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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:呪いの家
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜4人

------<オープニング>--------------------------------------

 剣のように細い月が、滴り落ちる血の色で地上を照らす。
 まるで、魔女たちが宴を開きそうな夜だ。
 輝くネオンサインに飾られた大都会の夜。人工の光の溢れる街角は、かえって迷信的な恐怖心を呼びさますのかもしれない。
 草間武彦は、一つ頭を振って不快な想像を追い出した。
 仕事の話を煮詰めた帰りである。
 どうも、感性が奇妙な方向に影響を受けているようだ。
 苦笑を押し隠しながら、彼は事務所の扉をくぐった。
 幾人かの所員が、帰着した所長に挨拶をする。
 草間興信所。
 彼が所長を務める探偵事務所である。怪奇探偵事務所と呼ばれることもある。おそらく彼にとっては、幾重にも不本意なことであろう。とはいえ、その評判があるからこの事務所の経営が成り立っている、という側面もあるのだが。
 草間がつい先刻まで会っていた人物は、不動産会社の社長である。
 怪奇探偵の噂を聞きつけて、仕事を依頼してきたのだ。
 練馬区にごくありふれた庭付き一戸建てがある。だが、その家には住人がいない。より正確には、居つかないのである。理由は、住む人の多くが不幸な目に遭遇しているせいだ。要するに『呪いの家』というわけである。
 住宅の販売価格も一千万円を切っている。中古住宅とはいえ、土地つきでこの値段なら東京では破格といえるだろう。
 おもわず草間が、いっそ自分が買ってしまおうかと思ったほどだ。
 まあ、冗談はともかくとして、不動産会社がこの物件をもて余しているのは事実である。
 そこで、幽霊話や呪いが事実無根である、と、草間に証明してもらいたい。
 これが今回の依頼内容だった。
「手の空いているものはいるか?」
 彼が所内を見回しながら言うと、四人ほどの所員が手を挙げる。
 満足そうに頷いて、草間はざっと事情を説明し最後にこう結ぶ。
「よし! 今回は二班に分けるぞ。二人は家の近所の聞き込みを行った後、実際に泊まってみてくれ。残りは俺と一緒に家の経歴調査だ。いくぞ!」
 草間がコートをひっつかみ、勇んで事務所を飛び出してゆく。
 所員たちも緊張の面持ちでそれに続いた。
 久々の大口依頼である。
 是が非でも成功させたかった。
 事務所の為にも、彼ら自身の財布のためにも。
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呪いの家
 駐車場に降りた五つの人影が、二台の乗用車に分乗した。
 社用車という名をもった中古の老兵たちである。
 一台には草間武彦が乗り、問題の家の経歴調査に向かう。具体的には警察や郵便局をまわって情報を収集するのだ。このような機関は普通、情報を公開しないものだが、そこは蛇の道は蛇というものである。探偵などをやっていると顔が利くようになるのだ。
「よし、行くぞ」
 呟いた草間が何気なくバックミラーを覗く。そして、その姿勢のまま硬直した。
 後部座席には誰もいなかったのだ。
「どうやら、男チームと女チームに別れてしまったようですね。所長」
 絶句している草間に、助手席に座った所員が話しかける。
 たしか、所長が指示したのは二人ずつ別れよ、ということであったはずだ。
 完璧に無視されてしまったらしい。
 しかも、こちちのチームには女性が一人もいないとは。
「‥‥俺、嫌われてんのかな‥‥」
 何故か悲しそうな溜息をつく草間。
 慰めるように、所員が彼の肩に手を置く。
 中古のセダンの中には、哀愁の空気が満ち満ちていた。

