ではあるな。で、どうする? やるのか?」
 久我と月下の顔を交互に見つめる草間。
「オイラは受けるよ。お金はいらない。家族がいなくなったら悲しいもんね」
 月下はそう言いながら、軽く目を伏せる。久我はと言うと、草間の顔を見ている。
「どうせあんたは受ける気無いんだろ? 月下一人じゃ心許無いから俺も受けるよ」
 交渉成立、と言ったところか。二人の言葉に少女は眦に涙を溜めて、深々と頭を下げた。
「あ、ありがとうございます! お金なんですが、これしかなくて‥‥‥」
 差し出された封筒を困った様子で見つめる月下。
「だから、オイラはいらないよ」
「月下が取らないものを俺だけ貰う訳にもいかないだろ。どうする? 所長さん」
 溜息混じりに少女から封筒を受け取ると、草間は引き出しの中にそれを納めた。
「取りあえず預かっとく。それでいいかな?」
「はい。よろしくお願いします!」
 ようやく、その少女の口元にぎこちない笑みが漏れた。そして、久我と月下と少女は興信所
を後にする。兄の消えた病院を探しに。

 王優月下の守護霊のセロム。
 通常白虎と言った人間霊以外の霊が守護をする事は極めて稀である。考えられるのは前世で
白虎と深い因縁があり、それを白虎が忠実に果たしていると言った所であろう。
 とは言え、その白虎の力を発現させる能力に目覚める前には、酷い虐待を受け育っていた。
 家から捨てられ、このような仕事をするようになってから、隣を歩く久我直親とたまに仕事
をする。優しくはないが、意地悪をしない久我の事はそんなに嫌ではない。
 それはさて置き、地道な聞き込みにより、月下達はついにその病院、梶野病院の前に立って
いた。
 だが、その前に立ちはだかる人影が一つ。
「奈月ちゃん!」
「‥‥‥百合子さん」
 友達なのかな。に、してはなんか雰囲気悪い。
 と、その百合子が歩み寄ってきた。
「その人たちは?」
「私! 探偵さんたちにお兄ちゃん探して貰えるように頼んだんです。だから、百合子さんは
危ないかもしれないから、帰ってください!」
 その百合子とか言う娘は月下と久我の顔を交互に見つめてから、一礼する。
「私も一緒に探します! いいですよねっ!」
「オイラは別に構わないけど‥‥‥」
 そう漏らすが、久我が厳しい目で百合子を見つめていた。
「断る。自分の身も守れるかどうか判らない娘と一緒に行動するほど余裕は無い」
「見くびらないで下さい。これでも剣道3段です!」
 それを聞いて、久我の表情が更に厳しくなった。
「竹刀か木刀を持っているらしいな。抜け」
 袋から出して竹刀を構えると、男も同じように袋から木の剣を取り出して構えた。
「好きに打ち込んで来い」
 そう言われて、百合子の視線が急に厳しくなる。
 さすがに自分で言うだけあって、百合子の太刀筋は大した物だった。攻撃的な上段と時折見
せる鋭い突き込みに久我もやがて防戦を強いられていた。
 そして切り札とも言える下段からの胴打ち、つまり逆袈裟に切り払う攻撃を見舞う。
 紙一重でそれは見切ると、久我は距離をとって剣を降ろした。
「成程、口だけでは無い訳か。いいだろう、来たければくればいいと思うぜ。ただ、自分の身
は本当に自分で守れよ?」
 久我はそう言うと、手にしていた木剣を百合子に投げた。
「使うといい。ここは普通じゃない。本気で俺達にも余裕なんか無さそうなんだ」
 目の前に聳え立つ病院の異様さ。
 それはかつて病院であった建物の廃墟だから、と言う理由だけでは片付けられないような何
かがそこに存在するのではないかと思わせるようだった。
「おかしいんだ、ここは。三角形の建物と土地、T字路の突き当たり、よどんだ水路の外側、
陰木の林に玄関前に高く盛られた盛土‥‥‥その他様々‥‥‥」
 風水的に言えばこの建物は意図的に大凶となるように設計されているのである。これなら、
潰れて当然と言う感があった。
「よし、行こっか! あ、オイラは王優月下! よろしくね」
「滝沢百合子よ。よろしく」
「‥‥‥久我直親だ」
 一言ずつ自己紹介を済ませると病院の中に入っていこうとする、が。
 突然久我が立ち止まって、奈月の前に立つ。
「悪いが連れて行く訳にはいかない。ここで待っていてくれ」
 奈月と久我がしばらくやり取りをしていたが、叶わぬと見て百合子に相手を変えてきた。
「お兄ちゃんを! お兄ちゃんを探しにいきたいんです!!」
「必ず見つけてきてあげるから‥‥‥信じて」
 そう言われて、渋々と頷く奈月。そして、その首筋に月下が飛びついた。
「だあいじょぶだよっ! そんな心配しなくたって。すぐに見つけて戻ってくるからさっ」
 月下の声に、奈月の双眸から涙がこぼれる。
「‥‥‥お兄ちゃんのこと、お願いします」

