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青い部屋のゴースト達
●事件のはじまり
古い柱時計が深夜の12時を告げている。
ここはかつての富豪が建てたと言われる古い邸宅。暗闇の中で懐中電灯の光に照らされて露わになるのは、埃にまみれの壊れた家具や部屋ばかり。そんな荒廃した屋敷の一室に何故か四人の若者が入っていく。
「うっわー、本当に真っ青だよ」
「ベッドもテーブルもみんな青‥‥ここだな」
「じゃあ、携帯から‥‥964って打つんだよね?」
「そうそう。ノイズが入ったら幽霊出てくるから、ちゃんと教えてね」
「OK!」
だが、その前に。遠くから複数の人の足音が、この部屋へと近づいてきた。
「あ、あれ? まだノイズ出ていないのに?」
そして、勢い良く扉が開かれ‥‥。
「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!」
そして一週間後。ネットカフェに深緑のブレザーを着た少女が入ってきた。そしていつもの席に座り、ネットサーフィンを始める。と、とある掲示板で少女の手が止まった。
『投稿者:MIKI
助けて! 例の青い部屋で仲間が捕まって‥‥ひとりじゃ皆を助けられない。出来れば強いヤツの方がいいけど、この際、誰でもいい。誰か、誰か助けて!!』
それが少女の手を止めたメッセージ。
「いいわ。私が行ってあげる。この深月明(ふかづき・あきら)が‥‥」
と、明の肩に手を置く者がいる。
「あら、あなたも? それなら、一緒に行きましょうか?」
どうやら、彼女の友人のようだ。明は笑みを浮かべ、友人と共にカフェを後にした。
●青年と猫と廃屋
がさがさと木々が揺らめいた。
「確か、この廃屋だったな」
全身黒い服を身にまとい、青年は木陰からゆっくりと目の前にそびえる廃屋を見つめた。彼の名は紫月夾(しづき・きょう)。暗闇に紛れたまま、廃屋へと潜入し、青い部屋の解明が今日の目的であった。
「本当に相手はいるのか?」
静まり返ったこの場所で誰かがいるとは考えにくかった。一応、事前に調べた部屋の地図はすでに頭の中にある。
「まずは中に入ってみよう」
夾は音も立てないよう注意を払いながら、廃屋へと近づいていく。
「にゃーん」
と目の前に小柄な虎猫が現れた。青いリボンに鈴が付いている。どうやら飼い猫がこの場所へ紛れ込んできたようだ。夾は苦笑すると、猫をひょいっと抱き上げた。
「駄目じゃないか、こんな所へ来ては。飼い主が心配するぞ」
「にゃーん」
夾の言葉をお構いなしに、猫はするりと手から逃げると鈴を鳴らしながら廃屋の中へと入っていってしまった。
「どうやら嫌われてしまったようだ」
もう一度、苦笑を浮かべ、夾も廃屋の中へと入っていったのであった。
●闇に潜む者達
がたん。
一人目である。夾の思惑通り、この屋敷には男が待ちかまえていた。今は夾の持つ鋼糸で縛り付けられ、身動きできずにいる。
「お、お前は誰なんだよ‥‥」
男は夾を睨み付けた。
「それはこっちの台詞だ。お前達の目的は何だ?」
「目的? 決まっているだろ? ここを新しいアジトにするんだよ!!」
そう言って男は夾に唾を吐き捨てた。
「‥‥どうやら、痛い目に遭いたいらしい」
夾は男の顔をぐいっと押し上げる。
「!!!!」
数分後。
「っ!!! ふぅあっ!! い、嫌だ‥‥嫌だ、やめ‥‥」
男は叫びにならない声をあげ、ばたりと気を失った。
これが夾の秘めた力。夾の深紅に光る瞳には他人を麻痺させるだけでなく、幻覚までも見せる能力があった。
「‥‥やりすぎたか。もう少し聞きたいことがあったのだがな」
男を部屋の隅に転がすと次の部屋へと移動し始めた。
二人目‥‥と三人目。
「お、俺が悪かった。お願いだから見逃してくれよ‥‥」
「オイコラ、離せや」
きりきりと鋼糸を握る手に力が入る。
「いてててて!」
締め付けられ、苦痛に歪む男達を見ながら、もう一度夾は訊ねた。
「あんたらの目的は何だ?」
その言葉に一人の男が口を開いた。
「に、日記だよ」
「あ、言うなバカ!!」
「日記だと?」
夾は出てきた言葉に思わず問いかえした。
「この屋敷に住んでいたヤツの日記だよ。何が書いてあるのかさっぱり分からなかったけど、何かの役に立つんだって‥‥金になるからって皆で来てみたんだ‥‥」