 さて、哀れな所長を見捨てた女性陣。すなわち、王優月下、シュライン・エマ、杜こだま、の三人は、最年長のシュラインが運転する軽自動車で練馬区に向かっている。
「まずは聞き込みするんだよね♪」
 後部座席を占拠した月下が、ピクニックに出かける気安さで言う。
『そうよ』
 と、前の二人が異口同音に答え、非友好的な視線を絡ませた。
 一瞬、月下が鼻白む。
 なんか、シュラインとこだまってキャラかぶってない?
 おもわずそう考えてしまう月下だったが、賢明にも発言を避けた。
「しかし、私は土地の調査をしたいと思っている。聞き込みは、あなたたち二人にお願いしたいが」
 淡々とした口調で、こだまがいう。
「土地なんか調べてどうするのよ」
 冷淡にシュラインが問い返した。
 軽自動車の狭い車内で、室温が三℃ほど低下する。精神的に。
「地脈と気脈を調査するの。風水に基づいてね」
「ふうん」
「なによ。何か言いたそうね」
「べつに。ただ、風水が常に正しいなら滅びた王朝なんか無いだろうなって。そう思っただけよ」
 シュラインの辛辣な台詞にこだまは沈黙した。だが、その沈黙は恐れ入ったためではなく、効果的な反論を考えるためのものであった。
「ねえねえ。お菓子買っていこうよ。どうせ長期戦になるんだしさ」
 取りなすように、月下が沈黙を埋める。
 まったく、こんな狭いところで口論などしないでほしいものだ。
 そのような言葉を言外に聞いたのか、シュラインもこだまも瞳の光を和らげた。
 たしかに、即席とはいえチームなのだから仲良くした方がよい。それに、調査の手段として異能が揃っているのはありがたい。こだまの風水に、シュラインの聴力。それに、月下の霊能力。これだけあれば鬼に金棒である。ないのは金力と権力くらいだが、まあ、そこまで揃うのは、かえって嫌味というものだろう。
 減価償却をとうに済ませた軽自動車が、老体に鞭打って練馬区を目指す。

 問題の物件に到着した彼女らは、家の地脈を調べるこだまを除いて、さっさく近所の聞き込みを開始した。
 その結果、幾つかのことが明らかになった。
 まず、この家が建てられたのは十数年間だということ。それから、住人が二十数回替わっているということ。
 これは、単純計算で半年に一度は替わっていることになる。空き家になっている時期もあるから、そのあたりを計算に入れると三ヶ月単位くらいになるだろうか。
 次に、この家から死人などが出ていないことも判った。ただし、この二年間で、という注釈付きだが。それ以前のことはというと、はっきりした証言が得られなかった。まあ、人間の記憶など、そんなものであろう。
「判らないわね‥‥。この土地の地脈にも乱れはないわ。それどころか、吉凶でいうなら吉よ。ただ‥‥」
 月下とシュラインの話を聞いて、こだまも調査結果を披露する。
「ただ、なに?」
 青い目の美女が問い、
「妙な感じがする。でしょ?」
 赤い瞳の美少女が、黒髪黒瞳の美女に代わって答えた。
 苦笑しながらも、こだまが頷く。
「禍々しい怨念というよりは、生々しい執念みたいなものを感じるのよ」
「オイラも」
「先入観じゃなくて?」
「その可能性は否定できないけど」
 こだまが自信なげに応じる。
 シュラインは、べつに意地悪でいっているのではない。実際、よくあるケースなのだ。怪談の舞台になる場所では、人間は先入観から不気味さを感じてしまう。そしてそれが、話を盛り上がらせる要因でもある。
 とはいえ、シュライン自身も不気味さは感じている。ただ、全員が一つの結論に向かって走るのは危険である。彼女がこの中で最年長でもあるし、アンチテーゼを提示しなくてはならないのだ。
「まあ、とりあえず食事にしましょう。他の情報も交換したいし」
 建設的な意見であった。
 寒空の下で推論を語っていても、あまり心楽しいものではない。
「コンビニ弁当なのは、ちょっと味気ないけどね」
「オイラは平気だよ。慣れてるからね」
「私も平気よ。慣れているから」
 年少組の回答に、シュラインが、やれやれと肩をすくめた。
 もっとも、二人の「慣れている」は、多少、意味合いが異なる。留学生で苦学生のこだまは、あまり金銭に余裕がない。したがって、外出時にはパンかコンビニ弁当で済ませることが多い。月下の方はというと、そもそも作ってくれる人間がいない。寮にいるときならば食事は支給されるが、さすがに弁当までは無理というものである。
 それぞれに辛苦を抱えているのだ。
 邸内はきちんと清掃がなされており、電気やガスや水道も使えるようだった。
 このあたり、幽霊屋敷というイメージからは外れるが、売り物である以上、不動産会社が手入れをしているのだろう。料理好きのシュラインが、これだったら自分で作れたのに、と、残念がったものである。
 食事はリビングルームでとることになった。
 この部屋には、ソファーやテレビに暖房器具まで用意されていた。家具付き住宅というわけである。不動産会社の涙ぐましい努力であった。皮肉はともかくとして、暖房器具はありがたい。
 テーブルに広げられた食料は、主食になるものより菓子類の方が多かった。まあ、女性ばかりなのだから、当然といえるかもしれない。
 即興の座談会に花が咲く。

