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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


『裏罠愚出斗(りびんぐでっと)』
------<オープニング>----------------------------------------------------------
 バブルが弾け、日本経済は混迷の一途を辿っている。
 そんな時代の波を受けて潰れてしまった梶野病院は豪華ホテル並の設備がウリと言う成金趣
味な病院であった。
 だが、世間に言われる直接の原因とは別に、異様に多い医療事故や医者・看護婦が定着しな
い為、病院として成り立たなくなってしまい潰れてしまったと、まことしやかに囁かれている。
 かつての絢爛な建物も手入れする者も無く、風雨に晒され、雑草の伸びるに任せた結果、廃
墟と化してしまっていた。
 そんな病院に入っていく人影が26。
 暴走族『裏罠愚出斗(りびんぐでっと)』の者達であった。
「おっ、ここすっげーよ。俺達のアジトにしようぜ」
 そう言って宴会の準備を始める面々。そんな彼等の周りをうっすらと白い霧が取り巻き始め
ていた。
 ………そして、忘れ去られた場所に響く絶叫。

 とぼとぼと警察署を出てくる少女。リーダー城島雄吾の妹の奈月だった。
 十日前から帰らない兄を心配して警察に来たのだが、札付きの悪である雄吾達はどうせその
辺で遊んでいると決め付けられ、門前払いされたのだ。
 正門を出た奈月は走って銀行に行くと、預金を解約する。
 そして、真っ直ぐある場所に向かっていた。
『草間興信所』
 お金の入った封筒を握り締めながら、震える手でドアを開いた。