「なるほど‥‥どうやら、その日記はとても重要なもの、らしいな? で、その日記は今どこに?」
「もう渡したよ。綺麗なねーちゃんにさ。ねーちゃんの名前は知らないよ。でも、スーツを着ていたから、どっかの会社とか、バーとかにいるんじゃねーの? それより、アンタ、一階の地下にいるヤツラを助けに来たんだろ? キッチンの床にある扉から地下に行けよ。そこから助けられるぜ。さ、もうこれでいいだろ? 助けてくれよ」
「ああ、そうだな。ありがとう」
そう礼を述べると、自分の能力で一気に二人を気絶させた。
「もうここは用なしだな」
日記のことが気にかかるが、ここに無いものを追っ手も仕方ない。
夾はまた、部屋を後にしようとしたが。
「どうするって電話を‥‥」
どうやらまた、誰かが来たらしい。
静かに部屋からそっと声の聞こえた先を見た。どうやら、懐中電灯を持って入ってきた者達のようだ。音を立てずにそっと部屋に近づく。彼らのいる部屋は青く染まった壁に囲まれた異質な部屋だった。電話のコール音が鳴り響く。
と、そのとき!
ばったーん!!
突然クローゼットが開き、そこから先ほど倒したやつらの仲間らしい男が飛び出してきた! そして、男は近くにいた眼鏡の少女、滝沢百合子(たきざわ・ゆりこ)を捕まえた。
「動くな! 動くとこいつの命はないと思え!!」
男は手に持っていたナイフで百合子の首を斬りつけようとする!
思わず夾は手に持っていた鋼糸で男の手を切り裂いた。
「ぐあああ!??」
その隙に百合子は男の手を押し退け抜け出す。それを確認してから、夾は彼らの前に現れた。男を鋼糸で縛り上げながら。
「ここは俺に任せて、さっさと地下へ行け」
このとき、初めて彼らの顔を見た。人の良さそうな青年、藤村圭一郎(ふじむら・けいいちろう)、夾と雰囲気の似た青年、久我直親(くが・なおちか)、茶髪に小麦色の肌をした少女、榊杜夏生(さかきもり・なつき)に、明。そして百合子に‥‥。
先ほどの猫?
そう思った瞬間。
「地下だと?」
直親が夾に訊ねてきた。
「一階の‥‥キッチンの床から地下へ行ける。分かったならさっさと行け」
夾は言い放ち、彼らを見送った。
●そして、解決へ
その後、青い部屋で出会った彼らから連絡があったらしい、警察が屋敷に乗り込んできた。これで事件も解決するだろう。
「しかし‥‥あいつらの言っていた日記には一体何が書かれていたのだろう?」
気にはなるが、ないものはない。
「今度、調べてみるか?」
夾はばさりと乱暴に新聞を置くと、白衣に腕を通した。
これからいつもの学生生活が始まるのだから。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
紫月・夾 / 男 / 24 / これでも大学生
滝沢・百合子/ 女 / 17 / 高校生
藤村・圭一郎/ 男 / 27 / 占い師
久我・直親 / 男 / 27 / 陰陽師
榊杜・夏生 / 女 / 16 / 高校生
桐谷・虎助 / 男 / 152 / 桐谷さん家のペット
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■ ライター通信 ■
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初めまして。ライターの相原きさ(あいばら・−)です。今回は依頼を受けて下さりありがとうございました☆ 今回の物語はいかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたでしょうか? 皆さん、しっかりと対策等して下さったお陰で大成功を納めることが出来ました☆ 他にもなにやら、いわくつきな部分もありますが‥‥それはまた別の機会に。
もし、この物語を気に入って下さったのなら、ぜひ、ファンレターにて感想を送って下さると嬉しいです。
キャラクターの設定に「動物には優しい」とありましたので、ちょっと絡めてみましたが、いかがだったでしょうか? 喜んでいただけると嬉しいです。
それでは、今日はこの辺で。またお会いできるのを楽しみに待っていますね☆
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