 歩を進める毎に全員の表情が険しくなってくる。
「あのベンチなんか怖いなあ」
 百合子が目を逸らした獅子の形をしているが、尻を向けているので顔は良く見えないのだが。
 門から入った正面のドアには鎖が掛けられ、そこから彼等が入ったのではないらしい事は見
て判る。
「ストップ!」
 月下が何やらしゃがみこんでいた。
「どうしたの?」
「あれ‥‥‥」
 指差す先には、微かだかバイクの轍の跡らしき物が幾つか先に続いている。
「しかしあれだな。なんでこんなところをアジトにしようと企んだのか」
 溜息交じりに直親が呟く。
 その跡を追ううちに、非常階段のドアが微かに開いているのを見つける。しかし、そこに無
理やりこじ開けた様子は無かった。開いていたと言う事だろうか。
 月下がドアノブに手をかけ‥‥‥た、瞬間! 外開きのはずのドアが内に急激に引き込まれ、半透明の巨大な手が迫ってきて、胴のところをつかまれた。 慌てて背中の方を掴む久我と百
合子。

 ガオオオオッ!

 セロムが月下を掴む半透明な巨大な腕に牙を立てる! 
 前足を追い越さないように後ろ足を出す歩法を刻みながら天・武・博・亡・烈と唱える久我。
その声が響く中、その腕の握る手が緩んだ!
「やあああああああっっ!!」
 その巨大な手に、最上段からの渾身の一撃!!
 床に叩きつけられそうになったのを間一髪でセロムの力が拾い上げる。
 その腕の先にいたのは、生気を失った暴走族風の男。
「月下ちゃん だいじょぶっ!?」
「ううっ。ちっくしょーっ! 痛いけど平気だよっ」
 駆け寄る百合子の体を、廊下の向うから物凄い勢いで走ってきた黒い影が吹き飛ばす!
 飛ばされた百合子の体に唸り声を上げて襲い掛かってくるそれに、セロムが体当たりして逆
に吹き飛ばした!
 だがその事で瞬間、月下の周りに空白が出来ていた。

 バキバキバキッッ!!

 頭の後ろの方で音と衝撃と痛みが一度に襲ってきた。
 何事かと振り向こうとした瞬間、首を強い力で締め付けられる。苦しい! 苦しい!!
 視界が段々とぼやけてくる。
 声を出そうにも息をする事すらままならない。その手が的確に頚動脈と気管を抑えているの
か、苦しさと同時に意識が朦朧とし始める。オイラ‥‥‥死んじゃうかな。
 だが、その時だった!
 純白のカードが月下の首を締める手首そのものを切り裂いたのは。
 皮一枚でつながっている手がだらりとぶらさがり、そこから解放された月下は咳き込みなが
ら地面に転がって逃れた。
 そして一瞬の後、ドアから伸びたその腕から噴水のように血が噴き出して月下を濡らす。
 新たな脅威を感じとってか、黒い影は去り‥‥‥大きな腕を操る男から何かが抜けていく。
「逃がすか! 神火清明、神水清明、神風清明!!」
 久我が投げ付けた形代が白い物に当った瞬間にそれが消滅し、暴走族風の男は力を失ってそ
の場に倒れこんだ。
「これは一体‥‥‥」
 外から、恐らく高校生と思われる男とそれよりは少々年齢の行った女性が入ってきた。
「天宮か‥‥‥」
 雨宮薫(あまみや かおる)と不知火響(しらぬい ひびき)であった。
 陰陽師が総て知り合いと言う訳ではないのだが、同じ東京で活動していれば嫌でも顔を付き
合わせる機会も数多くあった。そんな訳で雨宮と行動を共にしていた響の事も見知っている。
「興信所からの依頼で来た。悪いが休んでる暇は無い。詳細は歩きながら話す!」
 早歩きで中に入っていく雨宮に戸惑いを覚える。
 いつものヤツであればこんなに熱くなることもないだろう。
「ち、ちょっとまってよ!」
 苦しげに声を絞り出す月下に響が優しく寄り添って、ポケットから喉飴をとりだす。
「余裕が出来たら、舐めとくと楽になるわよ」
「あ、ありがと‥‥‥」
 響の優しげな瞳に思わず照れてしまう月下。だが、和んでいる暇は無い。
 月下の事はとりあえず響に任せ、百合子は雨宮に駆け寄っていく。
「休んでる暇は無いって、なにかあったの? 確かに雄吾さんのところには早く行かないとい
けないかもしれないけど」
 無論、死んでいる可能性があるのも判っているが、言葉にするのは嫌な感じがする。
「依頼人が攫われた。だから、急ぐんだ!」