----<雨宮薫の場合>------------------------------------------------------------
 携帯にメールが入ったようだ。おもむろに取り出して画面を見る。
 あまりありがたくも無いメールだったらしく、微かな溜息を吐いて携帯をポケットにしまい
込む。
「雨宮く〜ん! 今日帰り、マックにでも寄ってかない?」
「‥‥‥悪いが帰り、寄るところがあるんだ」
 クラスの女子の誘いを断ると‥‥‥もっとも、受けた事は無いのだが‥‥‥急ぎ足で校舎を
後にする。
 雨宮薫(あまみや かおる)は陰陽師の血統である天宮家の次期長であり、その将来に向け
て除霊や退魔などの依頼を受けている。もっとも、その依頼は一般より直接に、では無く祖母
から受けるものであるのだが。
 天宮家は文献によると室町時代、民間陰陽師と言われる一派の中に初見される。この頃民間
に活動の場を移した安倍晴明の孫の円弼(俗名国時)の弟子筋の者が当時播磨の国に於いて開
いたと有る。
 その後京都に居を移すが、関白秀吉の時代に豊臣秀次に近かった安倍久脩が遠流となり、そ
の煽りを食って天宮家は江戸に居を移す事になる。
 その後徳川幕府の陰陽道の解禁もあり順調に発展していった。
 しかし明治時代、陰陽道禁止の布告を受けてその活動は時代の表舞台からは完全に姿を消し
て行った。だが、今も続く血脈は日本の歴史の影の部分の一翼を担っているのだろう。
 でもな‥‥‥。随分アバウトな依頼だったな。
 その次期長となる雨宮は今あった依頼を頭の中で整理する。
 行方不明になった兄を探して欲しい、か。
 廃病院がそのままになっている所で族がたむろできるような郊外、バイクに乗っているとは
言え、行動範囲はそんなに広いものでもないだろう。
 電車に乗り、バスに乗り換え、そして徒歩で依頼人の家の前まで辿り付く。
「ここから、か」
 物陰に隠れて呪符を取り出すと、鳥の式神の姿を念じる。
「式神召還 雪鴉 急急如律令!」
 白い鴉が瞬間歪んだ空間から空中に飛び出した。
「この近所の廃病院の中を探って来い!」
 高い鳴き声を一つ残し、雪鴉は天空へ向けて飛び立っていく。この程度の低級な式神にはあ
まり複雑な行動をこなす事は出来ない。場所の特定と病院の中の様子が少しでも判れば上々と
飛ばしていたのだが。
 程無くしてそれらしき病院を発見する。バイクも停められているし、恐らくここであろう。
 しかし、変な建物だ。T字路の突き当たりで、水路が近くを走り、三角形の建物で所々欠け
なんかもあったりする。陰木の林があってみたり、まるで意図的に建物の相が大凶になるよう
に仕組まれているのではないかと思うほどであった。
 病院の内部を探ろうと白鴉の高度を落とした瞬間、何者かの強い念が飛んでくるのを感じた。
完全に不意を衝かれ、気が付くと眉毛の上が少し切れて血が出ている。
 落とされたか‥‥‥しかし、何者が!?
 ティッシュでそれをぬぐって止血すると、先程上空から見た道筋に従って病院に向かう。
 すると、病院の前をうろうろしている少女の姿を見つけた。
 ‥‥‥あれが依頼人か? 
 ふらふらするその姿を少し見つめていたが、背中に何か寒い物が走り、嫌な予感が頭の中に
閃いた。あそこにいさせては、いけない!
 そう思って駆け寄ろうとした瞬間に空間が歪み、その中からひとりの青年が現れた。
 天上天下唯我独尊。喧嘩上等。三代目総長。
 もしかして、あれが城島雄吾か!?
 だが、その身から発している異様な気は妖の者の放つそれと同質のものであった。だとすれ
ば、何かに取り付かれているのか?
 男はふらふらしていた奈月を捕らえると、空間の揺らぎの中に押し込もうとしていた。
 だが、相当な結界を身にしているのが見て判る。あれを打ち破るには相当の力の術が必要で、
弱らせてからでなければ除霊など出来そうも無い
「起黒雲了 刮風下雨 害怕雷声 紫電打閃 九天応元雷声普化天尊 急急如律令!」
 ほぼ、手持ちの符の中では最強ともいえる雷帝の法を行使する雨宮。両手から強烈な稲光が
発せられ、男に襲い掛かる!!
『邪魔するな、小童ァ! 阿伽多刹帝魯須多光蘇陀摩尼!!』
 元々の結界の力に加えて、神伝雷除の呪文で雷は男に届く直前で消失してしまった!
「逃がすか! 式神召喚 大貉 急急如律令!!」
 三十六禽が一つ、貉を召喚して、自らも退魔刀を抜き払ってそこに駆け寄ろうとする!!
『おのれッ、こしゃくなッッ!!』