 深夜、静寂に包まれた邸内に、すすり泣く声が響く。
 思い思いの格好で横になっていた三人が跳ね起きた。
 ごく小さな声であったが、緊張していた彼女らの耳には、はっきりと聞こえたのだ。
「聞いた? いまの」
 シュラインが問う。
「聞こえたけど、霊の気配なんてないよ」
 咄嗟に守護霊のセロムを放った月下が、情けなさそうに首を振る。
「私にも聞こえたが、羅針盤は振れていない‥‥」
 床に並べた道具を見つめながら、こだまも首を振った。
 霊的なものならば、月下やこだまに感知できぬはずはない。逆に人間が相手ならば、シュラインが気付くだろう。
 とうことは、相手はこの三人をして感知できぬほどの存在なのだろうか。
 三人の背筋を、見えない手が這い回った。
 未知なるものへの迷信的な恐怖に、身体が硬直しかかる。もし彼女らが普通の女性だったら、無意識の野に旅立つか、この家から逃亡するかしていただろう。
 だが、彼女らは普通の女性ではない。
 怪奇探偵なのだ。
 こだまは、懸命に風水道具を操っていた。気配もなく羅針盤にも感知されない。そんな霊などあるはずがない。であれば、それは霊ではないという結論に達する。
 月下は、信頼するセロムに周囲を探らせていた。困惑と不審に支配されつつも、その表情から自信は失われていない。やがて、セロムが彼女に一体の守護霊が接近しつつあることを告げる。これで決まりだった、幽霊が守護霊を持つはずがない。
 シュラインは、早鐘を打つ心臓を必死でなだめながら思考を巡らせていた。霊でなく人間ではないもの。‥‥神さ‥‥。出かかった解答に、激しく頭を振る。神様がすすり泣きするなど聞いたこともなし、人間を脅かす理由もないだろう。そのとき、ふと彼女の聴覚は異質な音を捕らえた。微かなモーター音。常人には聞き分けられない、小さな小さな駆動音。瞬間、シュラインの脳裡に方程式が完成する。
 人ではなく霊でもない。それは、機械である。
『これはすべて、人間の仕組んだこと!!』
 三人の声が和音を奏でる。
 思考の方向性はそれぞれ違っていたが、全員が同時に気付いたのだ。
 この事件は幽霊の仕業ではない。生きた人間が起こしたことである。
 それにしても、と、皆が思った。
 幽霊屋敷という悪評が立って十数年。その間、犯人たちはずっと嫌がらせを続けてきたのだろうか。であれば、最初に感じた執念のようなものの正体は、これだったのだろうか。
「犯人が家に近づいてくるよ。侵入するつもりだね。きっと」
 月下が戯けた口調で報告する。瞳には挑戦的な光が踊っていた。
「いま追いかけても逃がしてしまうわ。侵入させましょ」
「賛成。不法侵入の現行犯なら、私たちにも逮捕権があるしね」
「オイラも賛成。お仕置きしてあげた方が犯人のためだよ」
 性格の異なる三人だが、意見が一致した。
 おそらくは、一時的にせよ恐怖を感じたことに不快感があったのだろう。それに、霊を偽って他人に迷惑をかけるなど、許される行為とは思えない。悪戯だとしても、明確な目的があったとしても。
 三人はこっそり移動し、家の各所に分散する。