 移動の最中に響が告げた情報で敵の正体が妖術師である事を知る一行。そして病院内を捜索
する中で、殆どの場所を見回ってしまった‥‥‥はずなのだが、どうしても、妖術師の憑依し
た城島雄吾を見つける事が出来ない。
「あのさ‥‥‥さっき歩いてて思ったんだけど。院長室って無くない?」
 月下の言葉に一行は玄関近くの院内案内図前まで戻ってきていた。
「あれっ! 通ったはずなのに‥‥‥」
 思わず百合子は声を上げる。どうやら、通ったはずのところなのだが。ナースステーション
から霊安室までドアを開けてくまなく調べ、見落としているなんて事は考えられない筈なのに。
「やっぱり、あれか?」
 雨宮に水を向けてみる。
「多分、それで間違いない」
 陰陽師の間で納得されても、他の三人には訳がわからない。
「もう、二人で納得しないでよ!」
 百合子の言葉に、顔を見合わせる二人。
「結界だよ、たぶん」
「形代使った結界だと思う。呪禁道の道士だと思うんだけどな、鎮められていたのは。薬師と
しての役目もあった呪禁道士の神社壊して病院ってのも皮肉な話だけどな」
 雨宮の言葉の後に言葉を続ける。さっき話し合って出した答えなのだが。そして、院長室の
あったはずの場所に一行は向かうが、やはり着かない。
 先程からナースステーション、内科医局、配膳室、検査室、リハビリテーションル−ムの周
りをぐるぐると回っているようだ。
「もおっ! 急いでいるのにっ」
 焦れた百合子が思わず声を張り上げた。
「落ち着いて。大体わかったから」
 月下に気を使って歩調を合わせていた響が小アルカナのAを4枚と愚者のカード懐からを出
す。そして、『棒』ナースステーション、『金貨』内科医局、『聖杯』配膳室、『剣』検査室、『愚者』リハビリテーションル−ムと説明する。
「え? それってどう言う事??」
 そう聞いてきた月下の頭をぽんと叩く響。
「形代は同時じゃ無いと剥がせない。でしょ? 雨宮くん」
「多分、そうだろう。でも、ただで剥がさせて貰えるとは思えない。けれどどこかに2人配す
る事はできない。みんな、覚悟はできてる?」
「もちろん♪」
「絶対、助け出すんだからっ」
「オイラ、頑張るよ!!」
 順番に響、百合子、そして月下が決意を述べる。
「‥‥‥行くか」
 順番にカードを引くと、それぞれの場所に歩いていく。
 