 地の底から響くような声を発し、なにやらの結印をしようとした瞬間、迫り来る車の音に気
づいたのか、男は無理やり少女をその中に押し込んで自らも消えていってしまう。
「くそっ! 逃がしたかっ!!」
 あれが依頼人だとすれば、いや。そうで無かったとしても失態である事は間違いない。目の
前で連れ去られてしまうとは。だが、恐らくこの病院の中にいる者であろう。急がないと。
 だけど、なんで急に来るんだ!?
「‥‥‥あんたか。で、何の用だ?」
「何の用、とは御挨拶ね。こんなに広い病院を調べる依頼だから、手伝ってあげようと思って
来たんじゃない。それに、そんな綺麗な顔傷つけるのは犯罪行為だしね。生徒の行動には責任
持たなくちゃ♪」
 軽い頭痛を覚えてこめかみを押さえる。
「さっきの見ての通り、かなり厄介な依頼だ。正直帰ったほうがいいと思う」
 少しは心配して言ってるのに、意に介した様子も無い響。
「なぁに馬鹿言ってるのよ。さて、中に入りましょうか。あ、そうそう。私もここの事調べて
見たんだけどね。多分ここの親玉は呪術専門の妖術師みたいよ」
 ‥‥‥先程までとは違って、敵意丸出しの波動が二人を襲う。
 恐らく、先に入った依頼人と共に来た一団は依頼人の危険を考えて残していったのだろうが、
そもそもここまで連れてきた事が間違いだったのかもしれない。
「急ごう。依頼人の命が危ない」
 流行る気持ちを押さえながら、辺りを観察しながら進む。痛いほどの敵意がどんどんどんど
ん大きくなって‥‥‥爆発した!
「お待ちかねって訳か!?」
 ズルッ‥‥‥ズルズルッッ‥‥‥。
 敵意の正体は病院の庭内に配置された動物の石像。動くはずのないそれが、石の摩擦の音を
響かせ二人に迫ってくる。動かぬ筈のそれが動くのはあまり気持ちのいい光景とは言えない。
「どうやら囲まれたわね」
「是非も無い。前に進むだけだ!」
 退魔刀で一刀両断するには、寸分のずれも無く、直角に力を集中させなければならない。だ
が、いかに法力によって守られているとは言え、これだけの数の石像相手に振り回すには些か
不安もあった。
 だが‥‥‥。
 頭上の枝に鞭を巻きつかせ、飛び上がって反動に任せてのとび蹴りをぶちかます響。堪らず
倒れこんだ石像の動きの止まった所で、ひび割れなどに退魔刀を差し込んで除霊を行使する。
この二人で仕事をするのが初めてであるならともかく、結構場数は踏んでいた。
そのコンビネーションは見事な物で、ついに包囲網を突破する!
 そして、その時だった。かなりの派手な音が前方の非常口の方から聞こえてきたのは。
 向こうか! そちらに視線を移したその時だった!
 鎖で封鎖された正面入り口を無理やりに突き破ってきた暴走族風の男が8人飛び出してきた。ここで足止めされては先程の石像達とこの男達に挟み撃ちにされてしまう!
「結構な危機ってかんじかしら?」
「そうみたいだな。けれど、依頼された仕事は成し遂げる!」
 どうやら行く手をふさぐ男達は残念ながら絶命しているようだ。生気の無い顔が哀れさを誘
うが、それを感じる暇も余裕も正直無かった。
 祓いの法を行使しようとする手を押さえて、一点を指差す響。
「間違いない。石像も男達も常に一人を守るように後ろに下げて行動してる!」
 言われてそちらを見ると、確かに此方から死角になるように動いているものがいる。
 一体を集中的に狙うなら、それに効果的な術を使うのが一番だ。
 鞄の中から四枚の花弁を持つ花の様な形の銅鏡を取り出すと、両手で正面に持って石像達に
向けた。
「天亮晃耀 天黒月色 破邪光恵莅 急急如律令!」
 銅鏡が輝き、石像と石像の間に映っている守られた石像を直進した光線は正確に捉えた!
「朱雀! 玄武! 白虎! 勾陣! 帝禹! 文王! 三台! 玉女! 青竜!!」
 唱えるごとに石像の動きは徐々に鈍くなって、青竜の名を呼ぶ頃にはすっかりと動かなくなっ
て倒れてしまっていた。
 そしてそれが倒れると同時に総ての石像が動かなくなり、音を立てて倒れていった。人間の
方にしても同じだったようで、振り向くとそこに立っている男の姿は無くなっている。
「急ぐぞ!」
 そしてついに、前を行く者達の姿が飛び込んできた!
 瞬間、カードケースに手を伸ばした響は何枚かのカードをそれに向かって投げ付けた!
 生暖かい血がそれから溢れ出た。少女の首を締めていた手は果を一枚を残してぶら下がって
いる。二人の到着に狼狽したのか、そこで争っていた黒い影は逃げ出し、憑依していた霊はそ
こにいた陰陽師によって除霊されていた。