 玄関の扉が音もなく開き、中年の男が入ってくる。
 まるで、自分の家のような気安さであった。
 ポケットから箱状のものを取り出し、にやりと笑う。
 箱の表面に並んだスイッチに節ばった手で触れた。
 すると、子供部屋で鳩時計が鳴きだし、書斎で本棚が揺れ、トイレの水が勝手に流れ出す。人工の騒霊現象(ポルターガイスト)というわけである。
 悦に入ったように唇を歪める中年男。
「おじさん。楽しい?」
 と、突然の声に立ち竦む。
 声の主は、月下であった。
 階段の手すりに腰をかけ、冷ややかな目で男を見下している。正直に言って、生きた人間には見えなかった。月下が趣向を凝らしたのだ。
 中年男は息を呑み、踵をかえす。
 だが、目の前に二つの人影が立ちふさがる。
「遊びは終わりだ。小悪党」
 冷然と、こだまが宣言する。
 男はふたたび振り返って、台所方向へと逃げ出した。が、何かに足を取られ、派手に転倒する。
 床上五センチメートルのところに、ナイロンロープが張ってあったのだ。
 むろん。三人が作った罠であった。
 この罠に追い込むため、それ以外の逃走経路を塞いだのだ。女性である彼女たちは、残念ながら荒事には向いていない。逆上した犯人が反撃に出たとき、怪我をするのもばかばかしい話である。したがって、狡知を巡らせて罠に追い込んだのである。
 もっとも、誘い込むのではなく追い込むあたりに、彼女たちの心情が如実に現れている。ありふれた表現を使えば、女性を怒らせるものではない、というところだろうか。
 唐突に男が立ち上がった。身体中痛いだろうに、ふたたび逃走を開始する。
 見上げた根性ではあるが、感心してばかりもいられない。彼女たちも後を追う。
 だが、家の構造を熟知しているという点に関しては、男の方に一日の長があるのだろう。なかなか追いつけない。追跡劇は二分間ほど続き、ついに男は裏口から靴下裸足で逃げ出した。無念の臍を咬む三人。
 ところが、その裏口から、男のくぐもった呻きと、ものの倒れる音が聞こえてきた。
 不審顔で覗き込んだ彼女たちの三色六個の瞳に映ったのは、悶絶して襟首を捕まれている犯人と、
「武彦さん!」
「所長!」
「草間さん!」
 と、彼女たちが紹介を割愛させてくれた人物だった。
「ちっとばかり詰めが甘かったな。ま、八〇点ってところだろう」
 シニカルな笑いを浮かべる草間。
 勝手に点数を付けられた三人は、不満と安心が混ざった表情で顔を見合わせ、くすりと微笑した。
 騒々しい夜は、どうやら終わりを告げたようである。

「幽霊が、住人を追い出す理由って何だよ」
 そう言い置いて、草間は事件の概要を話はじめた。
 犯人を警察に引き渡したのち、ぐっすり眠って、翌日のことである。
 不動産会社からの報酬も入り、解決祝いということで寿司屋に来ているのだ。
 滅多にできない贅沢であろう。
 席上、高級食材を食い散らかしている月下が、草間に尋ねた。
 彼女たちは、それぞれの特殊技能によって犯人が人間であることを突き止めた。だが、草間には特殊な才能などない。どうして判ったのか、と。
 その答えが、前述の草間の言葉である。
 彼には、べつに特殊技能など必要ない。ただ一つ、論理的な思考力があれば良い。
 要するに、住人を追い出した、という点に草間は疑問を感じたのだ。
 非常に低劣な表現をすれば、幽霊とは「見られてナンボ」の商売である。少し穏当に言い換えると、訴えたいことや、やって貰いたいことがあって出てくるはずだ。望みを叶えうる人間を追い払うのでは、本末転倒というものだろう。塚や社ならばともかく。
「でも、恨みとか、そういうのがあったんじゃないの?」
 何故か安いネタばかりを注文しながら、シュラインが問い返す。
「ああ。だから、経歴を調べた。だれも付いてきてくれなかったけどな」
 冗談めかして草間が答える。
 彼が調べたのは、あの家で自殺なり殺人事件なりがあったかどうか、である。とくに最初に住んだ人間に関してのデータは、細密に検討した。何かあるとすれば、初代が最も疑わしい。そして、その予想は的中した。といっても事件性のあるものではない。最初の持ち主が家を手放した原因は、借金である。
「借金?」
 口中に広がる大トロの味に陶然となりつつ、こだまが質問する。
「こだまは、まだ日本には来てなかったと思うが、最初の持ち主があの家を売りに出したのは十年前。その頃、何があったか知ってるか」
「聞いたことはあるわ。たしか泡沫経済(バブル)の崩壊でしょ」
 正解、と、短く答え、草間は説明を続ける。
 泡沫の夢が弾けてみれば、後に残ったものは借金のみ、という状況だ。当時としては珍しくも何ともない。
 結局、最初の持ち主は家を売りアパート暮らしを始めた。だが、家族仲は冷え切ってしまった。夢のマイホームを失ったのだから、仕方のないことなのかもしれない。妻は夫に冷たくなり、子供は親を疎んじる。そんな中、さらに悪いことは重なる。主人が失業したのだ。それが決定打になった。妻は夫を見限り、子供を連れて実家に帰った。大都会の片隅に取り残された男は、再就職の当てもなく、世を恨むようになってゆく。
 あの家は、自分の城だ。苦労して苦労して手に入れたのだ。だれにも渡さない。
 そのように考えた男は、ありもしない幽霊話をでっち上げたり、嫌がらせをしたりして、新しい住人たちを追い出そうと画策する。
 あるいは、悪評が流れて価格が暴落すれば、また買い戻せるという打算も働いたのかもしれない。推測するしかないことであるが。
「でも、十年も続けるなんて、どうかしてるよ」
 月下の感想も、もっともである。
 一人の男と二人の女が、同様に頷く。
 やはり推測するしかないことだが、あの男の精神は、どこかでねじ曲がったのだろう。いつしか行動自体が目的化してしまったのだ。
 なんとはなしに黙り込む一同。
 寿司屋のテレビは、ニュース番組を垂れ流している。
「今日未明、台東区で放火と見られる火事がありました。警察と消防の調べによりますと、ローンを払えなくなった容疑者が、妻と子供を殺害し、自宅に火を放ち、自らも自殺を図ったとのことです」
 現今の世情を象徴するようなニュースだった。
「なんだか、暗澹となる事件ね」
 肩をすくめて、シュラインが溜息をつく。自分が手がけた事件についてか、テレビの話題についてか、はたしてどちらであっただろう。
「一生懸命に努力して酬われないような国は、必ず転覆するわ。いくら繁栄しているような見えてもね。柱が腐ってたら家は建ってられないもの」
 熱いお茶をすすり、こだまが呟いた。
「こだまは社会派だね☆」
 月下がからかい、シュラインが黙ったまま苦笑する。
「ま、たまにはね」
 照れくさかったのか、こだまも曖昧な笑みを浮かべた。
「あのなあ。社会を心配するより、俺の財布を心配してくれねぇか?」
 情けない表情を顔に印刷し、情けなさそうな声を草間があげる。
 寿司ネタのショーケースを覗き込んでいた三人が、顔を見合わせた。