 月下が引いたのは愚者のカード。かつてリハビリテーションル−ムだったこの部屋は、結構
広くてどこに形代があるのだろう。大きな鏡やら台所やら運動器具やら。様々な物が、ただそ
こにあった。
「セロム! どこにあるかなあ」
 そう、自らの守護霊に語りかけ、また視線を戻そうとしたその時だった。
「きゃあっ!?」
 衝撃を感じて倒れこむ月下。だが、それをセロムは不思議そうに見つめるだけだった。
 セロムにはどうやら見えていないそれ。
「‥‥‥お父さん‥‥‥お母さん‥‥‥」
『寄るなっ、化け物!』『ああ気持ち悪い』『何だその目は! やはり化け物は化け物か』
 自分を捨てた、父と母。
 その口から放たれる罵詈雑言は肉体的な痛みを伴う物ではなかったが、鋭い刃となって月下
の心を切りつける。
 突如として双眸に大粒の涙を溜めた月下にセロムはどうしていいか判らずにただ、その周り
をぐるぐると歩くだけだった。
『お前さえ生まれてこなければ!』『いらない人間なのよ!』
 ‥‥‥やめて。
『消えて無くなってしまえばいい』
 ‥‥‥やめてよ!
『ああ、顔を見るだけで吐き気をもよおすわ』
 オイラは‥‥‥オイラは‥‥‥‥‥‥。
『お前と同じ部屋で飯が食えるか! 出て行け!!』
 オイラは‥‥‥。
『死んでしまえばいいのに』
 オイラは、負けないっ!
 心の中でそう叫ぶ月下。その声が響き渡ると同時に父と母の幻影が消し飛ぶ。
 その時、セロムが大きく吼えた。
 正気に戻った月下もセロムの視線の先に気がつく。鏡に映っている自分が別の動きをしてい
たのだ!
『ちッ‥‥‥折角脳味噌の中に直接幻影を送り込んだのに。意外としぶとい』
 鏡の中の月下がからからと笑う。
「‥‥‥許さない!」
 投げ付けた鉄アレイが鏡を打ち砕いた。
『あっはっはっは。あー、怖い』
 総ての破片から月下の声が響いてくる。鏡を割ったからと言って何のダメージも無いようだ。
思わずへたり込んでしまう。
 怒りが押さえられない。
 どうにかなってしまいそう。
 ‥‥‥‥‥‥その時。
 柔らかくしなやかで、暖かな感触が月下を包み込んだ。セロムが月下を抱くようにして丸まったのだった。そしてその白虎の体は徐々に月下に同化して行く。
 言葉を発せられぬままそれに身を任せていると、完全に同化して体が白く輝き発している!
「ば、馬鹿なっ!?」
 その手で鏡に触れると、中の物が触れる。と、言う事はっ!?
『ぎ、きゃあああああっ!』
 断末魔の叫びを残して鏡の中の月下は消えて行った。
 そして。
 破れた形代が突然、鏡の破片の上に浮き出してきた。
「はあはあ、はあ‥‥‥」
 ふと横を見ると、セロムがいる。オイラ勝った、勝ったんだ。あんな幻影に負けなかった!
 何かを乗り越えたような気がする。そんな月下を優しく見つめるセロム。
「勝ったあっ!」
 意気揚揚とリハビリテーションルームを後にした。
----<エピローグ>--------------------------------------------------------------
 全員が同時に走り出す!
 誰一人欠く事無く全員が勝利して結界が崩壊し、その中心の院長室のドアがそこにあった。
 開いてみると、ソファーの上に安らかな寝息を立てて眠る奈月の姿を発見する。
「だいじょぶっ!?」
 走り寄った月下の呼び掛けに、奈月はゆっくりと目を開く。
「こ、ここは!? お、お兄ちゃんは!?」
「心配するな、向こうで寝てるよ」
 雨宮のその言葉に全員の視線が集中する。
「妖術師は倒した。すべては終わった」
「ほ、ほんとっ!?」「やったのね」「いよっしゃあっ!!」「倒したか‥‥‥」
 四者四様の声をあげる中、奈月が立ち上がって一同を見渡す。
「お兄ちゃんのところに連れて行ってください!」
 そして、伴われてやってきたナースステーションで兄の姿を確認し、走り寄る奈月。
「大丈夫なのか?」
「ああ、完全に妖力は失せてる」
 兄の体を抱き起こし、乱暴にゆさゆさゆさゆさと、揺さぶって声をかける。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
 そして、目を開く雄吾。
「奈月‥‥‥‥‥‥‥‥はらへったあ、朝飯はまだか!?」

 兄のバイクに同乗して、奈月は家へと帰っていく。お礼ととびっきりの笑顔を残して。
 だが、奈月の笑顔が浮かぶ中、心の中に何かが引っかかっていた。
 何かは判らない。判らない何かが。
    
                                     【終幕】

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        ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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          【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
          王優 月下    女   16   高校生
          久我 直親    男   27   陰陽師
          滝沢 百合子   女   17   高校生
          雨宮 薫     男   18   高校生(陰陽師)
          不知火 響    女   28   臨時養護教諭
        □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
        ■         ライター通信          ■
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    お待たせいたしました! 篠田足往(しのだ あゆき)と申します。
    随分活発に動いてらっしゃるようで、お名前は見かけておりました。
    白虎が守護霊というのは個性的で、キャラが立ってて大変面白いと思います。
    十分に描写できたか、心配なのですが。まあ、このようにしてみました☆
    一応、ハッピーエンドです。
    集まった面子の戦闘能力が高かったので、シナリオ成功、ってことで進めており
   ました。まあ、何か含みのある終わり方ではあるんですが、また別のシナリオで何
   かつながるやもしれません。
    感想御意見等いただけますと、今後の参考や直すべき点として注意いたしますの
   で、よろしければお願いします。
    それでは、篠田のシナリオをお買い上げくださいまして、誠にありがとうござい
   ました。またの御指名をお待ち申し上げております。