「天宮か‥‥‥」
 中にいた陰陽師が呟き、その男と視線がかち合う。
 陰陽師が総て知り合いと言う訳ではないのだが、同じ東京で活動していれば嫌でも顔を付き
合わせる機会も数多くあった。そんな訳で雨宮と行動を共にしていた響の事も見知っている。
「興信所からの依頼で来た。悪いが休んでる暇は無い。詳細は歩きながら話す!」
 早歩きで中に入っていく雨宮に戸惑いを覚える。
 いつものヤツであればこんなに熱くなることもないだろう。
「ち、ちょっとまってよ!」
 苦しげに声を絞り出す月下に響が優しく寄り添って、ポケットから喉飴をとりだす。
「余裕が出来たら、舐めとくと楽になるわよ」
「あ、ありがと‥‥‥」
 響の優しげな瞳に思わず照れてしまう月下。だが、和んでいる暇は無い。
 月下の事はとりあえず響に任せ、百合子は雨宮に駆け寄っていく。
「休んでる暇は無いって、なにかあったの? 確かに雄吾さんのところには早く行かないとい
けないかもしれないけど」
 無論、死んでいる可能性があるのも判っているが、言葉にするのは嫌な感じがする。
「依頼人が攫われた。だから、急ぐんだ!」

 移動の最中に響が告げた情報で敵の正体が妖術師である事を知る一行。そして病院内を捜索
する中で、殆どの場所を見回ってしまった‥‥‥はずなのだが、どうしても、妖術師の憑依し
た城島雄吾を見つける事が出来ない。
「あのさ‥‥‥さっき歩いてて思ったんだけど。院長室って無くない?」
 月下の言葉に一行は玄関近くの院内案内図前まで戻ってきていた。
「あれっ! 通ったはずなのに‥‥‥」
 思わず百合子は声を上げる。どうやら、通ったはずのところなのだが。ナースステーション
から霊安室までドアを開けてくまなく調べ、見落としているなんて事は考えられない筈なのに。
「やっぱり、あれか?」
 雨宮に水を向けてみる。
「多分、それで間違いない」
 陰陽師の間で納得されても、他の三人には訳がわからない。
「もう、二人で納得しないでよ!」
 百合子の言葉に、顔を見合わせる二人。
「結界だよ、たぶん」
「形代使った結界だと思う。呪禁道の道士だと思うんだけどな、鎮められていたのは。薬師と
しての役目もあった呪禁道士の神社壊して病院ってのも皮肉な話だけどな」
 雨宮の言葉の後に言葉を続ける。さっき話し合って出した答えなのだが。そして、院長室の
あったはずの場所に一行は向かうが、やはり着かない。
 先程からナースステーション、内科医局、配膳室、検査室、リハビリテーションル−ムの周
りをぐるぐると回っているようだ。
「もおっ! 急いでいるのにっ」
 焦れた百合子が思わず声を張り上げた。
「落ち着いて。大体わかったから」
 月下に気を使って歩調を合わせていた響が小アルカナのAを4枚と愚者のカード懐からを出
す。そして、『棒』ナースステーション、『金貨』内科医局、『聖杯』配膳室、『剣』検査室、『愚者』リハビリテーションル−ムと説明する。
「え? それってどう言う事??」
 そう聞いてきた月下の頭をぽんと叩く響。
「形代は同時じゃ無いと剥がせない。でしょ? 雨宮くん」
「多分、そうだろう。でも、ただで剥がさせて貰えるとは思えない。けれどどこかに2人配す
る事はできない。みんな、覚悟はできてる?」
「もちろん♪」
「絶対、助け出すんだからっ」
「オイラ、頑張るよ!!」
 順番に響、百合子、そして月下が決意を述べる。
「‥‥‥行くか」
 順番にカードを引くと、それぞれの場所に歩いていく。
 
 雨宮の引いた札は棒、ナースステーションに入っていた。結構広いが全面ガラス張りのここ
はそんなに隠すところも無いだろう。 

 バリバリバリバリバリバリバリバリッッ!!!

 周囲のガラスが一気に割れ、粉々になって弾け飛んだ!
「‥‥‥来たか」
 天上天下唯我独尊と書かれた特攻服。釘を打ち付けたバット。一見して暴走族と判るその男
とは先程顔を合わせている。
 だが、どうした事だろう。
 さっきの結界はだいぶ弱くなっているのが見える。結界を新たに張ったせいであろうか。
『しつこい男は嫌われるぞ、陰陽師よ』
 薄ら笑いを浮かべ、そこにいる人物は城島雄吾であるのだがそうでない人物。門の前であっ
たその人物であろう。
「依頼人を返してもらう。ついでにお前も浄化させてもらうぞ!」
『ほほう。大きく出たな』
 二人の視線が交錯し、火花が飛び散っているような緊張感が漂っていた。そして、呪文の詠
唱に入る!
「起黒雲了 刮風下雨 害怕雷声 紫電打閃 九天応元雷声普化天尊 急急如律令!」
『阿伽多刹帝魯須多光蘇陀摩尼!!』
 先程と同じ展開。だが、その後は変わって衝撃に吹っ飛ばされる妖術師。態勢を崩した所に
抜刀して飛び掛る!
 がつっっ
 なんと、釘バットで退魔刀を受け止められてしまった! 別に刃引きしている訳ではない。
 魔力を帯びている事をさっぴいても、鋭利な本刃がついているのに。まあ、バットにも相当
な力を付与しているのだろう。
 だが、上から押していることに違いはない。体重をかけてこのまま押し切ろうとするが、蹴
りを入れられて距離を取られてしまった。
『やるな小童っ! だが、地の利は我にあり!! 黄泉比良坂 如何開門 急々如律令!!』
 空中に突如として巨大な門が出現し、中から幽鬼が顔を覗かせる!
「くそっ! 如何閉門 急急如律令!!」
 幽鬼達が閉じられようとする門を無理やり押し開こうとしそれに対抗する為、念を送り続け
る結印を崩す事はできない。つまり、攻撃力も防御力も一切奪われてしまった!!
『病院など建ててくれたおかげで封印も解け、霊的平行も崩れて冥府に通じ安くなった。今世
人様々では無いか。あーっははははっ!!』
 出現させてしまったそれを維持するのは、さほど力を使用することも無いのだろう。既に妖
術師は左手のみでそれを制御しているようだった。
『さて。実に楽しかった。残念だがもう時間もない。貴様ともこれでお別れだ!!』
 ポケットから符を取り出した妖術師は呪文の詠唱を始める。
 今、印を崩して念を送るのをやめれば、完全に黄泉比良坂を開かせてしまう。そうなれば、
俺も先生も残りの連中も全部、死んでしまうに違いない。
 それは天宮に名を連ねる者として、絶対にできない。だが、このまま対応できなければ同じ
事だ‥‥‥‥‥‥どうすればいい!?
『うぐっぅぅぅううう。なんだ、どうした!? これは一体っ!!』
 妖術師の口、いや憑依を受けている城島雄吾の口から血が溢れ出す。全身に激痛が走ってい
るのか、激しく体を掻き毟っている!!
 何はともあれ、まったく念が送られなくなった門はあっという間に閉じられて虚空に消えて
いった。
「虚歩蔵刀 提膝纏頭 神将招来 勾陳上宮天皇上帝 急急如律令!!」
 詠唱と共に大きく振った刀から刃の形をした光が妖術師に向かって飛ぶ。そしてその体を一
刀両断‥‥‥いや。体には一切傷をつけず、妖術師だけを攻撃する。
 ゆっくりと、大の字に倒れこんでいく雄吾。
「さっきのは、もしや形代が全て破られたのか!?」
 みると、何時の間にか雄吾の左胸の上に破れた形代が載っている。それを取り去ると、雄吾
の顔色を確かめる。どうやら血色は悪くない。どうやら、生きているようだ。
「あとは依頼人だけだな」
 休む間も無く、雨宮はとりあえず雄吾をここに残して院長室に向かった。