 東京の街で繰り返される、さまざまな悲喜劇。
 喜怒哀楽をローラーで挽き潰しながら、今日も大都会は夜を迎える。
 時だけは、万民に等しく公平に流れているのだ。
 少しだけ肥った月が、人々の営みを見つめていた。

                          終わり

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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  【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
王優・月下    /女 / 16 / 学生
シュライン・エマ /女 / 26 / 翻訳家
杜・こだま    /女 / 21 / 風水師

キャラクターデータ

PCの名前       王優・月下
PCの名前ふりがな   おうゆう・げっか
外見年齢または学年  16
外見性別       女
クラス        学生
一人称        私
二人称        おまえ
語尾         元気に
敬語使用       使わない
身長         低い
体型         小柄
髪の色        緑
瞳の色        赤
肌の色        一般的日本人肌
性格1 防御 □■□□□ 攻撃
性格2 理性 □□□■□ 感情
性格3 狡猾 □□□□■ 純真
性格4 協調 □■□□□ 自主
性格5 仕事 □□■□□ 恋愛
性格6 現実 □□■□□ 神秘

PCの名前       シュライン・エマ
PCの名前ふりがな   しゅらいん・えま
外見年齢または学年  26
外見性別       女
クラス      翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
一人称        私
二人称        あんた
語尾         クールに
敬語使用       使う
身長         高い
体型         細身
髪の色        黒
瞳の色        青
肌の色        白
性格1 防御 □□□■□ 攻撃
性格2 理性 ■□□□□ 感情
性格3 狡猾 □■□□□ 純真
性格4 協調 □□□■□ 自主
性格5 仕事 □□■□□ 恋愛
性格6 現実 □□□■□ 神秘

PCの名前       杜・こだま
PCの名前ふりがな   もり・こだま
外見年齢または学年  21
外見性別       女
クラス        風水師(アルバイト)
一人称        私
二人称        あなた
語尾         クールに
敬語使用       使わない
身長         標準
体型         細身
髪の色        黒
瞳の色        黒
肌の色        一般的日本人肌
性格1 防御 □□□■□ 攻撃
性格2 理性 □■□□□ 感情
性格3 狡猾 □□■□□ 純真
性格4 協調 □□□□■ 自主
性格5 仕事 □■□□□ 恋愛
性格6 現実 □□□■□ 神秘



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■         ライター通信          ■
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 こんにちは。水上です。
 いかがだったでしょうか?
 お客様の推理は当たりましたか?
 楽しんでいただけば幸いです。