----<エピローグ>--------------------------------------------------------------
 全員が同時に走り出す!
 誰一人欠く事無く全員が勝利して結界が崩壊し、その中心の院長室のドアがそこにあった。
 開いてみると、ソファーの上に安らかな寝息を立てて眠る奈月の姿を発見する。
「だいじょぶっ!?」
 走り寄った月下の呼び掛けに、奈月はゆっくりと目を開く。
「こ、ここは!? お、お兄ちゃんは!?」
「心配するな、向こうで寝てるよ」
 雨宮のその言葉に全員の視線が集中する。
「妖術師は倒した。すべては終わった」
「ほ、ほんとっ!?」「やったのね」「いよっしゃあっ!!」「倒したか‥‥‥」
 四者四様の声をあげる中、奈月が立ち上がって一同を見渡す。
「お兄ちゃんのところに連れて行ってください!」
 そして、伴われてやってきたナースステーションで兄の姿を確認し、走り寄る奈月。
「大丈夫なのか?」
「ああ、完全に妖力は失せてる」
 兄の体を抱き起こし、乱暴にゆさゆさゆさゆさと、揺さぶって声をかける。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」
 そして、目を開く雄吾。
「奈月‥‥‥‥‥‥‥‥はらへったあ、朝飯はまだか!?」

 兄のバイクに同乗して、奈月は家へと帰っていく。お礼ととびっきりの笑顔を残して。
 だが、奈月の笑顔が浮かぶ中、心の中に何かが引っかかっていた。
 何かは判らない。判らない何かが。
    
                                     【終幕】


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        ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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          【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
          雨宮 薫     男   18   高校生(陰陽師)
          不知火 響    女   28   臨時養護教諭
          久我 直親    男   27   陰陽師
          王優 月下    女   16   高校生
          滝沢 百合子   女   17   高校生
        □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
        ■         ライター通信          ■
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    はじめまして! 篠田足往(しのだ あゆき)と申します。
    2キャラ投入ありがとうございます。大変うれしいです!!
    まず若干キャラ設定の方を調べさせていただいて、ああいう風にしてみたのです
   がいかがだったでしょうか。ちょいと余計だったかもしれませんが、陰陽師のキャ
   ラがかぶったので、一手間かけてみました。時代の整合性合わせるのに名前でちょ
   っと苦労したんですが、まあそれは置いときます(笑)。
    一応、ハッピーエンドです。
    集まった面子の戦闘能力が高かったので、シナリオ成功、ってことで進めており
   ました。まあ、何か含みのある終わり方ではあるんですが、また別のシナリオで何
   かつながるやもしれません。
    感想御意見等いただけますと、今後の参考や直すべき点として注意いたしますの
   で、よろしければお願いします。
    それでは、篠田のシナリオをお買い上げくださいまして、誠にありがとうござい
   ました。またの御指名をお待ち申し上げております。